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Remained GaMe -replay- 番外編  作者: ぼんばん
1章 神の両手に揺れる
8/38

8.調査編①

本編「調査編①」の別視点です。

あくまでも別視点であるため解決するための情報が欠けています。そのため推理はあまりお楽しみいただけないかと思います。


 参加者のほとんどがモニタールームに集まってくる。

 比較的後半にきた久我の姿を認めてオレは安堵した。だが、彼はおそらく酒門がいないことに気づき、表情を曇らせた。

 誰が指摘する間もなく、久我は酒門の自室に行ってしまった。数分すると、ボサボサの、寝起きらしい彼女を連れて戻ってきた。


「やっと集まったすね。彼女以外。」


 巨大な暗いモニターには、白い字ではっきりとルールが追記されていた。



『強制退場者が出た時の注意点。

 記憶を使われた参加者の自動消滅プログラムは削除される。代わりに24時間以内に【強制退場】を使用した人物がログインルームにてログアウト処理を行えば、次の世界の構築を開始する。処理が行わなければ使用した参加者以外の消滅プログラムを開始し、残った者は正規の手続きでログアウトを行う。』


『なお、今回【強制退場】をされた寿綾音は【サポーター】ではなかった。』


「どうして寿が……。」

「……。」


 千葉が悔しそうな声で椅子に当たる。そして、そのまま酒門の方を振り向くと意外な言葉を告げたのだ。


「酒門、お前がやったんじゃねーか?」

「え?」


 千葉の言葉に酒門らしくない間抜けな声が漏れた。

 しかし、御構い無しに彼は詰め寄った。


「お前が自分の命を守るためにアイツを利用したんじゃねーかって言ってんだよ!」

「そんな……。」

「……あり得る話ですよね、自分の命が大事ですもん。」

「まぁ、妥当な手ではあるな。」


 幾人かが同意する。友人を失ったばかりの彼女に酷なことをする。

 だが、仮に彼女が実行者だった場合、今はチャンスなんだろう。オレは黙って見守っていた。

 するとモニターに向かっていた梶谷が動いた。


「いい加減にするっす! 」


 先程までモニターに向けていた身体をこちらに向けて鋭い眼光で皆々を睨む。


「状況証拠だけで考えたら確かに酒門さんは疑わしい。でも、物的証拠が一切ないままこんな不毛な言い争いをしても無駄っすよ。」

「でも、それならーーー。」

「簡単っすよ。」


 不安げに言葉を発した木下に梶谷は微笑む。



「調べればいいんすよ。寿さんを襲った真実を。それにね、状況証拠だけなら酒門さんは親友だったから襲うはずないって推理も出来るんすから。」

「……梶谷。」

「だから、酒門さん。下を向いている場合じゃないっすよ。寿さんがただで消されるわけない、彼女が最後残した真実を見つけないと……先には進めないっすから。」


 酒門は目元を乱雑に拭くと顔を上げた。

 すでに普段の強気な表情に戻っていた。


「……そうだね、ありがとう梶谷。確かに状況だけで見れば私は怪しいんだろうけど。それは話し合いが終わってから言ってもらえるとありがたいね。」

「……チッ、」


 千葉が大袈裟に舌打ちした。なんで彼があれほどに苛烈に酒門を責めるんだろう。割と仲良かったよな。



「じゃあ2〜3人組に分かれて探索しようぜ。善は急げだ。明日の18時がタイムリミットだし、うかうかしてらんねー。」

「端末に情報が送られてきてるみたいだしね、これを参考にして動いた方がいいかもね。」


 風磨と荻の言葉に、一斉に皆端末を開く。


「じゃあこうしようぜ。

 荻と香坂、華ちゃんと莉音ちゃん、麻結ちゃんと楓ちゃん、オレと菜摘ちゃんは2人組。千葉、須賀、遼馬、それと久我、美波ちゃん、梶谷は3人組だ。千葉は冷静じゃねーし、美波ちゃんは一応疑わしいから、な。悪く思うなよ。」

「勝手にしろよ。」

「まぁ、仕方ないね。」


 まぁごもっともだな。

 追加で荻も提案をしてきた。


「ならさ、高濱サン。全員で現場に行ってその後は各チームで動く。今は21時だから……0時にログインルーム集合でどう?」

「ああ、荻の提案通りでいいと思う。みんなは?」


 誰も否定する者はいなかった。






 風磨が声をかけて、全員で移動する。


 端末の情報は以下のように退場情報というものが載せられていた。

 画面をスライドさせると、【今回退場させられた人物】、【退場させられた時間】、【退場させられた場所】、【アバター状態】について記されているのだ。


 【今回退場させられた人物】は寿綾音、【退場させられた時間】は20:00〜21:00、【退場させられた場所】はB棟奥の階段前、【アバター状態】全身に打撲痕、頭部より激しい出血があるが意識あり、と記載されていた。


 現場に着くとそれはまた凄惨であった。

 【床には出血跡】が残っていた。


 もちろん直視できない者が多い。オレは、一応最年長だし頑張らないとな。

 何とか現場に近づくと、横から風磨と香坂も覗き込んできた。顔色はかなり悪いが、酒門も後からついてきた。

 友だち、だもんな。何か情報を見つけてあげられればいいけど。


「出血は激しかったみたいだ。それ以外有力な証拠はなさそうだな。」

「見て、ここ。」


 オレが見つけた火災報知器の扉には【何かをぶつけたような跡】が残っていた。出血跡からは離れており、なぜついたのかは明らかでなかった。

 そんな調査光景を見た風磨は頭を掻きながらはぁ、とため息をついた。


「ならオレらでアリバイをまとめるわ。教えてくれた班から散ってもらっていいぜ。」


 彼の言葉に皆が素直に応じる。

 その場に留まりたくない者から告げ始めたため、酒門たちはまだ見ているようだったから、オレと千葉、須賀は後ろから2番目だ。

 そのため、久我と梶谷、酒門以外のアリバイは教えてもらえた。木下、武島、矢代は揃って自室にいたらしく犯行不可。梶谷、香坂、荻、麻結は美波の兄の部屋にいたから同じく。風磨は1人で倉庫にいたそうだ。


「遼馬のアリバイは?」

「オレは風磨達との夕食が終わってから1人で温室にずっといたよ。……途中、久我が来たけど。」

「確認しとくな。須賀は?」

「オレもメシが終わってから自室にいた!」

「千葉さんはいかがですか?」

「……オレは、お前らが出て行った後だろ、カフェテリアにいた。誰にも会わなかったぜ。」


 カフェテリア? あんな場所にいて誰とも会わないなんてありえるのか? しかも久我は千葉を探していたのに?

 オレはつい彼を疑いの目で見てしまう。

 風磨も同じことを思ったらしく、少しだけ眉を吊り上げた。


「遼馬、調べる場所決まってるか?」

「いや、特にはまだ。」

「なら、1つオレも気になってることがあってさ。オレが倉庫にいた理由なんだけど、実は放火に使うための着火剤を探してたんだ。」


 オレと須賀は顔を見合わせた。

 確かに何時間も探すような場所に着火剤が仕舞い込んであった覚えはない。


「20時から21時の間はそこにいたんだけどな。その理由が着火剤が無かったからなんだよ。ついでにどっかに取り上げられてないか確認してもらえねーかな。」

「確かにこのままでは外部爆撃できんな! よし、オレ達が探そう!」

「はぁ、そんなことしてる場合じゃねーだろ! 責めるべくは別、」


 須賀が迷わず千葉の顔面を掴んだ。須賀の手が大きいのか千葉の顔が小さいのかはたまた両方か。

 思わぬ力技に、風磨も木下も、もちろんオレも言葉を失った。


「先も言われただろう。冷静さに欠けるお前は偏見を持ち、客観的な見方ができん。ここはひとまずできることからするのだ!」

「……チッ、分かったよ。」


 こっわ。

 風磨も苦笑いしながらオネガイネ、なんて片言で呟いていた。





 オレ達はまず倉庫に行った。

 ここは異常なまでに千葉が嫌がったものだから、オレが中に入った。どうやら本当に綺麗さっぱり着火剤がないらしい。

 それに一部男性のものか、大きめの足跡がある気がする。風磨……のものではない? というかこんな奥に着火剤はないから入らないよな?

 あとは千葉が作ったリストを見ながら物品を見たが、他には特に目立って紛失したものは無さそうだ。

 途中で矢代達が来たから、申し送ってオレ達はその場を後にした。須賀が抑えているとはいえ、千葉が外で暴れているらしい。これでは碌に調査もできない。だけども、千葉の反応的にはここに何か致命的なものでもあるのだろう。

 追々来る3人に伝えればいいだろうと頭の中にメモをした。


 次に向かったのは屋上だ。

 物を隠すならここがうってつけ、とオレは思う。それに妙に鋭い矢代が屋上に何かがある気がすると言い出したから調べる価値はあるかもしれない。ついでに武島に命令されその場では須賀も張り切っていた、が。


「ここ調べたって意味ないだろ。」

「たたたたのんだぞ、石田よ!」


 千葉は本当にそう思ってそうだ。でも、何で須賀もこんな挙動不審になっているんだ。


「須賀、武島に頼まれたんだから早く上っ……「嫌だぁぁぁ! オレは高いところが苦手なんだ!」

「「……。」」


 千葉と目が合った。さすがの千葉も呆れていた。

 梯子に無理やりぐいぐいと押すと腰を抜かした。嘘でしょ情けなさすぎる。

 オレはとりあえず非協力的な2人を置いて、屋上に向かった。せめてもの協力として、2人には転落しないよう梯子を照らしてもらうことにした。

 屋上に行くと案の定、大量の着火剤が置いてあった。ご丁寧にリュックに詰められているが、いざ背負ってみるとよくこれを持って上がったと感心するほどの重さだ。


 オレが梯子を下っていると、今か今かと待っていた3人がちょうど来ているらしかった。


「何してるんすか?」

「ああ、屋上に今石田が行っているんだ。情けないがオレは高所恐怖症でな!」

「なんで屋上に?」


 ちょうど酒門が質問したタイミングでオレは地上に着いた。


「矢代が屋上に何かある気がするとか行ったからな! 武島さんが探せといったら探すしかないだろう!」

「……2人は付き合わされてるわけっすね。」


 そういうわけではないんだけど、何となく須賀の株が上がったら癪だったから黙っておいた。


「上にこれがあったよ。」


 オレがカバンの中身を見せると、酒門と梶谷は顔を顰めた。


「結構な重さだね。」

「うわー、オレこれ背負って上れる気がしないっすね。」

「そうだね、これ背負いながら懸垂って相当だと思う。」


 酒門がやってみてというもんだからやってみせたけど、やっぱり重い。そもそも酒門や梶谷に至ってはそもそも上がれなかった。

 そもそも下段が酒門の顔くらいの高さだしな。


「まぁ、関係あるかは分からないけど、男性だろうね。着火剤を屋上に持って行った人。」

「別にそんなの関係ねーだろ。」


 千葉がため息をついた。もう久我に任せて、さっさと必要なことを伝えよう。オレは酒門と梶谷に近寄った。


「……ここ、梯子の跡とか無かったから梯子で補ったってことはないと思う。昼間は倉庫に着火剤あったしね。千葉が嫌がるから、オレたちは探してないんだけど、今倉庫を矢代たちに調べてもらってる。行ってみたら?」


 オレが勧めると2人は顔を見合わせ頷いた。



 千葉と須賀の妨害を受けつつも何とか調査を行なったが、とてもでないが情報が集まらなかった。

 梶谷達がどうにか集めててくれればいいが。

 オレはため息をつきながらも、時間が近づいてきたため、2人とともにログインルームへ向かった。

石田視点の集まった情報


①退場情報

【今回退場させられた人物】寿綾音

【退場させられた時間】20:00〜21:00

【退場させられた場所】B棟奥の階段前

【アバター状態】全身に打撲痕、頭部より激しい出血があるが意識あり

*彼女はサポーターではなかった


②階段周りの状況

階段真下の床には大量の出血跡、そして少し離れた消火栓に何かをぶつけたような跡がある


③みんなのアリバイ

木下、武島、矢代は一緒に自室にいた。

梶谷、香坂、荻、加藤は美波の兄の部屋にいた。

須賀は自室で1人だった。

高濱は倉庫に1人でいた。

本山は図書館で眠っていた。

石田は温室にいた。

久我は施設中を探し回っており、石田と高濱には会っている。

千葉はカフェテリアにいた。


④高濱の探し物

高濱は倉庫にある着火剤を探そうと計画していた。

明日実行するために探していたが見つからなかった。


⑤倉庫の様子

奥の埃が溜まった所に足跡が残っている。

どうやらそこそこに大きい足のようだ。


⑥屋上に置かれた着火剤

屋上には大量の着火剤が置かれていた。

かなりの重さで女性がまとめて運ぶのは難しそうだ。


⑦脚立の行方

脚立を持ってきた痕跡はなく、脚立が運び出された様子はない。


⑧屋上の調査

須賀は高所恐怖症のため屋上に登れそうもない。


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