19-ゆりおば……姉さんとあたし
ブックマークと☆での評価、ありがとうございました。
今回は前回の続きだけど、視点はさくらになります。
今日の放課後、あたしは綺美と近くのショッピングモールへと遊びに行った。
綺美は今まで着ていたおかしなデザインのシャツについて、少し気にしていたようなので、衣料品売り場で一般的なデザインのシャツを見てきたのだ。
でも結局、綺美は新しいシャツを買わなかった。
それよりも、自分の趣味の為にお金を使った方がいいと、思ったようだ。
まああたしも、食べ物に使いたい派なので、気持ちは分からないでもない。
というか、小学生のお小遣いで、服を買うのは厳しい。
たとえ買うにしても、親にお願いすべきだろう。
そんな訳であたし達は、本屋やゲームコーナや、綺美が好きな園芸店をを見て回って楽しんだ。
何も買わなくても、店の商品とかを見ているだけでも面白いよね。
あと、フードコートでたこ焼きとハンバーガーを食べたよ。
そして夕方になったので、綺美とは別れて帰ることにしたんだけど、その帰り道でスマホが鳴る。
で、無料通信アプリの着信があったので見てみると、
「左を見ろ」
と書かれていた。
あたしが左を見ると、そこにあった喫茶店のガラス窓の内側に、ゆり叔母さんが貼り付いていた。
彼女はあたしのお母さんの妹で、一時期は綺美のおばさんの子育てを助けていたこともある人だ。
この人が切っ掛けで、あたしは綺美と知り合った。
あ、叔母さんが手招きしている。
何か食べさせてくれるのかな?
あたしはウキウキしながら、喫茶店の中へ入った。
「やあ、いらっしゃい、さくらちゃん♪」
「いや……ここ叔母さんの家じゃないでしょ?」
「はっはっは、おばさん呼びはやめてくれないと、おごってあげないぞぉ~?」
「うん、ゆり姉さん! 大好き」
「よーし、お姉さん、なんでもおごっちゃうぞぉー!」
ちょろい。
じゃあ、遠慮無くごちになります!
「……そういえばさくらちゃん、綺美ちゃんと遊びに行っていたんだって?」
「あれ? なんで知ってるの?」
「さっきまで、ここに先輩がいたから」
あ~、そういうことか。
それはこれ以上無いほど、確かな情報源だね。
綺美のおばさん、綺美のスケジュールをほぼ完璧に把握しているし。
「綺美ね、今晩は1人だけだから、夕食は手を抜く……って、お弁当を買っていたよ」
「ああ、料理って何人前かを1度に作らないと、高くつくしねぇ。
それに手作りばかりだと、たまにお店の味が恋しくなることもあるし。
私もそうだから分かる」
いや、叔母さんは自炊が面倒臭いだけでしょ?
食事については、綺美にかなり頼っているって、綺美本人から聞いている。
まあ、今はおごってもらう身分なので、無粋なツッコミはしないけど。
そんな取り留めもない会話をしているうちに、あたしが注文したケーキセットとパフェが来た。
おお……美味しそう!
いただきまーす!
……と、あたしが食べているところを、叔母さんがニコニコしながら眺めている。
たぶん「餌付けに成功した」とか、思っていそうだなぁ。
まあ、あたしは食べさせてくれるのなら、どうでもいいけど。
「……あ、ところで、お姉ちゃんは何しているの?」
「ん? たぶん家にいると思うけど、なんで?」
「いや……夕食前におやつを食べさせているところを見られたら、怒られると思ってさ……」
「あ~……」
確かに怒られるな。
夕食が食べられなくなるでしょ──って。
でも食べられなくなる訳無いのに、意味が分かんない。
「これから夕食だってちゃんと食べるのに、おかしいよね」
「そ……そうだね」
そんなあたしの言葉に、叔母さんは曖昧に笑っていた。
「その太らない体質が、私は羨ましいよ、さくらちゃん……」
叔母さんはそう言うけど、あたしは太らない代わりに背が伸びたり胸が大きくなったりして、すぐに古い服が着られなくなるから、綺美みたいに小さいままの方が羨ましいんだけどなぁ。
まあ、それを言ったら綺美は怒りそうだから、言わないけど。
でも、美味しい物を沢山食べることの代償がその程度なら、別に構わない。
「ゆり姉さん、おかわりいい?
今度遊びに行った時に、マッサージをしあげるからさぁ。
いつも座りっぱなしで、身体がバキバキでしょ?」
「マジ!? それなら整体へ行くより安い!
よーし、お姉さんに任せなさーい!」
「わーい」
叔母さん大興奮。
何を想像しているのか分からないけど、顔を赤くしてだらしなく頬を緩ませている。
こういうところは、本当に綺美のおばさんに似ているなぁ。
……まあ、身近にはこういう人ばっかだから、もう慣れたけどさ。




