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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

空虚人形

作者: 翡彗 白亞

開いてくれてありがとうございます。

久々の投稿なのでドキドキしています。

はい、よろしくおねがいします。

―紅の神殿 グレイ屋敷


茶室でアルゥナとエルゥナはお茶を嗜み、雑談をしていた。しかし、雑談は物騒な物だった。

「子宮に人形を詰め込む・・・」

「そして、中から食い破る。しかし、食い破るまでは死なないか」

「「はあ・・・」」

柊から手に負えない事件があるという事で幽幻界の紅き神殿であるグレイの屋敷までやってきたのだ。

「絞り込むとしたら二人。死神と人形遣いだな。この世界にそんな二人いたか? ほぼほぼ不死身でしかない世界なのにさ」

「この世界にいなかったら古界を襲うだろうに。しかし、我とて聞いたことはない。それに、これは単独犯だ」

「じゃあ、人形遣いで死神? ・・・いや、人形遣いが人形を生み出そうとしているが正しいか・・・」

「もう訳が分からぬ」

「答えは何となくでているんですけどねぇ~」

そこへ、ひょうきんな声で女性をまねている男性が割り込んできた。

「情報屋!」

「正~解。いい加減、名前で呼んでくれないかな?

僕は情報屋のリフリィ・ルインだ。そして・・・」

「知っているぞ、情報屋。書の番人が何用か?」

「はあ・・・分かっていましたか」

「なんか言い方が随分と不愉快だがな」

「人形事件の情報提供だよ~」

「ああ。我でも知らぬ情報をよこせ」

「ええ。女性ばかり人間を狙ったサイコパス事件よね、こ・れ・は。ああ、サイコパスは分かるの?」

「ばかにしているのか?」

「失敬。では続きを話しましょう。犯人は人形を子宮に植え付き、中から食い破って人形が生まれる。その人形はなんとその死んだ人間の臓器や骨を持ち帰るのだよ~」

「柊の紙の束に書かれていないんだが?分からないのだが?」

「Aは脳。 Bは子宮。 CDは足腕の骨。EFは足腕の筋肉。 Gは肋骨全て綺麗に。Hは指のみ、Iは髪の毛だねえ。なんとも悪趣味だよね。愛がないわ」

「もう、そこまで事件が起きていて、解決できていないのか!?何やっているんだ、古界の始末屋は!?」

そこへ、導きの月のエルヴァがやってきた。

「それだけ難攻しているんだよ、姉様に兄様」

「導きの月!」

「でも、これで君なら分かっただろ? 次で最後であると、その先には何かがあると・・・」

「ああ。心臓だな。人の形を作ろうとしている。しかし、なんのために?」

「その[なんのために?]の先に何かがあるから、エルヴァもいるわけか」

「そういうことだな。」

その隣でリフリィは恍惚な笑みを浮かべていた。

「ああ・・あああ・・エルヴァ様」

ギロっと睨み、リフリィは黙る。

「情報屋、個人的な話は後にして情報提供してくれ」

「はい~。 人形からして人形遣いなのは間違いはなくて~更に死を止めるとすれば死神とも考えられる。でも、死神はハ・ズ・レ。時を止める側だねえ」

「時の仕掛け人か」

「そうだねぇ。幽幻界において、唯一それが出来るのはファンタスティックワールドの爵位持ちの誰か。そこから人形師を絞り込めば・・・ほらあ、でたわ」

と、リフリィは本の1ページを開いたまま渡す。そこには人間でもホムンクルスでもない人が描かれていた。

「リリス・フェザー・・・ファンタスティックワールドにてクイーンの人形を作る人形師か。また、クイーンの人形師で伯爵で異世界の人形師ならば時止めできる・・・そう、人形を作るために」

「へえ、やっと犯人分かったか・・・」

そこにひょいっと柊が現れた。

「時を止めて人形を作るか、人形をより人らしくするためにだな。

あの歪んだ空間は時止め空間だった。あの空間を打破するのに主人の言葉を喋る道化師のドールを破壊せねばならなかった」

「なんで、どいつもこいつもノックしないんだが。まあ、いい。

道化師とは、それらしい仕掛けだな」

「道化師だが、糸が無ければそうも動けないということは犯人は近くにいることだな」と柊。エルヴァは、ならば簡単な話だと思ったが・・・

「そう。でもな、道化師を先に潰せばその周辺にいるであろう犯人は消えている。そうじゃなきゃこっちが奪われる。やりにくいったらありゃしない。 私も一度、タイマンしようとしたが逃げた」

事件の難しい理由がようやく理解したが・・・

「我も、そんな細かい事、手出ししにくいのだが・・・」

「基本、不器用だからな」

「うっさい! エルゥ!」

柊は手の平を返して溜息をつく。

「それにファンタスティックワールド、か。知恵の杜が使えなくて当然だな」

「ファンタスティックワールドは全てが創造、描いていく世界ですからねえ。知恵とは離れたものだから知恵が発動しなくて当然ですねえ」

「あそこは幽幻界であってそうでないからな」とエルヴァ。

「分かった所で乗り込むぞ。リフリィ、案内しろ」

アルゥナは真正面から突っ込むことにしたが柊は止めた。

「待て。あの世界、入りにくいんだぞ?」


「やり方はある」


アルゥナはニヤっと笑った。



―古界エリアY 深夜


「綺麗ナ人ネ。 モット美シクナリタイッテ思ッテイマスネ。

ソウ、シテアゲルワ」


「な、なに? 何かカタカタ言って声が・・・」


パーン・・・ ガシャーン


「ッ!」


「おーっと、ごめんよお嬢さん。手が滑った」


「じ・・・銃・・・」


「だが、それで命拾いしたようだ」

シュタっと、ライフルを持ったSR・グレンジャーは地に降りた。そして、女性に問う。

「何かされたか?」

「いいえ」

「声は?音は?」

「グレンジャー!! しゃがめ!」

パーン!

玲の声にグレンジャーは女性と一緒にしゃがむ。玲は向かってくる人形をルガーセキュリティックスで撃った。

「助かった。さて、お嬢さん。さっきの問いの答えは?」

「聞いてしまった! あ・・・助けて! さっきから何かが追ってくるの!」

「そのためにやってきたんですよ。 さあ、おやすみなさい、お嬢さん」

優しくおでこにキスをすると女性は力が抜けてダラーンとなった。SRは道の端へ彼女を寝かせた。

「柊に頼まれてお留守番したはいいが、これは厄介だな」

「そのようだな、お嬢さん」

SR・グレンジャーの相方、玲と軽く話しているとアンドロイドとホムンクルスのハーフのヴェルゥナが出てきた。

「ええ。この辺りの時間、止まっています。相手は恐らく殺す気だったんでしょう」

「だろうな。道化師を撃っちまったから犯人は消息不明だな」

「ですね。けれど、犠牲を出さないならばそれでいいじゃないですか」

「だな。引き続き、まわるか」

三人は夜の街を徘徊しようと背を向けた時。


ザッ・・・


「グレンジャー。 操り糸だ」

亞紀羅が険しい顔で糸を切りかかってやってきた。

「亞紀羅か・・・すまない」

SRを無視して糸を拾った。

「・・・この糸おかしい。道化師一体だけだったんだな?」

「ああ」

「ふん・・・その糸に欲がいろいろ感じる。それも人形側の」

「どういうことですか?」

「さすが、式姫さん」

「前に柊が中には人間になりたい人形がいたという話を聞いた。あほらしいと思ったが事実になったようだな。

この糸の頂点にいる人形は人間らしくなりたいようだから、人間のあらゆる感情を糸で吸う気だ」

SRは亞紀羅の発言にはっとした。

「と、いうことは・・・まさか! あちらこちらに道化師ドールがあって、糸をまき散らしていて、無差別に人を殺す気か!」

「そして、欲深い人間の心臓をお持ち帰りってことだ」

「そうなれば、ここ一体、表では怪奇未解決事件。裏ではただの大量虐殺になる」と玲。

「ああ・・・ん?」

バシャンと音をたてて月鏡の姫神アマグラシアが水陣から現れた。

「・・・・」

「服からしてこの辺りの始末屋でもなんでもない。幽幻界の・・・」

「光と闇族の仲介にいる月鏡の姫神アマグラシアだ。

光族闇族まとめてカタリア。つまりは、カタリアの姫神だ」

お偉いさんとだけ分かったSR。頭を下げる玲。礼をするヴェルゥナ。亜紀羅は無関心。

「で、そのおえらいさんは何用で?」

「ひとまず助っ人だ。それだけ化け物ドールいたらその人数じゃ足りないと思って」

「「ありがたき幸せ」

「・・・さっさ片付けるぞ」


「欲と夢破りならこのサキュバスのクイーンに任せてどんどん壊すがいい」


ふよふよと裸っぽい服装の女が現れた。亡族のサキュバスのクイーンリオルアースだ。「またややこしい奴が・・・」

アマグラシアは溜息ついた。アマグラシアに無視してどや顔でリオルアースは紹介した。

「見かけない顔だから驚くのも仕方あるまい。妾は普段、闇族で魔族迷宮都市にいるからの。 ま、さっさと片付けるとしよう」

「そうですね。助太刀、感謝します」



―ファンタスティックワールド 入口


「アルゥが言っていたいい作戦ってのは・・・」

「・・・」

エルヴァは黙る。

「・・・・まあ、俺はいつも通りなんだが・・・」

「これならばれないだろう」

リフリィと柊は置いてきたもののエルヴァは連れてきた。魔脈にばれないようにアルゥナとエルゥナは分身し、エルゥナは執事。アルゥナは貴族服。エルヴァは・・

「私は・・・男なのだが?」

「く・・・くくくくくく」

「笑うでない・・・」

メイド服を着せられていた。

「さて、メイドさん」

エルゥナはエルヴァの手を引いた。

「我が主をお守りいたしましょう、共に」

「顔が近い」

「遊ぶでない・・・」

一喝すると二人は立ち上がってアルゥナに手を差し出した。

「さあ、参りましょう。我が君」

「行こう、お姫様」

二人に手を差し伸べられてアルゥナは、ファンタスティックワールドに入っていった。

ファンタスティックワールドはチェス盤のような世界で辺りに本が散らかっている。その先にクイーンの城があり、アルゥナは伯爵を名乗るとすんなり城に入れた。

「AE伯爵。数百年ぶりと言えましょう」

「ええ、数百年ぶりですね。お元気そうでなによりです。黒のクイーンは?」

「姉も元気ですよ。

さて・・・ここまで来たと言う事は何用でしょうか?」

「クイーン。 私はただ、貴殿の素晴らしい人形遣いのファクトリーに案内していただきたい」

アルゥナは盛大に嘘をついた。

「ええ、構いませんよ? どうしてかしこまるのです?」

嘘に気付かずOKを出してもらった。

「クイーンのお隅付ですからね」


―市街地通り


城の後ろにある市街地の通りをクイーンと一緒に歩む。カランコロンという音と共に中に入ると綺麗な人形が並べられた。

「リリス、リリス。いませんね」

白のクイーンが呼んでも出てこない。

「この奥の部屋は?」

「数週間前から入室禁止とのことで」

「ふむ・・・。なるほど」

エルヴァはアルゥナの耳元に囁いた「絶対に何かありますよ」と。アルゥナは「失礼」と言い、奥に入っていった。

「あッ! 入室は・・・」


バーン


アルゥナは足に魔力を込めて蹴り飛ばしたら[予想通り]の光景が現れた。

「やっぱり。

エルゥ! クイーンの目を伏せげ!」

すぐさま感じた気配に構えると大量の人形が壁からぬうっと出てきた。

「オキャクサンダ」

「オキャクサンダ」

人形は白目向いて喜んでいる。

「伯爵!これはなんですか!?」

「あ、クイーン!」

クイーンはエルゥナを押しのき、前へ出た。その先にあったのは・・・

「あ・・・あああああああ・・・・」

「エルゥ!急いで外に出せ!」

「クイーン、失礼を、お許しを」

エルゥナは白のクイーンを抱えてファクトリーを後にした。

部屋の、扉のその先には・・・人間の肉体で出来た確かな人形があった。

骸骨に外人と思われる綺麗なエメラルドの目玉をはめ込み、髪の毛は美しく長い白髪。首から下は骨出来る。股関節には子宮がはめられていた。そして、腕。右腕は筋肉のみ。左腕は骨のみ。左足は骨。右足は筋肉。天使の羽を表すように人間の皮膚で出来た羽。

「・・・言葉も出ないな」

「想像以上ですね」

「その前に、この壁の素体を消すとしよう」

アルゥナは魔導銃を取り出し、撃っていく。一体ずつ壁から崩れ落ちていく。

「導きよ、我に応え、この躯の魂を沈ませたまえ」

エルヴァが鎌を構えて呪文を唱えると、素体は息絶え、消える。



―ファクトリー外


「うッ・・・うう・・・」

吐き気が納まらず吐き続けている。エルゥナは背中をさすってやることしかできなかった。そこへ・・・

「何事です?」

静かに黒のクイーンがやってきた。

「・・・黒のクイーンか」

「お前は・・・AE・グレイ伯爵のE伯爵の方!何故、執事など」

「ワールドに入るためですよ。素だとなかなか難しいだろ」

「言えばいれたものの。 

それよりも、何があったか説明してもらえるか?」

「ああ。 古界で時止めの人形師による道化師事件があったのだよ。それで、調査に着たのさ。白のクイーンにお願いしてこちらに着たら当たりでね。骸を見てしまったのだよ、レディ・ホワイトクイーンは」

「なんと・・・」

「今、導きの月と我が君のレディ・アルゥナは中で戦っている」

黒のクイーンはそう聞くと、中に入っていった。

「無謀だな」




―リリスのファクトリー内


「無造作に湧き出るな」

魔導銃のカートリッジを素早く交換しながら無増に出てくる人形達を壊していく。エルヴァも鎌で振り払っていた。

「恐らく、結界だと思いますよ。だから事件現場にある道化師と同様・・・道化師を探して潰すしかない」

「この狭い部屋のどっかにいるのにめんどくせえな」


バン


「伯爵! エルヴァ様!」

「な・・・入ってくるなよ」

「外部からなら侵入できるのか」

黒のクイーンが室内に入ってきて、球体関節の手足はクイーンに絡む。クイーンはトランプカードでそれを壊して見せる。

「大丈夫ですよ」

「クイーンは大丈夫そうだな」

「ですね。では、少し魔術使いますね」

鎌をトンと床につくとブワっと羅針盤の魔法陣が現れる。

「導きの月に基づく月の羅針盤よ、道化師を印せ」

羅針盤の針がくるくる回り、ぴたっと止まる。そして、蝶が現れ、ふわっと道しるべをしてくれる。

「あっちですよ、姫君。クイーン」

「ああ」

「ええ」

追ってくる人形を破壊して奥へ奥へ進む。奇妙な人形がずらりならんでいて長い螺旋階段を上っていく。

「なんて広さだ」

「ファクトリーの奥がこうも迷宮とは・・・」

「迷宮・・・二人共、待て。 これ、結界だ。くそッ。厄介だな。道化師ドールを潰して外に出られるかどうか」

「・・・罠だったのですか」

「エルヴァ、もう一度羅針盤回せ。狂うはずだ。リリスがここに戻ってくるまでは結界が取れない。ここで永遠に彷徨う・・・道化師を潰したとしても」

エルヴァが魔法陣を召喚した。すると、やはり狂った。

「くそ~。人形のくせにいい思考持ってんじゃねえか、リリス。完全にやられたぜ」

「やり方はあります。こうですよ」

鎌を大きく振りかぶって空間を切る。すると、エルヴァの象徴である羅針盤の魔法陣が現れ、針が高速でまわってパリーンとなった。そして、現れたのはファクトリーの外だ。

「ったく・・・空間を無理矢理こじ開けるとは・・笑かしやがる」

「こうでもしないと出られませんからね?」

「さすがは導きの魔人」

三人の声にエルゥナは気付いた。

「帰ってきたか」

「無理にな」

「と、いう事は事件解決してないってことだな」

「残念ながら。骸はいたがな」

アルゥナは魔銃をの銃口に息をふきかけ言った。

「まったく・・・ややこしいものだ」

エルゥナは飽きる。

「これからどう動くのです?」

黒のクイーンは律儀よく先へ向かおうとする。

「さあ」

「さあ・・・って、逃げろ」

「は?」


振り返るとそこには先程の骸の人形が歩いていた。


「・・・」

エルゥナは無言で白のクイーンを抱えて後者に下がった。

「不法侵入デスヨ」

カタコトでかたかた言いながら現れたのは、人形師リリス・フェザー。

「リリス! これは何事なんですか!?」

「何事カ、トイイマスト、リリスモ聞キタクナリマス」

エルゥナに支えながら白のクイーンはよろめきながら泣きそうな顔で「こんな・・・なんてひどいことを」と言い、咳き込む。エルゥナはそっと白のクイーンの背中をさすった。リリスは、ふっと笑ってシラを切った。

「タダノ人形作リ、デスヨ」

「こんなもののどこが人形か!」

黒のクイーンは怒りをぶちまけた。

「愚カナ。コノ美シサがワカラヌトイウノカ」

リリスはグイっと操り糸を引っ張り、骸の人形を抱きしめた。

「人形ハ、人ノ形。コレモ立派ナ人の形。イエ、完全ナ美シサ。人間ラシサ!」

トン

「死体は上がっているのに魂は見当たらない。さて、どこだどこだと探したらここにいたのか」

ふわっと黒い霧から現れたのは死神のディフェンだった。顔半分はカラスのような仮面で隠され、杖の両方に鎌がついている鎌を持ってやってきた。

「死神まで出たか」

「いよいよまずいですね」

AE組は溜息ついた。

「ノーマルの数多の死体から魂だけが回収されないと思って情報屋を脅して狐を脅したんだ。さすがは、情報屋。あたり」

「脅すって貴殿も貴殿で荒い奴。幽幻界は大人しい奴はいないのか」

「主が言うか?紅き月の女型よ」

「うっせえ」

「まあまあまあ・・・喧嘩は良しな」とエルゥナが止めた。

「と、言う事は迷える魂はここにあるってことだな」とエルヴァにディフェンは、こくっと頷いた。

「そして、微かに欲が見える」

「そう、あれは欲の魂の塊さ。何か共通点あるな・・・」

「美しくありたい、だな死神」とアルゥナとディフェン。

リリスは手を大きく広げて喜ぶ。

「正解デスワ。 コノパーツ達ハ、美シクナリタイ。ソウ、物語のプリンセスノヨウニ。ダカラ・・・綺麗ニシテアゲタノヨ!! 美シサヲ美シサで求メル形デ!ソノ結果、人間ラシイ美シサを求めた結果ハ、人体ソノモノ!」

アルゥナは、「ふふふ」と笑う。

「だが、泣いているぞ・・・そのパーツは」

「罪人でもなく死ぬ理由のない、死ぬ希望もないノーマルにしてみれば、そりゃあ泣きたくなる。当たり前だ」

柊が、過去を思い出したようにふっと優しくも怖い目つきになる。

「まったく・・・ザラの事件とよく似ている。

よく聞け、阿呆人形。 人はそのままが美しいんだよ」

「アハハハハ! バカミタイダ! ガハッ!」

リリスが柊を馬鹿にすると、リリスが吹っ飛んだ。リリスのいた場所に白翠が立っていた。

「なんて嘆かわしいことを。そして、別ドールを使って古界エリアYを襲っているということですね。こちらは骸でドールを作り、あちらはドールを人間にする。

なんてことを・・・」

「えええ・・・陰陽師以外の始末屋しか手が付けられねえからグレンジャーにも頼んだが足りるか?人数?」

その話を聞いて柊は血の気を引いたが白翠は柊に笑った。

「大丈夫です。無茶はしましたが、カタリアの姫神を呼びましたので」

柊はほっとした。そして、帯から銃を取り出した。

「じゃあこっちは遠慮なくいくよ」

「魂は、俺が回収するでありんす」

鎌から黒い炎が燃え上がる。

「エルヴァ! 策は!?」

「それぞれのパーツを正確に柊が射撃。そして、ディフェンが魂回収。リリスはアルゥナ・エルゥナ」

「了解」

「「御意」」

「白翠様は浄化を」

「ええ」

白翠は銀水の鎧に変化する。



―古界Yエリア


グレンジャーと玲は共に900ヤード離れたビルで本体をの場所を待機する。操り糸や道化師をリオルアース・ヴェルゥナ・アマグラシアが切り裂いていく。亞紀羅は、本体を探す。

「欲に従順なのは良いけど、それは己が中で一夜の泡沫として夢を見ろ!」

ザッ!

「サキュバスの名を汚した恥を知れ!! ナイトセイバー!」

巨大な剣を一本に繋げて糸と人形を切り裂いていく。

「月鏡よ、望まれぬ欲を静寂へと封印せよ」

アマグラシアの背後に三種の色が混ざった月が現れ、人形を破壊していく。

亞紀羅は無言で糸を切り裂き、本体を探る。900ヤード離れたビルからグレンジャーがスナイパーバレットで構えてバックアップに玲がいる。

「玲、人形が囲んでいる」

「ああ」

玲は愛用のルガーの銃を取り出した。

「俺を殺すなよ、玲?」

「ああ、殺さない」

その瞬間、玲はルガーの銃を高速で発射していく。

「あとは、亜紀羅が掴めれば・・・合図があれば脳みそぶち抜ける。まずい、人間が絡まれた」

パーンとトリガーを引いてその糸を切る。人間は慌てて逃げていく。

「玲、通り魔状態だ。すまない、アーマライトの銃も用意してくれ」

「ああ」

ライフルBOXからアーマライトを取り出してグレンジャーの横に置く。

「サンキュウ。バレッドで糸を切っていく。お前はビル周りの人間を助けろ」

「了解。コード8(エイト)」

「オーライ、6(シックス)」

二手に分かれて亞紀羅の援護をする。

「さて、開眼っと」

眼帯を取り、スコープを覗いて亞紀羅の援護をする。正確にバレッドの弾丸を発射しカートリッジを装着する。




―亞紀羅サイド


亞紀羅は、糸を切り、人形を投げ倒し、式姫の能力を生かして本体を探す。細かい路地を走りまわり、辿り着いたのは教会だった。

「本体、いたか」

人形は首を360度回転させてこちらに振り向いた。

「バレタ。バレタ」

喋る人形をガンと蹴り飛ばした。倒れた人形に飛び交い、抑えつけて心臓に1つきを刺した。


―玲サイド―

糸だらけなうえに人形だらけになっていたビルの下。愛用のルガーの銃で壊していく。



―ファンタスティックワールド、リリスのファクトリー前

骸の人形が突然、動きをやめた。リリスは顔を青ざめた。それを見て、アルゥナは「終わりだな」とニヤっと笑った。




―古界 Yエリア 亞紀羅サイド


道化師は人間の頭蓋骨でジャグリングして投げてくるが式姫化した亞紀羅には効かず避けられる。糸を出すにも全て切られてしまい、人形に飛び移り、押し倒した。

「今だ、グレンジャー! 脳みそを頼む。こちらは心臓を刺している」


―900ヤード先のビル

「OK」

アーマライトに切り替え、スコープで本体の脳内に標準を合わせて、発砲した。


パーーーーーーーーーーン!


―亞紀羅サイド


ガシャーンという音と共に頭は吹っ飛んだ。そして、亞紀羅は人形の関節を刺し、グチャグチャに壊した。

「これで、終わりのはずだ」


―古界 Yエリア

アマグラシアは変化に気付いた。

「ふむ。本体、終わったみたいだ。あとは、リオルアース。死んでない奴の夢を覚ませ」

「はいはい」

リオルアースが瞳を閉じて手を広げると薄い水色の世界が広がる。

「目覚めよ、望まぬ欲から」

そう問うと、全ての欲の糸が消えた。

「ありがとう、リオルアース」

「良い。運動になったしな」とにかっと笑った。



―ファンタスティックワールド リリスのファクトリー前

古界の人形破壊と糸が全て無効になり、リリスは足を崩した。無抵抗のリリスを黙って、アルゥナとエルゥナは二人同時に、関節から発砲し頭を撃って、バラバラにした。一方で柊は動きが鈍くなった骸の人形の関節を全て魔弾で発砲し壊す。そこから湧き出てきた魂が合体し、もう一度動き出そうとするがディフェンは両鎌の黒炎で切り裂き、動きを止める。

「死者よ、安らかに冥桜で揺蕩うがいい。その哀れな死に方には祝福も授けよう。だから、安心して眠りなんし」

小型の棺桶に封印した。

そして、白翠は残っている残骸に水剣を向けた。

「水は炎を消し穢れは消えよう。己が罪は消えず、炎の中を彷徨うことになるだろう。

水、炎、戌 永劫の死 水に穢れを浄化されるが煉獄の中で焦がされ滅ぶ」

そう言い、水剣で残骸を切り裂くと、水に包まれ消えた。

跡形もなくなったリリスのファクトリーの前。クイーンは少し悲しくなった。

「でも、これが人形師の行いです。当然の罰です」とエルヴァ。

「我々には、我々にルールがある。それまでだ」とアルゥナ。

「これから死者の片付けで忙しいから帰る」とディフェンはさっさ帰っていった。リフリィは物陰から記憶をしていた。



―古界 Yエリア

任務成功して全員集合した。

「私は帰らないとならない」

「妾もだ」

リオルアースとアマグラシアはそう言った。

「ああ。協力、ありがとう。また、どこかで」

「ええ」

そう言い、リオルアースはふっと笑い水陣から消えていった。

残されたメンバーは柊が帰ってくるのを待つ。ヴェルゥナはずっと、データ書類を行っていた。

「さて、俺は玲と帰る」

グレンジャーはそう言い、玲と帰っていく。亞紀羅とヴェルゥナは柊を待った。


―ファンタスティックワールド クイーンの城


白と黒のクイーンは正装で王座に立つ。

「今回は管理不足で申し訳なかったです」

「古界にそこまで被害がなくよかった。しかし、死者が出たのは不覚。

2人で心して謝る」

2人は礼をした。

「人の形は魂を宿す。それが悪くなっただけだ。じゃ、私は待っているやついるから戻る」と柊は水陣から消える。

「AE伯爵。白翠様。エルヴァ様」

不安そうな顔をする白のクイーンにエルゥナは「気にするな」と頬にキスをした。

「てめええ!エルゥナ!」

「あー、やだやだ、この双子魔神」

茶番に先まで殺伐していたこの場は和む。

「それじゃ、帰りますね。あんまり外に長居する方じゃないので」とエルヴァに続きリフリィも水陣から消える。

「AE伯爵は?」

「このまま帰る」

「そうだな」

「そうですか」と白のクイーン。


クイーンは膝をついて二人に深く礼をした。

何も言わずAE・グレイは、無言で背を向けて水陣と共に消えた。

「正体ばれたら堂々帰っていくんですね」と苦笑いをした。





―古界 柊事務所

柊が事務所に戻ってくると、書類の山だった。

「すまん・・・ヴェルゥナ」

「いいんです。なんとかしてくださいね」

「はい」

柊の戦いはまだまだ続きそうだった。ヴェルゥナは公安へ帰っていった。




―玲とグレンジャー


「こんな後だけど、[表]の仕事に戻るか」

「え? SRP(公安特殊組織)に?疲れた」

「・・・こっちにも仕事が入っているんだ」

コンと叩かれて、陣地の組織に帰っていく。




―紅き月の神殿


帰ってきた二人はベッドに倒れた。

「本当、脆いな・・・人間は」

「アルゥナもだよ」

エルゥナは優しくアルゥナを包み込んだ。




―人形は人の形。

身近にある狂喜のコレクションアイテム。

魂が宿り、大事にすれば穏やかに。粗末にすれば、闇へ。

実に繊細。

まさに、生きている本物の人間のようだ。


人形も人も紙一重。



            【終】

御疲れ様です。

最後までありがとうございます。

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