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   第三話  救出に向けて



「それで、次は宿でいいんだよね?」

「うん。どんどん行かないと日が暮れるし」

「そうだね。近くの宿を探そう」

「私達は必要な物とか買いに行ってくる」


「わかった。僕はクラリシアと宿を探しに行くよ。仁也は?」

「俺はここで待ってるよ」

「わかった。じゃあ終わり次第、仁也のいるこの場所に集合」

「「「了解」」」



 そう言ってサリスと優花は買い出しに行き、ジークとクラリは宿探しに。俺はここで自ら待機。みんなが帰って来るのを待っている。その間……。



「…暇だ。俺の役割。というかこれは、役割じゃなくて…ただ余っただけだよな」



 俺はギルドの入り口近くにあったベンチに腰掛ける。ていうかベンチあるのか…。



「それにしても…本当に暇だなあ…」



 生暖かい風が吹き、近くに落ちている葉が風で宙を舞う。時間がゆっくりと流れるように感じる。



「なんか…急に色々あったって感じだな…」



 俺は少しながらこの世界の状況を知った。争いとか治安の問題ではない。人種差別と身分差別。人間同士の差別。獣人。差別は俺の元いた世界も同じ。

 でも、ここはそれ以上に酷い。無慈悲な世界と言ってもいいかもしれない。まだ少ししかわかっていない状況で言うのもなんだが、逆に少し知っただけで酷いと思ってしまう。これから世界を広く知っていくうえで、いい世界と言うべきか、よくない世界と言うべきか。少し知ることへの抵抗が若干あるかもしれない。これが自分の住んでいる世界なのかと。



「あ~。どうなることやら…」

「ホント。どうなることやら…」

「え?」



 突然、後ろから声がした。緊張が一気に走る。俺はとっさに反応して後ろを振り向こうとしたら…。



「おい。こっち向くな!」

「なっ……わかった」



 一瞬だけ見えたが、どっかで見たことあるような記憶に新しいフード付きのローブだった。グロマ――か?



「それで、俺になんのようだ?」

「別に。気晴らしにお前のところに行ってみたくてさ」

「なんでそんな馴れ馴れしい?」

「まあ。それはいいじゃんかよ……それよりさ。お前はこの世界はどう思う?」

「え?」



 俺が思っていたこととマッチする内容の質問。



「別に…。全部は知らないから言及はしないけど、状況的に一抹の不安を感じる。としか言えない」

「そうか。不安に()られているのか…。俺はさあ。単純でさ。ただ嫌いだ。そして滅んでしまえばいいと思ってる」

「そうか」

「ああ。……さーて。短かったけど、いい話相手になってくれて助かったよ。神の眷属」

「そうか。ていうか、お前はグロマなんだろ」


「そうだな。やっぱ気付くなんて容易いことか。よっし。そんな君に、俺から一言」

「なんだ?」

「俺の名は…デットズ・ファル・インスペードだ」

「…三つ?」

「じゃあな!」

「ちょ…待て!」



 俺は逃がすまいと後ろを振り向くと…。



「いない…」



 俺は少しの間立ち尽くしていたが、気力が抜けるように再び座る。安堵のため息。ここで戦闘になるのは避けられた。いや、最初から戦闘なんてする気はなかった様子はあったし。

 それに、あいつの名前はおかしい。名前の文化は国ごとにある場合もあるけど、一般的には『名前・姓名』という人名構成。

 けど、三つ。どこかの部分が誰かから付けられた名前…。



「誰なんだよ一体」



「お~~い!」

「終わったよ~!」

「おっ!」



 さっきのやつの正体はよくわからないまま終わり、優花とサリスの買い物チーム、そして同じタイミングでジークとクラリの宿チームも帰ってきた。



「買い物はどうだった?」

「うん。色々買ったよ」

「そうね。例えば、回復薬や応急措置のための道具、食料、水、とか。必要だと思ったもの全部」

「お金大丈夫?」

「うん。ちゃんと考えて選んだから」


「そうか。問題なしか。それで、宿のほうは?」

「僕達も問題はない。ちゃんと確保できたし。ただ、さすがに五つというわけにはいかないから三人部屋一つと二人部屋一つの二部屋を借りることにした。だから男女で分けてちゃんと寝れる」

「お前、分けないつもりだったのか?」

「い、いや。なんでそうなるなんだ。僕が変態みたいじゃないか」



 今の会話で笑いが起こる。ジークは少し機嫌を悪くする。

 俺は謝りながら出発の準備に取り掛かる。と言っても荷物の最終確認なのですぐ終わった。てか、収納魔法ってこういうときスゲえ便利だよな。



「さて。じゃあ転移魔法で移動するとしますか」

「って言っても結局どこだ?」

「う~ん。僕が見た場所は草原に一つの山。でもって僕がギリギリで見える範囲にある場所となると……一つだけ、当てがある」

「意外に絞れるんだな」


「ああ。僕の能力は国境を越えてもできる、なんてほど万能じゃないからね。それにこの国で草原に山がある場所なんて一カ所しかない」

「そうか。で、そこは?」

「うん。そこは、この王都からやや北寄りの北東。北北東とまではいかないけど、その北寄りの北東に場所の条件を満たす山がある。『スタガリ山』っていう山」



 いや、地図見たことあるけど俺は全然覚えてないんですけど。ていうかネーミングセンスが…。



「スタガリ山、となると一番近い街は『メスク』ね」

「だったら俺はそこで宿見つけたほうがよかったと思うけど」

「まあ。それもあるけど利便性はこちらのほうが上だからね」

「そうなのか。まあジークが言うんだったらそうなんだろうな」



 正直なところ、まだ国内だからジーク達に助けられながらこうやって物事を進められるかもだけど、国外になってしまうとさすがにジークとかクラリもわからない。当然俺達もわからない。サリスはどうかわからないけど。



「よっし。今の時刻は十時過ぎ。まずはメスクに向かおう」



 ジークがリーダーシップをうまく発揮している。自信がないのはあくまでも力量だけってことか。頼りになるなる。うん。


 ここで移動手段となる転移魔法を発動させるのだが、俺と優花は当然鮮明にイメージできる場所は限られていてメスクという場所は初めて行く。だから魔法は使えても転移できない。一方でジークとクラリは転移魔法は使えないらしく。メスクに関してもあまり行ったことはないようで。条件を満たしているのはサリスだけだったのでサリスのところに集まった。

 俺はサリスの後ろでサリスに感謝する。



「サリス。すまん」

「いつかおごりなさい!残念男!」

「え…」

「ん~~」



 サリスは頬を膨らませてじっとこちらを見ている。要求の目。

 そして久しぶりでもない気がする『残念男』。ホントなんでそう呼ばれてんだよ。理由が知りたいよ。


 そう思いながらもとりあえずそれに答える。



「へいへい。いつかね」

「よっし!」



 まあ。助かってるし。これくらいは当然か……――――。

 そう思っていると…――。



「ぐはっ……!」

「あっ。ごめん嬉しさのあまり肘がお腹に当たっちゃった…。ごめん!」

「いきなりは…キツイ…」



 サリスは嬉しさのあまりガッツポーズをとって、そのときに近づいてきた肘が俺の腹に直撃した。って感じか…。若干、みぞおちに近い…。



「うぅ…」

「はいはい。ゴメンって。とりあえず転移するよ」

「わ、わかった…」



 俺は少し腹を抱えながらもなんとか耐える。やっぱキツイ。

 と、痛みと闘っている俺など関係なしに魔法の発動を始める。てか、俺を気にしてる余裕ないからな。



「【強化魔法発動 インクリース】」

「【時空魔法発動 ワープ】」



 サリスは前に俺達にと転移する際に見せた手順で魔法を発動させた。慣れた手つきで発動させていたので、一瞬と言えるほど早かった。


 そしてそのおかげで、この場からすぐに転移することができた。五人全員。

 

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