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断った後に見えた本性




「嫌ですけど?」



端的に僕は即答した。



「…予想していたとはいえ………なかなかに辛いものがあるな…即答とも思わなかったし…」



と何やら複雑そうな顔をしている受付嬢もとい、姫騎士さん。



どうやら、僕の答えがわかりきった上で提案してきたことみたいだね…



んー…



てことは…



「…ちなみに……牽制かな?」



と、問いかけてみた。



どうやら当たりだったらしく、驚いた表情を浮かべていた。



「…流石と言うべき…だな……そこまで予想しているとは…」



「単純な辻褄合わせかなぁ…本来なら様子見を決め込む場面で、答えを予想できていたのに先陣をきった…つまり、周りに知らしめるための牽制…だって考えないかな?」



「……それにしてはいささか情報……確実な証拠が足りないのでは?」



確かに。



普通なら、そう考えるよね…“普通なら”…



「いやいや、おかしくはないでしょ〜。なんせ、この件の要には“僕という存在”がいるんだよ?。自分で言うのもアレだけど、十分すぎない?」



自意識過剰と言われそうだが、僕は“僕”の価値を甘く見るつもりはない。



なら、これは必然とも言える回答だ。



「……確かに…言えているのかもしれないな………こう言っては失礼なのは百も承知だが……初めて会った時からそうだ………君は得体が知れなさすぎる」



なんてこと言いますかねこの人…



いや、間違った評価でもないんだけど。



…だけどぉ…



「…いやいや……こんな男湯に平然と入ってくる人に言われても……それに、自分自身を過小評価してるつもりはないし」



そう。



理解しているからこそ、こうやって自由な暮らしを求めたんだから。



「てなわけで、僕はどこにも留まるつもりもないし、縛られるつもりもない……てなわけで、お帰りくださいなぁ〜」



「むむぅ……本人にそう言われてしまってはなぁ…」



「というか、おもいっきりが過ぎない?。僕が暴漢とかだったらどうしたのさ」



「その時は、私の見る目がなかった…それだけの話さ」



いやいや、そんな簡単な話でもないでしょ?



…確かに貴方ほどの実力者なら大概は返り討ちでしょうけど…



必ずしも勝てるというわけでもないでしょに…



それに、貴方は皇族なんだから……もしもの事…なんてそれこそ洒落にならないと思うんですけど…?



「……姫騎士さん…貴方、周りから少しは落ち着いてください的なこと言われてませんか?」



「…ッ!?、何故わかった…ッ!?」



「はぁぁぁ…」



いや、わかるよー…



分からないはずがないじゃん…ねぇ?



…お城の兵士さん方々…側近の人とか…すごい慌ててそうだね…今頃…



「…とりあえず、話は聞くよ……ある意味、ちょっとした牽制は僕にとってもプラスだからね……変に借りを作ったままとか嫌だしね」



流石にそろそろ誰か来たら言い逃れ出来なさそうだし…



「んっ、結局ヤルのか?」



「いやだからやりませんって…はぁ……とりあえず、部屋で話そっか…」



と呆れながらも僕はお風呂場を後にした…



変な人が来ちゃったなぁ…



◇◇◇◇



「んで、なんか大事な用でもあったりするの?」



借りた部屋に彼女を招き入れると、椅子に座りながら聞いてみた。



もちろん、変な展開とか何にも考えて…



…いや、この人の方が考えている可能性は高いかも知れないけれど…



「……あえてもう一度聞くが…やはりこちら側につく気は」



…まぁ、そこは確認するよね。



「ないよ」



「…だよな…」



と、どこか残念そうにしながらも納得した表情…



「…僕からもいいかい?」



「ん…何かな?」



「なんで、僕にそんな積極的なの?。どんな答えが返ってくるか……たとえ、誰が問いかけてきても同じ答えだってわかってるんでしょ?」



「…」



「もちろん、“僕“という存在がいることによる恩恵……それが、どれだけのものかは重々承知してる。だけど、それは必ずと言っていいほど叶わない現実だ……僕らが面と向かって話すのは初めてだけど……少なからず、貴方はそういった事を理解していると思っているんだけど?」



「…ふっ…つまり、こういう事か?。自分なんかに関わって時間を無駄に浪費するより、その時間を使って他の事を成した方がより効率敵だと?」



「あぁ、その通りだよ」



やっぱりわかってたみたいだね。



僕が言うのもあれだけど、首を縦に振るなんてことは、ほぼ確実にありえない。



なら、彼女が言うように、勧誘なんてものは僕の前では時間の浪費でしかない。



そう考えれば、僕に構うより他に力を注いだほうがいいのは自明の理だ。



いくら欲しくても、手に入らない物を必死こいて足掻いたところで手に入らないんだから…



もちろん、監視はアリかもしれないけどね。



でも、彼女ほどの人材がここにいるのはどうも理由がつけにくい。



「…ふぅ……まいったな…予想以上…いや、“予想以上すぎる“と言うべきか…」



「んー、なんかごめんね?」



本来なら、皇族からのお誘いを断るなんて考えられない事だ。



まぁ、そもそも断るメリットはない…むしろ、皇族の顔に泥を塗ったというデメリットの方が厄介な物だけど……まぁ僕には関係ないし…



「いや、何…君は何も悪くはないさ…」



「そう?、ならもうこれでこの話は終わりにして国に帰ったほうが」



「いや、それもそれでなぁ…」



なんで渋ってるの…この人…?



「………いや、純粋に何を優先した方が利になるかはわかってるんだよね…?」



「うむ…君を諦めて、国で事をなした方が良いと言うのだろう?」



「…わかってるなら…」



「…正直に言おう。私としては、国のことは二の次だ」



「……はいぃ?」



とんでもない発言聞いちゃったんですけどっ!?



「二の次だ」



「いや、言い直さなくても聞こえたから……え?…じゃぁ、なんでここにいるのさ?」



無理矢理彼女がここにいる理由をこじつけるならば、それは彼女の価値が高いからと言えるだろう。



何せ、護国の姫騎士という称号に加えて第一皇女様だ。



これ以上のカードなんてそうそうない。



少し説明を加えるなら、彼女の国では性別による区別などなければ、生まれによる区別もない。



もちろん、皇族や貴族、平民みたいな階級制度はあるけれど絶対的な差別を作らないようにしている国だ。



言い換えると、平民ですら国の主になる可能性がある国と言っていい。



まぁ、だからといって、じゃぁなりたいですって言ってなれる物でもないし、やっぱり皇族に生まれた人の中から次の国の主が決まる方が多いのだけれど…



そこは、差別ではなく区別。



人間は平等ではない。



生まれた環境で、結果までの過程に優劣がつく…その程度の事だ。



機会が少しでもあるだけ、他の国よりマシと言えるだろう。



つまり、彼女は交渉において最強のカード。



当然結婚なんかすれば、次の皇帝になる権利を一気に手にできる。



それに、容姿端麗だからお嫁さんとして欲しいなんて人もたくさんいるだろう。



…だから、僕は彼女というカードを使って、僕を籠絡しにきたんだと思ってたんだけど…



…どうやら違うようだね…



…えぇ…本当…なんで来たのさ…



「それはだな…まぁ、一言で言えば君に会いにきたからだ」



「…ん?」



「会いにきたからだ」



「いや、聞こえてるって…て…え?」



「そして、君と冒険がしてみたかったというのが本音だな。もちろん、婚約を結ぶことができるなら、それはそれでありだが」



「…あー…ちょっと待ってね姫騎士さん…?」



僕は痛くなる頭を押さえながら、なんとか話を遮った。



「…ん…?」



「…それって…ギャグじゃないんだよ…ね?」



「うむ。もちろんだ」



「…まじかぁ〜」



正直、予想外すぎて言葉に詰まるんだけどぉ…





つまり、この姫騎士様は…僕と冒険がしたいからわざわざこんな場所まで出張ってきたと?



「…姫騎士さん…暇なの?」



「んんッ……相談役の彼女と同じようなセリフをっ…」



いや、そう言われても仕方ないでしょ…



…て、その言い方は…その相談役の人にも同じように話したの…?





…うそーん…



「あー……僕、何かお気に召すことしましたっけ?」



正直、すれ違ったや少し顔を合わせた程度の面識しかないはずなんだけどなぁ…



「…そんなの決まっている…君の“強さ“だ」



何を当たり前なことを…とでも言うように言い切った。



「…強さ…ですか?」



「君が戦っている姿を間近で見たわけではないが…そのあふれんばかりの強者のオーラ……一眼見た時から忘れることができなかった……単純にどれだけ強いのか…どんな戦い方をするのか…何度も妄想しては体が震え上がったものだっ…///」



…いや、そんな顔を赤らめて乙女らしく恥じらわれても…



いや、妄想て…



「…わかるかっ…こうッ…///…それだけの強靭なオーラを放つ存在がっ、どのように私を自分のものにする為に“どんな事“をして来るのかというこ…こうっ…///……すまない…こういう感情はなんと言ったかな?」



いや、聞かないでよ…



…えと…



「……高揚感…かな?」



「そうっ高揚感!!。君にどんな事をされるのかとっ……考えただけで、胸の高鳴りが止まらなくて仕方ないんだっ!///」



「……」



…これは…うん…あれだね…



…あまり関わらないほうがいいと分類される人だ…



…俗に言う変人…は失礼か……こんなでも皇族だし……



…うん、特殊な性癖のお方とでも呼ぼうか……





…だけど…そうか……そういった場合もあるのか…



これは僕の考慮不足だったなぁ…



こう……特殊な搦手で近寄ってくる場合もあるんだぁ…



うわぁ…めんどくせぇ…



正直、僕に関わってくる勧誘系は全てお断りする。



もし暴力に訴えかけてくるのであれば、返り討ちにしたらいいとか考えていたけれど…



…あぁそう…こういったパターンもあるんだぁ…



「さぁっ、なんでも言ってくれっ!!。どんなプレイにでもお答えしよう!!」



「…」



…とりあえず、この姫騎士さんの保護者の方々…



どう育てればこう……うん……こんな感じに育ちますん…?



…もはや、噂で通ってる護国の姫騎士のイメージが急暴落してますよ…?











まぁ、こういう性格は嫌いじゃないんだけどさ…


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