強欲な
あと五日でクリスマス...ですね...。予定などは特にないです。はい。
「七大悪魔...」
直近で聞いた名称の為、思い出すのは容易かった。ルシファーに並ぶ七人の大悪魔。その内の一人が、エリュシオンから離れて早々にカラ達に襲ってきたのだ。
「おや...どうかしましたか?そこの隻眼のお嬢さん。先程より殺気立っておりますが...」
マモンは不思議がる。いや、この表情は煽っているの方が正しいのか。そんなマモンの言葉にアヴァロンは乗り、本気でマモンを斬ろうと、一瞬でマモンに近づく。しかし、いつの間にかマモンはアヴァロンの後ろに回っていた。アヴァロンは地面に対し斬りかかろうとしている。
「なっ!?」
「遅いですねぇ...。そんな速さでは私に到底追いつかない」
再び、マモンは目の前から消える、と言うよりマモンがいた場所には、何故かリノアがいた。
「っ!?一体どこに」
「後ろですよ?転生者さん」
肩にポンと手を置かれ、耳元でそう囁かれ、ゾッとするカラ。その後すぐに振り解き、マモンの方を向く。
「これは...マモンの能力か」
「そうです私の能力。入れ替え、これ程便利な能力も無いでしょう...。知っていますか?どんなに複雑な能力よりもデメリットのないシンプルな能力の方が意外と強かったりするんですよ?だから私は」
すると、またも消える。カラ達はどこに消えたか辺りを探す。しかし、どこにもいない。
「序列が四位なのです」
「グッ!?」
現れたと思ったら地面からで、意表を突かれたアヴァロンは攻撃を食らう羽目に。
「私はどの物体にも入れ替えが可能。その為、どれ程貴女達が警戒していようが対策は不可能です」
愉しげにその悪魔は嗤う。しかし事実として、マモンの能力の対策はほぼ不可能。攻撃をしようとすれば、入れ替えられて攻撃出来なくなり、しかし攻撃をしなければ、一方的に蹂躙されるのみ。
「悩んでいますねぇ...。良いですよォ?貴女達凡人が悩んでいる姿は、無様で滑稽で狂おしい程に可愛い...」
恍惚な表情を浮かべながら、悶え苦しむ悪魔。悪魔はどれも変態しかおらんのか。そう思いながら必死に考えるアヴァロン。
「なら、カラが相手だ」
そう言い、カラは最初から前に見せた半電子モードで戦う。それを見たマモンは目を輝かせる。
「これは素晴らしい...!!これが転生者の他とは違う特別な能力!!」
「きゅ、急に喜び始めたよ...!?あの骸骨!」
カラの後ろにいるルヴラ達はマモンの唐突な変わりようにドン引きする。
「おっと、これはこれは、見苦しいものを見せてしまい...。失礼致しました」
「彼奴、おそらく転生者の能力に興味が湧いて勝手に妾達の前に現れただけの奴じゃろ」
しっかり90度で謝るマモンを見、アヴァロンは呆れながら呟く。
「その通りです。私は珍しい能力が大好きなしがないただの研究者です...。ですので、転生者さん。抵抗せず私の研究所に来ていただきませんか...?」
「そんなん言われてはいそうですかとは言わねぇでしょうが!!」
「ウグッ!?」
カラはマモンの首に蹴りを入れる。それがクリーンヒットしたのか、マモンは横へ大きく吹き飛ぶ。
「流石の七大悪魔でもこの状態では認識できないか」
「グッ...ガ...ァっ...。素晴らしい、益々研究したい...その能力を!!」
マモンがいた場所にはアヴァロンがいる。つまり入れ替わりが発生したということ、という事は
「フンッ!!」
「グっ...ぶねぇ...。反応が間に合ってよかった」
マモンはカラに回し蹴りをしようとしたが、カラの反応速度が上回る。カラは冷や汗を垂らしながらマモンの攻撃を抑える。
「反応速度が早すぎる...最高だ!!」
再び大喜びをするマモン。そんなマモンに
「何だこの悪魔...気持ち悪すぎるよ」
と、思わず本音が口に出てしまうカラ。
「大丈夫ですよ。長いこと私の研究所にいますので、いずれ慣れます」
そんなカラに気味の悪い笑顔でそう答えるマモン。
「その言い草じゃ、カラがそっちに行く見てぇだなッ!!」
マモンの言った言葉に苛立ちを覚え、その苛立ちを拳に乗せながら瞬間移動し、マモンの腹部目掛けて思い切り殴るカラ。
「...グッ!?」
速すぎる...ッ!!追いつかない!入れ替えの能力でどうこうできる速さじゃない!!
「さっきまでの余裕ぶった表情を歪めるために、本気の一発入れたが...。どうだ?変態研究者、これで少しは本気で戦うようになるか?」
「...研究対象だからと、なるべく怪我しないようにと気をつけていましたが。本気で抵抗するのなら、私もそれ相応の武力で貴女を連れて行きます」
そう言い、マモンは徐ろに宙へと浮かび上がり、自身の左目にあるモノクルを外す。すると、マモンの左目に突如、青白い炎が纏い始める。
「...な、何あれ!?」
「この不自然な地鳴り...。もしかしたらマズイかも...」
後ろで見ていたリノア達は、突然の地面の揺れと地鳴りに動揺する。
「貴女が私を本気にさせたんですよ?転生者さん。貴女には責任を取ってもらわなければ」
とてつもなく禍々しいオーラ。そして、主に匹敵するであろう威圧感。今敵対しているのが七大悪魔なのだと皆、その場で肌で感じる。
「お待たせしました」
服装は先程と変わらないが、左目に蒼炎。後ろに骨の羽と骨の尾が生えていたりと、所々に変化があり、それを見たクゥロは
「悪魔とは良く言ったものだね...。見た目、オーラ、圧。どれをとっても悪魔だと言わざるを得ない程に澱んでいる」
と、警戒しつつも本気のマモンを見て思ったことを話す。
「改めて皆さんに自己紹介をしましょう...」
そう言い、マモンは宙に浮いた状態で丁寧にお辞儀する。
「私はマモン。七大悪魔にして『強欲』を授けられ、第四位に位置するただのしがない悪魔です。以後お見知り置きを」
自己紹介が終わったと同時にカラの顔のすぐ近くに骨の手が被さり、そのままの勢いでマモンはカラの頭を地面に叩きつける。
「ガッ...!?」
「カラ!!」
「彼奴の能力は入れ替えじゃなかったのか!?」
アヴァロンはマモンの能力に疑問を持つ。入れ替えならば何も無いところにマモンが移動するわけが無いと。するとマモンはアヴァロンの方を向き始める。
「最初に貴女のような疑問が来ると思っていました。ありがたい...。では説明させて頂きます」
少し言い方に癪があったのが気になったアヴァロンだが、そんなのは無視しマモンの説明を聞く。
「私の能力入れ替え。これはルシファーや他の七大悪魔と一緒の生まれながらの能力なんです。その中でも私の能力は物質と物質を入れ替える能力。しかし、この能力は強すぎるあまり、通常時だと悪魔種である私ですら半分の力でしか扱えないのです」
空中にいるマモンは、身振り手振りで説明する。
「しかし、今のように本気を出して制限を無くすと、入れ替えの対象に限りなど無し。そこに生命が無機物かなんて規則は無く、どんな物質であろうと入れ替えることが出来るのです。そしてそれはつまり、空気中にある酸素などの原子ですら入れ替え対象なのです」
「ッ!!!」
「嘘でしょ...!?」
マモンの真の能力を知り、絶望したような表情をするリノア達。
「分かりましたか?これが私の能力、物質の入れ替えです...」
「つまり、どこからマモンが現れるか予測不可能という事か...」
マモンが長々と説明している間に、埋まっていた地面から抜け出し、即座にマモンから離れるカラ。
「...そして私はこの能力を解放したことにより、先程までのフィジカルとは」
話している途中でマモンはまたも消えると、カラの腹部目掛けて拳を当てる。
「アガ...ッ!!」
「比べ物にならない程に変わっているのです」
遠くへ吹き飛ぶカラを眺めながら薄ら笑いで言うマモン。
「は、速すぎる...」
「それに、あの状態でのカラに大ダメージを与えてる。七大悪魔を倒せって簡単に言うけど、こんなのバケモノにも程があるでしょ...」
クゥロは七大悪魔の本気を目の当たりにし、少し絶望する。
「タイマン勝てんのならば、妾とカラ、2対1ならどうじゃ」
そう言い、腰に据えてあった剣を抜き、戦闘態勢へと入るアヴァロン。
「...このままじゃマモンは倒せないか、仕方ない。アヴァロン、カラとアヴァロン。2人でマモンを倒そう」
途中でなんとか耐えたカラは、拳を強く握り締め、本気で命懸けで力を出す。
「とんでもない力だ...。これが転生者君。君の本気か!」
「妾のことは無視かい」
カラの本気に喜んでいると、背後にとんでもない殺気を感じたマモン。ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには鬼神の如き赤黒いオーラで覆いかぶさっているナニカがいた。
「これは...っ」
「やっと妾の方を見たのぅ...。じゃが、今、妾の方を向くのは罠じゃよ」
その言葉を聞き、一瞬で察するマモンは再び後ろを振り向く。しかし、もう遅かった。振り返ると同時に、カラの拳はマモンの顔面へと直撃し、マモンを地面に叩きつけるように殴る。
な...なんだこの一撃の重さは...ッ!!?一撃だけだと言うのに、それだけなのに、何故もう気絶しそうな程に...ッ
マモンは動揺する。本気の時のカラのとてつもない程に重い一撃に。
「もう一撃行くぞ...ッ」
先程の攻撃の後残りで、少し宙に浮いていたマモンの腹に追撃の一撃を放つカラ。
「....ッッグ...ァッ」
二連続のとんでもなく重いパンチ。そんな攻撃に、再び意識を失いかけるマモン。
「この形態には慣れていないんでね...。けど、さっきの一撃で何となく感覚は掴んだ」
カラの目は先程とは違い、次で仕留めると言った狩人のような鋭い目をしている。
「ゴファッ...!!ハァッハァッ...生まれて初めてだ、自分の血を見たのは...ッ」
自身の血を見たことによる動揺からか、乾いた笑いしか出ないマモン。しかし立ち上がる。
「しかし、実力としては私と転生者に差は無い...。ならば、どちらが先に攻撃を当てるかだ...ッ!!」
再び入れ替えをするマモン。しかし今度は、入れ替えをしまくることにより、どこに来るかを予想させないようにしているようだ。
「こ、これは...」
「やはりこれが厄介じゃな...。言わば、この世界のどこにでも瞬間移動できる。と言っているのと変わりないからのぅ」
アヴァロンはマモンの能力の厄介さを感じ、苦い表情をする。
「これならば貴女は攻撃を当てることが出来ず、一方的に貴女を嬲れる!!」
カラはマモンの作戦に動揺する。事実、この状態ではマモンを倒すどころか、攻撃が当たるかも分からないからだ。
「困っていますねぇ...転生者君」
いやぁ、マモンの能力強いねぇ
「そうでしょう!」
実際、お世辞無しで強すぎるかもね...。物体と入れ替えるだなんて、しかもデメリット無しでしょ?
「そうです。と言うより元々デメリットはありましたが、自身を改造し無くしたに近いですかね」
はえー...なるほど。凄いねぇ...。天才研究者だ!
「ふふふ。ここに来ると気分がいいですね」
私が褒め上手だからかな?アハハハ!
「ハハハハ!」




