アイアンゴーレム
「これ?ああ、時間が無かったから粗末な造りで悪いな。その分美味い茶をいれる
からさ。」
「そうじゃなくて、なんでちゃんとキッチンやテーブルや椅子があるんですか!」
「い、いやキャンプが趣味でな、テントを張れない所ではこれに泊まるんだ。」
「はぁ・・・セツナさんの事はDランクと思わない事にします。」
「いや思ってくれ。お茶がはいったぞ、お茶請けは焼きプリンだ。」
「プリン!大好きです!」
2人で美味しいプリンとお茶を堪能。
「いや~、ダンジョンの中とは思えませんねえ・・・。」
「ダンジョンの中だろうとメリハリは必要だ。」
「勉強になります。」
ズシーン、ズシーン。
「おっ、来たようだぞ。」
「この足音だけで、でかいのがわかりますね。」
「鉄が欲しいだけなんだが・・・。」
「あのう・・・先程のミスリルを売れば鉄は沢山買えるのでは?」
俺は四つん這いに崩れ落ちた。
「気づいてなかったんですね・・・。」
「クソッ!こうなったらロックゴーレムを沢山倒してミスリルをゲットだ。」
「いや!主旨がずれてます!」
「ネムの良い経験になるし。」
「いや!何目線!」
「まあまあ、とりあえずロックゴーレムを拝もうぜ!」
「はぁ、わかりました・・・。」
「この小窓から見れるぞ・・・あれ?」
「どうしたんです?」
「いや、俺はロックゴーレムを見るのは初めてなんだが、ロックというからには岩
だと思ってた。」
「ええ、ロックゴーレムは岩で出来たゴーレムですよ。」
「じゃああれは?」
「どれどれ・・・。!」
「光ってないか?」
「ええピッカピカです。セツナさん、勇者か何かですか?」
「まさか。っで、あれは?」
「アイアンゴーレムです!」
「・・・いや、そんなに沢山は・・・。」
「どうします?」
「せっかくだやってみたいと思えるほどには俺もハンターの端くれっていう。」
「わかりました、当たって砕けろです。」
「砕けちゃ駄目だから!」
地下部屋から飛び出し、アイアンゴーレムと対峙する。
「大きいですねえ・・・。」
「来るぞ!」
ゴウッ!ドカンッ!砂漠に穴が開いた~!あんなのくらったらお陀仏だ。
「すまんネム。前言撤回を希望する。」
「いまさらー!」
「ですよねー、コアが2つある。」
「まじですか!」
「鉄を貫通させないとコアは狙えない。」
「クロスボウの矢じりは鉄ですよ!あと、このメガトンパンチを避けながらは
ムリゲーです。」
どうする?んっ、額に文字が・・・俺が知ってるゴーレムと同じだろうか?
と言っても選択肢などない。
「ネム、あの額の文字が見えるか?」
「何か書いてますね。」
「真理と書いてる。あの文字の1部分を消すと死という意味になり活動停止に
なるはずだ。」
「本当ですか?聞いた事ないです。」
「学園で習った。」
「私も卒業生ですけどー!」
「寝てたんだろ。」
最悪、ブラスターでコアを撃つ。
「クロスボウで弾幕をはれる?」
「お高いですがエクスプロージョンが3発あります。」
「ドロップは山分けだ。頼む。」
「わかりました、セツナさんは?」
「ちょっと額まで。」
「まじっすか?」
「少し埋めるから合図をしたらエクスプロージョンを。」
「わかりました。」
「ソイルマッド。」
ズズズっと泥沼化した砂漠にゴーレムが沈んでいく。腰まで沈んだ所で限界。
「今だ!」
ドシュドシュドシュ、ドカーンドカーンドカーンと顔に命中。
俺は身体強化をかけゴーレムを駆け上がる。頼むぜ黒華!
「不知火流 斬鉄!」 ズバッ!
よし!俺はそのまま落下。ズボッ!柔らかくて助かった・・・。
「ブヘッ!ど、どうだ?」
「やりました、セツナさん!止まりました!」
「ふぅ・・・良かった・・・。」
「あっ、ドロップします。」
大きなゴーレムが光って消えた。さすがにそのままって事はないか。
使役できれば面白そうだが・・・。
「何でしょう?黒い塊と黒い箱でしょうか?」
「あれ?ミスリルじゃないの?」
近づいて解析を掛ける。
「ネム、これアダマンタイトだ・・・。」
「えっー!初めて見ます!この箱は?」
手のひらサイズのキューブだ。んっ?2つある。もしかして・・・。
「ネム、その箱に魔力を流してみてくれ。」
「わかりました。」 ガチャンガチャン。
「おお・・・。」 黒い小型ゴーレムに変形した。
「ナマエヲツケテクダサイ。」
「えっ、じゃあモンドで。」
「ワタシハモンド、デフォメーションゴーレムデス。」
「ネム、もしかしたらそのゴーレムは変形するんじゃないか?」
「本当ですか?じゃあとりあえず剣に。」
「イメージシテクダサイ。」
「わかりました、むむむ・・・・。」
おお・・・剣になった。しかもアダマンタイト製では?
「すごいです!こんな剣に憧れてました!」
メルビィの機械式に似てるが・・・まあいい。俺も魔力を流す。
「ナマエヲツケテクダサイ。」
「君の名は不動だ。」
A180ブラスターのパワーユニットのイメージをする。
「おお・・・セツナさん、カッコイイです。」
「すごいな・・・。」
ロングブラスターをイメージしてみる。おお、ライフル型になった。
「あれですかね、無傷で倒したボーナスでしょうか?」
「かもしれんが、さすがに報告しないとな。」
「ですねー、砂漠ラッシュが起きますよ。」
「目立つのはなあ・・・。ネム、単独って事にできないか?」
「無理です!単独でダンジョンに来てるのがばれるじゃないですか!」
「だよなー、う~んしょうがない。ギルマスに直接話そう。」
という事で逆走して入り口から外に転位。
モンドと不動はナイフに変形してもらっている。
受付のお姉さんにリサマスの面会を頼む。普通はアポなしは駄目だが、よく
俺がリサマスに拉致されているのを知ってるから大丈夫だろう。
「執務室へ行って下さい。」
コンコン。
「入れ。」
「失礼します。」
「んっ?珍しい組み合わせだな。」
「ダンジョン内で助けてもらいました。」
「そうか。ネム、すまんな。それで?」
「6階層の事で・・・。」
「6階層?ゴーレムのフロアーだな。お前は2層だったんじゃないのか?」
「そうなんですが欲しい物がありまして。ネムに頼んで一緒に行って
もらいました。」
「成程な。」
「マスターはゴーレムのドロップが何だか知ってますよね?」
「そりゃあな。種類にもよるが大抵は金属だ。」
「アダマンタイトがドロップする事は?」
「知ってるぞ。けど超レアだ、何しろアイアンゴーレムからわずかドロップ
するだけだからな・・・・遭遇したのか?」
「はい。」
「はぁ・・・よく無事で戻った。あれは50人規模のレイドでやっと倒せるか
どうかだ。それこそ雷神クラスのクランじゃないと無理だな・・・。
いや、何でアダマンタイトがドロップするのを知ってるんだ?
まさか・・・倒したのか?」
「はい、それで相談に来ました。これを見て下さい。」
でかいアダマンタイトの塊を見せる。
「な、何だこれは!」
「そのう・・・アダマンタイトです。」
「馬鹿な!こんなでかい塊がドロップするなんて聞いた事がない!」
「ドロップしちゃったんです・・・。」
「詳しく聞かせろ!」
アイアンゴーレムとの遭遇から討伐までを詳しく話す。
「はぁ・・・聞きたい事が山ほどある。まず砂嵐はどう防いだ?」
「セツナさんが立派な住居を作ってくれて砂嵐が過ぎるまでお茶してました。」
「・・・・。それで外に出たらロックゴーレムではなくアイアンゴーレムが
居たと・・・。」
「はい。」
「砂嵐をやり過ごすだけで、かなりの装備が必要なんだぞ。しかも
アイアンゴーレムに遭遇する確率はとても低い。でっ、せっかくだから
戦ってみたと。2人で。」
「はい。」
「コアが2つあったから諦めて別な方法で倒した。」
「どのみち我々の武器で鉄を貫通する事はできませんでしたので。」
「それでアイアンゴーレムを腰まで埋めて動きを止めた。そこまではいい・・
いや、よくはないが・・。それより、その額の文字だ。」
「おそらくですが、ゴーレムは全て同じアルゴリズムで動いてると思います。
それで昔、書物で読んだ事があったので試してみました。」
「額の文字を書き換える・・・。」
「はい。」
「ゴーレムに関わらずダンジョンエネミーは損傷が少なければ少ない程
ドロップが良くなる。つまり、お前達はアイアンゴーレムをほぼ無傷で
倒した。」
「はい。」
「はぁ・・・どうすんだ?」
「ですからご相談に。このアダマンタイトを買い取って頂けないかと。
額の文字の件は公表してかまいませんので、我々が討伐したという事を
秘密にして欲しいのです。」
「いいのか?オークションに出せば天井知らずだぞ。それにアイアンゴーレム
の倒し方は新発見と言っていい。今までは削りに削ってコアを露出させ
倒すというのが常識だった。ランクに関係なく歴史に名をのこすぞ。」
「構いません。それより俺もネムもそれを知られる方がまずいので・・・。」
「ふぅ・・・良かろう。Sランクの誰かが偶然発見した事にする。公表はするが
おそらくこのサイズの塊は2度とでないだろう。」
「そうですか?」
「考えても見ろ。まず、ほとんど遭遇しないうえにたった2人でしかも額の文字
を書き換えるなんて芸当、誰もできんぞ。」
「そうですか?」
「お前ら頼むから自覚してくれ。ネムもお前もすぐにでもSランクにしたい
くらいだ。」
「マスター、お願いします。それだけはご容赦を。あっ、ネムは良いかも
しれませんが・・・。」
「嫌ですよ!それでなくてもAランクを持て余してるんですから。」
「全く・・・お前らは。だが2人とも良くやった。」
ほめられちっちー。アダマンタイトの塊は何と金貨300枚で買い取られた。
1人頭金貨150枚だ。
「セツナさん、どうしましょう?こんな大金、持つのは初めてです。」
「俺もだよ・・・。」
「クランへの報告はどうしましょう?ねこばばするのもどうかと・・・。」
「しかしなギルマスに隠蔽を頼んだしなあ。モンドと不動の事なんてギルマスに
も言ってないわけだし。」
「ですよねー。」
「俺はとりあえず銀行に預けるけど、ネムもそうすれば?
ほとぼりが冷めるまで使えないだろうし利子もつくぞ。」
「見た目に似合わず堅実なんですね。」
「ほっとけ!」
ゴーレムの件は後日ギルドから発表された。
異国のSランクハンターからもたらされた情報という事で。
ネムの言っていた通り砂漠ラッシュが起こったが、攻略法はわかっていても
難しい事にはかわりなく少ししていつもの6階層に戻ったそうだ。
俺も不動が手に入った事で目的も達成されたので行く事はもうないだろう。
それに何より大金が手に入ったわけだし転居先を本格的に探すことにする。
候補としては海洋国家か森の国だな。まずは森の国に行ってみよう。
「ただいまー。」
「お帰りなさいませ、今日も1番早いですね。」
「ハンター特権だよ。」
「さようでございますか。」
「そう言えばミランさん、森の国出身だったよね?」
「そうですが、何か?」
「明日からちょっと行ってみようと思ってさ。」
「何を企んでるんですか?」
「企んでない!ちょっと家でもと思ってるだけだ。」
「はっ?家ですか?」
「そうそう。」
「Dランクってロマンチストなんですね。」
「ほっとけ!でっ、どんな所なの?」
「国自体は木材、木工を中心としてるだけで他の国とたいして変わりません。
ただエルフの国が近いので街中で割と見かけますし、住んでる方も
おりますね。」
「エルフか・・・。同級生に居たような・・・。」
「ああ、それはプライド様ですね。賢者の。」
「そうか勇者パーティーの賢者ってエルフだったのか。」
「正直、私は苦手でしたね。人種差別ではないのですが、何と言うか
プライドか高い方達で・・・。」
「ははは、プライドのプライドが高いわけか。」
「失礼しました。」
「いや、ナイスだよミランさん。まあ俺もプライドの高い奴は苦手だし
エルフには関わらないようにしよう。」
「明日、出発でしたね。資料を用意いたします。」
「資料?」
「はい、森の国には裏の顔がございますので。」
「えっ、さっき他の国とたいして変わらないって・・・。」
「はい、ですから裏の顔があると。」
「成程。」
さすがエルブス家のメイド長、只者ではないようだ。




