29.終わりのない悪夢
本編「終わりのない悪夢」〜「過去の現実」別視点です。
「……。」
オレはのそりと身体を起こした。
隣に人の気配がしてそちらに視線を向けると、冷汗をかく酒門が目に入った。
「……ッ、酒門、大丈夫?」
「……アンタもさっきまで疑ってたくせにお人好しだね。石田さんのおかげで身体も痛くないよ。」
「は?」
そうだった、咄嗟に倒れる彼女を抱きしめてしまったんだった。
何となく照れ臭くなり、視線を逸らしてしまう。ちょうどそちらを見るとふらつきながらもしっかりした足取りで武島が何かを持って戻ってきた。
「あの、これ。」
彼女が酒門に差し出したのは、濡れたタオルと氷嚢を取りに行っていたらしい。
酒門は驚いたように目を見開いていたが、礼を言うとそれを素直に受け取った。
しかし、警戒を崩してはならないだろう。オレは大きく息を吐くと気持ちを落ち着けた。
「……ほのぼのとしているところ悪いんだけど、説明してもらうからね、酒門。」
「そうだね。木下の世界と、千葉の世界になってから、私が知ったこと、何を狙ってこの世界に来たか説明する。その前に、全員。端末をはじめとした電子機器は電源をつけないでね。」
「何でだ?」
気怠そうな千葉は不思議そうに首を傾げた。さすがというべきか梶谷はすぐに自身の考えを述べた。
「もしかして電子機器をつけると、【スズキ】に連絡がついちゃうから、っすか?」
酒門はこくりと素直に頷く。
「今から今回のステージについて話す。もしかしたら、ここに今回の【箱庭ゲーム】の目的が隠されているかもしれないから。」
「目的?」
特別ここに何かがあるのを知っているのか。
他の参加者達は梶谷も含めて未だ戸惑っているように見えた。
「【スズキ】が頑強にロックをしていたプログラムをこの世界にダウンロードした。おそらく、動画になかったあの部屋だと思う。」
「何でそんなこと思うわけ?」
オレの疑問に肩で息をしながらも酒門は語る。
「【スズキ】とやりとりしていく中で、私の印象だけどどうしたってあの人に具体的な目的を感じられなかった。そして外部に公開することなく【スズキ】の手の中で済む話ならば、このゲームの過程とかエンディングに何か括りがあるんじゃないかって思うんだよ。」
えーと、と本山が迷いながらも自身の意見を述べる。
「つまりは、その隠されていたプログラムに、【スズキ】の動機を求めるってこと?」
「そう、そしてその思惑と別の方向にゲームを進めれば何らかの手立てが見つかるかもしれない。それにもし、この世界にヒントが無くてももう1つの世界に移れば……。」
いや、と彼女は首を横に振った。
考えたくもない、仮定の話なのだろう。
「じゃあ、すぐにでも探索に行った方がいいですよね?」
「武島の言う通りだが、オレからも1つ聞きてぇ。」
ふんす、と気合を入れた武島を尻目に座り込んだ酒門に視線を合わせて彼女の眉間を千葉が指差す。
「お前がそんなに苦しそうなのは【サポーター】になったからか? 久我が残した情報の通り、【サポーター】は暴走するのか?」
「はぁ、何それ。」
武島も本山も、その内容について知らない3人はあからさまに体を硬らせる。
酒門はその3人の表情に、悲しそうにしながら答える。
「それもあるし、今【スズキ】が必死にこの世界にアクセスしようとしている。その影響。」
「……そうか。なら仕方ねぇな。」
千葉が酒門に対してしゃがんだまま背を向けた。その意図するところが分からず酒門は目を丸くするしていた。
はー、根性のある選択だ。
梶谷が口元を引き攣らせながら尋ねた。
「もしかして、千葉さんがおぶった状態で探索するってことっすか?」
「そうだよ。今回未知の世界なんだろ? なら、全員一緒に動いた方がいいだろ。」
「……おぶるならオレがするけど。」
一応オレが提案すると千葉は首を横に振った。
「アンタはオレより判断速いし身体能力高いからフリーの方がいいだろ。」
正直酒門に自分のコードを晒すようなことをしたくなかったから、オレは素直にそのまま任せた。
ちょいちょいと梶谷は手招きされ、酒門に近づくと彼女は自身の端末を梶谷に渡していた。梶谷は一瞬何が起きたか分からず端末と彼女の顔を交互に見た。
オレと同じ懸念はあったのだろう。さすが聡明というか。
「万一暴走したときに千葉を消さないように、ね。おぶるってことは首元のコード無防備だし。」
「姫抱きや俵担ぎでもいいけどよ。」
「却下。」
呆れたように千葉の冗談を突っぱねる余裕はまだあるらしい。梶谷は噴き出していた。
本当に相変わらずなんだな。オレは無意識に肩の力を抜いていた。
酒門達が話すかつて8年前のゲームは真実らしいが現実としては受け入れ難い。
1つ目の世界、その主を救うために久我のコーチの先輩が別の男の人を消した。
2つ目の世界、その主を救うために動いた女性が返り討ちに遭った。
3つ目の世界、恋情の縺れと目撃した人が2人消された。
4つ目、ゲーム存続のために男の人が自分の端末で自分を消した。
5つ目の世界では、【サポーター】が他の参加者を救うために久我のコーチと協力して世界を再編した。
さて、あてがないため探すのは適当ということになった。玄関まで行ってみたが特に何の変哲もない施設、といった感じであった。
「久我さんに聞いた通りに、第一の事件の現場から行ってみます?」
「よく分からないけどそれでいいんじゃないかな?」
「久我さんが言った順ってなると、1つ目がB棟奥の階段、2つ目が図書館、3つ目が倉庫、4つ目が隠し部屋、5つ目が植物園、すね。」
「……その世界でも1つ目の事件は階段関連なんですね。」
武島の指摘に酒門は少し悩むような様子を見せる。
たどり着いた答えは決して良いものではないであろうが。
「着いたね。」
オレを先頭に現場に向かったが特に変化は見られない。はて、と皆が首をひねる中、梶谷は階段の壁面に付いているボタンが気になり始めたようだ。
オレがぼんやりとみんなを階段の途中から見下ろしていると、梶谷がふと何気なくボタンを押した。
いやもう少し躊躇えよ。
突然階上の影が現れた。
一瞬何が起きたのか分からなかった。しかし、その影が突如話し始めたのだ。
『……お前、サポーターだろ?』
『何を言っているんだい? 訳が分からないな?』
「は、何だよこの声!」
「というか、梶谷くん何か押したよね?!」
千葉と武島の焦る声が聞こえた。
もし害なす敵なら早々に抑え込まねば。オレは躊躇いなく踊り場まで向かい、様子を見た。だが、その影達はオレの方を見る気配がない。
目の前で、オレより少し小さい影と同じくらいの体躯の影が何やら言い争いをしているのだ。
だ。
押し問答になっているうちに影は1階にいる面子に見えるところまで移動する。
『クソ!』
『させるかよ!』
影の1人から何か四角いものが飛び出した。
それは端末のようなサイズだった。
大きい影が小さい方に掴みかかったものだから、オレは止めるために手を伸ばした。
だが、影達はオレの腕をすり抜けた。
そのまま足を縺れさせた2人はゴロゴロと、しかし音を立てずに床に投げ出された。
何の感触もなかった。
全員がその影を呆然と見つめている。
先に起き上がったのは小さい方の影だ。投げ捨てられた端末のようなものを探り当て、何やら操作しているらしい。
『もしかしたら……。』
ここで影の再生はぷつり、と終わった。
梶谷は先程何気なく押したボタンをみたが、特に変化はないらしい。
「……何だよ今の。」
「もしかして、これって過去の事件を再生するボタンじゃないっすか?」
「確かに、それなら今のは久我に聞いた事件の、1つ目と同じだ。」
「そんな悪趣味な……。でも、間違い無いのよね?」
失神しそうな顔の蒼さであったが、本山はなんとか堪えて尋ねると、酒門が頷いた。
梶谷は信じられないものを見るような目で踊り場を見つめながらも、呟くように尋ねた。
「嫌な人は目を瞑ってていいんで、もう1回再生してみてもいいっすか?」
「ぅ、ぁ、私は、見るよ。」
この場で1番頼りない武島が真っ先に頷いた。
意外だったものの、全員がもう1回見ることに同意した。
やはり、やりとりは変わらず、小さな影と大きな影の押し問答、そして何らかの事件の一端を見ることとなった。
「……酒門さんの話を信じるなら、これは久我さんの先輩と前回のゲームの原因となったウイルスが取り憑いたアバターのやり取りってことっすよね。」
「そうだね。でも、今回は違う。被害者は綾音で、加害者は【サポーター】の役割を与えられたであろう久我だよ。」
「なら、そもそものゲームの流れが違いますよね? 確か【スズキ】さんは、ニューゲームとか何とかって。」
はた、と皆の動きが止まる。
そして、酒門は何か思いついたように目を丸くしたが、それ以上のことは述べない。
「他の部屋もみよう。図書館、温室、倉庫、あと隠し部屋は難しいかもしれないけど。」
少しばかり考え終えた酒門の提案に従い、順を追って確認していく。
図書館では女性が青年に背後から消された。
庭園では放置された女の子が消された。
同じ場所で女の子と男の子のアバターの中身が入れ替わり、共に消えた。
裏庭では、女性がバットで別の女性を殴り隙をついた上で消した。
残念ながら隠し部屋は出入口が見つからず確かめられなかったが、恐らく凄惨な再生を見せられるのだろうことは容易に分かる。
そして、温室でもまたある男の子が女の子を消したのだ。
その後は解散になり、各自自由行動となった。
酒門は本格的に体調が悪いらしく、千葉と本山が部屋で様子を見てくれている。鎮痛剤も効くか効かないか分からなかったがないよりマシだろう、と以前睡眠導入剤と一緒にダウンロードしたらしい武島が提供していた。
梶谷はうんうんノートと睨めっこをしていた。ずっとその後ろで武島がそわそわしていたから任せてもいいだろう。
さて、オレは自分のやるべきことをやろう。
【スズキ】の干渉がない世界、ならばあの赤根ワールドも自由に展開できる筈だ。
オレは屋上に行ってみたが、予想に反して何も起きなかった。
あてがない。オレは今までのことを思い返した。
千葉の世界、木下の世界、オレの世界、それで……。
「あ。」
オレは酒門の世界で感じた温室の違和感を思い出した。
何故だか安心するような感覚。
もし、赤根茉莉花さんが、8年前のゲームに参加した【サポーター】、そして5つ目の事件を目論んだ犯人だ。酒門の説明では、詳細は分からなかったが彼女にとって大切な場所だ。
オレは温室にたどり着く。
なんとなく、USBの出番だと思った。つまりこの何処かにパソコンがあるはずだ。
花壇を跨ぎ、初めて訪れた時に真っ先に目についた植物の奥を覗き込んだ。予想通り、そこには古びたパソコンのような大きな機器が鎮座していた。
「……あった。」
温室の出入り口についていたボタンと同じような装置もある。探ってみるとUSBポートがあったため、オレは赤根さんに渡されたものを挿した。すると勝手にパソコンが起動した。
やってしまったか。いや、やってしまったものは仕方ない。試しにボタンを押すとさっきの再現とは違う声が流れた。
『次の世界は、芳樹くんの世界。ただ、今までの世界とは違う。この箱庭の深部で構成される、特殊な世界。』
『この、ゲームの根幹に蔓延るウイルスを消してほしい。』
赤根さんとは思えない低い声。
たぶん、久我のコーチだ。そんな彼も、USBを持っていた。きっと、オレがずっと持っていたもの。
何が起きたか理解ができず思わずもう一度ボタンを押した。
『私だって、ありがとう。みんなに支えられて、恵ちゃんと芳樹くんに友だちって言ってもらえて、みんなに仲間って言ってもらえてうれしかった……!』
『本当は消えたくないよ……、でも、私は、……ッ。みんなが消えちゃう方が怖い……! みんなに生きてほしい……!』
オレは息を呑むと同時に手が震えた。
分からないけど、赤根さんはオレが残るまたは残るように守っていてくれたのかもしれない。それで、このUSBを託してくれたんだ。
そして、赤根さんはただの【サポーター】ではない。確かにこのゲームの中で生きていた。
その事実にオレは頭の中がぐちゃぐちゃになった。
「石田さん! 何してんすか!」
オレがそれを見終えると同時、梶谷の驚いた声がした。どうやら武島も一緒らしい。
ああ、焦っても仕方ないだろう。きっとあと一踏ん張りなんだ。
オレは大きく息を吐いて彼らの方を向いた。
「ああ、梶谷。こっち来て。」
ちょいちょいとオレが手招きをすると2人は素直に近づいてきた。
「よく見つけましたね……。」
「5つ目の事件が、どうも気になって。さっきちょうど再現が終わったんだけど、どうも変なんだよ。」
「変なんすか?」
オレはこくりと頷く。
促されて再生ボタンを押すと、想像を凌駕するものが流れたのだ。会話の途中から再生が始まった。
『この装置は【サポーター】のみが使えるいわば最終兵器。あなた達を守るためのもの、でも、今の私じゃ使えないの。』
『【サポーター】なんか、関係ないよ。どうやったらみんなを、赤根さんも助けられる?』
『……風花くん、』
『もしかして、オレのアバターを渡せば助かる?』
そこで一度プツリと動画は切れて、新しい場面になる。赤根さんの影はぐったりと倒れており、風花と呼ばれた影ーつまり久我のコーチーは駆け足で温室から出て行く。
そして出入り口のところで風花さんは自分の端末を起動させて1人で話し始めた。
『3人とも、久しぶり! って言っても3人はそう久しぶりな感じしないか。さて、時間もないから手短にいく。赤根さんのことはもう本人から聞いてるだろうから省略する。オレが話すのは、3人がオレの世界に行った後、ーーーーーーー。』
再びノイズが入り、場面が変わる。
次は温室の中で、彼が植物の中のパソコンに触れる。
『アバターの入れ替わりを済ませればいいんだよな……?』
彼が起動すると再び場面は一転。
彼の影が、再び赤根さんのような口調で話し出した。
『……この部屋は、外部からの一切の通信が叶わない代わりにウイルスの影響も受けない。そして、この装置を使うことが唯一脱出の手段だった、んだけど。それにはどうしても必要な条件があったんだ。』
『この世界の終焉は私の手で行われること、そして次の世界を構成するための記憶。』
『ダストボックスに入るにはログインルームからログアウト処理をすれば行ける……けど、行けるのは1人だからよく考えてね。』
『ないかな。おそらくウイルスからのメッセージだと思う。スズキさんがそんなこと命じるとは思えないし。何か情報が得られれば、って思っていたんだけど。』
2回目以降さえも何一つとして同じものはない。
オレは声音が震えないように努めながら梶谷に事実を告げた。
「毎回、ここの事件の再生だけ変わるんだよ。」
「何でっすか?!」
「……これ。」
オレは手に握っていたUSBの蓋を見せた。梶谷は植物の根本にある端子に挿さっている本体をチラ見した。
「どこで手に入れたんですか?」
「木下の世界で。赤根って人から貰ったんだよ。」
たぶん、予想外の返答だったのだろう。驚いたように2人は顔を見合わせた。
「貰ったのは屋上だよ。2人はあまり行ったことないから気づかなかったかもしれないけど、あそこはずっと誰かに見られているような感覚があったんだ。」
「……誰かって、【スズキ】さんじゃないんですか?」
武島の問いかけにオレはゆるりと首を横に振る。今思えば、赤根さんが見守ってくれていたんだな。
「オレも最初はそう思っていたよ。でも、あの世界で屋上を調べていたとき、今みたいな光の影が、言ったんだ。『私の世界に来たら使って』って。それでここで彼女の声を聞いて確信した。あの光は【赤根さん】だって。」
名乗るだけなら【スズキ】でもできる。
でも、こんな風にオレをここまで導いてくれた。再現とまるで同じ声。もう疑うことは許されない。
「じゃあここは誰かの世界、ってわけじゃなくて、前ゲームの【サポーター】、赤根さんの世界ってこと?」
「そうなると思う。」
武島の質問にオレは頷く。
ふむ、と3人で顔を突き合わせて首を傾げる。
「今回は誰かが犠牲になるわけではなくただ前のゲームの世界に来ているってことですね。……なら、助けが来るまでここにいられるんじゃないですか?」
名案と言わんばかりに彼女は目を輝かせる。
しかし、梶谷はゆっくり横に首を振る。
「実際のところ、それは難しいっす。端末を切って【スズキ】と連絡を取れないようにしたからといって4日間の期限も消滅するとは考えにくいっす。
正しく解釈すると、ここは【サポーター】の世界、もしかしたら酒門さんの新たな世界と言ってもいいんじゃないでしょうか。」
「飛躍しすぎな気もするけど……、梶谷の言うとおりだったら、期限は必ずあるってことだよね。」
その仮定に疑問はない。だがどうしたものか。
「でも、その石田さんのUSBのお陰でここからたくさん情報を得られるってことですよね? なら、何度も再生させて情報を集めませんか?」
「そうっすね。何回か回してみましょう。」
武島の意見に梶谷が同意して再び再生を始める。
やはり何パターンかあるみたいで、莉音が事細かに記載する。
そして10回目くらいの再生であろうか、そろそろ再生されるものに重複が見られれようになってきたとき、彼女の影は驚くべき爆弾を投げてきたのだ。
もちろんそれは風花さんに向けたものであったが。
『【サポーター】は世界が進めば進むほど、精神が壊れていく。理性も何もかもが。この世界が終わる頃には100%、いつまで保つか分からない。スズキさんならどうにかできるけど、介入できない状況。』
『スズキ、のこと何でそんなに信頼してるんだ?』
『……だって、スズキさんは味方だよ。だって彼女は、私だもの。』
『それってーーーーーー。』
そこでブツン、と映像は切れた。
3人は顔を見合わせて戸惑う。
「え、これって、赤根さんが、【スズキ】さんってこと?」
「いや、おかしいでしょ。だって、このゲームって8年前に行われたものでしょ? その会社だって倒産して国支援も無くなった。その中でどうしてルームの管理者が8年も経って再開するの?」
「……それは。」
それに3つ目の世界で赤根さんは、【スズキ】のことを別人のように語っていた。しかし、8年前の赤根さんはまるで自分のことのように言っている。
この矛盾はなんだ?
「……でも、同一人物とは限りません。このゲームの赤根さんは当時のスズキさんと同一人物なのかもしれませんが。」
どういうことだ?
梶谷は指を2本立てた。
「可能性は2つっす。
1つ目は武島さんの言う通り、【スズキ】の正体が赤根さん。2つ目は別人物。でも別人物だった場合、前のゲームを知っている人物の可能性が高い。前回ゲームと共通があるなら【スズキ】はゲームプレイヤーとして潜り込んでいる可能性がある。それに……。」
梶谷が苦しげな顔をする。
【サポーター】のことだろう。
「もし、酒門さんが言ったことが本当なら、……彼女はこの世界の終わりとともに、【サポーター】として、壊れるってことっす。」
武島は静かに涙をこぼす。オレもつい下唇を強く噛んだ。梶谷は目を雑に擦ると再現される影を見つめながら固く決意したような表情をした。




