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   第三十一話  獣人の処罰


 笑顔も束の間。



 王都で起きた闘技場の崩壊および、その周辺の建物の半壊、もしくは全壊。

 事件はあっという間に王都中に知れ渡る。一時は獣人が起こしたということで偏見まみれの噂がそこら中を闊歩した。


 俺達は、その噂として広がる前にすでにその場から離れて再び同じ宿に戻っていた。ただ、また宿代を払わなくちゃいけないのは普通に失敗した。


 それで、この出来事の当事者というのは意外にもまだ王都の人達には知られていないわけだが。俺の部屋に突如、白い鳥が窓に止まったのだが、よく見るとその鳥には紋章が魔法によって刻まれた箇所があり、竜の頭が中央に大きく描かれて左に剣、右に杖が描かれている。それはルーメン王国の国旗だった。


 最初はどういうことかわからなかったが、ユラテス・ルーメン国王陛下に会って話した際のことを思い出した。そういえば、鳥の使い魔で報告できるとか。今回は無論、闘技場に関してが主に知りたいことだろう。


 俺はとりあえず、自分の話せることと優花達を呼んで優花達の知っている情報も伝える。そのとき、自然と情報共有という形になるが、やはりサバトの狂いっぷりにはあらためて驚かされる。当然、被害者であるフルトからもその情報を伝えてもらう。


 鳥の使い魔はサリス曰く、連絡手段のため録音の魔法が用いられているらしく情報量が多くても問題はないそう。

 俺たち全員は、時間の関係を考慮しながら白い鳥に向かって、先日の戦況をありのまま伝えた。

 少しばかり時間が掛かるも、録音が終了すると同時に、鳥は即座に飛び立った。

 あの屋敷での設置魔法も録音だったな……。てか、録音っていう発想よく思いついたよな。誰が作ったんだろう。まあ、今はそれどころじゃないからどうでもいい話。


 今はフルトの処罰がどうなるかだ。ルーメン王国の法律とかは知らない。少なくともこの国の中心地の一部を破壊している。被害者はおろか怪我人や死人が出ているかもしれないほどの規模だった。処罰は免れない。

 ただ、ジークが作り出したあの謎のドームによって外側は守られていたうえ、闘技場の周りに隣接する建物はない。最も近くて数百メートル先。

 そしてフルトの暴走で主に壊したのは闘技場。そこから少しばかり周辺の建物も破壊した。その建物に人がいなかったことが一番いいのだが……。



「やっぱり、さすがに人的被害は避けられないよね。王都だし」

「まだ、出たと決まったわけじゃない。ただ、その可能生は大いにある」

「そうですね…。やはり処罰は、下りますね」


「でも、当事者からすると、納得行かない部分もあるかな。感情論だからどうにもならないけど」



 サリスやジーク、それにクラリに優花。俺達、事件の当事者であるフルトと同じ立場にある。破壊したわけではないが、俺達はあの場で被害にあった人間のことをまったく考えていなかった。ただ、サバトを倒すことに夢中だった。


 内戦のときは起こっている最中、そして周りにいた人間はみんな避難していた。状況が鮮明に理解できたから。だから、周りのことは気にせずに戦闘できた。


 ただ今回は、全然違う。なにもかも違う。


 俺はあらためて、自分の未熟さを痛感した。俺があのときレアスから勝利をもぎ取ったのは、そもそも俺の力じゃない。パンテラの力、そしてペンダントのおかげだ。パンテラのことだってまだ知らないし、このペンダントの正体もまだわかってないのに両者に頼りっぱなし。


 俺は、あんな理不尽な死なんて起きないような、守れる力があるんだろうか…。ただそう思う。死はトラウマだ。


 だから――――。



「すみません。(わたくし)、国の使者です。今回の事件の処罰ついて国王陛下から文書(ぶんしょ)を届けるように命じられた者です」



 自分の世界にすっかり入り込んでしまった俺を現実に戻したのは、突如として部屋に鳴り響くドアのノック音と、国の使者の声。


 代表して俺が受け取り、使者が立ち去るのを確認してからみんなの元でその文書を開ける。文書は三つ折りにされて表面には送り先、裏面に文章があった。


 文書か……。この場合、なんて言うんだ?



「これは…先程のような鳥の使い魔による被害報告、そして懲戒書ね」



 俺達は順番に被害報告の文書から読んだ。

 被害報告には半壊が二十数件、全壊がそのうちの半分ほどの十件。それらの半壊は闘技場が崩れる際に飛んできた残骸で闘技場側のみが破壊されたとのこと。全壊の件数には闘技場も含まれている。

 そして問題の死傷者は……。



「え?」

「ゼロ……?」


「どういうことだ?」

「いや、誰もいないに越したことはないけど…」


「というか、人的被害と言えば闘技場にいた冒険者チームの連中も…」



 と混乱が生じるが、まだもう一つ。手紙らしきものがあった。その手紙の内容は国王陛下からのもの。なんか、まだ王都を出れてないことに申し訳なさを感じる……。


 そんなことを思いつつもその手紙の内容を読み取る。


 手紙の内容にはサバト達冒険者チーム『ジャック』の調査を行うということが第一だとあった。ただ、闘技場等を破壊したフルトにはそれなりの処罰はあるようで、そのことについての詳細は処罰書にと書かれていた。



「どちらかというと、冒険者チーム『ジャック』の調査が重要視されてる。僕はそう思う」


「まあ、そかどうかは、処罰書次第だろ」



 俺は手に取っていた手紙を一旦、折りたたむ。そして処罰対象となるフルトが送られてきた処罰書を手に取って、手元を震わせながら目を通していく。

 肝心の処罰内容は――――。



「国王陛下の判断で『半年間の王都来訪禁止(王都から二日以内に強制的に出てから有効)』と、『神の眷属一行にメンバーとして加わることによる行動制限』を処罰内容とする……」


「ん?」

「え?」

「これ…」

「お父様……」

「父上……」



 俺から優花、サリスと、順に二つ目の処罰内容に思わず声が漏れてしまう。というか、ジークとクラリに至っては呆れた様子。

俺達、課せられた?一応、当事者だから?止められなかったから?意図が読めん。いや、でもジークとクラリが呆れてるってことは……。



「おそらく、しっかりとした理由()あると思う。こちら側は被害者であるのは確かだし、故意にやったわけでもないから。ただ、その一方で()()()()の高揚感が残ってたせいか妙に印象付いて処罰内容に入れた感じがあるというか。まあ、利点はきっちりとあるし。比較的、厳しいほどの処罰でもないんじゃない?」


「なんか、俺達の隣にまだ国王陛下がいるみたいだな……」

「まあ、私達は鳥の使い魔から近状の報告を最初にしたからね」

「そうだな」



 と俺達は処罰の内容に関して問題ないように話していたが、受ける身であるフルトにはその軽さをわかっていない、と見受けられた。


 なぜなら、うつむいてブツブツと「どうしよう…」などと言って不安を募らせている様子だったから。なんか真面目な一面がありそうだな……。


 と思っていた矢先。



「ねえ、仁也!」

「え?」



 フルトが必死になって両手での肩を掴み、身体を前後に揺らしまくるという行動に走り、そのまま不安を爆発させていた。



「ねえ、神の眷属ってどんな人なの?なんか聞いただけでどう対応したらいいかわからないよ。だって、神の眷属だよ。僕がなんか迷惑掛けちゃってお手数掛けるようなことして、怒らせたらどうしよう。神様にも怒られるのかな?ねえ、僕どうなると思う?ねえ、殺されちゃうのかな?!」


「わ、わ、わかった。わかったから!お願いだから俺を前後に揺らさないで!頭が、頭がおかしくなっちゃうから!お願いぃぃぃ――――!!」



 フルトって不安になるとすごい動揺するんだなあ。ただ、このあと。俺達の自己紹介聞いてどんな反応するか……。楽しみというよりかは、不安でしかないな……。俺も。


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