海洋都市
「おい、夕食が出来たぞ。」
「ありがとう、今行く。」
おお・・・これは刺身、早速漁に出たんだな。
よくやったライカン君!困るよなんて思ってごめんな。
いただきます!うっま!この宿、大当たりだ。
「美味い!やるな爺様!」
「フンッ!娘夫婦が料理担当だ。」
「ああ、家無しの・・・。」
「しばらくはここに住み込みになるな。」
「怒ってた割には嬉しそうだな。」
「考えてみれば娘が帰ってきた。」
「ふふ、そうだな。」
美味い海鮮料理の後は風呂だ。驚いた事にこの宿には小さいが風呂があった。
いや~本当に当たりの宿だ。もう小屋はいらんな、宿代があればだが。
ゆっくり風呂に入り綺麗な寝床へ。最高じゃないか!
ダンジョンで頑張った甲斐があったというものだ。クラーケンが居ないのなら
明日は釣りでもしようか。
ぐっすり眠る事ができた。起こしに来るメイドさんも居ないしな。
食堂に降りて朝食、普通のメニューだが美味い。
「今日は釣りでも楽しむよ。」
「お前、仕事はしてないのか?」
「してるよ、Dランクハンターだ。今週は休暇だな。」
「Dランクの割には余裕だな。」
「ここに来る前に頑張って稼いださ。」
「そうか・・・クラーケンは居ないが他のモンスター居るから気を付けろ。」
「脅かすなよ、こちとらDランクだぞ。」
「ふん・・・。」 再び新聞的なものに目をおとす。
じじいのツンデレはどうかと思うぞ・・・。
宿をでて港へ。既に数人、釣り糸を垂らしている。なんか武装してるんですけど。
ハンターか?絡まれるのも面倒だ、離れた所で釣り糸を垂らす。
普通の魚が戻ってきてるといいけどな。ああ、いい天気だ。釣り日和だな。
釣れたらそれを料理してもらおう・・・グヘヘヘ・・・。
「おい、兄ちゃん。ニヤニヤしてるがその格好じゃ危ねえぞ。」
おっと・・ニヤニヤしてたか、キリッ。
「そう言えばみんな武装してるな。クラーケンは討伐されたんだろう?」
「クラーケンは居ないが普通の魚と一緒にサバキンやマーマンも戻って来てる。」
「げっ、まじかあ・・。じゃあ釣り糸を垂らしてるのはやっぱハンターか?」
「ああ、ギルドに依頼が沢山ある。今は品不足だからな。ハンターか?」
「一応そうだが依頼で釣りをしにきたわけではないぞ。」
「はっ?」
「釣りは趣味だ。」
「とんだバトルジャンキーだな。」
「ちゃうわ!」
「後受けも出来るから連れたらギルドに持っていくといい。」
「釣れたらな。」
「引いてるぞ!」
「何!」
どわっ!何だこのひきは!いきなりモンスターじゃないだろうな・・・。
まずい!海に引き込まれる!
「Dランク、舐めるなよ!うおー!」
ものすごいバトルになった。その後30分以上バトルは続いた。
気が付くと釣り人達が集まり剣を抜いていた。お、俺は何を釣ったんだ?
身体強化!まさか釣りで魔法を使うとは・・・。
「どっりゃー!」
釣れたー!で、でかい・・マグロか?
いや、マグロサイズのカツオだー!しかも足があるー!
ドゴンッ!マグロカツオは釣りあげられると同時にケリをくらわして来た。
危ぶねー、ぎりぎりで躱した。おいおい、ダンジョンよりハードじゃねえ?
後ろで控えていた釣り人ハンターが襲い掛かる。今度は陸上バトルだ。
何だこりゃー!凄まじいケリだ。
「手が出る前に仕留めろー!」
何?手も出るのか?現時点でも魚の着ぐるみにしか見えんのに・・・。
ハンター数人が蹴り飛ばされたー!つえー!
「おまえも加勢しろ!」
「わかった。」
黒刀で斬りかかる。カキン!えっ?腕が生えてるじゃねえかー!
しかも刀を受けた・・・だと・・・。
ブオンッ!何だ?武器まで持ってるのか?距離をとって確認。
あれは・・・貝!ラッコかよ!
上等だ、Dランクの意地見せてやんよ!
そこからは刀対貝の激しいバトルが始まった。なんか理不尽・・・。
やるな、こいつ・・・。あの身体でここまで動けるのか・・。
うおっ!貝を投擲してきたー!ガキンッ!ふぅ、危ねー・・。
マグロカツオが親指を立てた。何、グッドって事?確かにお前もグッドだぜ。
俺もにやっと笑って親指を立てた。強敵と書いて友と読むんだぜ。
「友情か!友情だな!」 外野がうるさい。
ジャンプ1番、マグロカツオは海に帰って行った。さらば友よ、またやろうぜ。
おっ、友が帰ったあとに、ブリっぽい魚がかなりの数、ピチピチしてる。
どうやらこのバトルに参加したハンター分あるようだ。友よ、律儀だな・・・。
みんなで分けて、めでたしめでたし。ってこれ釣りじゃねーから!
さすがに疲れた、もう糸を垂らす元気はない。この魚でかいし、もう帰ろう。
「爺様、これで昼食頼む。余りは好きに使ってくれ。」
「むっ、それは・・・。お前、マグーオと戦ったのか?」
「友はマグーオと言うのか、強かった・・・。」
「Dランクが相手するもんじゃねえぞ!やつは認めた者にだけそのブリテンを
置いていくんだ。」
ぶり照りにしか聞こえんぞ。
「ブリテンは照り焼きにすると美味い。」
「ぶり照りじゃねーか!」
「宿の客にも寄るに出してやろう、喜ぶぞ。けど、いいのか?」
「構わない、1人じゃ食べきれないよ。」
「ありがとよ。お前には夜、別な物を用意するから安心しろ。」
腹すいたー!来たー!ぶり照りー!
「美味い!」
「だろ。あらで取ったスープも美味いぞ。」
「どれどれ・・・うっま!」
米が進むぜ、この世界にも米は普通にある。
ふぅ、食った食った。爺様に礼を言って部屋に戻る。グフフ・・昼寝だ。
昨日同様、自分の腹の音で目が覚める。身体が若いからかな?
夕食を食べに食堂へ降りると沢山の軍人が居た。
「セツナ!」
「げっ、兄貴!何で居るんだ?」
「あれだ、いつものだ。部下が旨いブリテンを食わせる店があると言ってな。
確かに旨い。で、お前は何でこの街に?親父達は知っているのか?」
「あっ、何も言わないで出て来た。俺はあれだよダンジョンが余りにハード
だったから骨休めにきたんだ。」
「ハード?1層がか?」
「ビットの手伝いで5層に行ったんだ。」
「5層ってあの筋肉モリモリのシルバーワーウルフじゃないか!」
「それはビットが風穴開けた。俺は露払いと囮だ。」
「・・・それは骨休めだな。」
「だろ?」
「隊長殿、弟君ですか?うわさの?」
「うわさ?」
「万年Dランク。ウルブス家の突然変異体とかだな。」
「はっはっは、うわさではなく事実だ。」
「開き直るな!」
「おうセツナ、お前はカウンターに行け。ステーキを用意してある。」
おっ、セツナ呼びになっとる。
「爺様サンキュー。」
「美味いぞ。ブリテン食わんのか?」
「旦那、そのブリテンはセツナが提供してくれたんだ。」
「お前、マグーオと戦ったのか?」
「友は強かったよ・・・。」
「はぁ・・・普通Dランクじゃ無理だからな。」
「弟君もやはりウルブス家の方ですね。クラーケン程じゃないですがマグーオは
貝を持てばAランクです。」
「詳しいですね。この街出身の方ですか?」
「はい。出身もなにもここは私の実家です。」
「えっ、そうなんですね。」
「父に憧れて軍人になりました。」
「えっ、爺様。元軍人だったんだ。」
「駄目か?だから料理はできん。それよりセツナ、お前グリス長官の息子だった
んだな。」
「親父を知ってるのか?」
「ああ。」
「キーンさんは今も現役で父上の側近だぞ。」
「へっ?現役・・・そうか情報部・・・。」
「内緒の話しだ。」
「う、うす。あのキーン殿、親父に私の事は・・・。」
「ははは、黙っておいてやる。」
「セツナ、母上が心配する。適当に帰れよ。」
「わかってるよ。」
短い休暇だったな。帰りは転位せず普通に帰ろう。せめて朝までゆるりと過ごす。
翌朝、美味しい朝食を食べキーン殿にお礼を言い都に向け出発する。
途中、野営になるがストレージに全て揃っているので問題ない。
馬車に乗り込むと商人らしき親子とその護衛らしきハンターが2人。
両方とも女性で服装からすると剣士と魔法使いのコンビだな。
2人とも俺を警戒している。こんな張り詰めた空気じゃ3日はもたないぞ。
「すまない、都まで同乗させてもらう。そんなに警戒しないでくれ。
俺もハンターだ。」
Ⅾランクのハンター証を見せる。ハンターとわかりほっとしたようだ。
「失礼した。私達はミルス殿の護衛だ。私はグロリア、こっちはアースという。
2人ともBランクだ。」
「俺はセツナという。」
「セツナ殿は手ぶらなのか?」
「セツナでいい。いや、ストレージを使っている。」
「それは楽でいいな。」
そんな会話をしていると馬車は出発した。
道中の道は整備されておりモンスターが出る事は滅多にない。
気になるのはミルス親子がすごく緊張している事だ。商人なら旅慣れてるはずだが。
まっ、何かあったら2人が対処するだろう。
「セツナはハンターになり立てなのか?」
「いや、1年位はたつかな。」
「何故だ?」
「何が?」
「纏っている雰囲気がDランクのそれじゃないが・・・。」
「ああ、すまん。ちゃんとⅮランクだ、そう見えるのはあれだな俺の態度の
問題だろう。」
「でかい・・・。」
「クランは?」
「入ってない、ソロだ。」
「・・・セツナ。ソロだと達成率が落ちるからランクが上がらんぞ。」
「まあな。自分で言うのもあれだが実家住まいでな。金がかかるのは装備くらいな
もんなんだよ。それに特にランクを上げたいとも思ってない。まあ、ギルマスに
1層の出入りは禁止されたが。」
「気に入らない・・・。」
「まあまあアース。色々なハンターが居るものだ。」
「2人はクランには?」
「ああ、『雷神』に所属している。」
「雷神といえばトップクランじゃないか、すごいな。」
「所属はしてるが、私達はペーペーだ。」
「Bランクが?さすがと言えばいいのか・・・。」
「ダンジョン攻略組は化物揃いだな。」
「あれ?そう言えば知り合いが居たような・・・。」
「何かきた!」
「セツナ、話はここまでだ。ミルス殿達は外にでないで頂きたい。」
「わ、わかりました。盗賊ですか?」
「違う、モンスター。」
「モンスター・・・。」 おや?驚かないな。
この気配は・・・オークだ。こんな街道に?
「グロリアさん、オークです!」
「わかるのか?だが、こんな街道に?アース、行くわよ!」
「うん。」
「お手伝いしますか?」
「Dランクは引っ込んでて!」
「いやアース、手伝ってもらおう。優先すべきはミルス殿達だ。
セツナ、手を貸してくれ。」
「了解。」
俺達は外に出てオークと対峙する。うへぇ、沢山居るな・・やはりおかしい。
「何だこの集団は?アース、温存はなしだ。でかいのかましてくれ。」
「わかった。」
「すまんセツナ、アースの詠唱が終わるまで私と時間稼ぎを頼む。」
「わかりました。」 詠唱か・・・。
グロリアさんと2人でオークの集団の相手をする。
良かったよ、ファングソードもらっておいて。それにしてもこいつら・・・。
「グロリアさん・・・。」
「ああ、こいつらの動き・・・。まずいな、オークキングが居る。」
「メイジも居ますよ。何なんだこいつら・・・。」
威力は弱いがさっきからファイヤーボールも飛んできている。結界で軌道は
逸らしているが。
「グロリア!Dランク!」
アースさんに呼ばれ左右に飛ぶ。
「バーンシャベリン!」
うおっ!あっち!炎系の上位魔法!さすがはBランク。
大型の炎の槍が数本、群れに突っ込んだ。これで片ついてくれればいいが・・。
ズシンズシン、炎の向こうから大きな足音が近づいてくる。キングか?
でかい!オークキングってあんなにでかかったっけ?
「クソッ!セツナ!あれはキングではなくエンペラーだ!」
「まじかっ!」
オークエンペラーはキングの更に上。危険度Sランク・・・。
初めて見たわ。これは早くも詰んだかもな・・・。まっ、やるだけやるか。
「グロリアさん!さっきの上位魔法は?」
「駄目だ。リードタイムがある。」
「しょうがない。グロリアさん、俺が足止めをするからミルス親子を連れて
街へ引き返してくれ!」
「馬鹿を言うな!Ⅾランクを残して戻れるか!」
「グロリアさん、優先すべき事は依頼主の命だ!それに街に戻れば軍隊が居る。
助けを呼んでくれ!」
「クッ!すぐに軍を連れて来る。死ぬな!」
バリンッ!結界を破られたー!
「急げ!」




