13-小テストの結果
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数日後、例の小テストの答案用紙が返却された。
2度と返ってこなくても良かったのに。
「このテストは、5年生までの授業内容を理解していれば、良い点を取れるはずです。
点数が悪かった人は、よく復習をしておいてください。
もしも次回の小テストでも点数が悪かった場合は、その人の宿題を増やしますよ?」
「ええ~っ!?」
お母さんの容赦ない通告を受けて、教室内に悲鳴じみた声が上がった。
それについては私も、他人事ではないんだよなぁ……。
「委員長!」
そして休み時間に入ってから、早速私の所へ来る丹治易さん……と、頭映さん。
「先程返却されたテストの点数はいかがでしたか?
さあ、先生の娘さんの実力を見せてくださいまし!」
うわぁ……。
凄く期待した目で私を見ているよ……。
でも私のテストの点なんて、恥ずかしくて他人に見せられるようなものじゃないんだよ……。
だから私は、
「──点」
と、消え入りそうな声で言ったけれど、丹治易さんには聞こえなかったようで、聞き返してくる。
「え、なんて?」
「だから47点だよぉっ!!」
今度は自棄気味に申告する。
それを聞いた丹治易さんは、哀れむような表情を浮かべた。
「あらら……それはなんとも微妙な……。
それで先生の手助けがあったとしたら、むしろ悲惨というか……」
「ふぐっ!?」
言葉のナイフの刃は、潰しておいてくれないかなぁ……。
そりゃ、言っていることは事実なんだけど、少しは空気を読んでよ……。
「そ、そういう丹治易さんは何点だったの?」
もしも悪い点だったらからかってやる──そんなことを思っていた私だったが、
「私? 私は百点満点ですわ」
「私は95点」
「!?」
完膚なきまでのオーバーキルで返り討ちにされた。
わ……私の倍以上の点だと……!?
というか、満点!?
「へ、へぇ……
凄いね……」
私はそう答えるだけで精一杯だった。
そんな私に対して、頭映さんが説明をしてくれた。
「そうそう。
智ちゃんは頭が良すぎて、逆に普通の人の気持ちが理解できていないことがあるんだよ。
だから、配慮の無い発言が多いの」
お……おう。
なんで頭映さんがちょっとドヤ顔なの?
「頭が良すぎて」の部分はともかく、全体的に見れば自慢するようなことじゃないよね?
でも彼女的には、そういう丹治易さんの欠点も魅力だと感じているのだろうか?
──恋は盲目。
一瞬そんな言葉が頭に浮かんだけど、そういうのはお母さんだけで間に合ってます。
とにかく、なんだか凄い敗北感を覚えた。
……でもこれって、丹治易さんのことを知らず知らずの内に下に見て、侮っていたんだな。
これは反省しよう。
ちなみに、さくらちゃんはクラスで最低点だったらしい。
本人はあっけらかんとして笑っていたけど、さすがに笑いごとではないと思うよ……?
宿題が増えて苦しむのは、自分自身なんだし……。
いや、さくらちゃんが頼めば、喜んで代わりに宿題をやってくれる人には、何人か心当たりがあるけどさぁ……。
ゆりさんとか……。
その日の夜、私は珍しく机に向かっていた。
丹治易さんに完敗したままでは悔しいし、次の小テストに備えて勉強をしておく。
それなのに──、
「綺美ちゃ────ん!!
遊びましょっ!」
「小学生かっ!?」
お母さんが邪魔しにくるんだよなぁ……。
それでいいのか、親で教師。
「……今勉強しているから、駄目」
「え~っ!?」
え~、じゃないし。
「……珍しく自分から勉強しているけど、やっぱりテストの点が気になったの?」
「そりゃあ……担任の娘の成績が悪いのは、恥ずかしいし……」
「でもうちの学園って、大学まで受験無しで行くことも可能じゃない?
だから過度に勉強する必要も無いと思うのよ?
世の中、学歴はあった方が就職には有利だけど、その学歴を得る為の過程で習ったことは、あまり社会では使わないからねぇ……。
ぶっちゃけ、仕事に活かす為の技術が欲しいなら、専門の学校に行くか、アルバイトとかで実際に働いてみた方が、得るものは大きいし」
「身も蓋もないなぁ……」
本当に教師か、この人。
「まあ、経験談だから。
だからね、もしも綺美ちゃんが、将来の夢の為に本当にやりたいことがあるのなら、学校の勉強よりも優先して取り組むのもいいと思うのよ?
お母さんは、応援するからね?」
「お母さん……」
珍しく母親らしいことを言ったな。
でも──。
「なんか良いことを言っている風だけど、私が学校で苦労しているのはお母さんの所為なんだから、評価は改めないよ?」
「アレェ────!?」
愕然とするお母さん。
どうやら期待していた反応とは違っていたようだ。
ふふん、そんな簡単にデレてやるもんか。
ただ、このまま放置して拗ねられても、それはそれで面倒臭い……。
だから私は、溜め息交じりに告げる。
「でもまあ……。
勉強が終わったら遊んであげるから、それまで大人しくしていてね?」
「…………!!
うん!」
お母さんは、子供みたいな笑顔になった。
……まあ、ご褒美のニンジンくらいは吊しておこう。
なんだかんだで、私も甘いなぁ……。
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