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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪役筆頭聖女は、異世界から来た極悪聖女からもう逃れられない

作者: レモングラス
掲載日:2023/07/13

ーここに聖女イザベラを、筆頭聖女と認める。


神官の宣誓によって、私は聖女の序列ゲームの勝利を確信し、内心高らかに笑い声を上げた。


ふふふっ。全てお父様の手筈通りね。


筆頭聖女と次席聖女では天と地ほどの差がある。

何故って?

我が国では、筆頭聖女が王妃となる習わしだから。


私の聖なる力は……

あの女と比べると僅かに及ばない程度。

誤差と言っても過言ではないわ。


私の方が華やかで美しく、家の権力だってある。

あんな地味でぱっとしない女より、私の方が王妃に相応しいに決まってるじゃない。

だから、聖女の序列選定の儀の前に、お父様にほんの少し可愛らしいお願いをしただけ。


「では、皆様ご機嫌よう」


私は、並び立つ下位の聖女たちを一瞥すると、慣れ親しんだ神殿を振り返ることもなく立ち去った。


聖なる力を持つ女性は聖女となり、生涯神殿で生活を共にする。

聖女の大多数が我が国で見つかるため、国による体の良い囲い込みだ。

神殿では毎日ひたすら祈りを捧げ、怪我や病気の回復を助けるために力を注ぐ。


「皆様喜びが、私の喜びです」


内心ふざけるなと思っていても、聖女は淑やかな笑みを絶やさず無償で働き続けるよう徹底した教育を施される。


私は無償奉仕なんてまっぴら御免よ。

そもそも、元は裕福な伯爵家の令嬢だった。

流行りのドレスに、甘いお菓子、親の権力を利用して他人を見下し優越感に浸るのも大好き。


そんな私の最終目標はー

大陸一の華やかな都を有する我が国で、最高の地位を手にすることだった。


「筆頭聖女様。お待ち申し上げておりました」

「本日よりお側で仕えさせて頂きます」


王城に用意された豪華な自室に入ると、数名の侍女が一列に並んで頭を下げた。


ふふっ。気持ちがいいわね。


「私はいずれ王妃になるのだから、あなた達もしっかりと仕えて頂戴?」

「貴方達の振る舞いのせいで私の評判が落ちることがあったら、断じて許さないわよ」


ピリッっとした空気を一瞬感じたが、流石に次期王妃付きに配属された者達ね。


「筆頭聖女様のお言葉をしかと心に刻み、誠心誠意お仕えいたします」


侍女長の女性が頭を深く下げたまま、言葉を返した。


あぁ。最高!


「今日はこれから王太子殿下と顔合わせがあるのだったわね」

「王太子殿下の好みに合わせて柔らかで清楚なイメージに仕上げて。完璧な仕事が出来ない者はこの場に不要よ」


あの男の好みは調査済みなの。

私は大輪の薔薇のような艶やかな美しさなのに……正反対だなんて憎らしいわね。

まぁ、直ぐに私の手に落ちるのだから最初位は好みに合わせてあげてもいいわ。


「イザベラ・グランウィルと申します」


そうして顔を合わせた未来の夫は、穏やかで誠実そうな男だった。

ふーん。つまらなそうな男。

まぁ、これなら愛妾を侍らすような心配もないわね。


私はさも緊張しているかのように、少しだけ強張った表情で挨拶をした。


「長らく神殿におりましたので、華やかな王城は戸惑うことも多くて……ですが、殿下の選んでくださった侍女達が皆親切で優秀なので助かっております」


そうして、恥じらいつつも嬉しそうに演技を続けた。


「その……これからは殿下のお側でお力になれることを大変嬉しく思っております。至らぬ身ではありますが、どうぞ末永く宜しくお願いいたします」


「慣れるまでは大変だろうが、困ったことがあればいつでも頼ってくれ」

「妖精のように美しい貴方が王太子妃候補となり、私も嬉しく思っている。私のことはオリバーで良い。イザベラと呼んでも?」


「勿論ですわ、殿……オリバー様?」


王太子妃候補ですって……? 私が筆頭聖女なのだから、実質もう王太子妃、いいえ王妃のようなものじゃない。

内心毒づきながらも、ふふっと可愛らしく王太子の名を呼び微笑んだ。


私は一番が好き。一番じゃない自分なんて許せない。

だから王太子妃教育も完璧に仕上げた。

歴代王太子妃の誰よりも完璧に。


そう。

現王妃よりも。


一度だけ、王妃が私をお茶に誘ってきたわ。

「王太子妃教育で分からないことがあれば、遠慮なく聞いてね」

ですって。

私があんな女に教えを請うとでも本気で思ってるのかしら。


やがて周囲の人間は、口々に素晴らしいと私を褒め称え始めたわ。

だけれど、眼の前の男はいつも同じ笑顔でにこにこと微笑むだけ。


あぁ……本当につまらない。

何か新しいゲームはないかしらと思い始めた頃ー


「異世界より聖女様が……!!」


何ですって!?

冗談じゃないわ。


異世界からの聖女が出現した例は過去にもある。

けれど、前例は300年前の一度のみ。


そして……

聖女としての力よりも、異世界の知識で国に大きく貢献し続けたことが評価され、後に王妃となっている。


まさか……今回も?


「いいえ。そんなの絶対に許さない」

「異世界からの聖女の動向は逐一報告なさい」


私の手の中で、先日あの男から贈られたばかりの私に似合いもしない扇子が、バキっと音を立てた。


ハルカという異世界の聖女は、黒目・黒髪で純真そうな少女だった。

19歳と聞いたけれど、どう見ても14〜15歳ね。

あの男に見惚れて嘘をついたのかしら。


「イザベラ様。ハルカです。宜しくお願いします」


聖女同士の交流という名目で、私とハルカのお茶会が度々設けられた。


ハルカは、いつも聖女に関する話を興味深そうに聞くものの、ガチャっと音を立ててカップを置くなど令嬢としての所作は全く身に付いていない様子だった。


挨拶といい、テーブルマナーといい、全くなってないわね。

まだ子供な上、聖女の力は次席のレイシアにも劣るというし、王妃の資質はないわ。


だけれど油断していつか足元を掬われぬようにと、私はお茶会の度に異世界の少女の悪評を密かに広め始めた。

少しずつ……じわじわと。


王太子婚約の儀まで残り3ヶ月となったある日。


王妃が大規模な茶会を開催した。


私は勿論、ハルカも王妃と一緒のテーブルに招かれていた。

テーブルマナーもまだ禄に出来ないくせに、精々恥をかくといいわ。


久し振りに面白い見世物が始まりそうだと期待していたのに……


ハルカは完璧に挨拶やテーブルマナーを身に付けていた。


どういうことなの!?


「ハルカは努力家でセンスも良いから教え甲斐があったわ。実の娘が居たらこんな風だったのかしら」


王妃がにこやかに話し始めた。


「異世界の知識も大変参考になっているわ」

「今年は冷害が予想されているから、隣国に頭を下げて小麦の融通をお願いしなければと覚悟していたけれど……ハルカのお陰で食糧難に耐えられそうね」


「国の宝である子供達が飢えに苦しむのは耐えられませんから。少しでもお役に立てたのなら光栄です」


「真に王妃に必要なのは、聖女の力ではないの」

「貴方のように、全ての国民を愛し守ることよ」


何を言っているのよ。


「王妃様……」

「実は……先日打診いただいた件ですが、私謹んでお受けしようと思います」


「イザベラ様も身を犠牲にして悪役を買って下さり、私の至らぬ点を示して下さいました。将来、私が王妃として諸外国の王族と対面した際、恥をかかぬようになんて……なんとお優しい方なのかと感動いたしました。イザベラ様の犠牲を無にすることなどできません」


「私が王妃となり、異世界の知識を駆使して国民を守ります。そしてイザベラ様は、王妃の座に囚われることなく秀でた聖女の力を存分に発揮して頂きたいと思います」


「なっ……」


あの王妃が、私に無断で王太子妃の座を挿げ替えようとしていたなんて……!!


しかも、私が異世界の女に協力した流れになっているじゃない!!!


けれど、多くの高位貴族がいるこの場で声高に反論すれば……


私は、悪意を持ってハルカを貶めていたことになり、全ての国民を愛する王妃像にそぐわなくなってしまう。


詰んだ。

この女……! いつから仕組んでいたのよ!!


こうなったら、華やかさはかなり劣るけれど先日打診が来た農業大国の王妃で我慢するしかないわ。


「イザベラ様のように素晴らしく優秀な方を国外へ出すのは国の損失ですから……私の侍女として王宮で仕えて頂いては如何ですか? 王家の皆様が必要な時には、すぐさま聖女の力をお借りできますし」


「そうね。穀物の融通をお願いしなくて良いのなら、筆頭聖女ではなく次席のレイシアを王太子妃として嫁がせましょう」


王太子も何故か全く反論もせず、あっという間に王太子妃挿げ替えが決定した。


◇  ◇  ◇  


ハルカに与えられた豪奢な部屋で、私は侍女のお仕着せを着て頭を下げていた。


今日は王太子の結婚式だ。

ハルカは大陸一美しいドレスに身を包み、うっとりと鏡の中の自分を見つめたあと、くるりと振り返った。


「そういえば……北方の国で発見されたという黒い石だけど、あれは石炭と言って、将来各国が競って手に入れようとする代物なの」 


「国王は高齢らしいのだけど……好き物で、数多の女性を後宮に囲っては酷い扱いをしているそうよ」


「若くて美しい聖女を妾妃として差し出せば、我が国に有利な交渉をしてくれるかもしれないわね」


「全ての国民を愛し守る次期王妃として犠牲を出すのは気が咎めるのだけど……どうしようかしら?」


私は、手元に隠し持っていた小刀を気付かれぬようそっと隠した。

……もしくは既に気付かれていたのかもしれない。


この女に頭を下げる屈辱を味わい続ける位なら、修道院にでも行ったほうが百倍マシだと思ったのよ。


別に、死ぬような大怪我を負わせようとした訳じゃない。


ほんの小さな掠り傷で良いから、一生消えない傷をあの女に残してやりたかったのに。


私の足には……

見えない鎖が繋がれていた……

ダークな終わり方ですみません。


最後までお読み下さり、ありがとうございました!

執筆超初心者ですので、【まだまだだな】【面白かった】など教えて頂けると大変参考になります。

宜しくお願いします!!

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