恐るべし物語補正
チャイナ風を出したくて偏った知識とオリジナリティを混ぜた結果、話が纏まるどころか大乱闘スマッry起こしてますが、温かい目で見て頂けると…
何か矛盾点があればお知らせ下さい
朱塗りの建物に瓦屋根、綺麗に並んでいる提灯がゆらゆら揺れている
オリフベルとはひと味もふた味も違って、まるで別の世界に飛んできたような気分になる
ヨスズの国民の服はボタンの着いていない前開きの服で前側で重ねて腰布で留めて、下は膝下までのズボン。女性はその上だけで丈が足首まであるような服だ。
珍しい服と感じているのは相手側もおなじ。先帝の代まで他国と交流を持たない所謂鎖国状態だった為、まだ見慣れないのだろう。視線があちこちからする
『これはこれはこれは!遠路はるばるようこそおいでくださいました!私皆様をご案内致します薛吉と申します。』
向こうからぽてぽて走って来て自己紹介した中年男性は中々人の良さそうな顔をしている
『これから世話になります薛吉殿』
そう言って一礼すると相手は驚いたように目を見開き、しばらくこちらを凝視する
『なにか?』
『い、いえ、外国のお方は勉強熱心でいらっしゃる』
何かを感心され、『ささっこちらです』と嬉しそうに案内をし始める
「…サイ、なんかごめんな」
「何を言ってるんだ。予想外なことは誰しもあるさ。俺だって未だに驚いている」
「俺も初耳。アルカディさんがここの言語ペラペラだったなんて」
そんな話をされているとは露知らず、見たことない建物たちに内心はしゃいでるアルカディであった
目的地である王城に着いたのはそれから2日後
────────
「天子、オリフベル帝国の使者が到着致しました」
「通せ」
「御意」
城に着いた私達は口を開けたまま暫く動くことが出来なかった
城…と言っても縦に長い訳ではなく、平屋が地平線まで伸びているとんでもなく面積が広い屋敷だ
薛吉と代わるように兵に案内され、着いたのは豪奢な一室。真正面に黒髪のいかにも威厳を持った、威厳の権化のような男が堂々と華やかな椅子に鎮座していた
聞かなくてもわかる。彼がヨスズの王だろう
李偉皇帝陛下
先帝の代まで鎖国を貫いた暗黙の了解を「古い」の一言で一蹴し、謎に包まれたままのヨスズを開国したのがこの御方。ただ、貿易については皇帝自らがお決めにならないと成立はせず、世界的に有名な大商会でも取引成立するまで多大な費用と時間がかかったという。
質のいい絹や人が作ったとは思えないほどの繊細な装飾品、珊瑚や真珠など、品質は全て最高ランクで誰も彼もが多少不利になってでもヨスズと取引をしたがっている。それはもちろんオリフベルも入っている
…、大商会でも年月かけてるのに半年で成立出来るわけないでしょう…
指定された場所まで行き、跪き頭を垂れるとすぐに頭をあげるよう指示された
「朕のわがままでよく来てくれた」
「本日はお招き頂き誠にありがとうございます。騎士のアルカディと申します。我がオリフベルの王から預かりました贈り物を是非お受け取りください」
後ろからオリフベルで用意した最高級の品々を披露する
「恐れながら陛下は珍しいものがお好きとお聞きしましたので、我が国からも珍しい品々をご用意致しました。」
「ほう、ひとつ見せよ」
そう言うのを待っていましたと言わんばかりに後ろで控えていたサイがマリヤと共に前に出た
そして手に持っているのは
「チョコレートにございます」
チョコレートは最近流行りだした貴族の甘味で蕩けるように甘く、いくらでも食べることが出来そうなものらしいが、生産量が少ないため物が高く、貴族でも月に1度食べれるかどうかくらいの高級品だ
毒見役としてチョコレートを口に入れた者は、目を見張って固まった。よほど美味しかったのだろう、ゆっくりと味わって喉に通していく
安全が確認されたので、李偉陛下も口に入れる
「これはなんと甘美なものだ…口に入れた途端に広がる甘さと独特の香り、気に入ったぞ。礼を言う」
なかなかの好感触で皆ひと安心する。
「して、朕の頼みは先に知らせてある通りだが良いな?」
「承知しております。私の力の限りお教え致します」
陛下はうむ、うむ、と満足そうに頷く
「そなたが教える相手は第1皇子と第3皇子の2人、ここでの案内はこの文官にやらせよう」
「浩然と申します。以後お見知りおきを」
「アルカディと申します」
他の者には違う案内人がくるそうで、私1人浩然について行く
真っ直ぐな黒髪が肩まで伸びており、青い目は少し鋭い。見た目は私とそう変わらないように見える
「こちらが使者様の使う部屋です」
広。
明らかに私が公爵邸で使っていた部屋より2倍程広く、飾ってあるものもどう見ても高級品のそれで、彫刻装飾等かなり手が込んでいる
「明日の朝食後にお迎えにあがります。それ迄はご自由に」
「ありがとうございます」
「…………」
急に黙ってこちらを睨む浩然
何か粗相をしてしまったのだろうか
「貴方はヨスズに滞在したことは?」
「ありませんが…」
「おかしい」
「はい?」
何が
「滞在したことも無いのに何故それほど流暢に会話ができるのですか。先程説明していた文官や侍女も外国特有の訛りがあったのに、あなたには無い。まるでこちらで生まれ育ってきたかのように」
「…………直接的に言うと?」
「何故貴方は滞在歴もないのにヨスズの言葉を正しく理解し、話せるのですか」
…………え?
「共通語では無いのですか」
「バカにしているんですか」
暫く尋問は続いたが、私も理解出来ていないので、浩然に余計な不信感を抱かせてしまったまま別れてしまった
備え付けのソファに腰をかけて、1度ゆっくり考えることにする。私はオリフベル出身のオリフベル育ち。周りにヨスズの言葉を話す人間など、養父なら有り得そうだが教えられた覚えはない。ほかに私だけ何か違うとしたら
「物語の登場人物?」
そういえば物語の中でも南国の皇子も言葉が異なるにも関わらず流暢に話していた気がする。物語なのだから言葉は読み手に分かりやすく共通表示になっているが、もしかしてそれが現実世界でも作用しているのだろうか
「なんてありがた迷惑な……」
難なく話せるのは有難いがおかげで不信感を煽ってしまったでは無いか。
項垂れている私が、この後ノックをして返事をする前に突入してきたニコロフに回し蹴りを決めるまであと30秒
空が白けて陽がまだ見えない頃、
昨日部屋までの道のりで鍛錬場と思われる広場を見つけたので、動きやすい服と持参してきた模擬刀を持って向かう
途中で浩然と会い、「どこへ行く気なのか」と怪しまれたので、昨日見つけた鍛錬場について言うと、どうやらそこはこれから教える皇子達の鍛錬場だったらしく、危うく失礼をするところだった。
武官達が鍛錬している所へ案内すると言われて素直に従う
かなり離れた所にあったそこは先程とは比べ物にならない程の広さで、地も均されている
向こうに集団が見え、野太い声と木の模擬刀がぶつかり合う音がいくつも聞こえる。どうやら先約がいたようだ
浩然が大きくも小さくもない音量で、10メートル程先にいる指導している大柄な男に声をかける
「周 雲嵐殿」
それでも聞こえたのか、大柄な男はこちらへ振り返って小走りで近寄ってきた
「これはこれは高潔な浩然サマが朝早くからこんな汗臭いところへ何用ですかな」
第一声から喧嘩ふっかけているような言葉に浩然は眉を顰める
「現在他国からの使者が、鍛錬したいから場所を貸してほしいそうだ」
「アルカディと申します。」
「周 雲嵐と言う。場所なら見ての通りいくらでもあるから素振りでもなんでもするといい」
一通りの挨拶を終えると、浩然は「では私はこれで」と足早にその場を去った。やがて姿が見えなくなると
「っかぁぁ!これだからお偉いさんは嫌いなんだ。見下すような顔しやがって、馬すら乗りこなせねぇくせに」
心からいやだと言うように、眉間にシワを寄せて帰って行った方を睨む
「あの」
「ん?おぉ、そうだった、お嬢ちゃん昨日来た使者サマだろ?若い女だって聞いて部下たちが騒いでな、襲われないように気をつけな」
「はぁ、」
ガハハと笑う大柄な男…雲嵐は白髪の交じった黒髪の持ち主で、筋肉の付き具合を見ていると素人でも長年剣を持ち、振ってきただろうと分かるくらい盛り上がっている
歳は45と養父のガノロフと歳が近いが、衰えを見せない程溌剌とした人というのはよく分かった
「ここら辺は基本的に自由に使っていいが、たまにお偉いさんが見に来るからその時は必ず挨拶をしなけりゃならん。お偉いさん達は俺たちの鍛錬の様子をみたいとか言ってるが、大抵ストレス発散のために俺達を馬鹿にする奴らが多い。それでもキレちゃいけないぞ」
どうやらヨスズの人達は血気盛んのようだ。
「そんなことを他国の人間に話していいんですか?」
「あぁ、べつに構わん。イメージ悪くなるのはお偉いさん達だけだからな」
ハンっと鼻で笑う雲嵐の後ろでは、先ほど打ち合いをしていた男達がこちらを見てヒソヒソニヤニヤしている
「あぁいうバカが居るから気を付けろよ」
「ご忠告痛み入ります」
どこの国でも嫌な奴はいる
オリフベルでも私が入隊したばかりの時は、男騎士達から模擬刀を折られたり、卑猥な言葉をかけられたり等、嫌がらせを受けていた。さほど気にしていなかったが、夜に丸腰の私に集団で襲いかかって来た時はそれなりに驚いた。返り討ちにしたけど、男としての機能を停止させたのはやりすぎだと、急いで間に入っていた当時の上司に怒られた
その男達は騎士団から除名され、領地に帰ったとか。親たちから文句の一言二言あるかなとは思っていたが、特に何も起こらなかったのは未だに謎である
昔のことを思い出しながら模擬刀を構えた時、先程浩然が去った方向からプライド高そうな1人の男性が歩いてきたのが見えた