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馬小屋暮らしのご令嬢  作者: 石動なつめ
第一章 馬小屋暮らしのご令嬢
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プロローグ レイヴン伯爵家のいざこざ


 レイヴン伯爵家の末の子、アナスタシアは馬小屋で暮らしている。

 その理由は家族から疎まれていたからである。


 レイヴン伯爵には二人の妻がおり、アナスタシアはその第二夫人の子だ。

 第一夫人は生粋の貴族だが、第二夫人は元平民。

 元より身分は違うのだが、レイヴン伯爵が惚れ込んで、自分と結婚して欲しいと何度も何度もプロポーズをした末に妻に迎えた。

 

 しかし、それが問題だった。

 実の所レイヴン伯爵は、正妻である第一夫人よりも、第二夫人を愛していた。

 第一夫人にも愛情は向けていたようだが、やはり差は出てしまうようで。

 正妻からすれば面白くない。幼心にそれを知ったアナスタシアも、さすがに同情した。


 第一夫人も最初は何とか上手くやろうと頑張ったようだ。

 だが夫の愛情の多くが第二夫人へ注がれるのを見て、いつからか限界を超えてしまったらしい。

 第一夫人の顔つきはだんだん険しくなり、少しずつだが嫌がらせをするようになってしまった。


 だが、それでもまだ第二夫人が健在であった頃は良かった。

 夫の手前、第一夫人は表立った嫌がらせはしなかったし、第二夫人もよほどの事がなければ夫に話したりはしない。

 表面上は上手く取り繕いながら時間は過ぎて行った。

 それが崩れたのは第二夫人が病にかかってぽっくりと亡くなってからである。


 第二夫人の死を嘆き悲しんだレイヴン伯爵は、現実から逃げるように仕事に打ち込むようになった。

 噂によれば外で愛人を作ったとか作らないとか。まぁその辺りの事情はアナスタシアも分からないが、そして忙しさを理由にあまり家にも帰らなくなっていた。

 第二夫人がいなくなった事で、夫は自分を見てくれるかもしれない――そう思っていた第一夫人の機嫌は悪くなる一方である。

 さすがにかわいそうだなぁとはアナスタシアも思ったが何か出来るわけでもなく。

 やがて第一夫人の矛先は、第二夫人の娘であるアナスタシアへと向けられるようになった。


 伯爵が帰ってこないのを良いことに、第一夫人はアナスタシアへ与えられていたもののほとんどを遮断した。

 夫人や彼女の子供達と一緒に食事を摂る事はなくなり、食事は減らされ、家庭教師も解雇され、やがて住む場所も馬小屋へと移動させられた。

 顔を合わせなくて清々している、というような事を彼女が話しているのをアナスタシアは知っているが、まぁ、それも仕方がないなぁと思っている。


 そしてそんな母親の嫌悪の感情は、彼女の子供達へも伝染した。悪意とはうつりやすいものだ。

 伯爵である父がいない間、アナスタシアはずっと、第一夫人の母子から嫌がらせを受けていたのである。

 泣くだろう、絶望するだろう、そんな事を彼女たちは期待していたようだ。

 だがしかし。


 ―――実はこのアナスタシア、母親に似た性格で、なかなか図太かったのである。


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