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   第二十八話  自由と反撃

今回のお話は通常より少し長いですが、読んでいただければと思います。


「え……?」

「ウソ……」



 優花とサリスの連携によって繰り出された攻撃で爆発よる黒煙が空間内で発生してサバトの状態は二人にはっきり見えていない。が、今の笑い声だけで理解するしかなかった。



「あのさッ!この程度でいい気になってんじゃねえよッ!どんだけ戦闘知らんのッ?()るときはさ、徹底的にやるんだよッ。相手に手は打たせないッ。戦闘不能にさせるッ基本だろッ!なのにッ!たった一撃――!自己満足ッ――!どこかお遊びにしか見えないなッ!そんなんだからいつまで経っても私との決着に遅れが出るッ!」



 サバトから離れるかのように空間内の黒煙は消えて、その中から曲折を利用して剣身が包むようにして攻撃を防いだサバトがいた。


 サバトは剣身の防御を解除して数十メートルにもおよぶ剣を足下の地面に深く突き刺す。剣は曲折した状態から短くなり真っ直ぐとした本来の状態へと戻っていた。だが、剣身は紫色になって歪な姿は保っていた。



「優花!聞いちゃダメだよ!ペースに飲み込まれたおしまい。完璧に煽ってる!」

「わ、わかった!」


「あ――あ――。別に事実なのにね――。ひっどい。まあ、煽ってるのは確かだけどッ!」



 その会話の間に、優花の特異能力(シンギュラースキル)による爆発とサリスの特異能力(シンギュラースキル)による空間包囲は解かれてサバトは自由の身となる。


 その矢先、再び問答無用で地面に突き刺していた剣を抜いてそのまま突撃する。そしてその相手は優花だった。



「さてさてッ!獣人がどこか行ってしまった今、楽しみを邪魔された怒りはどこにぶつけてよいのやらッ!」


「ユナちゃんを殺しておいて慈悲の一つもない人からそんな言葉が出るなんて――!」



 優花から視線をそらすことなく一直線向かってくる。サバトの剣は通常の状態から再び剣身が伸び始めて曲折を始める。

 

 剣先からサバト。


 それはまるで蛇のような狂気に満ち溢れた恐ろしさがあった。魔力は彼にどんどん集められていき、剣に吸い込まれていく。

 優花はそんなサバトの姿に少し動揺が窺える顔になっていたが、そんなことは一瞬のうちですぐに切り替えた優花はサバトと同じくその場から一気に走り抜けて正面からの一騎打ちに。



「はああぁぁ――!!」

「おらぁッ!!」



 両者ともに急接近した後、砂埃を大きく舞い上げて激突する。剣が叫んでいるかのような澄んだ甲高い音がしてお互いに一歩も譲らない。

 剣身からは火花が散り、激しさを物語る。



「絶対に!ユナちゃん殺したあなたは許さない!!」

「そうかよ。じゃあ、そのバカみたいな正義(ヅラ)を八つ裂きにしてやるよッ!」



 そんな二人の一騎打ちを少し離れた場所で見ていたサリスは行っても経ってもいられない様子になって二人のいる元に彼女も向かう。

 当然、本当の一騎打ちではない。そもそも現在サバトが相手にしているのは、優花一人ではないサリスもいる。


 一人に気を取られていては隙を突かれるだけ。そう。今、サバトの背中は無防備に等しかった。

 サリスにとっては絶好のチャンスだった。



(もらった……!)



 サリスはその場から身体強化された身体能力で跳躍して一気にサバトの背中との距離を詰める。そして悟られることなくサバトの元に到達する。


 彼は横目で気付いたときには、サリスはすでに背中に向かってガントレットを装着している拳を振りかざしていた。

 サリスの一瞬の行動にサバトはそのときになって気配で気付く。



「吹き飛びなさいッ!」

「フフ……無駄ァ!」



 正面で優花と激突している最中で目視することをやめて、彼の視線はサリスへと向かった。 直接、優花の様子を目視しているわけではないのだが、優花の動きがわかるかのように彼女の剣を押し返して通さない。

 そして後ろの気配を横目で目視したサバトは、優花の剣と接していない剣先をさらに伸ばして曲折させる。

 彼は自分の背中にその伸ばした剣先を横から向かわせて、曲折しながら剣身による防御の層を作り出して背中を防御態勢に。


 それと同時にサリスの拳は剣身と金属音を鳴らして激突する。



「なっ…こんなのッ!」

「ハハハ……!」



 サリスは防御態勢によって攻撃が通じなかったものの繰り返し攻撃を与える。

 サリスにとってサバトの対応は当然だった。彼女にとってサバトを恐れる要因は目の前にある剣と姿だった。

 そして、サバトと目が合った瞬間に彼女の背筋は凍り付いたようになって顔が恐怖に染まっていた。


 サバトはこの瞬間に変わり果てた。自らの人格を失ったかのような様子で殺気と狂気に支配されて、その勢いにただ任せて行動していた。



 そんな彼は最初に見たときのような姿。『蛇のような姿』それはもう()()()と付けることはもうない。


 サリスの目に映ったサバトの姿は本物の蛇。心を見透かすような鋭い目付き。怪しげのある引きつったままの口。尻尾のような剣。


 並々ならぬ威圧をサリスは感じた。だが。



「ううん。この程度!」



 サリスは威圧に耐えつつ自分を鼓舞して、再び連続で次々とサバトの剣身に攻撃を与えていく。

 その間に、サバトの剣と接触したときに彼女のガントレットは光り出す。


 それはサリスの特異能力(シンギュラースキル)の発動合図だった。



「【魔力遮断(シャット・オフ)の罠(・トラップ)】」



 罠はサリスが事前にイメージによって設定した範囲で展開され、サバトと曲折してた剣を取り囲む。剣は大きく幅広い範囲にあったため魔力遮断の範囲は格段と大きくなる。


 だが、そのときをただ待つほどサバトは甘くなかった。



「魔力遮断…面白い。()()()を試すときか…」



「「え?」」



 サバトはあえて聞こえるようにでも言ったのか、不敵な笑みを浮かべて魔力が遮断されている空間でで剣を構え始めた。

 魔力遮断はその名称通り。空気中の魔力の流れが遮断されて魔力が空気中を発動時は通らなくなる。

 魔力遮断の影響力はこの世界でかなり大きいと言える代物。当然のように発動させていたサリスは、魔法師団のころに相当の訓練や努力をしてきたのだとわかる証。


 そんな証を使ってサバトへの魔力補給を途絶えさせた。普通は彼にとって危機的な状況。彼の剣がおぞましい姿で曲折できるのも魔力を利用した特異能力(シンギュラースキル)のおかげ。


 当然、彼の剣はその魔力遮断の範囲内に入ったゆえ剣は最初の状態に戻っている。冒険者チーム一位のリーダー。この国で最強と言ってもいい存在。技量はあれど範囲外にいる特異能力(シンギュラースキル)が使える優花とサリスとは不利。



 サバトに残された手は限られていたのだが、その限られたものが彼にとって最後の手段であり切り札。彼の力。いや、()()()


 剣を構えたサバトからはそれを体現したかのような圧がひしひしと湧き上がるように優花とサリスには伝わっていた。


 狂気以上に、殺気以上に、恐ろしい。恨みの念が募ってできた殺戮の限りを尽くそうという歪な殺気。ただの殺気とは別物であり上物。



  他の力の正体はわからない。優花とサリスにもわからない。


 そして、それに応えるかのようにサバトの肉体的な様子は変化を遂げ始める。正確には血液が遠目でもわかるくらいに青紫色に光り出して浮き上がる変化、それを発端として身体全体の筋肉が大きく成長して盛り上がり蒸気が汽車のように吹き出したりして怪物とでしか表現できないほどの姿。



 これで、彼は使えるようになってしまった。サバトの隠し持っていた力が。解放される。()()()が。ただ、見た目ではその力を解放したとは想定できなかった――――。



「優花!こいつ、前もって魔力増強(まりょくぞうきょう)(ざい)を使ってる!」

「どういうこと?」


「簡単に言うと薬物」

「薬物?!」


「うん。詳しいことを今、説明してあげられないけど過度に摂取すれば命の危険だってある」

「え?!」



 優花からは驚きの声が出る。突然の事態に当然と言える反応だった。



「優花!サバトを止めるよ!彼には罪を償ってもらわないと!」

「わかった!サバトを止めよう!」



 二人はサバト越しでの会話を終わらせるが、サバトとしては不快だった。



『っんなこと、されてたまるかァ――――!!』



 本来とは違うまるで獣の咆哮のようなサバトの声は辺り一帯に響く。

 そしてそれを合図に一撃が放たれた。構えていた剣に魔力を持たせずに勢いよく、大きく、鋭く、瞬間的に振られて物体ではない魔力遮断をすり抜けて円を描くように剣は一周する。


 その瞬間、空気が押し込まれるようにして波動が生まれて後方にいた優花とサリスに直撃する。当然、その辺りもその影響を受けて瓦礫が散乱する状態。


 ジークの発魔具によってその被害は一定の範囲内に収まってはいるがその範囲内はまるで戦地のような荒れようだった。



 優花とサリスは強大な威力に直で食らい、瓦礫に吹き飛ばされ大した距離は飛ばされなかったが瓦礫によってそのスピードが落ちたため身体のところどころに大小の瓦礫の破片が刺さっていた。それは優花も同じだった。



『オラオラ!これで終わりだ!』



 再びサバトは、剣を振り上げてまた剣を一周させようと剣を振り回す。優花は半ばどうすればいいか思い浮かばず、サリスは瓦礫に足を取られて動けず行動ができないかった。


 が、サバトが剣を振り回す途中、その剣筋を妨げるかのように閃光弾ような突発的な眩い光が出現して、その光はまだ昼間にも関わらず太陽光よりも輝いていて人が二人分ほどの大きさで球体になっていた。



 突然の出来事ながらサバトは剣の動きを止めずにその光と剣が衝突する。すると――――。


 剣同士がぶつかり合ったときに響く、甲高い金属音が空気を伝って辺り一帯に鳴る。



『なっ――剣が、止まった?』



 サバトの剣を光りが受け止める。いや――――。



「サバト。早々に剣を振り回して好戦的だな」


『お前は……!』



 球体の光は徐々に消えていき、その中からは仁也と獣人のフルトが姿を現した。


 声の正体が誰かわかっていた優花とサリスは姿が見える前から顔に驚きと喜びに溢れていた。



「サバト。随分、派手にやってくれたようだし。ここからは反撃開始だ。お前が今まで下として見てきた存在からな」


『下と見てきた……。なるほどなァ。横にいるヤツか。いいだろうッ!その代わり、負けたと同時にこの発端であるお前を私の手で処刑してあげよう……』


「僕は――妹を殺したことは許さない。そして獣人をぞんざいに扱い、『楽しみ』という軽率な行動で殺したお前をッ!お前をッ!僕は絶対に、許さない。この瞬間から今、僕にとって…自由と反撃のときだ!!」


読んでくださった方、ありがとうございます。まだまだ頑張ります。かなり長くなりそうなんですがね……。

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