贖罪
これが今年最後の投稿になりそうです...!!来年からはエルドラド編だぁああああ!!!
次の日。
「ふあぁ...よく寝た」
「あ、から。おはよー」
カラは昨日の疲れからか、夕飯を食べ終わったら即座に睡眠し、誰よりも早く起きてきた。と思っていたら、珍しくメタトロンがパッチリと起きているところに遭遇した。
「お、メタトロン!早起きしたの?」
「んー。からも?」
メタトロンは暖かい日差しの下でぽわぽわと三角座りをしながら質問する。
「うんそうだよ!昨日は疲れてて、夕飯食べ終わった後に寝たから、早起きできた」
「から、げんきになった?」
どうやらメタトロンは、カラのことを心配してくれたようで、そんな事を聞く。意外な反応にびっくりしたカラは、メタトロンの方を見て、数秒だけ動きが止まる。メタトロンは不思議そうにちょっとだけ首を傾げる。
「あ、う、うん!疲れ吹き飛んだよ!」
「ならよかった」
メタトロンは少し口角を上げると、そそくさと自分の事をする。そんなメタトロンに心がぽかぽかしたカラは、ふふっと微笑み、カラも自身の事をする。
「ふぃー...。近くに川があってよかったー...。しかも綺麗だし。と言うか、ここら辺、建物も何も無いただだだっ広い平原で良いな〜...」
顔と口を洗い終わったカラは、辺りを見渡し、何もなさに感激し、地面に寝っ転がる。
「元いた世界じゃ建物だらけだったから、田舎のおばあちゃんちに来たみたいで最高だ」
そういい、カラは目の前の綺麗な青空を眺める。今まで、落ち着いて空を見ることなどしたことが無かった為、無言で空を見つめるカラ。すると
「から。ここでなにしてるの?」
とメタトロンがカラの視界にひょっこりと入る。それに気づいたカラは、起き上がる事に。
「ここで空を眺めてた」
優しく微笑みながらメタトロンの質問に答えるカラ。カラの言葉を聞き、メタトロンも空を眺める。
「そら、きれい?」
「うん。綺麗だよ」
暖かい風がカラ達を包むように戦ぐと、メタトロンもカラと同じく優しく微笑んで
「なら、めたもきれいだとおもう」
と空を見つめながら言う。そんなメタトロンの言葉に思わず笑ってしまうカラ。何故笑っているのか分からないメタトロン。
「いや、ごめんごめん。それでいいよメタトロンは。そのまんまが良い」
カラの言葉がどういう意味なのか分からないメタトロン。しかし、そのままがいいと言われたので、メタトロンはカラに何も聞かずに空を眺める。
「よし、もうそろそろみんなを起こしに行こうか」
「うん」
そうして2人は立ち上がり、リノア達を起こしにテントへと帰る事に。その道中、メタトロンはカラにこんなことを質問する。
「からは、どうしてまおーをたおすの?」
突拍子もなくそんな質問をされたカラは少々驚くも、すぐさま落ち着き、考える。
「ん〜...。魔王によって脅かされる人々の事を思ったら、居ても立ってもいられなくてね」
過去を振り返るような、そんな複雑な表情をしながらメタトロンの質問に答えるカラ。
「どうしてにんげんをまもりたくなるの?」
再びメタトロンから質問が来る。そんな質問にカラは表情が変わらないままで話し始める。
「どうしてか...。この気持ちになり始めたのは、ある種の罪滅ぼし的な感じの奴なんだと思う」
「つみほろぼし?」
「...うん。カラがこの世界に来る5年前の話になるんだけど────」
────俺には、昔からの親友の巧がいて、いつもそいつとくだらない事ばかりしてきたんだ。子供のようなそんな事ばかりを。でも巧は誰よりも優しくて、人一倍正義感が強い。まるで物語に出てくる英雄の様な、そんな奴だったんだ。そんなある日。巧が学校でいじめっ子を止めてるのを見たんだ。
「おい!────だからって手─────!!」
「はぁ?──────!?」
俺はたまたま通りかかってその光景が見えたから、影でこっそり見てるしか無かったんだけど、遠かったから断片的にしか聞こえなくて。でも、そのいじめっ子はその場を去っていったんだ。そして巧はいじめられていた子に優しく頭を撫でていたんだ。俺は、そんな巧の姿を見て感心したんだ。やっぱりすげぇなって。
でも次の日。俺が学校に来ると、巧の机が落書きだらけで色々詰め込まれてた。俺は一瞬で察したよ。いじめのターゲットが変わったんだ...って。あの時は逃げたわけじゃなかったって。そうして、その日から俺の親友に対するいじめが始まったんだ。俺も助けようとしたんだ、でも。
「...良いよ花楽。俺の事庇ったら、今度はお前の所に行っちまう。そんな風になったら、辛いのはお前だけじゃないんだ。だからさ...俺がこのままいじめられても黙って見ててくれ」
そう言って、身体中痣だらけの巧は、無理やり作ったような笑いをしながら助けることを止めたんだ。俺もその時なにか言おうとしたんだ。俺だって親友のお前が虐められて悲しいって...。でも言えなかったんだ。事実、当時の自分はとてつもなく弱かったから...。いじめという存在に恐れていたんだ。
「...じゃあな。花楽」
「...うん」
そうして、次の日もまた次の日も。巧は段々とエスカレートしていくいじめを毎日のように受け続けた。そんなある日。ゴミを捨てに行く最中、親友が虐められている所を見てしまったんだ。咄嗟に隠れたけど、ずっと集団で殴られ続ける親友を見ていられなくて、止めに行こうと飛び出たんだけど、思わず転けてしまったんだ。
「...?なんだ?」
「なんだこの陰キャ...」
見上げるといじめっ子達の不思議に思いつつも、少し苛立っているような怖い表情が見える。
「え...。えと...」
「こいつ、お前の友達か?」
リーダー格っぽいいじめっ子は巧に聞いたんだ。でも、俺はビビりすぎてしまって...。何も喋れなかったんだ。すると巧は突然
「んなわけねぇだろ...。こんなビビり俺の友達でも何でもねぇよ」
と、俺を突き放すような、そんな言葉を吐いたんだ。でも冗談だと、その場ごまかしだとすぐに察した。
「へぇ...じゃあ、お前。こいつ殴ってみろよ」
一瞬心臓が止まった。聞き間違いか...?いや、そんな訳が無い...。しかし俺がそう固まっていると、そのいじめっ子は笑いながら
「早くしろよ。お前こいつの仲間じゃないんだろ?」
と、俺に告げる。俺の心臓の鼓動が早まっていく。親友は地面にぺたりと座りながら、信じられないという表情でいじめっ子を見つめる。
「え...いや、人とか殴ったことないし、それに...」
「いいからいいから。そういうの。ね?ほら、ここに這いつくばった雑魚がいるから、ただこいつを殴ればいいだけだよ」
笑顔でその人は言う。そんな表情に俺は恐怖してしまった。これがいじめっ子なのかと。しかし、その奥にいる親友の顔は覚悟が決まったような顔をしている。俺は巧を殴りたくないと言う気持ちと、殴らなきゃおそらく次のターゲットになってしまうという恐怖に挟まれ、気絶しそうになってしまう。
「蹴れ...」
「え」
「いいから蹴れ!!罪悪感とか考えるな!お前は蹴れ!!」
大声で親友は言う。さらに追い込まれて俺は、何も考えずに巧を蹴った。すると、当たり所が悪かったのか、その蹴りで巧は失神してしまったんだ。
「お...っははは!お前の蹴りでこいつ失神したぞ!お前やるなぁ!」
や、やってしまった...。そんな罪悪感でいっぱいになり、手の震えが止まらない。
「いいか?お前はもう俺たちと共犯だ。いいな?お前はもう先生や親にチクれないんだよ」
そう肩を組みながらそいつは言ってくる。あまりの罪悪感に俺は涙が止まらなくて...。でもそいつらはこの状況が面白いのか笑っている。
「じゃあな!面白いの見せてもらったわ!」
そう言ってそいつらはその場から去っていく。俺はその姿を眺めることも出来ない。その場で崩れ落ちて泣くことしか出来ない。そんな罪悪感から巧には話しかけることが出来ずに、二週間が経って巧は学校に来なくなる。そしてそれから更に二週間後。
「あいつ、いじめられて来なくなったな!スッキリしたわ〜...」
「虐められて引きこもりになっちゃったんでしょ」
「こわいー!ひーんっ!て言いながらガクガクして家にいるんだろうな」
「はっは!秀逸!」
俺の親友をいじめていた3人は、机を囲ってボソボソ言いながら笑っている。でも俺はあの3人が怖くて机に顔を伏せている。そんな状況に耐えられなくて、俺は先生に伝えて早退をする事にした。
「はぁ...はぁ...巧ッ!」
俺は急いで巧の家に向かう。するとその道中でスマホのバイブレーションが鳴り、スマホを見る。すると、通知には巧からのメールがあった。
「巧...」
巧からのメールの文には「蹴らせてごめん」の一言だけで、他に何も無かった。俺は即座に、こっちこそ何も出来なくてごめんと返信する。俺はあの時の情景を思い出し、再び罪悪感に苛まれる。
「...っ」
涙が零れそうになるが、即座に巧からのメールが返ってくる。
「あの時のことを思い出しても、絶対にお前のせいじゃないって俺はお前に言い続けるから、だからそう自分を責めないでくれ。俺の唯一の親友だから」
すると、遠くから巧の声が聞こえ始めて、俺はその声の方を向いたんだ。そしたら巧が自分の家から俺の方に走ってきたのが見えたんだ。俺は嬉しくて涙が止まらなくて...。それで、そのまま巧の方に向かおうとしたその瞬間だった。巧は車に轢かれて思いっきり壁に打ち当たってしまったんだ。
「...え」
突然の出来事に俺は何も考えられなくなってしまって、膝から崩れ落ちて涙が溢れて止まらなくなった。
「嘘...」
ゆっくりとゆっくりとこれが現実だと頭で理解して、俺は地面を殴りながら泣き叫んだ。俺が早退してなかったら、俺があの時巧を助けてやれたら、俺が巧と知り合っていなかったら。そんな考えが頭の中を巡って、いつの間にか俺はその場で気絶していた。
「花楽...」
目が覚めると、そこは病院で俺の傍には心配でしょうがないお母さんがいた。
「ママ...」
瞬間。あの光景を思い出す。そして再び涙が溢れ出る。
「花楽...!?どうしたの?」
「巧が...俺の唯一の親友が死んだんだ...」
涙を静かに流しながらお母さんに告げると、お母さんはただ無言で抱き締めてくれた。そのせいか更に喪失感が強くなる。そして、静かな病室に俺の号哭が響く。親友が目の前で死んだ。そんな事実を受け入れられずにただ俺は泣き叫ぶ事しかできなかった。
「────そうして、俺は何も償えずに親友を喪ってしまったんだ...」
「そのつみほろぼしが、ひとだすけ?」
「...まぁ、これが罪滅ぼしになるかは分からないけど、俺の親友に対する精一杯の弔いかな...」
複雑な表情でカラはメタトロンに言う。メタトロンはカラの目を真っ直ぐ見つめる。
「親友が死んでから5年たってなんとか普通になれたけど、でも未だに思い出すんだ。あの時の情景を」
メタトロンは無言でカラのことを撫でる。
「え!?な、何どうしたの?」
「んーん...めたがこーしたいの」
メタトロンの突然の行動に驚くも、メタトロンは優しく微笑みながらそう言う。
「...なら、今はメタトロンに撫でられとこうかな」
カラはメタトロンなりの慰めだと理解し、メタトロンの撫でを受け入れる。
なぁ
「ん?どうした?」
お前の過去、割と重いな
「...まぁ確かにな」
でも頑張ったんだな
「あぁ...」
偉いな。お前
「...なんだよ全く。文字の癖に」




