天才と大罪
暑いと寒いのミルフィーユやめてくれませんか。体調崩しますよ普通に。
「まだ俺が長になりたてで困ってる時に、シュスラさんが『なら私が魔道具を作る方法を教えるよ!そうしたら何か思いつくんじゃない?』って言ってくれたのが始まりで」
一瞬話を聞いただけで、ルヴラみたいな陽気な人だって分かるな...。
「ルヴラすぎる...」
〝本当ですね!〟
カラ達は、やっぱ家族だなぁ。と少し面白くもあるが、微笑ましいと思い、ふと笑みが零れてしまう。
「でも、そこからが地獄だったよ...」
苦笑いながらにアンデスはそう語る。シュスラさんは意外と体育会系なのだろうか。そんなことを考える。すると、アンデスは続きを話し始める。
「俺に魔道具生成のセンスが全然無くてね...。そのせいで苦労したよ」
「そ、そうだったんですか!?」
イファはかなり驚愕する。皆、いきなりイファが声を出したのでそれに驚く。
「あ、ごめんね」
「イファの反応から分かる通り、俺は皆に隠れて魔道具生成をしていたんだ。でもかなり時間がかかってね...」
「何年ほどかかったのですか!?」
ルヴラが興奮気味に質問する。先程の物憂げな表情はどこに行ったのか。
「うーん...300年はかかったかなぁ...」
凄く長いように感じるけど、今までと比べて数が小さいから少なく感じてしまう...。
と、少しだけ感覚がおかしくなってしまうカラ達。
「え、イファもそれくらいかかりましたよ!」
「え...?」
イファの発言により、アンデスを含んだカラ達が一瞬フリーズする。
「もしかして、エルドラドの人達もアンデスと同じくらいの時間がかかったのかな...」
「だ、だとしたらルヴラの家族...」
皆、ルヴラの方を向く。ルヴラは目が点になっており、あまり理解していないようだ。
「え、僕の家族がどうしたの?」
なぜこんなにもバカなのに魔道具生成に関しては天才的な発明をするんだ...。と、何度見てもルヴラの頭の構造が理解できないカラ。
「つまり、お主の家族は全員天才という事じゃよ」
「え...?僕の家族が皆天才...?」
「あぁ、妾もアンデスに言われるまで気づかんかったが、思い返せば、旅をしていた時、確かに魔道具店はかなり少なかった。その少なさは教会に並ぶレベルじゃろうな」
「そ、そんなに少ないのですか!?」
一同、魔道具店の少なさに驚愕する。教会と一緒、つまり各国に一軒相当という訳だ。なんと不便な。
「と言うことは、魔道具を作れると言う能力だけで、限られたひと握りの存在という訳じゃ」
「....!!!」
ルヴラはそう言われ、目を輝かせる。そしてアヴァロンに近づく。
「ほ、ほんとに...?」
唐突に顔を近づけてきたルヴラに少し驚くアヴァロン。その後ルヴラの頭を撫で始め
「そうじゃよ。お主は選ばれた存在という事じゃ」
と、優しく微笑みながら言う。その言葉を聞き、ルヴラはほんの少し目が潤み、涙を堪える。
「良かったね。ルヴラ」
「...うん...っ」
リノアも微笑みながらルヴラの背中をさする。それを見たカラ達もルヴラを慰めるように、傍で寄り添う。
数分後、ルヴラは落ち着き、アンデスも話の続きを始める。
「まぁそれで、シュスラさんに魔道具を教わって、300年かけてエルドラドに広めて、ここまで発展したんだ」
「それで、君たちが気になっているであろうシュスラさんの出身地についてだけど、実はシュスラさんに魔道具生成を教えて貰っている時、気になって聞いてみたんだよ。」
「ほ、本当ですか!?」
ルヴラは興味津々になる。それもそうだ。生まれてこの方、母親の声すら聞いたことがないのだから。気になって仕方ないだろう。
「そうしたら────」
「────私の出身?そんなの聞いて何になるの?」
唐突にそんな話を振られた赤髪長髪の美しい女性は、振り返りながら笑ってそう答える。
「い、いや...だって、こんな技術聞いたこともないですよ...」
「ふふ...。それは君がエルドラドの民だからだろう?エルドラドは情報が出ない分、情報を得られない。そのせいでこんな変な技術も知らない」
「へ、変な技術じゃないですよ!!こんな便利なのになるんですから!」
その女性に教えられている男の娘はそう反論する。その反論に驚く赤髪の女性。
「っ...ふっははは!そうだね!その通り、魔道具生成は良い物だよ...」
突然笑い出したかと思うと、そうやってなにか意味ありげな表情をする、シュスラさんは過去に何かあったのだろうか...。そんな事がアンデスの脳裏に浮かぶ。
「私を励ましてくれたお礼にさっきの質問を答えよう!」
「ほ、本当ですか!?」
無邪気な笑顔でそう言うと、アンデスは嬉しそうに目を輝かせる。
「ただ、私の出身については、君が心から信頼出来ると思った人にのみ伝えてくれると嬉しい」
「は、はい...!」
ゴクリ...。と、アンデスは、固唾を飲むほどに緊張してしまう。
「私はアルカディアと言う、孤立した国で生まれ、ここまで来たんだ」
「────アルカディア...?」
「一体どんな国なのでしょうか...」
当たり前だが、聞いたことがない国。しかし、アンデスの話によれば孤立した国。つまりエルドラドと同じ情報がない...?
「ア、アルカディアじゃと!?」
突然、アヴァロンがかなり動揺した様子でそう声を荒らげる。
「ア、アヴァロン...?」
「その様子だと、知っているようだが...。一体どんな国なんだ?」
アンデスがそう聞くと、アヴァロンは言いにくそうな表情をする。
「...アルカディアとは、人は住んでおるが、大きく分けると妖の国に分けられる程に精霊の類が多く住んでおり、辺りが火山とマグマで囲まれている灼熱の国なんじゃが...」
アヴァロンは途中で言い淀む。そんなアヴァロンにカラ達は疑問に思う。なぜ言い淀むのか。すると、アヴァロンは意を決して話し始める。
「アルカディアは、過去に起こした大罪のせいで、神が追放された、言わば禁忌の国なんじゃよ」
「...え」
「き、禁忌の国...」
その言葉を聞き、カラ達は驚愕する。禁忌の国。それが意味することは、入ることが禁止されている。と言うこと。
「...その国、今もあるの?」
クゥロがそう質問すると、アヴァロンは首を横に振り
「分からん...。妾も人づてに聞いただけじゃからな...」
と、答える。アヴァロンも入ったことがない禁忌の国...。その話を聞き、カラ達は少し恐怖する。そんな中、1人だけ違った感情を抱いていた。それは...
「ア、アルカディア...!!」
ルヴラであった。ルヴラは好奇心旺盛の為、禁止や禁忌と言った、本来入ることも出来ない国が気になって仕方ないのだ。
「やっぱりルヴラは気になっちゃうか...」
リノアは少し呆れながらそう言う。そんなリノアの言葉にえへへ...。と照れるルヴラ。
「まぁでも、シュスラさんがアルカディア出身なのもあるし、結局行かないとだね」
「え...?」
カラの言ったことが信じられず、思わずそんな反応をするルヴラ。
「だって、ルヴラが行きたいんでしょ?なら、カラ達も賛成だよ」
〝そうですよ...!〟
「そうそう!」
カラ達はそう頷く。ルヴラはそんなカラ達に感動して少しだけ唖然としてしまう。
「み、みんなぁ...」
「なんで泣いてんの...!?」
「...このくらいで泣くとは涙脆い奴じゃのぅ」
アヴァロンは、仕方ないなぁと言わんばかりの表情をし、ルヴラをそっと抱擁しながら優しく頭を撫でる。
「ぐすっ...ありがとぉ、あゔぁろん...」
「こういう時は、年長者の妾に身を委ねたらいいわい。じゃから目いっぱい泣きな」
「年長者過ぎるけどね...」
カラは苦笑いながらにボソッと呟く。すると、何かソワソワし始めるアンデス。そんなアンデスが気になり、クゥロは質問をする。
「アンデスさん。何をソワソワしてるのですか?」
「え?あ、あぁ...。分かりやすかったか?」
「はい。外を気にしているようだったので...」
クゥロに勘づかれ、乾いた笑いを発してしまうアンデス。そんなアンデスの表情は、切羽詰まったような感じに見える。
「えっと...イファ。ごめんだけど、この話はカラ達にだけしたいんだ。すまないが少し外に出るか、家でゆっくりしててくれないか?」
「はい!分かりました!アンデス様がそうして欲しいなら今すぐに!!」
そう言うと、イファは一瞬でこの部屋から出ていく。
「...えっと、実はエルドラドの地下には冥界を隔てる門があってね...。その門のおかげで割と平和に過ごせていたんだけど、2000年位前から門が緩くなったのか、突然襲われるようになったんだ」
「そ、そんな事が...」
「という事は、妾がここに来た時に国中が大騒ぎじゃったのは、それが原因という訳なのか」
アヴァロンがそう言うと、カラ達はエリュシオンで話していた事を思い出し、納得する。
「今も時折襲われるんだけど、不思議なのが、何故か襲撃してもあまり攻め込まないんだ」
「え?」
「攻め込まない...。アヴァロン」
クゥロから呼ばれ、アヴァロンはクゥロの方を振り向く。
「アヴァロンが体験したのは、どれほどの被害の奴だったの?」
「うーむ...。確か国中火災が起きておったし、そこら中に敵がおったが、数時間経った後に其奴らは、その冥界とやらに戻っておったぞ」
「...な、何で??」
「んー...」
カラ達は、何故、冥界の人がそんな事をするのか全くもって理解出来ず、疑問しか湧いて来ない様子。
「恐らく、また冥界の民が襲ってくるはずだから、その前に冥界へ行き、何故そのようなことをするのか冥王に聞きに行きたいんだ」
「...どうします?」
アンデスのその言葉を聞き、リノアはカラ達の様子を伺っている。
〝シフィはいつも通りです...!〟
「僕はアンデスを助けたいよ!」
「妾はどっちでも良いぞ」
シフィ、ルヴラ、アヴァロンの3人はそう答える。次にクゥロの方を向くと、真剣な表情で
「正直言うと、私たちに助ける義理はない」
と、冷徹に答える。そんなクゥロの思いもしなかった答えにカラ達は驚愕する。
ク、クゥロさん...冷徹ですね...。と言うより、大人だなぁ...
「仕方ないよ。私は本来こう言う人間だから」
うぇ...。大人びすぎてる...。本当に9歳?
「うん。9歳だよ」
うわ!そうやって微笑む!ズルいなぁ...この子
「ふふ。文字さんはそういうのが好きなの分かってるよ」




