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神々の世界と因縁のペンダント【加筆修正中・更新休止】  作者: 海斗
第五章  個々の試練
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   第二十八話  脱出の算段


「なに言ってるの? 囮になるって……」


「優花。僕は、仁也が本気で言ってると思える。確かに僕だって一瞬、冗談に聞こえた。緊急クエストは時間との勝負。(ドラゴン)の件は足止め程度で十分。天災級の魔獣を、父上が見逃すはずがない。国の援軍があるはずだけど、それには時間だってかかる。でも、討伐できれば申し分ない。仁也の力は討伐に及ばなくても、足止めにはなるはず」


「なんで……なんで言えるの? 目の前にいる魔獣は《天災》って呼ばれてるんだよ? 体感したでしょ? ジークの攻撃が通用してなかった」


「それは、僕が()()()人間だからって理由かもしれない。もしかたしら、神の眷属である仁也は別かもしれない」


「そういう理由なら、私だって残るべき! それか、私だけが残ってもおかしくはないでしょ?」


 完全に興奮状態になった優花は、反論する一方。

 ついには、自分だけが残ると言い出した。自分勝手で申し訳ないが、優花に残ってほしくはない。

 おそらく、クラリがこの場にいたときは治癒魔法かなにかで、怪我だけじゃなく気力や体力を回復していたはず。

 竜より前にいたゴブリンやウルフとの戦闘を考慮すると、その最中での治癒魔法であればもう意味を成していないはず。ましてや治癒魔法の効力を受けていないとすれば、余計にこの場に残れるわけがない。


 素性の知れない男、デットからもらった回復の水薬(ポーション)とかいうもので、俺の気力やら体力は戦闘前と大差ない。それでも、ここに来る前にも魔法使ったりして、多少なりとも消費してはいる。

 けど、気にするほどじゃない。余裕はある。

 とりあえず、二人がどれほどかを確認してから、最終的にどうするか決めよう。


「優花。とりあえず、体調や気力の面でどんな状態か訊きたい。あと、クラリの治癒魔法で一度回復したかどうかも」


「……わかった」

「当然、ジークもだ」


「了解。じゃあ、僕から――」

「と、その前に。さすがに竜に攻撃されると邪魔だから、ちょっと待って」


 今まで話し込みながら、並行して竜の様子を窺っていたが、まったく襲ってくる気配がない。

 隙だらけで、竜にとって絶好の機会だったはず。にも拘わらず、現に、横目で見れば眺めているようにしか見えない。

 念のため、簡易的な安全地帯が欲しい。

 俺はさほど魔法に注力はしなかったので、魔法の手数が少なく、二人に相談したところ優花が確保できるというので任せることに。


 優花は、俺たちが自分の両脇に位置するように俺とジークの間に立つと、すぐさま純白の魔法陣を展開した。加えて、強化魔法を発動。俺たち三人が入るほどの範囲まで、魔法陣を拡大させたところで、純白の魔法陣は淡橙色へと変色。土魔法が発動した。


「【土魔法・発動 ロックドーム】」


 地面から直方体でできた複数枚の土壁が、急成長する植物のように突き出て生成されていく。

 土壁は魔法陣の範囲内で、俺たちの頭上を覆い被さるようになって曲がっていく。

 やがて、複数枚だった土壁は半円球の空間を造り出すと同時に、変形して連結。一枚の土壁となった。

 土壁は魔力を帯びてその形を維持している。崩れ落ちる気配はない。


「で、二人の現状は?」


 土魔法の効力を視認した俺は、改めて訊き直した。

 最初に口を開いたのはジークだった。


「僕は、正直言って限界は目前に近い。初動からひっきりなしに体力や気力を消費してる。息切れはないけど、全身は石を纏ったような感覚で、倦怠感を覚える。このままいけば、そのうち体調は悪化する。竜相手は無理だけど、さっきのゴブリンやウルフならある程度は討伐できる。それに緊急クエストは確か、冒険者の招集範囲がこの国全土。転移魔法の使い手がいれば、遠く離れた町からも日時かからず派遣され、少数精鋭で討伐実行に移される。だから、端から戦闘はある程度で済む。でも、現状より力を失ったら、まともに戦えはしないから、どうせなら残りの体力や気力は緊急クエストのために使いたい」


 意見が込みの現状報告に、ジークが俺の提案を受け入れたのが納得だった。

 それを聞いていた優花は頷きつつも、口を開いた。


「私は言うほど目立った異変はないよ。私もジークと同じように治癒魔法なしで戦ってたけど、倦怠感はないかな。ジークが言ってた通り、全体的な予定を考えると、ここで時間を割くわけにはいかない、って思った。体力と気力に余裕がないジークを一人、緊急クエストに行かせるわけにもいかない……。ただ、仁也一人を残すことだけに気を取られて、全体が見えなくて……先のことを考えてなかった……。やっぱりここは、仁也に従う」


 よかったぁ。なんとか、理解してもらえた。


「ただし!」


 と、思ったが、まだなにかあるようで……。


「絶対に生きて戻ってくること。必須条件だから。いい?」

「わかってる。こんなとこで死んで意味なんかない」

「うん。じゃあ、この場は仁也に任せるね」

「あぁ、任された」


 こうして優花の理解を得たところで、竜の気を優花とジークから逸らしつつ、脱出の算段をする。

 気を逸らす問題は、俺が絶えず攻撃を続ければいい話で、重要なのは脱出の方法。どうにも、俺の考えとしては上か下の、どちらかしか方法はないと思ってる。


 周囲は炎の壁があって通り抜けはまず不可能。論外だ。

 一方で下、つまり地中から突き進む方法は、正直言って五分五分。

 魔力の気配は少なからず感じ取られてしまうが、そこは俺が攻撃で気を逸らせばいいだけで基本的に脱出には成功すると思う。

 けど、炎の壁を通り越したあとの移動手段が問題。

 延々と地中を突き進むわけにはいかないだろうし、地上に出るにしてもチックまでの移動手段が悩ましい。ここからチックまでは、国をほぼ横断するような距離で、通常なら歩いて二、三日くらいはかかるほど遠い。

 だから、あまりこの手段は使いたくない。

 最終的に消去法でいけば上、つまり空からの手段がいいかもしれない。


 移動手段は、フルトの一件でスタガリ山に行った際に、優花が使っていた浮遊魔法であろう魔法を使おうと思っている。予め発動して上空を移動。炎の壁を越えてからは、空中を浮遊したまま目的のチックの町まで向かってもらう。

 優花の魔力次第だけど、本人はさっき『異変はない』と言っていたから、まだ多少の余裕はある様子だから問題はないはず。


 そして二人が脱出を試みる間、俺が気を逸らして攻撃を休まず続ける。これだったら、地中を突き進んで脱出するよりかは、後先も考えられてマシな手段だとは思う。

 となると、俺の役割は重要になってくる。

 俺は、提案者として脱出の算段を二人に話すと、上空を移動してそのまま向かうほうがいい、と返ってきた。

 地中を突き進むための魔法は、ジーク曰く、『そもそも聞いたことがない』とのこと。

 これで、あとは実行に移すだけになった。


「さて。早速始めますか……」


「何度も言うようでしつこいと思うけど……仁也、いい? 死ぬようなことにはならないでよ?」

「それは、僕からもお願いしたいな」


 とま、念押しされる。

 さっきと同じく「わかった」と伝えたが、繰り返し優花やジークの口からは心配の声がこぼれた。無茶だけど、確実ではある。

 こうして意見がまとまって、実行に移そうとした矢先、再び竜の咆哮が土壁を通して聞こえてた。

 しかも、ドーム内がやけに冷えて寒気がする。


「外が気になるな……」

「そうだね。魔法、解除するよ」


 そう言って魔法陣から魔力を抜き取ろうとした瞬間、土魔法によって造られた土壁のドームが、轟音とともにひびが入り、数秒足らずで吹き飛んだ。

 視界は開け、見覚えのある青白い炎を背景に、鎮座する竜の姿がそこにはあった。

 とっさのことだったが、三人で顔を見合わせて頷き合い、各々で行動を開始した。


「竜! 俺が相手してやるよ!」


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