適応
いや~、まいったなあ・・・。
転生って本当にあるんだ。
しかも勇者とか技術チートとかじゃなくて、転生するだけでエネルギーがなんたら
かんたらで・・・夢だと思ってたからちゃんと聞いてなかった。
ところどころ思い出すに、普通の人を転生させると過酷な世界だからすぐ
死んじゃうと。申し訳ないから裕福な家で責任もあまりない立場にしておいたと。
いや、何の相談もなく転生させておいてドヤ顔されてもなあ・・・。
とは言え、今更文句言う気もない。めんどくせーし・・・。
寝てる間に新しい身体や記憶のトレースは終了してるようだ。
元々のこの身体の持ち主は向こうの俺の身体を使うそうだ。交換留学みたいな感じ
だな。まあ、赤ちゃんスタートじゃなく良かった。
ややこしい話なのだがこの身体のやつは俺と性格や能力が同じ。つまり世界は
違うが俺は俺なわけだ。わけわからん。
さて、起きるか。この世界は本当に物語のような剣と魔法、それにモンスターが
存在するドファンタジーだ。そりゃ1般人ならすぐ詰むわな・・・。
俺は幸いにして刀と銃は使える。日本じゃ裏家業の時にしか使わんかったな。
この身体のやつは優秀だったようで魔法もかなり使える。
刀と銃の事は今のところ黙っておこう。
役目もないので目立たずのんびり暮らす事にしよう。
小銭を貯めて老後に備えよう。
「お早う。」
「うむ。」
「お早う、セツナ。」
「兄貴もお早う。」
「お早う。」
これが家族だ。親父の名はグリース、お袋はメルロ。兄貴はリベル。
この国は貴族制とかはなく、いわゆる民主政治だ。
親父は軍の偉い人らしい。お袋も元軍人で今もたまに仕事の依頼があるらしい。
兄貴も既に軍人だ。何かの隊長だそうだ。
この世界には例に漏れず、ダンジョンがある。主にここで活躍するのが
冒険者ではなくハンターと呼ばれる者達だ。
で、俺は駆け出しのハンターという訳だ。
卒業した学園の成績も、ハンターとしての成績もそこそこで可もなく不可もなし。
実に素晴らしい。
ちなみに俺の名前はセツナ、日本に居た時と同じ・・・。
漢字でかけるじゃん!他の家族と系統が全然違う!どうやってつけた?
家名はウルブス。民主制とはいえ有名な名家だ。
つまり俺はおぼっちゃまくん。いいぞ。
「セツナ、あなたまだ軍に所属する気はないの?母さんの親友が楽しみしてる
わよ。」
「えっー、ティーナさんでしょ。やだよ、俺みたいな凡人に特殊部隊なんて
務まるわけないじゃん。」
「セツナは自己評価が低すぎるんだよ。やれば出来る子なのに。」
「リベルよ、軍は学園じゃない。やれば出来るでは通用せんぞ。
しかもセツナはそのやる気が全くない。」
「いやいや親父。ウルブス家に泥を塗らない様に俺なりに目立たない様に
がんばってるんだぞ。」
「セツナよ、がんばるベクトルが違う・・・。」
「全くあなたは・・・今日もダンジョン?」
「いや、今日は武具を作りに鍛冶屋に行くよ。」
「剣なら魔剣バイスを渡したろう?」
「親父、あれは目立ちすぎる。俺みたいな駆け出しハンターには過ぎた剣だ。
兄貴、いる?」
「あれは僕には使えないよ。それに別なのもらってるし。」
「そうだった・・・。親父、もっと地味なのないか?」
「馬鹿者!あれは代々家に伝わるホワイトドラゴンのストーンで作られた剣だ。
私としてもとても歯痒いが、現状お前しか使えん。」
「家宝だったらリビングにでも飾っておいて。」
と言う事で親父とお袋は渋々、本当にリビングに飾る事にしたようだ。
美しい剣なのでリビングに映えるだろう。すまんな俺は刀派だ。
家族は何だかんだ言いながらも俺の好きなようにさせてくてる。感謝だな。
さて、刀を作りにガング爺の所へ行こう。
生活費はゼロだからハンターの報酬が手つかずあるんだな。
「爺ちゃん、居る?」
「んっ、坊ちゃん。」
「坊ちゃんはやめてくれ。一応ハンターになれたんだから。」
「ガハハ、そうだったのう。今日はどうした?」
「刀を作ってほしくて。お金もたまったしな。」
「刀?バイスはどうした?」
「返したよ。あれでダンジョンは目立ってしょうがない。」
「ガハハ、確かにな。あれは普段使いする剣じゃねえからな。」
「だろ。」
「作るのはいいが、刀なんて使えるのか?」
「家には内緒な。」
「・・・使えるのか。」
ガング爺に希望を伝える。
「坊よ、作れるが逆に目立つんじゃねえか?」
「外だと目立つがダンジョン内はうす暗いから大丈夫だ。それにダンジョン内
で金ぴかは自分の居場所を教えてるようなもんだ。」
「坊よ、こう華がないと言うか地味だのう・・・。鎧も付けておらんだろう。」
「地味でいいの。目立たないよう地道に稼いで老後に備えるんだよ。
鎧なんて付けてたら重くて逃げれないじゃないか。」
「武勇を誇るウルブス家の言葉とは思えんな・・・。」
「ははは、それは他の家族に任せるよ。誇りで飯は食えないさ。」
「現実的だのう・・・。わかった、3日後に取りにこい。」
「了解、よろしく。」
さすがに刀は高い。銃も買いたかったが貯めないと無理だな。
武具屋に行って1番安いぼろぼろの剣を買う。つなぎだからな。
よし、銃を買う資金のためにダンジョンに行こうか。
この国にダンジョンはひとつしかない。しかし、とてもでかい。
おそらくこの都市以上の広さだろう。まだ攻略されてないしトップのハンター
クランでも3分の1くらいまでだろう。難易度マックスに指定されている。
結果、俺みたいなソロでも1階でそこそこ稼げるのだ。
「ちわー。」
「セツナさん、こんにちは。これからですか?」
「ええ、ちょっと入り用で。今日の沸きはどうです?」
「そうですねえ、ちょっと多いかもです。怪我人が運ばれてきてますから。
セツナさん、まだソロですか?」
「ソロですよ。人間関係に自信がないですから。」
「ランク、あげずらいですよ。」
「Dランクで十分です。特に困ってませんから。」
「セツナ―!ちょっと来い!」
「ゲッ!ギルマス!」
筋骨隆々の腕でヘッドロックされた。
「ギブ!ギブ!」
そのまま執務室に拉致された。
「座れ!」
「は、はい・・・。」
「何で呼ばれたかわかってるな?」
ギルマスことリサ・スタンフィールド。筋骨隆々だが一応女性。
お袋の親友であり学生時代はライバルだったそうだ。
「いえ、全く身に覚えが・・・。」
「はぁ・・・お前はいつまでⅮランクに居るつもりだ?
私の見立てではAいやSランクにも届くだろう。」
「Sランク!買い被り過ぎですよ。僕の夢は穏やかな老後なんですから、
老後を迎える前に死んじゃったらどうするんですか!」
「馬鹿者!ギルドとしても実力のある奴はどんどん先の階を攻略してほしい
んだ。浅い階はランクの低いハンターの稼ぎ場でもあるんだ。」
「俺はDランクですよ。1層でいいじゃないですか。」
「駄目だ!お前は1層出禁だ!」
「そんなあ・・・。」
まずい事になった。2層じゃあこんなぼろぼろの剣はすぐに折れてしまう。
とりあえず今日は帰ろうと思いエントランスに降りると声をかけられた。
「セツナ、私のクランに入る気になったか?」
「なってない!俺はソロでいい。」
こいつは学生時代のクラスメイトで首席で卒業し何故かハンターになった
変わり者、クリス・キャンベルだ。いやまあ、俺もハンターだけど・・・。
「ソロのままだとランクは上がらないぞ。」
「ギルマスみたいな事を言うな!俺よりもっと優秀な奴を勧誘しろ。
ほら、誘われたそうな奴らがこっちみてるぞ。じゃあな。」
「待て!どこへ行く?」
「帰る。出直しだ。」
「私は諦めないからな。」
全く・・・ほっといてくれ。こっちは2層の事で頭が一杯なんだから。
刀は3日後、銃は買っていない。バイスは家のリビングの装飾品になった。
本来の刹那の刀と銃はあるが強力過ぎる。となるとこのぼろ剣と魔法でなんとか
するしか・・・う~む、一応銃を見にいくか。
同級生のやってる雑貨屋で扱っていたはず。
「お~い、ビット。居るか?」
「あら、セツナじゃない。」
「久しぶり。銃を見せて欲しくてさ。」
「あなた、まだソロなの?」
「そうだが。」
「しばりゲーでもしてるの?」
「してない!ソロの方が気が楽だ。」
「あなたらしいわね、エッジ君。」
「やめろ!その名で呼ぶな。恥ずかしい。」
「フフフ、銃だったわね。お金あるの?高いわよ。」
「ない。刀をオーダーしたばかりだ。お金を貯めるのに当たりを
付けておきたい。」
「刀?使ってるの見た事ないわよ。ロマンかしら?」
「はぁ・・内緒だが俺の本来の得物は刀と銃だ。」
「銃も?学生の時、1度も使わなかったじゃない。隠してたの?」
「そうだ。成績的に中間に居るには丁度良かったんだ。」
「いやセツナ、同じパーティーの1員としてそれはどうなの?って話じゃない。
今更だけど。」
「よく言う。ビットだって魔眼を隠してただろう。」
「あら、ばれてたの?」
「ビットだけじゃない。他のメンバーも全力出してなかったぞ。」
「フフフ、真ん中をキープするのが大変だったわねえ。」
「それで、銃はあるのか?」
「あるわ。あなたにぴったりな銃が。壊れてるけど・・・。」
「駄目じゃん!」
「あなたなら直せるじゃない。先輩に頼まれて直してたじゃない。」
「なんでそれを・・・。まあいい、見てみないとわからない。」
「ちょっと待ってて。」
ビットは店の奥に行った。ちなみに彼女はAランクハンターでもある。すげっ!
鉄製の箱を抱えて戻ってきた。
「これよ。この前クランでダンジョンに潜った時にドロップしたの。
壊れてたから私が買い取ったのよ。」
「へぇ、ダンジョンって銃もドロップするんだな。」 箱を開ける。
こ、これは・・・A180ブラスターじゃないか。何でこの世界にある?
いや正確にはSFの世界の架空銃だ。俺は架空銃を作るのが趣味だった。
オタクじゃないぞ。刹那の銃はブラスターだ、ちゃんと実用銃だからな。
俺が知ってるA180だとすれば・・・細部をチェックする。やはり・・。
「ビット、この銃は壊れてないぞ。」
「そうなの?ガンナーが撃てないって。」
「ああ、これは魔法そのものを撃つ魔導銃だからだ。」
「そんなのあるの?」
「ある。ここを見てくれ。」 マガジンを外して見せる。
「なによこれ?弾倉じゃないわね・・・ストーンかしら。」
「そうだ。売った方がいいぞ。使える奴がいればだがな。」
「売るわよ、あなたに。」
「おいくらですか?」
「そうねえ、壊れてたらあげようと思ってたけど・・・。ダンジョンに
付き合ってくれれば金貨3枚でいいわよ。」
「いいのか?」
「いいわよ。あなたは使えるんでしょう?」
「まあな。」
金貨3枚なら非常用にキープしてあったから払える。
「まいど。じゃあ刀が出来たら付き合ってもらうわよ。」
「わかった。」
いや~良い銃が手に入った。ほくほくと家に帰る。
「お帰りなさいませ。お早いお帰りで。」
「色々あってダンジョンには入らなかったんだよ。」
「さようでございますか。」 メイド長の目はつめてえ。
部屋に戻り趣味の調薬。ビットとダンジョンに行くなら絶対ポーションが必要
になる。薬草の扱いは婆ちゃんが教えてくれた。今でもたまに手伝っている。
ゴリゴリゴリゴリ・・・。
ここは手を抜かず出来るだけ細かくするのがコツだ。まだコツはある、煮だす
水に魔力を通すのだ。こうする事でランクが2つは上がる。以外にしられて
おらず高い聖水を使ったりする。婆ちゃんは企業秘密だと言っていた。
完成した溶液はしばらく置いておくと分離して層になる。1番上の上澄みが
完全回復薬でたいていの怪我は治る。下へ行くほど効果は下がるが十分、
使える。沈殿している薬草のペースト状のものも塗り薬として使えるんだ。
よし、これだけあれば即死以外は大丈夫だろう。




