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本人がいない所で話を進めないで頂きたい

マイペースに書いていることをお許しください…

不定期です…

 殿下に釘も刺してさぁ先に出発しているお嬢様達の所へ追いつかなくては、と早足で厩舎へ向かっていると厄介なオヤジに絡まれた


「おや、こんなところでペトロフ嬢を護衛しないで一体何をしているんです?アルカディ」

「……………ガノロフ副団長殿、」

 第1騎士団副団長ガノロフ、丁寧な口調だが言ってることは鬼畜そのもので、怒らせてはいけない人物。そして死にかけの私を拾ってくれた養父でもある

 養父とは名ばかりで、自分好みの騎士に養成したかったらしく男だと思っていた私を拾っただけのキツネだ

 幼少期から扱いはそこらの騎士より厳しく、子供らしい思い出など全くない。独立した今になっても定期的にこちらに様子見にきてダメ出しするだけして帰る

 そしてこの人を1度も義父ちちと呼んだことは無い。



「少々殿下にお話があったので、ナーナと侍女に頼んでお嬢様に先に帰って頂きました。」

「そうですか。今私はあなたがいつまで経っても学習していないことがわかりましたよ」

「………はい?」

ぎらりと狐目から覗く黒目が睨んでくる


「いくら師弟の間柄と言っても、所詮は男女。よからぬ噂がたつのは時間の問題では?人の口に戸は立てられない。1度噂されたら殿下だけでなくペトロフ嬢の名誉に傷がつくでしょう」

「男女と言ってもセバス殿もいましたし、」

「言い訳は結構。そんなもの後からいくらでも付け加えれます。とにかく今後気をつけることです、分かりましたねアルカディ」

「……はい」

「よろしい」


 にっこり笑って話は以上だと言わんばかりに踵を返して来た道を帰って行った

「なんなんだあの人は…」

拾い、育ててくれたのはありがたいが、たまによく分からない行動をされるおかげで気が休まらない



──────


「ガノロフ殿、そんな隅に居てはカビが生えますぞ。」

「ほっといてください」

「はぁ…またアルカディ殿に強く出てしまったのですかな」

 ビクッと肩を揺らすその背中は、先程堂々歩いていた者と同一人物に思えない

 アルカディの育ての親、ガノロフ・サイソティは齢40歳、丁寧な言葉遣いと、狐目で常に笑っているようにも見えるその顔は何を考えているのか分からない。

 飛び抜けた知能と技術で策を練り、戦場の知将と呼ばれている


そんな男だが、裏では義娘のアルカディへの接し方が分からないヘタレだったのだ

 ガリガリの状態でひろった子どもを鍛え上げ、自分の手足となる助手にするべく厳しく育てたのだが、数年後成長した子どもは明らかに生物学上女性の体をしていて、そこで女だと気がついた

 男だと思っていたガノロフは衝撃と恥ずかしさで、態度を変える訳にも行かず、そのまま育てること10数年

 義父娘の間には深い深い溝ができてしまっていた



「当時は貴方がこんなに不器用だとは思いませんでしたぞ」

相談に乗ってもらっていたセバスが大きなため息を吐く

アルカディが男だと思われていた頃から、何かと相談され、女だと気づいた時も1番に報告するくらい頼りにされていた


「アルカディ殿が少女だとわかった時、蝶よ花よと育てて『お父様』と呼んで甘えて欲しいなどと気持ち悪いことを言っていた貴方が、実際は蝶どころか毒虫を無表情で刺す子に育ててしまったのはどうしようも出来ませんが、どうして更に溝を作るのですか」

「私はそんなつもりなどなく…」

 プライドに負け義理とはいえ、娘に女の子らしいことをさせてやれなかったのをいつまでも悔やんでいる

 だから、これからまず親子の関係改善修復をしようと色々試みた

仕事の斡旋(殿下の剣師提案(同意なし))、手紙のやり取り(見習いを何度か送り込んだ時の業務連絡)、困り事の聞き出し(圧迫尋問)、日常会話(指摘ダメ出しオンパレード)etc

何故かマイナスの方向へ行ってしまう


「そして今回は何をやらかしたんです」

「ちょっと殿下と距離が近いのでは?と注意しただけで、」

また大きなため息が吐かれた

「殿下がペトロフ公爵令嬢にご執心なのは城どころか国民も知っています。変な噂が立つ方がありえないのに、アルカディ殿も大変でしょうな」


「私はアルカディが変な男に捕まるのではないかと心配で」

「殿下が変な男と言ってるようなものですが、まぁそこは置いておきましょう。あなたは一度アルカディ殿を手元から離した方が良い」

 そう言い終わり、セバスが懐から取り出した1枚の書状を見てガノロフは顔つきを変え、それを受け取った




─────────


無事お嬢様たちと合流し、帰路を辿る


「アディ、殿下と何を話してたの?」

「殿下が鍛錬不足のご様子だったので、相談に乗っていただけですよ」

「そう…」

お嬢様は相変わらずぽやぽやしている様子。どうか公爵家に着くまでに切り替えをして頂かねば、公爵様が荒れてしまう


「お嬢様、そろそろ制服が届けられる頃ではないでしょうか」

同じ危機感を感じた侍女が話の話題を振ってくれたおかげでお嬢様のお顔がキリッとした

「そうね、帰ったらすぐ確認して頂戴。隣国の学園編入だから、学力もマナーもしっかり事前に覚えておかないと王家の顔に泥を塗ってしまうわ。切り替えていかないと」


 先月、とうとう陛下から隣国への学園編入のご提案をされた殿下とお嬢様。同盟国同士で更なる仲を深めようと、公式で決まった交換入学

 こちらからは王族一人息子の殿下と婚約者のお嬢様、あちらからは物語では当て馬役の第二王子と妹ぎみの王女様

当て馬と言っても主人公の女性と少し話して第1王子が勝手に嫉妬するか、王女と気づかなかった女性が親しい様子を見て数日間モヤモヤする程度のモブに近い当て馬なので性格はイマイチ分からない

 と言っても国同士で初めて試みるイベントのためか、色々準備が必要なようで後1年ほど先の話だそうな



 色々考え込んでいると丁度公爵家の門が見えてきた

屋敷の前に止まり、お嬢様に手を差し出してエスコートに回る

本来これは身内の男性か使用人にやらせるものだが、どこかの誰かが「他の男にリディを触らせたくない」と言いやが…おっしゃって、私が任されることとなった

 扉を開け、部屋へ戻るお嬢様の後につづき、侍女達がお嬢様の着替えを手伝うため、ぞろぞろ着いていく。

「私の天使はおかえりかな」

お嬢様を見届け、後ろを振り返ると、公爵家当主である旦那様がニコニコしながら話しかけてきた

「旦那様、申し訳ございませんこちらから出向く予定でしたが」

礼を取ろうとすると手を挙げて静止された

「たまたまだったから構わない。それより、リディは大丈夫だったかい?」

 大丈夫、とは色々込められているがここで出てくるのは恐らく殿下と何かあったかの質問だろう

「はい。殿下と楽しくお話が出来たようでとても嬉しそうでした」

旦那様はそうか、と言って安堵のため息を吐いた

「アルカディ、本当にもしもの事があったら頼んだよ」

「肝に銘じます」


 そう話していると近くの扉から奥様がいらっしゃった

社交界で未だに話題の中心らしく『社交の薔薇』と謳われた奥様は、実年齢が分からないほど非常に若々しく、そして美しい

「フレッド様は心配しすぎですわ」

「む、だがアーネスト、リディはまだ16で、」

「わたくし達も実を結んだのは16の時でしてよ?娘だけ我慢を強いるのは可哀想」

「アーネスト…」

 なんだかいい雰囲気になっているようなので、影を薄くしてその場から離れた。

 完全に離れたところで旦那様の側近から事前に旦那様から後で執務室に来るよう伝言を授かったので、少し時間が経ったら向かうとする



 私は所謂住み込み護衛である。さすがに24時間永久に動ける訳でもないので、公爵家の使用人部屋の一室を借り仮眠を取っている

 中は質素なシングルベッドに勉強机、小さなクローゼットが置かれているくらい。よく言えばシンプル、悪く言えば味気ない部屋

 時々侍女たちが訪問してきて茶を誘ってくるくらいしかイベントは無い。ちなみに私が刺されて意識不明だった時、王城の医務室から運ばれたのもこの部屋なので、お嬢様にもバレている

前世はどんな生活だったかあまり覚えていない。覚えているのは性別と歳とこの物語だけ。よほど好きだったのだろう、自分の名前より優先して覚えている

 他人事なのは仕方がない。前世の『私』は今の「私」ではないから



婚約者である殿下とお会いするお嬢様の護衛とはいえ、仮にも向かうのは王城。それ相応の衣装を着ていたが、それを脱ぎ通常のいつもの護衛服に着替え終わった頃

 扉をノックする音が。返事をするや否や、お嬢様がひょっこり顔を出した

「お嬢様、御用があればこちらから行くと何度も」

「アディどういうこと!?説明してちょうだい!」

 いきなり怒られて何事かとお嬢様の顔をまじまじ見ると、うっすら瞳に透明な膜が。そしてズカズカ入ってきてこちらを思いっきり睨んでくる

「この短時間で一体何がありましたか」

「お父様から聞いたわよ!私の許可なしにヨスズに行くなんて!!」


「は?」

「…え?」



ヨスズって、東の帝国ヨスズですよね…?


はい??






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