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Remained GaMe -replay- 番外編  作者: ぼんばん
2章 スタート・オペレーション
14/38

14.調査編②

本編「調査編②」の別視点です。ちょっと短いです。

「おう、やっと来たか。」


 千葉の言葉で、梶谷と酒門が集まったことに気づいた。

 この時のオレはたぶん周囲から見ればなんてことない顔をしていたと思うが、内心では汗だくだくであった。


「いないのは、菜摘ちゃんと楓ちゃん、武島さん。あと珍しく、縛だな。ん〜、呼び出しすっか。」


 風磨が辺りを見渡し、端末を触り出す。つい、彼の動きを凝視してしまう。

 そんな横で千葉がそそくさと2人に近寄っていた。


「2人はずっと一緒にいたんだよな?」

「もちろんすよ。ずっと隣の席で作業してましたもん。」

「じゃあお前らはアリバイがあるわけだ。」


 千葉はあからさまに安堵の表情を浮かべた。あの2人がアリバイ確定は心強いだろう、加害者でなければ、だが。

 そんな話をしていると、いつのまにか全員集まっていた。


「縛が来ないのは珍しいぞ〜。」

「おう、ちょっと急ぎの用があってな! それより、荻が犠牲になってなぜここに集まっている?」

「確かに、最初と同じようにログインルームに集まればよかったと思うぞ〜?」


 須賀の言葉を受けて、同意したらしい矢代は振り向きざまに風磨を見つめる。



「今回はみんなで別れる前に【アリバイ】を確認した方がいいと思ってよ。」

「温室集合のメールだろ? それを踏まえたアリバイだな。」


 加藤がそのように言うと、風磨が頷いた。

 どうやら温室集合のメールは風磨がしたが、実際それを提案したのは香坂らしい。


「なら、オレが纏めてやろう。なぜならオレは夕食後からずっと温室にいて、【温室集合にさせたのもオレだ】からな。」

「それって重要なことな気もするけど……。」


 本山が少し考え込むような様子を見せながら呟く。


「19時くらいに何か考え込むような荻が来てな。何やら悩んでいるようだったな。気になる人物がいると話していた。ここに呼び出せと言ったが、晒し者になるからとあの男は個別に話をつけると言っていたな。

 確かその時に、【『もしかしたら信者が増えるかもしれない。』とも言っていた】。」


 信者。

 矢代がよく信じるという言葉を言っていた上、武島の行動がそれらしい動きだなと思ってしまう。

 香坂はその場の人間のリアクションを馬鹿にしたように溜息をつきながら言葉を続ける。


「19時半くらいだったか。奴と入れ違いで矢代が来た。それからこの女は喧しいことにずっと温室にいた。」

「そだよー。龍平とは会ってないのだー。」


 矢代の言葉に何人かは脱力する。


「20時前だったか、そこの低俗たちが来た。」

「……て、低俗ぅ?」

「オレと加藤だな。そのあと時間ぴったりくらいに高濱が、20時10分くらいに石田が来た。ちなみにだが、温室に来る前モニタールームで梶谷と酒門を見かけた。声かけようと思ったが集中してたからやめたんだよ。2人が部屋でてなけりゃ、2人は白だぜ。」


 低俗と言われて涼しい顔で流せる千葉はだいぶメンタルが強いな。


「梶谷は部屋を出てない。結構話してたし。」

「オレも証明するっす!」


 千葉の証言もあり、比較的白い位置についた酒門は全体に向けて問いかけた。


「他にアリバイを互いに証明できる人は?」

「私たちできるよ。私たちは一緒に私の部屋にいたからね。」

「そうですね。」

「なんでまた私らの部屋に?」


 本山と木下の言葉に疑問を呈した酒門は首をかしげる。確かに木下は別部屋に振られていたはず。

 木下は申し訳なさそうにしつつも武島に視線を送る。なるほど、何かやらかしたか。


「武島さんが夕食後から(わたくし)達の部屋に篭ってしまったのです。矢代さんも不在にされてましたし、あまり刺激はしない方がいいかと。それに酒門さん達が向かっていませんでしたし、行く必要はないのかなと。」

「つまり、武島のアリバイはないってことね。」

「何で私が疑われてるんですか?! 私には動機なんてありません!」

「……動機は置いておいて、客観的な話だけしましょう。」


 梶谷だけがまぁまぁと宥めている。それを知らないふりをしながら本山は続けた。


「千葉くんと同じように、私たちは美波ちゃんと梶谷くんのアリバイを証明できるよ。だから、今回の議論は2人に進めてもらうべきだと思うんだよね。……香坂くんと矢代さんも限りなく白だけど、進める気ないよね?」

「ああ。オレは勝手に調べさせてもらう。」


 本山の確認に、香坂は即答し、矢代は肯定も否定もしない。


「ちなみに、なんすけど最後に荻くんを見たのは誰っすか?」

「……たぶん、オレらが20時前に見たかな。」


 オレは見ていなかったが、一応答えた。

 ああ、腹の奥がムカムカする。

 風磨はその時の荻の姿を思い出すかのように何もない天井を見上げた。


「あー、何か焦ってるみたいだったしな。」

「焦ってる……? まぁ集合時間が近かったっすもんね。」


 梶谷は何か引っかかったらしいが、溜飲したようだ。風磨はいつも通りに周りに声をかけた。

 


「何となく疑わしい人は分かったし、組み分けしようぜ。オレは遼馬とーーー。」

「待てよ。」


 提案に待ったをかけたのは千葉だった。どこか申し訳なさそうな、困ったような顔をしていた。


「こう言っちゃあれだが、お前らずっと一緒にいたんだろ? しかも最後の目撃者って……一応考えにくいけど共犯の可能性もあんだからバラバラになった方がいいんじゃねーか? ついでに武島と須賀も。梶谷と酒門、本山と木下も、だ。」

「フン、バカにしてはまともなことを言うな。オレもその方がいいと思うぞ。」


 部屋から出ようとしていた香坂も鼻で笑いながら同意した。


「なら最も白いオレが決めてやろう。梶谷はオレと来い。バカは酒門と、木下は石田と、本山はバスケバカと、バカ女とうるさい男、ヒステリー女は信仰女と一緒じゃないと騒ぐだろう?」

「いや、ほとんど分かんないっすよ。」

「分かった。なら、さっさと調査に入ろう。」

「いいんすか、スルーで。」


 梶谷のツッコミなど無視して酒門は千葉を引きずりながらさっさと温室を後にした。

 オレは木下か。


「よろしくお願いします。」

「よろしく。行きたい場所、ある?」

「そうですね、まずは情報を確認しましょう!」


 【今回退場させられた人物】は荻龍平、【時間】は19:30〜20:30の間、【場所】はオレの部屋。【アバター状態】顔面に腫脹、他身体初見なし。

 顔面に腫脹、って殴ったってことか?

 オレは思わず顔を顰めてしまう。横目で木下を見ると同じことを思ったらしい、彼女も顔を顰めた。


「石田さんはご覧になりましたか? 【荻さんからのメール】。」


 荻は、オレへの呼び出しをすっぽかして全体に向けてメールを送っていた。オレが頷くと木下は首を捻りながらアイデアを絞り出す。


「彼がここに呼んだってことは、何かしらがここにあるのではないでしょうか。ですから、ここを探すのが得策かと。現場は頼りになる2人がいずれにせよまわるでしょうから。」


 確かに前回の話し合いで活躍した梶谷と酒門が見れば十分だろう。

 それに、もしかすればノートがここに隠してあるのかもしれない。オレはそちらを優先することにした。


「……それにしても、石田さんは無事次の世界に行ける可能性が高い、ということでしょうか?」

「……あ、」


 完全にそちらは意識になかった。

 こうやって【強制退場】が起きた今、犯人の1人勝ちか、残り全員の勝ちしか残らない。オレ1人が消えるという選択肢がなくなったのだ。


「どちらにせよ、調査は行わなければなりませんね。頑張りましょう。」

「……うん。」


 ほんの少しだけ、心当たりはあるのだ。

 だけどこの時のオレはその可能性から目を背けることしかできなかった。




 しばらく調べてみたが、進捗はよろしくない。

 そこへ酒門と千葉が戻ってきた。2人はオレに用事があったらしい。


「石田さん、アリバイについて詳しく聞きたいんだけど。」

「……話した通りだけど。」


 酒門の尋問は鋭いんだよな。

 オレは溜息をつきつつ、思い出すように細かく話し始める。


「風磨とオレは一緒に過ごしてて、メッセージに気づいた。それで20時前に荻を見かけた。それだけ。」

「ずっと一緒にいたのかよ?」

「……【19時半過ぎくらいまではオレは1人で屋上にいた】。あの提示された時間は殆ど風磨といたから疑われるアリバイはないよ。」

「ふーん……。」


 酒門の意味深な反応に居心地の悪さを覚えた。

 互いにそれ以上の収穫はなさそうだったため、その場は再度解散になった。


「ごめんなさい、(わたくし)が的外れなことを……。」

「仕方ないでしょ。それより荻の仮眠室とか気にならない?」

「あっ、確かに!」


 まぁオレの部屋でもあるのだけど。


 オレの部屋には、【矢代、武島、須賀、本山、荻が番号を連番にした動画】を撮っていたカメラがあるはずだ。

 木下とともに部屋にたどり着く。彼女はなぜかベッド下に直行したため、オレは小型カメラが設置してあったであろう場所を確認する。

 でも、そこにはなかった。

 本当に小さく息が漏れたが、木下は幸い気づいていない。内心で安堵しつつその周辺を探ったが、やはりない。

 もう他の誰かが見つけたのか。


「……そんな熱心にベッド下見て何か気になることでもあった?」

「へっ?! いえそんな!」


 慌てて必死に手を横に振る。一体何を探していたのやら。

 オレ達は一通り部屋を見たけど特に何もなかった。

 部屋から出るとカフェテリアでは本山がなぜか1人で座っていた。


「本山さん? お1人でどうされたんですか?」

「いやね、もう少しで集合時間だから戻ってきたんだけど高濱くんがトイレって言ってね。何か収穫はあった?」

「正直あまり……ですよね?」


 木下に聞かれて適当に頷いた。

 というのも、オレは先ほどから嫌な考えが頭を巡っていたからだ。調査を開始してからずっと抱いていた疑念。それは着々と確信に近づいていた。

 そんなことを考えていると、不意に2人の話が耳に入った。


「屋上にも行ったんだけどね。何にもなかったんだよ?」

「……何も?」

「うん。私ははしごを使って上ったから先に高濱くんに調べてもらってたんだけど。そこまでしても何も見つからなかったんだよ?」

「無駄足でしたね。」


 木下に言われて本山は全くだよ、と憤慨していた。

 しかし、オレにとってはその言葉はおかしい。

 なぜなら小屋の中には小型カメラからの映像を見るための受信画面が存在する。それがあって何も見つからない、とは言えないはずだ。

 となると、回収したのはそもそもの存在を知っていふオレか風磨だ。

 もし話し合いの時に第三者が受信画面のことを指摘しなかったら。


「ごめんな、楓ちゃん! 1人にして!」

「本当だよ全く。アリバイがーって疑われたらどうするの?」


 朗らかに話す彼が本当に?

 不意に目が合うと、風磨は薄く笑った。



「大丈夫か、遼馬?」



 ああ、この顔知ってる。

 オレがレギュラーで試合に出て負けた時、コーチにこっぴどく怒鳴られた後。何か後ろ暗いことを考えている時の顔だ。


「……大丈夫。」


 ただオレはそう言うしかない。今までも、もしかしたら、これからも。

石田視点の集まった情報です。

①退場情報

【今回退場させられた人物】荻龍平

【退場させられた時間】19:30〜20:30

【退場させられた場所】石田遼馬の部屋

【アバター状態】顔面に腫脹、他身体初見なし

*彼はサポーターではなかった


②みんなのアリバイ

19時くらいから香坂は温室におり、一度荻と会っている。荻と出て行くときにすれ違いでは19時半頃に矢代がやってきた。

メールが回ってすぐ20時前に加藤と千葉がやってきた。20時あたりで高濱が、20時10分頃に石田がやってきた。

梶谷と酒門はずっとモニタールームにいた。それは20時頃に千葉、本山が目撃している。

須賀はずっと外を歩いていた。

本山と木下は梶谷と酒門も動いておらず行く必要はないと判断して酒門たちの自室にいた。

武島は単独で自室にこもっていた。

荻のことを最後に見たのは石田と高濱らしい。


③香坂の証言

集合場所を温室にするように勧めたのは香坂である。


④荻の発言

荻は香坂に対して新たに信仰者が増えると言っており誰かと会う予定があった。


⑤ 荻からのメール

『皆さん、と言いたいところだけどね。興味ある人だけで構わないので、20時に温室に集まってください。』


⑥スマホの解除番号

矢代の提案で矢代、本山、武島、荻、須賀は連番にしていた。荻の部屋で作業は行われた。

石田はこれを小型カメラで高濱と見ていた。


⑦消えた小型カメラ一式

荻が部屋の片隅にメモを隠している様子、荻たちのロック解除番号が映っていた。カメラはどうやら設置した場所になく、なぜかもう一方の男子部屋に移っていた。

屋上には受信画面があったはずであるがなかったらしい。


⑧石田の部屋にあった日記

結局のところ見つからず。果たしてどこに……?


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