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   第五話  爆風VS魔装(前編)

文字数増加に伴い、分割しました。


 だけど、シャルトのペース配分が不確定な以上は、短期決戦だけじゃなく、持久戦にもつれ込んでもいいように、正面衝突はまだ避けたいけど。


 かといって、あまり壁際にいることもできないし、ほかにも問題がある。


 拘束された優花たちや、国王陛下たちもいる。時間経過で被害状況が悪くなれば、それだけ危険に(さら)すことになる。

 シャルトの積極的な姿勢も加味して、持久戦は捨てざるを得ない。


「果たして、どうだろうなッ!」


 勢いづいて、真っ向勝負を仕掛けるシャルト。魔装を使った以上、予測できる行動。


「やるしかない!」


 俺は覚悟を持って一歩踏み出し、足音のリズムを加速させる。

 距離を詰め、衝突間際に地面を蹴って、頭上からの攻撃に臨む。


 シャルトは空中の俺を目で追い、大剣の軌道を斜め上へと描く。

 迫る大剣の刃を神剣で受け流しながら、火花を散らして強行。間合いを詰め切って、シャルトの肩を足掛かりに背後へと着地し、間髪入れずに攻撃へ転じる。


「甘いッ!」


 だが殺気を纏った目、バットのように左から振る大剣。


 対応でき――


「うっ……!」


 巨大な剣身の側面が、右腕を直撃。体が強制的に折れ曲がり、壁際まで吹き飛ばされた。

 激突して壁に打ちつけられ、衝撃で俺は剣を手放す。背にした壁は恐らく破壊された。


 大量の大小ある瓦礫が、仰向けに倒れる俺と、手元から離れた神剣を、容赦なく下敷きにした。


 視界は暗く、窮屈な空間に閉じ込められた。

 少しばかり全身が麻痺したようで、衝撃の影響が痛みとして表れた。


 だが、痛覚に構っていられない。

 俺はどうにか堪えて、点々とある隙間から差す微かな光に手を突っ込み、無理やりこじ開けて顔を出した。


「フッ――」


 そこには大剣を振りかざし、笑みを浮かべるシャルトの姿があった。

 容赦なく攻撃が振り下ろされる。


 反射的に瓦礫の中に身を隠し、焦りを募らせながらも、打開策のために考え込む。


 このまま普通に出ても二の舞。力任せは得策じゃない。この状況から脱却する手段は――神剣、くらいしかない。


 傍の神剣まで、這いつくばって移動する。

 低姿勢もままならない空間で、神剣は床に突き刺さっていた。巨大な瓦礫の一部分を、抗うように支えている。

 すぐさま柄を持ち、瓦礫を押し出すように起き上がり、どうにか膝を突いた。

 

 改めて魔力を注いで――


「【爆風(ブラスト)】」


 魔力調整は十パーセントで発動。最も最小限に抑え、爆発に伴う爆風の衝撃の中、飛び散る瓦礫を足掛かりにしつつ、風に乗れたように間を縫って脱出することができた。


 側にあった巨大な瓦礫を踏み台にして、外で待ち構えていたシャルトへ飛び込むように突撃する。わずかにだけ、あっと驚くように目を見開くが、それも束の間。

 シャルトから余裕は消えず、遠心力も無意味にするように素早く大剣を、俺の頭上へ振り下ろした。


 大剣の陰が頭上から迫る、切っ先が俺に届く距離。


 避けられない。


 とっさに神剣の先を右斜め下に向くよう構え、床に両脚を付けて滑り込む。

 振り下ろされていく大剣の刃と火花を散らし、死角で大剣の先は見えないものの、床を擦れる金属音が鋭く響き続けている。


 俺はそのまま大剣の脅威から逃れ、シャルトの股下を通過。

 振り返りながら立ち上がると同時に、魔力調整は五十数パーセント。特大の的に特異能力を発動させる。


「【爆風】」


 特異能力がシャルトを捉え、悠々とした行動で遅れたにも関わらず、大剣を盾に防御態勢に入り、吹き飛ばされることなく耐え凌いだ。


 目を疑うような想定外の出来事。切り替えて範囲攻撃にも頼りたいけど、状況的に使えない。


「【爆風】」


 同じよう発動し、嘘か真か確認する一撃を放った。

 爆発、爆風、――それでも結果は同じ。後半だけ防御する程度に終わってしまう。


 信じられない。


「どうなってるんだ……」


 三度目の正直で畳み掛けるも、遂には発動しないまま(かわ)される。

 動揺と焦り、恐怖が一緒くたに襲ってきた。砂の彫刻を崩されたような、喪失感。


「おいおい、動きが鈍いぞ?」


 優越感にでも浸るように笑い、俺は蹴り飛ばされて、床に叩きつけては跳ねてを繰り返した。

 視界の残像が止まらず、瓦礫かなにかに塞がれて止まった。

 眷属化の体とはいえ、ゴブリン戦を経た後もあって、体中が痛覚で騒がしい。


「ハッハッハッハッハッ――アァハッハッハッハッハァ――!」


 狂人のような笑みは止まることを知らず、一時は止まらなくなって腹を抱えだすが、それを頂上に段々と落ち着きを取り戻していった。


「どういう……なんで……?」

「無知ゆえの無駄な足掻きだ。お前の特異能力は効かん」


 明らかに見下した言動で告げ、シャルトは姿を消した。

 魔力――後ろ。いや頭上か。


 真っ先に見上げれば、剣を振り上げる不敵な笑みのシャルト。

 受け止められないと判断し、俺は前に飛び込んだ。


 シャルトはその直後に、床を破壊しながら着地。その隙に俺は距離の確保には成功。対峙して互いに次の出方を窺う。

 状況は最初と変わらず一方的になり始めている。保険に頼りたくはない。その前に決着を付けたい。


「どうする……?」


 そもそも基礎的な身体能力も負けている俺は、シャルトの魔装や強化魔法を無効化する術がないから、上回る方法を試すしかない。


 俺の発動させた強化魔法は対象が体。現状の打破となると、魔法の性質をヒントに発動させるしかない。


 強化魔法を強化魔法で重ね掛けして強化する方法。同じ対象に同じ魔法は重ねられない性質に則って、対象を俺の体じゃなく、発動中の魔法自体をさらに強化する。


 シャルトと同等か、それ以上に動けるようになるはずだ。ただ、肝心な魔装への対策がわからない。


「行くぞ! アオハアジンヤ!」

「くっそ!」


 攻撃されるのはマズい。距離を――。


「【爆風ブラスト】」


 俺は瞬間的な対抗のために、魔力へ意識を切り替えて発動した。

 だが、特異能力を一切(かわ)すことなく、大剣を盾に真っ向からの突撃。

 魔力への意識が散らさずにいた俺は、その一瞬に疑問を覚えるが、その間に大剣が神剣と交える羽目に。


 それも予想だにしない威力を持ち、神剣が弾き返される。体勢ごと崩されたことで生まれた隙に、右頬を拳で殴られ吹き飛ばされた。何度か跳ね返った感覚が過ぎ去り、横に転がりながらも、うつ伏せでピタリと止まった。


 相変わらずのやられ様。


「パンテラに、申し訳ない……」


 思考の中で粘り強いガムのように張りついた、閃きを剥がしていく。

 神剣の特異能力も魔力を持ち、必要な動力だから常に注いでいるけど、魔装を付与された鎧に近付けば効果が薄れる。最終的には発動しても、なにも起きない始末。


 魔装には魔力を吸収する力があるのかもだけど、最後だけ魔装を纏った鎧に頼らず大剣で防いでいた。もしかしたら魔力じゃなく、単に物理的な爆風による衝撃かもしれない。でなきゃ、わざわざ防御態勢にならない。


 魔装はダメージを受けると、効果が薄れて持続時間が低下する。その効果を考えると、物理的な攻撃だけは受け付ける。


 俺との戦闘で魔装の効果を心配するのは、剣より鎧のはず。魔装の効果が切れれば、鎧の蓄積ダメージで余計に脆くなる。だから、剣で少しでもダメージの軽減を図ってたのかもしれない。


 ていうことは、立て続けに単体攻撃で発動し続ければ勝機がある。結局は持久戦みたいなものだけど、少しでも早く終結することが一番大事だ。


「神の眷属、この状況は万策尽きたと言ったところか?」

「あいにくだけど、踏ん張り時が見つかった……」

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