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   第四話  山に潜む

追記:文章の修正等は行っていませんが、技名を変更しました。




    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 (ねずみ)色の()びた檻。人が一人入れるくらいの小さな檻。



「助けて!お姉さん!お兄さん!」

「ごめんネ。お嬢ちゃン。もうちょっと待っテネ」

「そうだ!頑張れ!」

「そうそう。もうちょっとだから。きっと……」



 助けを求める檻に入れられた少女。その檻を囲むようにいる三人の男女。


 彼らのいるところは、とても開けた道のど真ん中。その周囲には、森林がうっそうと生い茂っている。



    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 降り立つ。


 スタガリ山近くで、街の規模は第二の都市とも言える。


 それが、『メスク』という街。だそうだ。



「おっ!」

「着いた――!」

「転移完了っと」

「王都とは雰囲気が違うけど、大きいね。街」

「でしょ優花。私は一度しか来てないんだけど、この落ち着いた感じが好きなのよ」



 メスクの街並みは、正直言って王都に引けを取らないほどだ。しかし、街の雰囲気は王都のような騒がしさがなく落ち着いている感じがあり、「平和だな~」なんて言ってしまいそうになる。



「で、このあとってどうなるの?」

「仁也。山に行くから想像つくでしょ?」

 


 と、優花が言う。



「え……登るの?」

「それ以外ないでしょ。ねえ、ジーク」

 


 ジークに聞くサリス。



「うん。でも、女の子がどこにいるかわからないからそうとは限らないかもだけど」

「あ、う、うん」



 俺は思う。

 登山部みたいと。別に気にすることじゃないけど。


 そんなどうでもいいことを思いながらも、スタガリ山目指して行動を開始した。

 持っていた地図をあらためて見ると、確かにこの街はスタガリ山から一番近い街だった。距離的におそらく一キロくらい。地図で見る限りでは大して遠くないと思う。

 それを知ったうえで街をよく見渡してみると奥のほうに一番鮮明に見える山があった。




「あそこか…」

「よっし!行こう」


 こうしてスタガリ山の登山道入り口を目指して歩き始めた俺達。

 街を出てすぐ、広がっていたのはなにもない草原。王都とは違って涼しくて弱々しい逆風が吹く。


 そんな中、ただ歩くだけというのはつまらないので、色々と話を始める。



「ところでさ。ジークとクラリはなんで時空魔法が使えないの?」

「え?」

「それは…まあ。なんというか。単純に難しくて。魔法に適正とかはないから誰でも使えるんだけど、得意か不得意かによって差が出るんだよ。僕達の場合は兄妹揃って時空魔法が苦手なんだ」

「なるほどな~。奥が深いな」



 神界で知識を得た俺達だが、本当に基本的な知識。知らないことのほうが多かった。



「それはいいとしてもさ。仁也達の目的ってなに?」

「え?あ、そっか。話してなかった」



 国王陛下と話したとき、ジーク達は俺達の話していたことを正確には聞いていないのを思い出した。説明なしはさすがにマズい。それに話しておけばなにか情報を知っているかも。

 そう思った俺だが、先に優花のほうが話を始めた。



「えーっと。簡単に言えば、聖域(ホウリィアース)に行きたいってことなんだけど。正直、その行き方が一切わからなくて。情報が地名だけ」

「ホ…聖域(ホウリィアース)。となるとアルカダ世界会議を待ったほうがいい」

「ですね。お兄様」

「だって。二人とも」

「「え?」」



 どうやら知っていそうな口振り。まさかの急展開。これ…早めに着くんじゃね?と、思ったがジークは『アルカダ世界会議を待ったほうがいい』と言っていた。そもそもなんで知ってるんだ?



「なあ。ジーク。もしかして行き方わかるの?」

「え?うん。行ったことはないけど、行くための道が作られたのは見たことがある。アルカダ群島で行われるアルカダ世界会議で」

「へえ。なるほど」


「でも、それだけだよ。たぶんそこからなら行けると思うよ。ただ人にとっては未開の地であり、神の領域。だからその行ける道が作られるのは難しいと思うよ」

「ジーク。スゲえな。よく覚えてたな」

「うんうん。おかげで一気に先に進める」



 まさかジークが知っているとは思わなかった。これで行き方がわかった。ジークが言ってた通り『アルカダ世界会議』を待てば行ける。というか、国王陛下って俺達の目的知ってたんじゃね?



「でも、本当に聖域(ホウリィアース)に行くんだね」

「どういうこと?サリス?」

「いや。ある古い書物を読んだことがあるんだけど、その書物に『聖域(ホウリィアース)は異界の地を経由せよ』って感じで曖昧に書かれてたから。神様がいるのはわかるんだけどその前になにかあったりして…。危ないんじゃない?」

「異界の地…」

「なにかあるのか…」



 この先のことを考えてもどうしようもないが、気になることに変わりはない。特にその書物が。



「でもさ。それは仁也達が自発的に掲げた目的なの?」

「え?」

「だってさ。生きる以上はさ。なにか必要でしょ?自分を鼓舞するための夢とか」

「自発的な目的…夢…」

「まあ。そのうち答えは出るよ」



 俺は夢物語でも見ている気分だった。俺は元いた世界で夢を見つけられていなかった。ただ同じことの繰り返し。飽きるのに、無理はなかった。当然だった。

 俺を育てた妹さんは必死に働いてた。だから俺の人生は自然と決まっているようなものだった。ただひたすらに働いて、お金を稼いで。親孝行をする。ただそれだけだった。すぐにそうせざるをえない状況でもあった。


 だから俺は、自発的になにかを決めて、なにかを抱くのは難しくなっていた。


 そう思っていると優花がなにかを見つけたような反応をする。 



「…っ!あれ山道じゃない?」

「え?あれ?」

「こんなところから山肌見えるのかよ。しかも真っ平ら」

「うん。この山の山道は土魔法とかで整備されて邪魔な木は全部伐採させたからね」

「変な山だね」

「優花~怖いよ~」



 あんまり長くは話していないのだが、もう見えてきた。やっぱ距離が近いっていいな。スムーズで。



「ジーク。またあの能力使えない?」

「僕の?」

「うん。今はギルドのときより場所が近いから」

「ああ。なるほど。仁也。ナイス提案」

「だろ?」



 ジークは早速、一人前に出て集中し始めた。

 魔力はジークの正面に集まっていくような流れを作り、どんどん集まっていく。


 そして数十秒経った瞬間。ジークが特異能力(シンギュラースキル)を発動させた。



「【魔力探知(マジカルサーチ)】」



 ジークが特異能力(シンギュラースキル)を発動させると、正面に集まった魔力は一気に一方向にレーダーのように伸びた。なんかマジカルってかわいい感じがあるな。



「う~ん。これは…」



 そう言って発動をすぐに終わらせた。ジークの魔法は脳裏に正確な景色ではなく、情報が映し出されるので部分的なことしかわからない。それでも凄い気がするが。



「それで、どうだった?」

「いや。ある程度は最初見たときと同じなんだけど、一つ追加された情報がある」

「なに?」

「多少は登るけど本格的な登山しなくて済むってこと」

「え?」

「それ、どういうこと?」


「うん。ようは山道の入り口付近にいるってことだよ」

「入り口…って」

「まさか……」

「やっぱ待ち伏せだな」

「うん」



 (さだ)かではないけど、ジークの能力の正確性はある。これだったら相手の待ち伏せの意味はなくなる。待ち伏せかどうかもわからないけど。



「とにかく。先を急ごう」

「うん」

「そうね」

「そうだね」

「うっし!行くか!」



 俺達はスタガリ山の山道に向かって、一気に走り始めた。目の前にどっしりと大きく構える山は、まるで困難という壁のようだった。



    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆



 五人の若者が通り過ぎたこと。神の眷属が通り過ぎたこと。それを確認する赤い二つの目が複数。木陰から見ている。赤く光らせる目はまるで恐怖の監視。赤い目の正体不明のなにかは、獣ような荒い声と息を出して潜める。

 そして五人の若者が通り過ぎたことを見届け、野草をカサカサと鳴らして移動を始めた。




「ねえ。監視が移動始めタヨ。どうすル?」



 一人の女が不気味な声で男二人に話しかける。



「どうするもなにも。指示した通りに待機していればいい。なにも問題はない」



 女の質問に答える一人の男。



「これは、俺達の勝手なんだから。組織からの保障はない。それに計画に支障が出ない程度で遊ぶ」

「了解だ!」



 そしてもう一人の男が、声を張り上げて答える。



「うん。もしこれで手に入れば、遊びついでに計画進行させるっていうメリットも生まれる。最高の遊びだよ」

「素晴らしい!」

「やる気、でちゃウ。ハヒヒヒヒ……」



 恐ろしく不気味な声が辺りの静寂さを切り裂くように響き渡る。まるで悪魔のような声が。 


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