エルドラドの長
令和に入ってから温度調節が下手になっているような気がする。そんなことを思いながらここ数年をすごしております。
「なるほど...。でも、この事実ってアヴァロンたちも知らなかったんだよね?」
「あぁ、そうじゃな」
アヴァロンはそう言い、頷く。その後すぐにクゥロ達の方を見ると、クゥロ達も自分達も同じだと言うように頷く。
「って事は、世界の主って、古文書とか聖書とかに載ってないって事なんだよね...?」
「妾が知らぬということはそういうことじゃ」
そうだ。7万年以上生きて、かなりの国を旅しているアヴァロンが知らないと言うことは、どこにも載っていないという訳だ。
〝そういえばアヴァロンさんって、ほぼ全ての国に行ったって言ってましたけど、どうしてほぼなんですか?〟
「お、シフィよく気づいたのぅ。そこに気づけるのは中々鋭いぞ」
アヴァロンはシフィの事をハグしてそのまま撫でる。アヴァロンも嬉しそうだし、シフィも嬉しそうだ。
「妾がほぼ全て国に行った、と言っておるのは、もしかしたら旅をしておる間に、新たな国が出来てたりしたらアレじゃからな。妾は嘘はつきたくないんじゃ」
そんな話を聞き、カラ達は、はえ〜...と感嘆の声を漏らす。
なるほど...。アヴァロンは少し面倒くさがりで、少し戦闘狂な所があるだけで、嘘はつきたくない真面目な人なんだなぁ...。
カラは心の中でアヴァロンを尊敬する。この人の王としての器を。
「あちこち歩き回ったが、到達できなかった国もあれば、新しくできた国もある。妾はこの旅で、今存在しておる全ての国を旅するのが目標であり、夢なんじゃよ」
そう微笑むが、そんなアヴァロンの表情は、どこか懐かしんでいるような、少し物憂げ表情だった。
「それなら、わたくし達でその夢を叶えてあげないとですね!」
いつの間にかイファとの話が終わっていたのか、リノアもカラ達の話に入ってくる。
「あぁ」
「そうだね」
〝はい!!〟
リノアの言葉に皆、笑顔で頷く。そんな光景を見てアヴァロンは笑みが零れ、嬉しさが滲み出ている様子。
「妾は...。馬鹿みたいに優しい仲間に巡り会えたのぅ」
少し呆れながらも、しかし、その声色は嬉しそうな、そんな小言をポツリ呟くアヴァロン。
エルドラドを見回り始めて、30分以上が経過した時。クゥロはイファに質問する。
「そういえばアンデスさんって今会えたりするの?」
「え?アンデス様ですか?うーん...どうだろ...」
イファがエルドラドの案内をしてくれるとはいえ、イファはエルドラドの中では一般人。アンデスの行方など知りもしない。その為
「じゃあ、今からアンデス様の家に行きますか!」
と、半分ヤケクソの勢いでイファは提案する。アポ無し家凸だ。しかし、確認する方法はこれ以外無い為、カラ達は仕方なくイファの言う通り、アンデスの家へと行くことに。
「アンデス様ってお優しいのですか?」
「うん!超絶優しいよ!いつもイファ達の事助けてくれるから!」
「へぇ〜!」
やはり国のトップに立つ者は、民から慕われる存在なんだなぁ...。とカラはこれまでの国を思い出しながら納得する。
「例えば、イファが道端でお金をなくして、さまよっていたとしましょう」
イファの例え話が急に始まる。そんなイファにカラ達はすぐさま対応し、頭の中で想像する。
「その時のイファはなにか買おうとしていたため、ひじょーに困っています」
うんうん。とカラ達は頷き、イファの話を静かに聞く。
「すると、後ろからアンデス様がやってきます。そして、イファがお金が無いと困ってることを理解したアンデス様はお金を生成します」
うんうん。と頷いた後、ん?イファの言葉に疑問を持つカラ達。
「お金を生成...?」
「えっと...アンデスさんって、魔法を使ってる訳では無いんだよね...?」
「え?...はい。魔法は使えないと言ってましたよ...?」
クゥロの質問にイファがそう答えると疑問がさらに増える。
〝え、もしかしてですけど、魔道具でお金を生成出来たりするんですか?〟
「え、はい...そうです」
シフィの質問により、答えが分かった。ダメだろそんなの。お金は確かに作るけど、それを個人が作れちゃったらダメだろう。カラ達はそんなことを思う。
「ですが、作れるのはアンデス様だけなんですよ!!エルドラドの人全員が作れるわけないじゃないですか!」
それはそうだろうよ、そんなことになったら国が崩壊するわ。頭の中で困惑しながらツッコむカラ。
「そんなこと出来るなんて!!魔道具って凄いね!!」
しかし、ルヴラは喜んでいた。カラ達とは違い、喜んでいた。ルヴラはやはり魔道具オタクだったようだ。その姿を見て、少し呆れるカラとクゥロ。
「まぁでも、お金を生成出来るけど無闇矢鱈に生成しない辺り、ちゃんとした人なんだろうなって言うのは分かる」
「うんそうだね。そんな事したらインフレが進みすぎて、色々とおかしくなっちゃうからね...」
「いやぁ、異国の姫と転生者からそう評価して貰えて嬉しい限りだよ」
アンデスの事をそうやって評価すると、後ろからそんな声が聞こえる。唐突に聞こえた声に驚き、カラ達は後ろを振り向く。
「あ、アンデス様!!」
「え!?」
そこには、ページュ色の髪の少女が照れながら微笑んでいた。カラ達は思考が停止していた。この少女が、エルドラドの誰よりも長生きで、エルドラドを救ったと言われている英雄なのか?と疑惑が入ったのだ。
「ア、アンデス...?」
「ん?あ、もしかして俺の姿を見て本当にアンデスなのかって疑ってるのかな...?」
「そうなんですか?」
イファは今の不思議な状況をアンデスに聞く。すると、アンデスはコクリと頷く。
「この国の事実上の長でアンデスって名前なら、大体の人は若いかっこいい男か、イケオジを想像するだろうね...。でも、生憎俺は女の子のような見た目をしてるし、それにこんな身長で声も男にしては高いからね」
「そういうものなのですね...」
「え!?女の子のような見た目...って」
アンデスの言葉を聞き、更に驚くカラ達。つまりその言葉が表す意味は
「うん。皆の想像通り俺は男だよ」
カラ達は再び思考が停止する。こんなに可愛い男の長がいてたまるか!そんなことを叫びたくなるほどに。
「そ、そんな...」
「あはは...。なんか、ごめんね?」
ルヴラが大きなショックを受けているようだ。そんなルヴラに謝罪するアンデスと慰めるカラ。すると唐突にガバッと立ち上がる。
「これが男の娘か!!!」
「えっ」
「へっ...?」
「はい...?」
ルヴラの発言にアンデスを含むカラ達は、またも思考が停止する。
「この世界には、女の子のように可愛い男の子がいると、とある小説で僕は呼んだことあるんだ!」
俺の世界だけじゃなくてこの世界にもあるのかよその類の小説。カラはその事実にツッコミを入れる。
「僕はいつかそういう子が見れたらいいなと思っていたけど、まさかここで出会うとは!!」
「うぇ!?」
いきなりルヴラに両肩を掴まれたアンデスは、情けない声が漏れ出てしまう。そんな声を聞き、いや普通に女の子じゃん...。とツッコミを入れるカラ達。
「ありがとう!エルドラド!ありがとう!アンデス!!」
「ちょちょちょ!?い、いきなり抱きつかないで!?と言うか助けて!?」
ルヴラに抱きつかれた状態のアンデスは、片腕をのばし、カラ達に助けを求める。
「ごめんアンデスさん。こうなるとルヴラは抑えられないんだ...」
「えっと...アンデスさん。ルヴラの抱きつきが終わるまでそのままです...」
カラとリノアは、申し訳ないと頭を下げながらそう言う。
「えへへ...えへえへ....」
「嘘でしょ!?」
「そうして、アンデスは一生ルヴラに抱きつかれ、このまま死ぬまでルヴラと一緒の生活をするのだった。めでたしめでたし」
「めでたくない!」
「ところで、アンデスさんって何歳なのですか?」
アンデスの家に向かっている最中、リノアがアンデスにそう質問をする。
「ん?俺の歳?5万歳は超えてると思う。でも、細かな年齢は覚えてないや...」
「5万...!?」
〝意外とアヴァロンさんと歳が近いですね!〟
「そうじゃな」
シフィはキラキラした目でアヴァロンにそう言うと、アヴァロンは愛でるようにシフィの頭を撫でる。
「そういえばアンデスさんって本当にお金を作ることが出来るのですか!?」
ルヴラは興奮したような様子でアンデスに質問をする。まるで餌を待つ犬のような様子のルヴラを静かに眺めるカラ達。
「うんそうだよ。この国のお金は全て俺が作ってる。でも、私利私欲の為に作ってる訳では無いから安心して。と言うより俺の意思じゃ無理なんだけどね...」
「わぁ〜...!!」
イファが嘘や誇張ではなく本当の話を言っていた事が分かり、ルヴラは先程より目を輝かせる。
「え?待って下さい。今、私利私欲じゃ無理って言ってませんでした?」
「え...?」
リノアの発言を聞き、カラ達はアンデスの方を向く。急に皆に見つめられたアンデスは驚愕するも、その後、落ち着いて話し始める。
「俺が作った魔道具の1つに、お金を作ることが出来る魔道具があって、事実上無限にお金を作れて、所有権は確かに俺にあるけど、人の手に渡って悪さされないようにと、その魔道具の操作権を完全に無くしたんだよ」
「な、無くした...?」
「つまり、その魔道具は誰も操作出来ないということですか?」
「うん。そうだね」
クゥロの質問にアンデスはそう頷く。その頷きにクゥロ、アヴァロン、カラ以外の皆は驚く。
「という事はその魔道具は、自動操作状態とかになってるってことか」
「察しが早いね、そう。その魔道具は自動操作によってエルドラドの貨幣、ウーカを生産してる」
「ウーカ...。やっぱりエルドラド独自の貨幣だね」
そんな話をしていると、アンデスは壁の前で急に止まり始める。
「どうしたのですか?アンデスさん」
「この先が俺の家なんだよね」
そう言い、アンデスがセンサーのようなものに手をかざすと、目の前の壁が振動し始め、横にスライドしていく。
「え...」
「か、壁が!!!」
「凄〜!!」
その光景を見たカラ達は、驚きの声が上がる。魔道具も極めたらここまでになるのか...。そんなことを思いながらカラは動く壁を見つめる。
そうして、壁が完全に横に移動し終わると、そこは洞窟になっていた。すると、アンデスはそそくさと先に進んでいく。
「僕達も着いていこーう!」
ルヴラは目を輝かせながらアンデスの後を着いていく。カラ達はそんなルヴラに思わず笑ってしまう。
「そういえば、なんであの見た目で男ならどうして俺を男にしなかったんだ?」
え?それ文字である私に言う?
「いや俺の願いはJKかイケメンなんだが!?」
TSロリでしか得られない栄養があるからそうしたの!
「なんでだよ!」
別にいいだろ!結局成長したらJKみたいになるだろ!
「確かに...!!」
【こうして、文字と主人公の喧嘩は平和に終わった】




