魔王誕生の祝祭
ゼルフィスに話を聞くと、ここは、「イセカーイ」という名の異世界らしい。くそほどつまらないダジャレみたいな町だな。ギャグセンスがなさすぎる。適当さがこの世界ににじみ出ている。
「とりあえず、勇者誕生を祝して、パーティーをしましょう!」
ゼルフィスは、そう言葉を発した。
「おー、それは、嬉しいな。」
今まで、誕生日すら、誰にも祝われたことがないのに。
なぜか、この時の僕は、泣きそうになった。この時、ゼルフィスは、特に深い意味もなく、そういう言葉を発したと思うが、僕にとっては、その言葉は、とてもうれしかった。
「なに、泣いてるの。ほら、主役は、この椅子に座って!」
「あ、ああ。そうだな。」
本当に転生してきて、良かった。
「はい、これ。」
ゼルフィスは、そういって、ある食物を手渡した。
「こ、これは、カップラーメン。」
祝いにカップラーメンは、何というか違和感しかない。
そして、ゼルフィスも自分の分のカップラーメンを手に取った。
「さ、さあ、そのカップラーメンを手に取って、かんぱーい。」
この子、やっぱりちょっとずれてるな。
「か、かんぱーい。」
しかしながら、この場には、二人しかいなかった。
「ところで、他の勇者の仲間はいないの?」
そう聞いたら、気まずそうに、
「う、う、それは、、、、いないの?」
「え、じゃあ、今現在二人ってこと?」
「そ、そうよ。」
そういって、ゼルフィスは寂しそうに答えたので、これ以上詮索するのは、やめた。
「じゃ、じゃあ食べるか!カップラーメン。」
「そうね。いただきまーす。」
「んー、おいしー!何回食べてもおいしいわ。」
そういって、緑色の綺麗な長い髪の毛を揺らしながら、少女ゼルフィスは、顔を赤らめて、おいしそうにラーメンをほおばっていた。
「確かに、おいしいな。カップラーメン。」
なんだか、懐かしい味である。
「でしょでしょ!」
「おう。」
そして、二人はカップラーメンを食べ終えた。
「たのしかったねー。パーティー!」
ん?この人、何言いだしてるの?いや、人ではないか。
「え?おわり?」
この発言は、なんか失礼だったかな、と思いながら、やっぱり、この発言はおかしいと思い、発言したことに対して、後悔はしなかった。
「おわりよ。」
「だって、パーティーといっても、そんな資産ないもの。」
「そ、そうか。」
異世界の者たちも大変だな。
「ところで、あなたのいた世界は、どういう所なの?」
あんまり、異世界まで来て、現実世界のことは、話したくないな。
しかし、空気を壊すわけにもいかないので、話すことにした。
「あんまり、いい所では、ないよ。朝から、深夜まで、ずっと仕事。何もいいことないよ。」
愚痴っぽく、僕はそう話した。
「そ、そうなんだ。大変だったね。良悟はよく頑張ったわよ。」
そういいながら、僕の頭をなでてきた。頑張ったなんて言葉、何も知らないくせに、よく言えるな、と思いながら、普通にそう言葉をかけられたことに喜びを感じていた。多分、僕は、誰かに、もっと、頑張れよ、と言葉をかけられるのではなく、頑張ったね、といってもらいたかったんだろうな。そういって、自分という存在を認めてもらいたかったのではないだろうか。
「ありがとう。そんな言葉言ってくれて。」
そういって、また、泣きそうになっていた。