二度目の転生は魔物幹部でした。
10年も前の話だ。魔王の討伐を成し遂げた日は。
旅行中の不幸な事故から同乗者三人で転生してからの年数でもある。
パーティを組んだ…一緒に転生して来た東條は兵士長として兵を率いて各地の魔物討伐を行なっている、アイツは俺が居なくとも大丈夫だろう。
もう一人の転生仲間…西野だが、前の国王の褒美として貰った王国近くの森に建設した小屋で此方の世界の研究に没頭していると風の噂で聞いた。あいつは研究の時間が一番幸せなのだろう。
「ミナミさん…?」
『嗚呼、御免よ、昔の事を思い出してた。公務に戻るよ』
俺は現在、前国王に代わりこの『ウシジマ』の国王を務めている、一緒に旅をした美しい姫『アリア』の夫としても国王としても多忙な日々であるが、ふとした瞬間の幸せを噛み締めている。
異変、謀反、反逆が起きたのは突然だった。
魔物兵の軍勢が突如国を襲撃したのだ。魔王討伐後は兵の増強を怠っていた事、平和な国であった為練度不足、防衛施設の破損等不幸が重なり魔物兵駆逐には膨大な時間と壊滅的な被害を受けた。
『…何故、突如魔物兵が…?』
前線で指揮を執りながら一言、愚痴。
「…国王、無事ですか?…無駄に悪運だけは持っているだろうから死にはしないだろうが。」
『東條…!帰還したか!…すまん、ご覧の有様だ。帰還の疲労も有るだろうが残党処理に加わってくれ。』
「…お前はいつもそうだな、大した実力も無けりゃ何時も他人任せ、俺はお前が嫌いだったよ。…何故あのジジイはこいつを国王にしたのか理解出来ない、アリアも何故こいつなのだ?理解出来ない、世の中理不尽だよなァ俺や西野みたいに才能を持った人間が苦渋を噛み締めるこの世に意味は有るのか?無いだろ?」
東條は淡々と冷たく、しかし憎悪を隠せない表情で語り剣先をこちらに向けた。
『いや…東條、お前望んで各国の魔物討伐を引き受けたじゃあ無いか、西野だって…』
震え声で一言反論するが東條はその声を遮るように『…馬鹿か?』と笑って続けて話した。
『俺らはお前の治める国で暮らす事を拒絶しただけだ。お前は俺らが望んで国に居ないと思っていたのだろうが、違う。断じて違う。お前から離れる為の口実に過ぎない。…今日でサヨナラだ。』
唖然、絶望、言葉が出ない。返答を待ってくれない東條は指で合図、すると空を覆う雲に描かれる魔法陣、黒魔法だと気付いた時には既に遅かった。直撃。
「西野…流石。」
朦朧とする意識で顔を上げると東條と西野が目の前に立っていた。それを認識した直後には東條の剣で首を両断されていた。
「永遠に眠れ、あばよ中野。」