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Remained GaMe -replay- 番外編  作者: ぼんばん
4章 計画にない目標へ
26/38

26.調査編④

本編「調査編④」の別視点です。

 オレ達3人は慌ててモニタールームへ向かった。どうやら酒門以外は千葉が送ったメッセージを見て集まったようだ。というか、オレらは端末が使えないから武島がいなければ決して気付けなかっただろう。危なかった。

 モニターにはお決まりの説明という名の煽り文句が書かれていた。


「とりあえず、酒門が来ねーけど始めるか?」

「いや、美波ちゃん犯人だったらどうするの……。」

「ここにいる全員が白になれば、必然的にそうなるっすからいいんじゃないっすか?」

「……ま、それもそうだね。」


 梶谷の言葉に、本山はじめとりあえずという形で全員が納得してくれたらしい。早速、と言わんばかりに千葉が【退場情報】と【アリバイ】の確認を提案してきた。



「じゃあ、【退場情報】確認するぜ。【今回退場したのは須賀、時間は8時から10時、場所は倉庫、外傷は特になし】。んでサポーターじゃねぇ、と。

 で、確認すべきはこの時間のアリバイだな。オレは8時半くらいまではカフェテリアで飯食ってた。そのあとはB棟のうろうろしてたぜ。ま、大体ホームセンターの部屋にいたけどよ。」

「何でまた。」

「いや、物の場所が変わってるの気になっちまって片付けてたんだよ。本来の目的は隠し部屋探しだけどな。」


 ホームセンターの部屋は恐らく武島の騒ぎのままになっていたため荒れていたのだろう。後で確認した方が良いかもしれない。


「ちなみに、だけど私は8時過ぎくらいからAIのある部屋にいたよ。何かまた初期化されてたんだよね……。」

(わたくし)は温室におりました。ご存知の通り、中から外は見えないので、倉庫に行く人は見ていませんわ。」

「私は部屋にいました……。9時半くらいにはカフェテリアに出て梶谷くんと石田さんに合流しています。」

「そうだね、武島9時半以降のことは保証するよ。それと、オレはその時間ずっと梶谷と一緒にいた。」

「石田さんに同じく、っす。」


 どうやら、完璧な【アリバイ】を証明できるのは、梶谷とオレだけらしい。


「ってなると班分けしにくいね……。シンプルに力で考えて、千葉くんと石田くん、梶谷くんとわた……いや、梶谷くんと莉音ちゃん、私と菜摘ちゃんでどうかな。」


 本山の提案に梶谷があっさり頷いたものだから、本山は少し驚いていた。当の本人達は昨日のことがあったため、特段機にする様子もない。


「じゃあ、そうしましょう。各自調査で、酒門さん見かけたら各班と合流する形で。」


 梶谷が仕切ると全員が頷いた。






 オレと千葉は倉庫の中の探索をしていた。

 ここに来る途中の、【温室前を通るB棟裏庭を介する道、中庭を介する道、寝室とかからも出られるA棟裏庭を介する道】には特に痕跡は見られなかった。

 オレから見れば須賀がリタイアした場所であることしか分からないが、千葉から見れば首を捻る箇所が何点かあるらしい。

 それを確認していると、梶谷と武島のちびっ子コンビがやってきた。


「どうっすか? 何か怪しいものありました?」

「ああ、怪しいどころか妙だぜ?」

「妙?」


 千葉がああ、と答える。


「【倉庫の物品の位置が違うんだよ。】」

「どんな風に、っすか?」

「オレの世界になってからは、ここの床には果物の缶詰、肉魚系の缶詰、お菓子、食器が置いてあったんだが、順番が違うんだよ。今の順番、2番目の世界の倉庫と一緒だな。」


 缶詰の位置がそれぞれ逆になっており、お菓子や食器の位置もズレているそうだ。

 よくもまぁ気づくものだと感心していると、いつの間にか奥にいった武島が手招きしていた。


「梶谷くん、ここ見て。」

「どうしたんすか?」

「照らすよ?」


 オレの端末で床を照らすと、【何かを擦ったような、埃が浮いたような跡】があった。丸い跡、のようだが。


「……しゃがんだ跡でないでしょうか。それに千葉さんが指摘した場所と近いので、関連があるかもしれません。」

「そうっすね。でも須賀さんは危害を加えられた様子ないし……、【外傷治療薬とか使った履歴】ないっすけど。」


 オレ達が話していると、千葉は奇妙なものを見るようにオレ達を観察していた。

 そうか、昨晩の出来事を知らない千葉から見たらこの距離感はおかしいか。


「どしたんすか?」

「いや、その、気分害したら悪い。何か、武島の面構えが変わったような気がしてよ。」


 案外受け入れている千葉に少し驚いた。

 だが、理由は説明してもいいものか。梶谷とどうしようかと、目で会話していると、当事者である武島は穏やかに笑っていた。


「……私、昨日自殺しようとしたのを2人に止められたんです。」

「へー……て、自殺?! はぁ?!」


 千葉のリアクションもごもっともだろう。しかし、それは予想していたらしい彼女は頷くのみ。


「梶谷くんに叩かれて、【矢代さん】と話させてもらって目が覚めました。今更、って思うかもしれませんけど、今までごめんなさい。これからはここから脱出する手伝いをさせてください。」


 千葉は目を瞬かせていたが、


「や、いいんじゃねーの? 味方が増える分にはいいだろうし。」

「ただ、その、経緯とかは、もしかしたら今回の事件に関わるかもしれないので皆さんが集まった時に話します。石田さんから聞いてもらっても大丈夫です。」


 驚き顔を潜め、真面目な顔に戻った千葉はわかった、と受け止めて礼を述べた。その時僅かに彼女は苦しそうな表情を浮かべたが、こちらも礼を言う。

 微妙な空気を断ち切るかのように梶谷が口を開いた。


「そういえば千葉さん、アリバイってもう少し細かく教えてもらえませんか?」

「アリバイかぁ……。お前らと朝食摂って、別れてから自室のパソコン見て、1階の廊下とトイレを見て、んでホームセンターの部屋にずっといたかな。無かったもんは、ハサミとロープと低い台だったな。」

「分かりました。ありがとうございます。」


 今のところ、彼のアリバイに妙なところはなさそうだった。

 それに千葉が気づいた無かったものとは、昨晩オレ達が使ったものだからおそらく関係ないだろう。




 2人が出て行った後、千葉がどこか遠慮しいにオレに昨晩のことを尋ねてきた。

 どちらにせよ武島の口から語られる気がするが、本人がオレに聞いてくれと言ったのだから伝えていいか。


「昨晩、梶谷が眠れなくて外で話してたら大きい音がしてホームセンターの部屋に行ったんだよ。そうしたら武島が首吊ってたからの助けたわけ。」

「……その原因、てのは解決したのかよ?」


 千葉はその事実に引くどころか明らかに心配の色が強い。


「大丈夫だよ。役に立てないって落ち込んでたけど梶谷からの愛のビンタで目が覚めたみたい。」

「アイツ女子に手をあげたのかよ! ……いやでも非力だし大丈夫か?」


 紳士的な発言の一方、梶谷には大概失礼なことを言っている。オレは苦笑しながら千葉の独り言を聞いていた。

 そんな話をしていると程なくして梶谷達の声が再び近づいてくる。

 何か忘れ物だろうか、2人で倉庫から顔を出すとまさかの人物がいた。


「酒門、おま、良かった……!」

「……。」


 オレはつい怪訝な顔をしてしまう。この非常事態にどこで何をしていたんだと。

 オレの警戒が伝わったのか、酒門も少しばかり緊張した様子になった。だが、それを庇うように梶谷が立ちはだかった。


「千葉さん、石田さん! 酒門さんは【昨晩からずっと隠し部屋にいた】んでアリバイがあるっす!」

「どういうことだ?」

「【退場情報】の【受信時間は10時37分】。これの前の更新時間は昨日の21時。……つまりは通信の繋がらない隠し部屋から出てないってこと。」

「じゃあお前は犯人じゃねーんだな。良かった……。」


 千葉は明らかに安堵していたが、オレはどうも釈然としなかった。ただ、その隠し部屋から端末が出ていない、というのは事実であろう。

 もっとも矢代達の時のように他人の端末を使っていなければということであるが。

 とりあえずその場ではオレは納得したことにした。


「あ、オレらはこの後AIの所と【スズキ】のとこに行ってくるっす。酒門さん、何かやらかして話せないんすもんね。」

「……。」


 無言は肯定。そのまま梶谷と武島は向かった。


「でも、酒門が無事で良かったぜ。【スズキ】のヤロー怒らせたって何したんだよ。またプログラム弄ったのか?」

「まぁ、そんなもん。」

「お前のやることは本当規格外っつーか。とにかく今はこっち手伝えよ。そんで、何かオレ達に手伝えることがあったらちゃんと言え。」

「……ありがとう。」


 そう呟く彼女はどこか後ろめたそうで。

 その姿を見ていると思わず彼女と目が合う。


「……梶谷と莉音のこと、ありがとうございました。」

「別にオレは、ちょっと手を貸しただけで直接は何も。」

「でも梶谷1人だったら莉音は助けられませんし、それに一緒にいてくれたんですもんね。梶谷のこと……。」


 そこまで言って酒門は何かに気づいたようにハッとした顔になった。ただそこで千葉に呼ばれてしまって、話は有耶無耶になった。


 その後調査をしていると、【スズキ】から何やらメールが送られてきた。オレはちゃっかり酒門の端末から見たが、【物質が01に分解した時の音が生じた履歴】らしい。

 8時50分に温室、9時3分にホームセンターの部屋、9時27分にバックヤードの部屋で起きている。

 オレからすれば何の話だという感じだが、酒門は何かに確信を持ったような反応をしていた。


 ただ、その時の彼女が何を考えているかオレは知っていた。あの表情は、自分が消えることを覚悟した人の顔だったのだから。

石田視点の集まった情報です。

①退場情報

【今回退場させられた人物】須賀縛

【退場させられた時間】8:00〜10:00

【退場させられた場所】倉庫

【アバター状態】目立った外傷はみられない

*彼はサポーターではなかった


②みんなのアリバイ

石田と梶谷はずっと一緒にいた。

千葉は8時半からB棟を歩いていたがほとんどホームセンターの部屋で片付けをしていた。

本山は8時過ぎくらいからAIのある部屋にいた。

木下は温室にいた。

武島は自室におり9時半から梶谷たちに合流している。


③ 倉庫までの道のり

それぞれの寝室から出られるA棟裏を介した道、中庭を介した道、裏庭と温室前を通る道がある。


④倉庫の配置

床には果物の缶詰、肉魚系の缶詰、お菓子、食器が置いてあったが、缶詰の位置、お菓子と食器の位置がそれぞれ逆になっていた。

2番目の世界の倉庫と一緒らしい。


⑤倉庫に残った跡

奥の雑多に物が置いてある場所にしゃがんだ跡がある


⑥アイテム使用歴

外傷治療薬など、アイテムを使用した履歴はない


⑦千葉のアリバイ詳細

梶谷と石田と朝食摂って、別れてから自室のパソコン見て、1階の廊下とトイレを見た。

その後はホームセンターの部屋にずっとおり、ハサミとロープと低い台が無かったことを確認している。


⑧酒門のアリバイ

隠し部屋にいたため、端末が更新されていない。

退場情報を受信したのは10時37分。

その前に更新したのは昨日の21時であった。


⑨ 【スズキ】から送信されてきた履歴表

物質が01に分解した時の音が生じた履歴。

8時50分に温室、9時3分にホームセンターの部屋、9時27分にバックヤードの部屋で起きている。

履歴に残っているのはあくまでも音のみでしか認識はできない。

音がなく数値化したものは履歴に残らない。

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