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   第十八話  闘技場




    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 グロマ本部。とある一室。



「久しぶりに来たナ」

「そうだね。僕達も久しぶりだ」

「ああ!本部はやはり快適だ!」



 グロマ本部ではあまり見なくなった姿がこの一室に特徴的な口調の三人。彼らは仁也達と山道で闘いを繰り広げた人物だ。彼らはいつも世界各国にあるグロマの支部に身を置いているため、彼らがこの本部に姿を見せたのは数年ぶりだった。



「はてさて。僕達三人が呼ばれて理由が気になるけど…」

「なに意図があってじゃナイ?報告はいつも通信魔法で報告してるカラ」

「そうだ!きっとそうだ!」



 と、彼らは結論付けるが実際のところはその可能性も高かった。今まで落ち着いた状況下で活動を続けて少しずつ世界に溶け込んでいるグロマ。


 今や青原仁也の登場により、慌ただしくなっている様子は絶えないようだった。グロマの構成員は世界各国を飛び回っている。

 それもグロマのトップの意向であり、その今までの積み重ねを活用するときがいずれ来るとわかったうえで部下に命令している。



「まあ。というか、大前提としてボスの()()()()ことが当たったか情報がてら確認してほしいね。その間の時間が惜しいけど」

「それはいいサネ。ボスの予言どおりになるのナラ、こちらとしては笑えてくるほどに前もって先手を打てル」


「そうだ!先手は最高!」



 グロマ全体を動かしているのは組織のトップであるボス。『ファイファー』。ファイファーが予言に沿って組織を動かしているとはとても言いがたいが、けして無鉄砲なことはしないだろう。

  世界各国に被害をもたらしたこの組織。隠密行動は基本的だが場合によっては無鉄砲さを出す者もいるのだろう。



「さて。神の眷属にどう響くのかな~。この世界のこと……」



 なんとも憎たらしい笑顔を浮かべて密かに暗闇で笑う。

 彼らの行動は未だ仁也達には伝わっていない。

 彼らにとっては突拍子もない出来事だが、グロマは常に目的達成のための機会を窺っている。それはもうルーメン王国の内戦の様子からわかることであり、これから彼らはどう交えることになるのか、どう成長するかはファイファーですらわからない。


 仁也達は今グロマの行動に注意を向ける一方で、グロマのほうは仁也達の力に目を向ける。今はお互いに一歩下がって様子を窺っている状況。

 しかし、密かに前のめりになっているとも言える。


 現在の目立つグロマの変化は活動の活発化。そして仁也達はグロマの調査。


 まだ月日の経過はわずか。物事の段階的にはまだ最下段と言える。だが、その最下段はけして無駄にしていいわけではないし、むしろその土台によって今後が関わってくる。


 結果として勝者か。敗者か。



    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 昼食を終えたあとは部屋に戻って荷物を収納魔法の収納空間に入れたりして、支度をするなり宿をあとにした。宿代に関しては前払いで済ませてあるので問題はない。


 この宿がある大通りをギルドがあった方面に向かって進めば闘技場に着くという。時間には余裕があるので歩いて行くことに。

 それにしても冒険者が闘技場を所有しているとは思わなかったが、俺としてはかなり不安だった。

 闘技場と言われて正直、うろたえる。


 どういう意図は知らないが闘技場ってだけで怪しさがある。そこなら遠慮なく戦闘ができると言っているようなものだ。まるで魂胆を自ら明かしているようだった。てか、そうなると魂胆とは言えないな。まあとにかく注意は必要だな。どちらにしろこちらが魂胆をわかったとしてもそれを防げるかもわからないのだ。

 妹さんを連れてくればお兄さんを解放する。正直言ってうさんくさい感じはある。そもそも本当に解放してくれるかもわからない。



「なあ。戦闘になること前提で陣形を組まない?」

「う~ん、そうだね」

「そうね。私も賛成だわ。優花は?」

「私?…う~ん。してて損はないと思うよ。だから賛成かな」


「ここで反対する人はいないと思いますよ」

「まあ、そうだな」



 クラリの意見には納得だが、陣形の一番の問題はそこではなくて役割を決めるのが問題だった。それぞれ得意な間合いがあってそれにより戦闘スタイルが変わってくる。それに特異能力(シンギュラースキル)もうまく活用できるような陣形が最適だ。


 俺はそのことをみんなに話して意見を求めた。



「そうだね。念には念をって感じだね」

「うん。元魔法師団のサリスはどうすればいいと思う?」


「そうね…とりあえず、クラリとジークは後衛じゃない?前衛というか女の子を引き渡すのは肉弾戦の私で、その中間に仁也と優花で」



 俺はその話を聞いて納得しないわけではないが、「魔法師団とは?」って問いかけたいほどだ。別に魔法を使う人間がけして近接はおかしいと言いたいわけではないが、少しイメージに偏るとそういう問いになっちゃう。



「つっても。もう闘技場見えてるからあんまり話し込んでもいられないけどな」

「え?」



  俺は思わず間抜けな声を出してしまった。宿を出たときはギルドの方面に闘技場らしき円形の建物がうっすら見えた感じだだったが、今あらためて見るとその闘技場はくっきりと目に映った。


 俺は闘技場なんて実物を見たことはなかったので少し興味を引くが、そんな状況でいいわけがないのもわかっていたのですぐに切り替えをできた。



 闘技場が見えてその後は数分をかけて入り口に到着した。その入り口には門番のような人が二人いて、隙間から闘技場の会場が少しだけ見えた。


 ジークとサリスは到着してからすぐさまその門番に話をつける。その間、俺は優花とクラリが手を繋いであげている女の子が心配になり、視線をそちらに向けると女の子が怯えるような様子で優花にくっついていた。



「ユナちゃん、怖い?」

「う、…うん」


「ごめんね。ユナちゃん」

「でも、お兄ちゃんのためです。頑張りましょう」

「うん。お兄ちゃんに、会いたい!」



 俺が聞いたときにはかなり低いテンションだったが、クラリが『お兄ちゃん』と言った瞬間から少しずつ笑顔になって元気な様子になった。

 なんか涙もろくなってしまう自分がいる。



「三人とも~。入れるよ~」



「怖いところに入るの?」

「うん。でもね。お姉さん達は離れないからね」


「…うん、わかった」


「よっし。じゃあ行こう」

「そうだな」



 俺達は闘技場に足を進め始めるが、女の子の足取りは重く感じる。トラウマなんだろう。小刻みに体が震えている。


 こちらも苦しく感じる。

 女の子をここに連れてくるのは本心じゃない。でも、こうするしか方法がない。解放されて助かる方法は、冒険者の連中が提示した条件を満たす以外に方法はない。

 強行手段に出ても、今後なにをされるかわかったものではない。それこそ一番悪い結果だ。



「おい、お前ら。早く入れ」



 門番はジークやクラリがいるにも関わらずお前呼ばわり。俺や優花はともかくサリスもギリギリアウト。王族のジークとクラリには完全にアウトだ。俺からすれば今にでも喧嘩売りたいくらい腹立たしい。


 が、ここは敵地。しっかりと感情の高なりを抑えてコントロールして門番の指示に従った。


 そして闘技場に入るなり薄暗い中でテキトーな案内が始まり案内通りに進んでいく。


 最初はどこに行くのかと疑問に思ったが、進むにつれて少しずつ薄暗い空間は明るくなっていくのに気づき、外に出ることがわかった。


 闘技場に入って俺達は階段を上がることなんてなかったので闘技場内で外に出る場所は一つに絞られた。



(これは、マズいな)



 俺の脳裏に浮かんだ場所。

 その場所というのは、屋外の闘技会場。しかもジャックの管理する。

 もしかしたらここは、無法地帯。罪を隠滅できる…絶好の場……。


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