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神々の世界と因縁のペンダント【加筆修正中・更新休止】  作者: 海斗
第五章  個々の試練
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   第二十六話  諦めんな!

 真っ先に書物を収納魔法の収納空間へ仕舞い、突き刺したままの神剣を抜き取って行動に移した。

 また走り始めたはいいが、思いのほか距離がある。

 コストの問題で移動手段を変えたが、移動速度なら圧倒的に転移魔法だ。

 だが、イメージに問題がある。転移魔法は一見、便利そうに思えるが危険が伴ううえに完璧ではない。

 鮮明に、正確にイメージした場所というのは、一つの風景を切り取ったもので少しの変化でもあれば、不正確扱いとなる。

 もし、失敗すれば強制的に条件に類似した地点に転移させられる。体力やら集中力に余裕があるなら造作でもないが、そうでない場合は回復するまで移動できない。

 だから発動者の力量や、どうイメージするかの発想次第だったりする。俺はまだ使ったこともないし、ましてや平原となると特徴的な目印がない限りは難しい。加えて、優花たちの正確な位置は知らない。


「平原だからなぁ……しかも、イメージって言っても曖昧なところあるからなぁ」


 なんとか捻りだして名案を見つけ出そうと、平原を駆けながら思考を巡らせるが、納得のいく案は見つからない。ただ、転移魔法が俺の知る中で最も早い移動手段ではある。


「うーん、やっぱり、()()()()()()……なんとか……ん? いや、これも俺が自分の想像で作っちゃえばいいのか。神界で念のためって思って読んではおいたけど。おかげで役に立ってる。って今はそれじゃなくて――転移魔法の問題点。考え限り、その場所の風景に限定されて、訪れた場所にしか転移が不可能だった。加えて発動者の記憶力次第でもある。記憶力はプラス要素として、主因の風景頼りの転移をどうにかできればって話だよな……」


 俺は自分の持つ知識というよりかは、ここまでの記憶をくまなく脳内に映し出した。 

 ギルドやフルトの一件、内戦、この異世界に降り立ったときまで――……。


「……そういえば、この国の地図持ってたな。そっちのほうが地図持ってればいいだけで、相当なことがない限りは場所もそう変化がない。風景を思い浮かべることもなく、もしかしたら一地点だけじゃなくて複数の地点にまで指定できるかもしれない……。おぉ、なんか名案かも! あとはそれに適した魔法を、生み出すか探し出して組み合わせれば……転移魔法の上位互換が完成できる!」


 そう思いついた矢先、神剣を再び地面に突き刺して実行。

 主因を改善すべく、地図による地点への転移を可能とするため、既存の魔法を脳内に浮かび上がらせるが、そもそも類似した魔法があるならだれかの手によって作られていてもおかしくない。それも世界共通で俺が知っているのは魔法は基礎。他は個人的な魔法(オリジナル)で、こちらの方が圧倒的にこの世に存在するはずだ。人の数だけあるわけだから。

 魔法は想像を創造する術であって頻繁ではないが、利便性の高いものが生まれれば、よりよくなる。まるで技術の発展。生み出すのはそう容易くはないが、あいにく俺は元いた世界の記憶もある程度の知識も健在している。発展具合を比較すれば元いた世界が上。

 こうして主因の改善策となる魔法を生み出そうと考え込むと、思ったほど苦もなく思いついた。

 ヒントはGPS。その一部を組み込むだけ。それに従来の転移魔法とまったく異なるわけじゃなく、共通する点のほうが多くなるが、主因は確実に取り除けるはずだ。

 そのためにはまず、地図を記憶する必要がある。ただ、万が一のときを考えると記憶頼りっていうのは、頼りがいがない。


「となると、想像を形にするにはやっぱり魔法。発想は……――そうだ! 画面上に映し出されるGPS地図アプリの機能! それのみを想像すればいいのか」


 詳細に考えるなら、記憶媒体として魔法を用いて脳内に地図が開き、行きたい地点へピンを刺せるようにする。加えて衛星写真みたいにはできないから、今いる平原や山中などの地図でも位置指定が難しい場合は、一度大まかな場所へ転移したあとに、視界に距離を表示するようにして正確な位置へ転移。二度手間にはなるけど、その分、発動速度を向上させればいい。

 これらの要素を組み込み、なおかつ転移のための従来の転移魔法を基盤とする。

 能力を簡単に言えば、元いた世界のスマホにあった地図アプリに、アプリでは不可能な転移が可能になる……って感じになるといいけど。

 と、不安に駆られながらも、既存の魔法の中で唯一ある発動速度向上の魔法のみを、想像と転移魔法にプラスして魔法の生成を始める。

 魔法の生成に関しては神界で読んだ書物を参考にしている。

 魔法の生成は必要な情報とエネルギー、すなわち魔法の構想を魔力に乗せて放つだけ。魔法の属性に関しては自動的に判別が行われて、生成成功の際に魔法陣が属性に合わせた色へと変色する。

 この生成時に似ている点とすれば魔法の発動時と、合成魔法。魔法を組み合わせるということだが、一つの魔法にするがゆえに合成魔法には該当しなくなる。


「さて、始めるか」


 そして、構想を脳内で完成された俺は、一度足を止めた。

 発動前に純白の魔法陣が展開される魔法発動時と同様に、足元へ純白の魔法陣を展開。

 緊張のせいか、深呼吸を挟んでから魔法陣を前に、手を広げて突き出す。

 構想のすべてを魔力へ乗せるようなイメージで、魔法発動と同様の容量で魔力を操作して魔法陣へと送り込む。

 だが、同時に経つ時間で焦りが募って、最初に竜を見たあの光景を思い出して数秒間は頭から離れなかった。

 もし、失敗の際は魔法陣にひびが入り、消失した状態になる。

 それだけは避けたい。できれば、すぐにでも優花たちの元へ向かいたい。


「うぅ……魔力が、どんどん……吸い取られて……!」


 魔力が空気中から魔法陣へと絶えず送り込まれていく。その影響か、陽炎のように周囲の空気は揺れ動き、魔力の動きが肌身で感じられるほど、多量で大きな流れが感じ取れる。

 歯を食いしばり、全身に激痛が走った。

 やがて、魔法陣の中央から上空へ直線状の青紫色の光が放出されて、数秒後には薪が割れるように立体的で放射状になって、途切れながら徐々に光は消えていった。

 その刹那、衝撃波が空気を伝って俺を吹き飛ばした。まるで、時が止まったようだった。


「イテテ……終わったのか……?」


 着地した衝撃で、若干痛めた腰をさすりながら視線は魔法陣へ。

 どうなったかなんて、これが初めてだから一切わからないけど。青紫に輝く魔力が見える。どういう原理で魔力が青紫になって見えてしまうのかは、俺にはわからない。が、変化があるってことは、なにかが起こった証拠のはず。

 これもきっと、生成の結果が出たはずだ。成功か、失敗か。

 俺は胸を高鳴らせて、その結果を目にしようと魔法陣があろう前方を見遣る。

 魔法陣にはひびの一つも入らず、ほんわかと光って静けさのある様子になっていた。


「ひびが入ってないってことは、成功ってことだろうけど……この後ってどうなるんだ? 正直おまけ程度にしか思ってなかったら、対処なんてわかんないぞ。 とりあえず、魔法の生成は成功して……使っていいってことなのか……? ――ああ、もういいや。俺は早く優花のところに行きたいんだ。ここで立ち往生してられっか。 魔法陣に入ってやる!」


 多少の躊躇(ちゅうちょ)はあったが、時間が惜しい俺にとって、いつもよりかはその余裕もなかった。

 軽やかに立ち上がって、地面に突き刺さった神剣を抜き取る。

 駆け足でほんわかと光る魔法陣の元へ向かい、勢いのまま両足を完全にその範囲内に収めた。

 その一瞬――、一弾指にも満たない間で視界に映る光景のすべてが、上方へと向かって残像と化した。

 俺は思わず、目を閉じた。


 しばらくすると、肌を流れる冷たい風が吹いて、耳元で荒々しく声を上げている。

 周囲の状況を確認したく、恐る恐る閉じた目をゆっくりと開けると――


「え……?」


 正面に広がる光景には、見覚えがあった。

 それはまるで、最初の移動時に見た高度と同じ。山脈の頂上付近と同じ高さに、俺はいた。が、浮遊などしておらず、地上へ向けて落下しているようだった。

 さらなる状況を把握のため、くまなく視線を動かせば、足元には迫り来る地面よりも、先に見えるものがある。

 それは遠目で見た竜の、仰向けの状態から起き上がろうする姿。そして竜の身体から小さいなにかが落下していく。

 数秒間、俺は正体を確かめ、判明した途端。重力に身を委ねた。

 それどころか、手に持った神剣の特異能力(シンギュラースキル)を発動させて落下速度を加速させて接近する。

 視界の中で徐々に大きくなっていくその姿は、まさしく――ジークだ。あのまま落ちれば――確実に死んでしまう。助けないと……!


「ジーク! 俺だ……仁也だ! 諦めんな!」

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