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オーパーツとかじゃなくて

作者: 夏野篠虫

「――ごめん。もう一度説明してくれる?」

「あ、はい大丈夫デス」

 私は考古学を研究して20年の大学教授だ。特にオーパーツとされる物の専門家だ。古代人は現代人が思うよりも高い技術力を持っていた。オーパーツはまず人類が作ったもので間違いない。

 しかし私は本物のオーパーツが必ずあると信じている。なので広く情報を集めるために一般人の持ち込みを受け付けている。いい情報提供者にはそれなりの謝礼を渡す。

 ……過去の80人はダメだったが、今日はというと、ちょうど今オーパーツを持っている、という訪問者の話を聞いているところだ。

「ボクが先月隣町にやってきた時デス。夜中に人気ナイ公園に降り立ったんデスけど、外に出ると足元に見たことナイ筒状の物体が落ちてテ。まァ後で同じ物が町中にあると知ったんデスけどね。でも何種類もあるみたいで、ドレモ不思議な模様で中が空洞で――」

 訪問者は目の前のソファから前のめりで私に熱弁する。

 私は頭を抱えずにいられなかった。


 机に置かれたオーパーツはコーヒーの空き缶だった。



 ……それじゃない。けど物はどうでもよかった。

 今、私の前に座るのは楕円形の真っ黒な目玉、鼻は2つの切れ目のみ、140cmに満たない体に膨張した頭部、そして光沢を放つ銀の肌……




 こいつ絶対宇宙人だろ!!!


 オーパーツとかどうでもいいわ! お前がオーパーツ作った張本人だろ!? どうやって大学入ったんだよ! 止めろよ警備員!! よく聞いたらちょくちょく宇宙訛りしてるし!! てか隣町に住んでんの!? 私も近くに住んでるよ!! 世界的ニュースになるだろ、おかしいだろ!!!

 今すぐ同僚の生物学者を呼んでこいつの細胞一つ残らず調べて欲しい。乱れる理性、高ぶる感情、うつむいたまま顔を上げられなかった。

「――って訳なんデスけど、これオーパーツ?デスかね?」

 純粋だ。私は間を置いて顔を上げた。彼の漆黒の瞳に悪意はない。傷だらけの肌と手に気づいて猛省した。

「それは、私が求める品ではない。けど良い話を聞かせてくれたお礼だ」

 私は戸棚から札束入封筒を渡した。

「あ、アぁありがとうございマス!!」

 隣人は丁寧なお辞儀をして部屋を出た。


 研究はまた一から頑張ろう。

 決意を新たに机に向かう背後、窓の外で学生と警備員に捕獲される隣人に私が気づくのは10分先の話だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 訪問者の日本語が怪しかったので、外国の人なのかな? と思っていたのですが、まさか宇宙人だったとは。「宇宙訛り 」と断定できる辺り、主人公は宇宙についても詳しいんですね。
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