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師の強さ



エルザさんとは何もなく、翌日になりネアさん達と合流すると…



「鬼師匠!鬼師匠!」



ギルドの待ち合わせ場所で大声を出すネアさん…



「…朝から元気だねぇ…」



苦笑いしながらも、どうどうと落ち着くように言ってみるけど…まぁ無理だよねぇ…



「鬼師匠が戦うところが見たい!」



「…んん?」



何故かそんな要求をされてしまった…



…え……いきなり、そんな事を言われても…なんで?



「…ネアちゃん…それじゃ、わからないって」



ルミナさんが嗜めるように…ネアさんを落ち着かせた。



「……すみません、お師匠様…実はあの後、ネアちゃんと昨日2人で反省会をしまして……お互いが苦手な部分を話していたのですが…どこまで出来ればいいのか結論がまとまらなくて…」



申し訳なさそうに話すルミナさん。



「結論がまとまらなかったっていうのは?」



「はい……どこまで出来て出来ないのかを考えるまではよかったんですが……その…やっぱりこう言ったことも出来た方がいいと考え出すと…」



「…あー…なるほど……どこまで出来ていればいいかがわからなかったのか…」



…なるほど…



そこは見落としてたなぁ…



確かに、2人の生い立ちというか…これまでの経験は歪だ。



過度な期待に対してちゃんと教えられなかった知識と経験…



その結果、どこまで出来たらいいという判断がつきにくくなっちゃったのか…



「…はい…で、ネアちゃんと話し合った結果…お師匠様を基準で考えたらいいんじゃないかって話になりまして…」





…なるほど…



…なるほどなるほど…



だから、戦う姿を見せて欲しいって言ってたのか…



…確かに、僕は強いていうならバランス型だし…



2人に通じる部分があるのかもしれないねぇ…





…コレは難題だぁ…



「……お師匠様…?…どうかし……あっ…もしかして勝手に反省会なんてしたのが…」



と不安そうに聞いてきた。



「いやいや、そんな事はないよっ。むしろそこには共感が持てるくらいだし…ちゃんと期待に応えようとしてくれているってわかるからね」



と、僕はポンポンと頭を叩いた。



「…ふぇっ…///」



えっ?



なんで頬を赤く染めたの?



「…あっ」



「…いいなぁ…」



…えっ、何がっ…?



「…んんッ……えと…ルミナさん、変な勘違いをしないでね。あくまでこっちの問題だから…ルミナさんとネアさんがした事は褒められる事だし」



「そ…そうですかっ…///」



「…ぶー…じゃぁ、何駄目なのさー。鬼師匠が戦うとこみたい〜」



「ん〜〜…なんて言ったらいいなぁ…」



僕はなんと説明したか悩んだ。



正直なところ、ルミナさん達には驚かされたよ?



きっかけを与えたとはいえ、自分達で考えて行動し、次の一歩を踏み出したからね。



…城でよく見かけた“言われた事しか出来ない”貴族連中とは比べものにならないくらい、それはすごい事だったりする。



だからこそ、僕も力を貸してあげたい…





とは、思うんだけれども…



…それは難しい。



いや、別に意地悪をしているわけじゃないんだよ?



…問題は僕自身の強さの“レベル”にある。



「……やっぱりちょっと難しいかなぁ…」



「えぇ〜…だめぇ…?」



「…ネアちゃん…あんまり無理言っちゃ駄目だよ…」



と、すごく落ち込むネアさんとルミナさん…





…なるほど…コレが、申し訳なさから胸が苦しいってやつかぁ…



「…戦う姿くらいは良いんじゃないか?」



そんな2人を見てか、エルザさんも助け舟を出してきた。



気持ちはわかるよ?





「…でもねぇ…」



「…ルーク殿が危惧している事は理解できるが…やはり、自分達の師の強さを見ておきたいというのは、弟子として当然の権利ではないか?」



…ん〜…



…そう言われるとなぁ…





…まぁ仕方ないか…断るいい理由もないし…



「……わかった…」



「ッ…!?」



「ほッ…本当ですか!?」



「うん…でも、その代わり約束してね?」



「…え?」



「そりゃ、もちろんっ。しっかり鬼師匠の動きを見て、学ぶから」



「…学んでくれるのはいいんだけど…そうじゃなくてね………絶対、“僕のレベルを基準にしないこと“」



「…え?」



◇◇◇◇



そして、深い森の中で…



“…ドォォォォォオンッ…ドドッ…ドォォォォォンッ…!”



巨大な何かが地面に横たわる音が響いた。



「…さて、これでもいいかな?」



「…」



「…」



2人の様子を伺うが、目を天にして唖然としていた。



…まぁ…そうなるよね…



この2人だって、流石に知ってるモンスター…



“ワイバーン”…



それを10数体も一気に片付けて仕舞えば驚かないのも無理はない…かな?



「…これは……改めて見るとすごいな……流石に苦戦することはないと理解していたが…」



エルザさんも少し驚いているようだ。



だが、2人と違って、僕の事を知っている分どこか納得していた。



「…え…エルザさんは…お師匠様の事をご存知なのですか…?」



「うむ……ん?。君らは彼の事を知らないのか?」



「う…」



「…はい…この町でマナーの悪い人たちから助けてもらって…そこからお世話になっていると言いますか…」



「…ふむ…なるほど…」



「お…鬼師匠の何を知っているのさっ」



「…何と言われても……」



言葉に詰まるエルザさんがこちらをチラッと見てきた。



「…」



僕は小さく首を横に振った。



別に隠すつもりはないけど…逆に広めるつもりはないからね。



「…すまない、私の口から語れることは…気になるのであれば、本人に聞いてみるといい」



…アレェ〜?



なんだか、エルザさんに裏切られた気分…



「うぅ〜…鬼師匠!!」



ほらぁ…



ネアさんがなんだか興奮してるし…



「はいはい…特に話すことはないよ〜」



「話してよ〜!」



と言いながら僕はネアさんからの追及を交わす。



…別に楽しい話でもなんでもないから、聞いても仕方ないと思うんだけどねぇ…














「さて、これで満足かな?」



とりあえず、物理的に落ち着かせた後、2人に問いかけた。



「はい…ありがとうございました」



「…うぅっ……」



「…ネアちゃんは…自業自得だね…」



とりあえずゲンコツ…じゃなく、僕の杖で一発軽く…ね。



「…でも、お師匠様…予想以上にお強かったです…」



「ん…?…あぁ〜、まぁあれぐらいはねぇ」



「…てか鬼師匠強すぎ…全然戦ってるところ見えなかった」



と、不満そうに呟くネアさん。



だから言ったのに…





…でも、“少し”はやっぱり見えたんだね…



「…こういう言い方だと、自分を自慢してるみたいだから嫌なんだけど…僕と2人には大きな差がある…僕の攻撃がほとんど見えなかったのもそのせいだよ…僕はただ“魔法で作った風の刃”でワイバーンを切り裂いただけなんだけどね…」



「…やはり魔法だったのですね…ですが、全然感じ取れませんでした…」



「そこも経験の差かなぁ……武器を構えて…みたいな事は、上に行けば行くほど邪魔にしかならないからね…」



「…んー…先手必勝…みたいな感じ?」



「…あながち間違ってもないかもね…とりあえず、僕レベルでのちょっとした好きは致命傷になりやすい…だから、色々と工夫が必要になるんだよねぇ…」



「…じゃぁ私も…」



「はい、ドーン」



コツンっと僕はまた杖で、ネアさんの頭を小突いた。



「いてッ…!?」



「もう忘れたの、ネアさん?。“僕を基準にしないこと”って約束」



「うぅ…だってぇ〜」



「だってもクソもありません…いきなりこのレベルとか…あまり良くはないんだから」



「…良くない…というのは?」



「…レベルが違いすぎるんだ……そのせいで、学ぶ方は悪影響を受けやすい…」



「悪影響…」



「…と言っても、別に体に何か悪い影響が出るとかじゃなくて…意識の問題なんだけど……自分の力を見誤り、出来ない事をしようとする可能性があるってところかな……」



「…それは鬼師匠強すぎるからってこと?」



「…結果的にはそういうことかなぁ……そして厄介なことに、君らなら“触りぐらい”なら出来ちゃうかもしれないし…」



「ほんと!?」



「うん、本当だよ…ただし、そうした場合体に負担がかかるのは自明の理だ……本来なら、体の基盤となる部分を育て、研鑽を積み重ねる…その過程を踏まず、高度な事ができてしまうとそりゃぁ…ねぇ?。そして、理由もなく出来てしまうと根拠のない自信につながってしまう…最悪の結果すら招きかねないかなぁ」



そう、色々と理由はあるけど…



何故見せたくなかったのか…それは、勇者パーティーである彼女たちは、僕のやったことを…全てではないにしろ真似できてしまう可能性があったから…



…問題なく、真似できるのなら僕は別にいいんだけど…



…赤ん坊に聖剣を持たせたって満足に扱えないように、さっきの早撃ちもそれなりに技術がいるスキルだったりするわけで…



それを満足に扱おうと思えば、それ相応の能力がその人に求められる…



まぁ、当然の話だよね。



「…なるほど…お師匠様のレベルは私達の予想以上……確かに、これでは学ぶ学ばないという話でもないですね……そもそも土台が違いすぎて、学んだとしても扱いに困る部分ばかり…ということですか…」



「さすがルミナさん、理解が早くて助かるよ……別に2人のことを馬鹿にしてるわけじゃないからね……単純に、僕とのレベル差が大きすぎるから……明確な知識以外は教えにくいんだよね…」



基本、唯一解以外は他者に対して教えるのは難しい。



特に、感覚的な部分とか感じて理解するような技術や技なんかわね。



「…鬼師匠みたいになれるかと思ったんだけどなぁ…」



ネアさんは残念そうにそう呟いた。



ルミナさんもどこかしら残念そうにしている…



…別に僕みたいにならなくてもいいのに…



「…ネアさんはネアさん、ルミナさんはルミナさんの成長速度がある…そこを無理して変えなくてもいいんだよ?。ほら、急がば回れっていうじゃん?」



「「…」」



落ち込んだ2人を見て、慌てて僕は僕なりのフォローをするが、あまり効果は見られなかった。



そんな現状を見かねてか、エルザさんが口を開いた。



「…ルーク殿…そんな小難しく言わなくても……単純にルーク殿の能力はまだ2人には危険…そして、ルーク殿は2人に怪我をしてほしくない…そう伝えればいいのに…」



そして、空気を読まずさらに隠していた部分を暴露された。



「あちょっ!?エルザさんっ!?」



「「…っ///!!」」



まさかの暴露につづき、顔を真っ赤にした2人からの抱きつきをくらう。



「おわっ!?…いやいや…君らもなんで抱きついてっ…?」



「「…///」」



抱きつかれたまま何も言わない2人に僕は頭にハテナを浮かべていると…



「はっはっは、モテモテだなぁ」



エルザさんの愉快そうな笑い声が辺りに響いた。



…まぁ…慕われることは別に悪いことじゃないからいいけど……やりづらいなぁ…


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