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亜野まり異世界日記  作者: 越那
4/4

4ページ ギルドと初仕事

どうも越那(こしな)です。最近、海外のコメディードラマにハマってます。こうして前書きを書いているときもずっと見ているんですけど、やっぱりいいですね。今見ているのはシーズン7まであってかなり見ごたえがあっていい感じです。コメディーの中にも人生があって、登場人物それぞれの感情の動きがあって勉強になります。

おっと、また前書きが長くなってますね。自重しないと。

オホン。それでは本編をお楽しみください。

昼寝をしていたはずの私だったが、目が覚めると窓から見える空はもうすっかり陽が落ちて、辺りも随分暗くなっていた。

二時間くらい寝るつもりだったのに、状況的に見てそれより遥かに寝てしまっている。

それにしても、眠っている間に誰かの声が聞こえたような気がするがあれは何だったんだろう...


夢のようなそうでないような不思議な記憶が私の頭のなかで妙に残る。しばらく考えたが答えが出せないので、とりあえずは夢の中の出来事として流すことにした。

それはそうとして、今日はこの後でデミアさんに言われていたギルドに行ってギルド登録をする予定だったのだが、この時間じゃもう閉まっているかもしれない。


まぁ、滞在自体はデミアさんに奢ってもらったこの特別許可証があるからまだ十日間は余裕なんだけど...。


特別許可証の有効期間の十日間も過ぎてしまうと、どうやら私の妄想していたことが現実になるらしい。実際はそこまで酷い扱いは受けないが、身分は落ちるらしい。なので身分が平民や不明の場合は奴隷に落ちることになる。私には馴染みのない制度だが、この世界で奴隷はそう珍しいものでもない。

この世界の奴隷は私が抱くイメージほど悪いものではなく、良い主人に就ければ給料だって貰えるし、福利厚生もあるらしい。


え?なんでこの世界に来て初日なのにそんなに詳しいかって?

もう薄々気付いてるでしょう。そうです。デミアさんです。


宿に向かっているときにデミアさんには色々気になったことを聞いていた。

私の知らないこの世界のタブーがあるかもしれないし、純粋に新しい世界の文化に興味があった。そこで奴隷の話も聞いたのだが、できれば奴隷にはなりたくないのが私の意見だ。

確かにお金が稼げて、生活の水準も悪くないなら奴隷も悪くないのかもしれない。でも私はこの世界でイーフと新しい人生を歩むと約束した。そこでもしイーフがこの世界に来た時に奴隷になった私を見れば、きっと悲しい顔をするだろう。イーフのそんな顔は見たくないし、新しく貰った人生を前よりも充実したものにしたい。そのための第一歩のギルド登録だったのだが。


「まぁ、とりあえず...ご飯たべよっ!」


ギルド云々は今は考えないことにした。

食堂に行くと、お昼の時よりもお客が増えていた。特にお酒を片手に談笑する人で賑わっていた。


「すみませーん。夜ご飯お願いしまーす」


厨房の人に部屋札を見せて料理を注文していると隣の席から声がかけられた。


「よう!マリ。昼ぶりだな」


「デミアさん!?」


「そういえば、あの後ギルドには行ったのか?」


あー、そうだった。それ考えないことにしてたんだった。


「それが寝過ごしちゃって。ギルドってこの時間はもう流石に閉まってますよねぇ」


ギルドと言えばファンタジーもので言う役所のような場所だと弟から聞いたことがある。私の弟はそういった本をよく読んでいて私も何度か借りたことがある。特に冒険者とは切っても切れない関係にあるのがギルドだ。まぁ私はそこのところ無縁な気もするが、身分証としてギルドカードが欲しいので行く予定だったのだが...。


「いやぁ、ギルドならやってるぞ。今から行くなら俺も用があるから一緒に行くか?」


やってるんだぁ、ギルド。


「いいんですか!じゃあご飯食べたら行きたいです」


私は早速運ばれてきた料理を食べ、デミアさんとギルドに向かうことにした。私が食べている間デミアさんはというと、隣の友人に揶揄われていた。


「なんだなんだ~!デミアさんよぉ。こんな時間に可愛い子連れてデートかぁ?」


「おーい、飲み過ぎだぞクレド。悪いけど今日は俺、先に帰るから頑張って帰れよ」


「おい!置いていくのかよ。ひどいぞぉ!なぁ~あ」


ほんと飲み過ぎだこの人...。


「マリ、食べ終わったならそろそろ行くか」


「はい!」


私とデミアさんは、まだ背後でガヤガヤ言っているデミアさんの友人、もといクレドさんを食堂に残してギルドに向かった。

ギルドはそこまで遠くはなく、パトラの切り株から歩いて十分程で着いた。


「マリ、ここが王都のセンターギルドだ」


流石は役所なだけあって立派な建物だ。入り口の扉はいろんな装飾がされていてとても綺麗だ。


「センターギルドってことは他にもギルドがあるんですか?」


「あぁ、王都にはあと二つあるな。西と東の門の近くに一つずつだ」


ウェルト王国では王城がある場所から見て正面に位置するギルドをセンターギルド、その両脇に位置するギルドをギルド支部としている。センターギルドと各ギルド支部の大きな違いは、センターギルドには王城からの依頼が来ることだ。その他にもギルド支部では手に負えない依頼はセンターギルドに流れてくるそうだ。依頼の内容は魔物の討伐や薬草採取、雑用など様々らしい。因みに魔物とは、動物や植物が濃い魔力に長期的に晒されることで生まれる生き物らしい。その中にはかなり強い個体もいるそうで、そういったことで他のギルドでは受けきれない依頼も出てくるらしい。


私は早速デミアさんと受付に向かいギルド登録することにした。


「おう、メネス。今からギルドカードの登録してもらえるか?」


「あら?デミアじゃない。いいけど門番の仕事はいいの?」


「俺じゃねーよ。この()のだよ」


デミアさんがメネスと呼んだその人はとても美人で、大人の余裕を感じさせる佇まいでいつの間にかこちらの様子を窺っていた。


「初めまして、メネスよ。あなたがギルド登録するってことでいいかしら?」


「はい。こちらこそ初めまして、まりです」


「じゃあ早速登録しましょうか。面倒な諸々の書類はこんな時間に女性を外に連れ出したそこの門番にでも書いてもらいなさい」


「おいおい、今は勤務時間外だぞ。まぁいい、書類は書くよ。俺にもマリを紹介した責任がある」


メネスさんは何枚かの書類をデミアさんに押し付けると、なにやらピラミッドを逆さまにしたものが上に乗った機械を私の前に出してきた。


「じゃあマリ、ここに手を置いて。あなたの情報をギルドカードに書き込むから」


私はメネスさんに言われた通り、機械の下のほうにあるプレートに手を置いた。その途端に機械の上に乗ったピラミッドが光って、その形の延長線上にまるでスクリーンに映像を映し出すかのように何もない空間に何かが浮かび上がってきた。


「はーい、もういいわよ。これがあなたのステータスね。確認してちょうだい」


「ステータス?それってスキルとかですか?」


「もしかして自分のステータスを見るの初めて?珍しい娘ね。普通なら五才の時に教会で確認するんだけ...ど、マリ...あなた転生者なの!?」


「いや違いますけど...多分、()()じゃなくて()()です」


「転移ですって?」


私は死んだのではなく死ぬ前にイーフが作った亜空間で保護されたので転生ではない。イーフも私をこの世界に送る際、"転移"と言っていたので私はそういうカテゴリなら"転移者"になるだろう。


というかどうしてメネスさんは私が転生者だと思ったんだろう?


私は言われた通り自分のステータスを確認した。


<ステータス>


名前:マリ


年齢:成人


スキル:友の祝福


称号:来訪者(らいほうしゃ)


名前は"マリ"になっている。まあ、間違いではないのでスルー。年齢は"成人"とだけ書いてある。そしてスキルだ。そんなの私にはないと思っていたけど、一つだけスキルの欄に"友の祝福"というのが書いてあった。


"友の祝福"ってこれ、絶対イーフがくれたヤツじゃん。てかあの子、そんなことまで出来るんだ。すごい。


そして、おそらくメネスさんが私を転生者だと思ったのはこの"称号"というのが原因だろう。


「もしかしてこの"来訪者"ってやつですかね?えへへ」


"来訪者"。確かに...うん。間違いじゃない。間違いじゃないけど。


「ねぇマリ。あなたよく解ってないみたいだから言うけど、転生者と転移者って全然違うのよ?」


「えっ!?もしかして...転移者って転生者よりスキルとかで能力的に劣ってるから見つけ次第奴隷落ちとかですか」


かなり焦った私を見て、さっきまで真面目な顔をしていたメネスさんが吹き出すように笑った。


「あははは!違うわよ、おかしな娘ね。いい?転生者は数は少ないけどこの国にも何人かいるわ。確かに転生者はこの世界の人よりも優れた能力を持った人が多くて、英雄なんて呼ばれてる人もいるわ」


英雄か。それはまた大した肩書きだな。


「でもね、転移者は違うのよ。転移者は珍しいなんてものじゃないわ。そもそもこの世界にはいないのよ、転移者が」


「いないって、でも私確かにそう言われて」


「言われたって誰に?」


「この世界に来るときに"転移"で私を送ってくれた子です」


イーフは自分のことを観測者と言っていた。観測者が何者なのか詳しいことは分からないが、ここでイーフの名前を出してもきっと通じないので一応伏せておくことにした。


「"その子"が何者なのかはあなたにも色々あるだろうし、詮索はしないけど、この世界の常識ではかなり(まれ)なケースよ」


「そうなんですか。でも稀なだけで犯罪とかになる訳じゃないんですよね?」


「そうね。特にお(とが)めはないと思うけど、あまり他人に知られるのはよくないかも知れないわ。とりあえずギルドカードはこの情報で登録するけど、ステータスはあまり他人に見られないようにしなさい」


「そうします。なんか色々面倒くさくなりそうなので」


ギルドカードは無事作ることができ、メネスさんにお礼を言って私とデミアさんはセンターギルドをあとにした。宿に戻ると途中、デミアさんに,

「メネスと随分話してたみたいだけど、なんか問題でもあったのか」と聞かれたが特に何もなかったと言っておいた。別にデミアさんを信用していない訳ではないけど、メネスさんに「デミアにもこの事は黙っておきなさい」と言われたので言われた通りにした。

デミアさんに宿の前まで送ってもらい、私はすぐ自分の部屋に戻りベッドにダイブした。


今日は疲れた。時間的には昼寝もしているし、そこまで活動時間はなかったけど...。とにかく濃かった。転移したと思ったら急に金欠問題。それが解決したかと思えば睡魔に任せて盛大に寝過ごし。夜もやっていたギルドに無事行けたと思えばメネスさんにステータスで色々言われて。明日はまたどんなことが起こるのか...。まあこの際なんでもいいや。今は寝かせておくれ。


私は今日あったことを一つずつ思い出しながら、やがて眠りについた。

翌日起きた私は、朝食を食べたあとセンターギルドに向かった。今日の目的はズバリ仕事だ。宿に泊まっていく以上追加の資金がいるし、それ以外にもお金は必要になる。それを稼ぐためにはまず仕事だ。昨日、メネスさんと話していた時に依頼について教えてもらった。どうやら私でも受けれそうな依頼もあるらしく、詳しくは後日また説明すると言われたので早速依頼を受けるためにメネスさんに会いに行くことにしたのだ。

センターギルドに着いた私は、昨日メネスさんと会った受付に向かった。


「メネスさーん!昨日ぶりです。早速来ちゃいました」


「あら、マリ。いらっしゃい。それじゃあ昨日話してた依頼について詳しく説明するわね」


メネスさん(いわ)く、センターギルドで受けられる依頼は主に三種類。一つは討伐依頼で、これは特定の動物や魔物を討伐することで達成される。もう一つは採取依頼。これは依頼書にある特定の植物、主に薬の材料となる薬草などを採取するものだ。最後に雑務依頼。これは文字通り、依頼者の家の掃除や炊事、その他諸々の雑務を(こな)すことで達成される。この三種類で私は採取依頼を勧められた。私的には雑務依頼でもよかったのだが、ギルドに依頼する人の中には貴族もいるらしく、そうなると雑務依頼の場合、貴族の家に行くことになる。貴族間のシガラミが嫌な私的には絶対にパスだ。


「じゃあマリは採取依頼ね。この依頼リストからやりたいものを選んで頂戴。(ちな)みに一度に受けていい依頼はどの依頼も三つまでだから。それと依頼期間を過ぎたら依頼失敗として違約金や場合によってはペナルティも発生するから気を付けてね」


「分かりました、気を付けます。」


「まぁ初めは依頼期間の長いものを一つずつ熟していくのがいいわね」


メネスさんの言う通りだ。達成できない依頼を受けても損するだけなので、私は受ける依頼は慣れるまでは一つまでにすることにした。

依頼リストにはいろんな人からの様々な採取依頼が記載されていた。


んぇーなになに?

どんな傷でも治せる聖草タプ・イエルバの採取。

依頼期間は三日間。報酬は金貨50枚。なにこれなんかヤバそう。

他にはー、えっと?

食べることで、スキル:"覇者(はしゃ)"を獲得できる技草(ぎそう)ビクルーラーの採取。

依頼期間は五日間で報酬は金貨150枚。なにその草、すごい。え、すごい。

いやいや、もっと簡単な依頼ないの?

んー、あっ!あったあった。

低級傷薬素材:アミアミ草20本の採取。

依頼期間は一週間で報酬は銅貨20枚。いいねいいね、こういうのだよ。


私は依頼を受けるために依頼リストから依頼書を抜き取ってメネスさんに渡した。


「メネスさん、私これにします」


「えっと...うん。この依頼なら大丈夫そうね。じゃあ受理するからちょっと待っててね」


ハンコが押された依頼書を受け取った私はメネスさんに「頑張ってね」と励まされセンターギルドを後にした。


依頼期間は一週間あるけど、もう行っちゃおうかな!


初めて受けた依頼に少し心がソワソワしていた私は、早速今から依頼のアミアミ草を取りに行くことにした。依頼書によるとアミアミ草はどこにでも生えているらしいので、私が初めてこの世界に来た時にいた草原辺りが好ましいだろう。あの場所ならここから近いし、南門から出ることになるのでデミアさんにも報告できる。

南門に行くと予想通りデミアさんがいた。ついでに言うと昨日の夜、宿の食堂でベロベロに酔っていたクレドさんも一緒だ。


「おはようございます!デミアさん、クレドさんも...ちゃんと帰れたみたいですね」


「...あぉ、昨日の嬢ちゃんか。おかげ様でね。二日酔いだけど...うん」


見るからに体調が悪そうなクレドさんは引き攣った笑顔で迎えてくれた。


「クレドはこれに懲りたらしばらく自重することだな。それでマリ、今日はどうした?」


「今から薬草を取りに行くんです」


「おぉ!さては初めての依頼だな?頑張ってこい。でも無理はするなよ」


「はい!行ってきます!!」


門を抜けた先で待っているのは新しく始まった人生での初仕事だ。

今まではただ、与えられた仕事を熟してきた。

これからは自分が本当にやりたいことでお金を稼げる。

今までにない高揚感を胸に私は門を抜けた。


「さぁ!お仕事しますか!!」


---------------------------------

<登場人物>

亜野まり:主人公

デミア:南の門番

クレド:南の門番でデミアの友人

メネス:センターギルドの受付嬢

またまたどうも越那です。いやー、私もここ最近"働く"ということが身近になってきて思うのですが、社会人として働く人に一番必要なのはワクワクすることだと思うんですよね...。はぁ~。

ハイ。切り替えていきましょう!今回は主にギルドの話がメインになっています。せっかくギルドなんていう異世界ド定番な場所にいるのに討伐依頼を選ばないなんて...亜野さんらしいですね。

私なら迷わず討伐依頼を受けますね。例え死ぬかも知れない危険な依頼でも私は王都を救うために戦います(受理されるギリギリで雑務依頼に変更することはナイショ)。

いよいよ次からは亜野さんのちょっと企画外な一面をお見せできるかもしれません。感想などあれば私のやる気に繋がるので、どうぞ友達に話しかける勢いで気軽に書いてください。

それでは、また次のページでお会いしましょう。

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