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   第十四話  怒りから始まる闘い




    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 視界に映るはやや夕焼けになりつつある青空。優しく肌に触れるそよ風。


 心身ともに脱力感に襲われ、力が思うように入らない状態。


 なぜだろう……。



「仁也!」

「仁也、どうしたんだその体」

「なんだよ…んな大したことは…」


「嘘!だって、お腹が…」

「え、なに…言って…」



 意識していなかったからか。それとも、状態異常の影響が残っていたのか。


 自分の状態に気づけていなかった。



「え…え…」



 痛い。

 と言うよりかは、ただ驚く限り。やはり、おかしくなったのだろう。俺の頭は。



「な、なんで…俺の腹に穴開いてるんだよ…」



 意識してしまう。状態を把握してしまう。



「あっ、ああ…っ…」



 声が出せない痛み。出す余力がない。痛みに耐えることにしか意識が向かない。急激に浮かび上がる死の恐怖。後悔の恐怖。歯をただ食いしばる。



「仁也耐えて!」

「クラリシア!治癒魔法を!」

「はい!」



 俺の元に来て治癒魔法を発動させるクラリ。どこか顔が険しいように見える。体力や精神力がみんな尽きるころだ。



「ん~~…はあっ!はあ、はあ…はあ。これで、治癒魔法は使いました。ですが、完全には傷が塞がりませんでした。とりあえず、応急処置をして傷をガードしてできれば安静にしてほしいです。傷が小さくなったとはいえ、それが元で大きな傷になったり感染症になったり。血も減っているので」



 クラリとジークが俺を折れた一本の木に寄り掛からせて、少し話し合いをしてからサリスの元に全員が集まる。俺は腕をジークの首後ろに持って行き、銃身を少しジーク寄りにしてなんとか立ち上がる。



「よっし。準備はいいね?二人とも」

「うん」

「はい」



 ジークとクラリに準備確認。



「転移ま…――――」



 魔法の発動を始めた瞬間に、サリスの背後からなにやら衝撃が加わって前方に倒れ込む。優花や、ジークと俺も同じように背後からの衝撃で前方に倒れ込む。



「オヤ、オヤ。なにを逃げようとしてるノ?」

「まったくだ。僕達の存在を忘れないでくれよ。特に兄さんの!」

「そうだ!せっかくの獲物が逃げるな!」



 キャラの濃さが窺える特徴的なしゃべり方。


 不気味な女声に、兄が大好きな少し威張り口調の弟、好戦的な態度が目立つようになった単細胞の兄。


 さっきのグロマ三人衆。



「さーてと。その神の…」


「【星屑(スターダスト)】」


「チッ!」



 優花が不意打ちで攻撃を放ち、連中を後退させる。


 その間に距離を取るため俺達も後方に下がる。ジークとサリスは前衛へ。クラリと優花は俺達を守るためか後衛で少し俺達に寄った感じ。



 救助した女の子は俺に寄り掛かってスヤスヤと寝ていて気持ちよさそうだった。女の子の頭にはウサギのようなピンッと立った耳があった。


 あのギルドで会った兄であろう獣人も同じような耳をしていた。



「早く連れて行かないといけないのに…」



 俺はつい、自分の愚かさを再確認してしまう。



「仁也。あの三人誰?」



 サリスから嫌気を感じるほどあっさりとした質問。


「グロマだよ。幹部」

「幹部?」


「た、確かに。幹部ですね」

「クラリはこの三人を知ってるの?」

「いや。顔も名前も知らないです。でも、あの左腕にある赤と朱色のエンブレム。内戦時にいたレアスとかいう男の左肩にもこのような色のエンブレムが」


「ハハ。どうやら抜け目がないようで」

「ねえ、ネエ。やっぱ名乗っとこウヨ!」

「そうだ!闘いの仁義!」



 という理由からこちらが求めていないにも関わらず、自己紹介が始まった。でも、聞いておいて損はないよな。どのみちグロマを調べる目的もあるし。



「よおッし!じゃあ、私かラ!私の名前はイバラント・キュード!世界指名手配中ゥ~」

「僕も。僕は『格闘兄弟』と言われているその弟。セドワ・ポセフ。同じく指名手配されてる」

「よっし!最後に俺!兄のジャドワ・ポセフだ!よろしく頼む!」

「兄さんも立派な指名手配!僕と同じ!」



 なんか犯人が罪を自白したみたいな感じがするのは俺だけかな…。なんか隠してたものを露わにした感じがするんだよな。


 なんて思っていると、サリスが険しい顔になって質問を始めた。。


「それで?その指名手配されてる連中がどうしてここにいるの?」


「ソレ!いい質問ダ~」

「お前は黙れ。すまない。質問に答えるのは僕にやらせてもらおう。それで、君の質問だが。答えはシンプル。君達を軽い観察として魔獣を送り込んだりして観察するんだけど、そのついでに、遊んじゃおうかなーって。思って」


「遊ぶ?」

「そうそう。これは遊びなんだよ」



 その言葉に真っ先にキレたのは、優花だった。



「なによ!遊び?!仁也の腹をえぐるのが?!ふざけないでよ!」



 俺は優花が真っ先にキレたのには驚いたし、サリスやジークにクラリも同じように驚いた様子でこの光景を見ていた。

 優花は今まで以上に怒りを露わにしていた。



「おーっと。そんなキレることでもないさろう。治癒魔法が天才的の使える人材がいるのは把握済み」

「そうだ!だから死の直前まで殴り倒す!」

「そう、ソウ」



 こいつらのくだらない理由はともかく、この女の子の近くにいたのはおかしいと考えられる。ここまでの流れで連中が待ち伏せしていないなんて説得力に欠ける。身を潜めていた時点で確定のようなものだ。


 でも、俺達はグロマの内面を知るためにも今回のこと含めてこいつらに色々と吐き出してほしいところだが。

 こちらは連戦を避けたいところだ。特に魔獣と闘っていた三人。あの数を相手によく勝利したとひそっりと思う。


 だからこそ、しっかりと休んでほしいのだが。その様子は当然一切見せない。状況的に当然とは言えるので休もうとしない様子も、俺がその立場として置き換えると必ず同じようにそうする。ので、否めないのは事実。


 連中も少し俺と闘ったが、体力はまだ十分にあると思う。



 不公平さは目に見えた状況。



「おい、優花。冷静さを保てよ?」

「仁也に言われなくともわかってる!」



 かなり強めな口調で怒りを抑えきれなくなっている優花。俺のために怒ってくれるのは、なによりも嬉しかったが冷静さまで失って怒って優花はもちろん、サリスやジークやクラリになにかあったら困るし不安だ。


 そもそもの目的は女の子を連れて帰ること。ただ振り払うようにしてあんんまり相手にせずにここを去りたいが、怒りを抑えきれなくなった優花を見ていると明らかに敵三人に突っ込んでいきそうな勢いがあって暴走している。


 

「優花!」

「ごめん。私、これだけは譲れないし、絶対に許せない」



 俺はその瞬間、どこか使命感のようなものを優花から感じた気がする。優花の思っていることなんて当然わからない。けど、俺の中の心に少し響いた気がする。悔しさを晴らそうとする優花の姿。



「私だって、仁也みたいに闘えるッ!」


「「「「優花!」」」」




 全員で優花を引き留めようとするが、それに無視して連中に突っ込むような形で攻撃を仕掛けた優花。怒りを露わにして俺ぁ冷静さを失っている、そう思っていたが、先手の攻撃は距離を詰めずに攻撃できる

星屑(スターダスト)】を発動させた。



「【星屑(スターダスト)】」



 剣から放たれる光の無数の弾。連中に目掛けて攻撃を与えようと試みるが、そう簡単に当たらないのも当然。

 三人とも無数の光の弾を避けながら後退していく。全員とも身軽さが目立ち、本当にグロマの幹部なんだとあらためて思う。



「先制攻撃でいきなり特異能力(シンギュラースキル)か。胸躍るなあ~」

「そうだ!楽しみだ!」

「そうですネェ、私はあの準備でも始めましょうかネ。よく見れバ、奥で私の大事な魔獣が死んでるし…って。液体がナイ。これハ…」



 イバラントという女が、突如として不気味さを失わせて憤怒の様子に。睨み付けるのはサリスやジークに、クラリ。



 そして手元に持っていた弓に背から取り出した矢をつがえて弓を引く。それには残りの二人も反応して戦闘態勢に入った。



「返せヨ。私の魔獣ヲ!」



 怒りとともに、闘いが始まる。


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