計量給仕 (仮)
異なる選択をした世界の行く末を観察して、良い結果は取り込み、好ましからざる結果は避けようと言う研究シリーズ。
今回は、牛丼屋の自動給仕からみる医食同源と言ったところだ。
この世界でも、深夜或いは24時間営業の牛丼屋があって、ワンオペだの人件費だのと言った問題を抱えている。そこで台頭してきたのが、高度に機械化することで高騰化する一方の人件費を抑えることで、よりリーズナブルな食事を提供する店だ。
このチェーン店が良く出店するのは、比較的小規模の一戸建て食堂や雑居ビルの低層だったりショッピングモールのフードコードだ。薄利多売でメニューを絞り、安さを回転率で補っている。実質的な調理は店内で行わず、工場で調理したモノを盛り付け提供するだけの簡易食堂だ。高度な技能は要求されず、それ故に人員確保を容易にしている。
この牛丼屋での食事は、以前は食券制であったが、スマホの普及率が上がることでスマホアプリに取って代わった。専用のアプリを立ち上げ、メニューを選択しそのまま決済する。現金ではなく電子マネーであったり、デビッドやクレジットカードにスマホキャリアの料金支払いに乗っかったりと、いくつかの選択が可能だ。決済が済むと、スマホアプリにQRコードが表示されるので、これを給仕機のカメラにかざし、照合することで丼か或いはセパレートになるプレートに、飯物と掛け物が給仕され、それをセルフで席に持って行って食べ、食器を洗浄機に返却する。因みに、食物ロスへの関心が高いこの世界では、残飯処理に別途費用を請求される。
一定数残っているスマホ無し或いはアプリ無しの飛び込み客は、現金決済でレシートと一緒になったQRコード票を受け取りこれを給仕機に翳すことになる。また、機械がドボドボと排出する給仕機が馴染めない客は、カウンターで対人給仕で受け取ることになるが、手渡されるだけで給仕機が配膳した物を店員が運ぶだけの違いだ。しかも、セルフでないなら別途チップが必要で、これは店員の臨時収入になるから余計な労役への店員の不満を抑えることにもなっている。
さてここで変わっているのが、この世界では医食同源ヘの関心が高いところだ。
この牛丼屋だと、飯物と掛け物をかなり細かく量を指定して組み合わせられる。残すと処理費用を請求するためでもあるが、カロリーや糖質に塩分とか機知のアレルギー食材その他の栄養素の情報が提供され、例えばカロリーから逆算で盛り付ける量を選べたりする。これは、ダイエットや治療上の食事制限が在る場合、処方箋と連携させることで過剰摂取に警告を注文時に与えたりするためだ。逆に量が足りないと、サラダの追加を勧めたりもする。これらの食事は記録され、診療時に担当医が参照し適切な助言を与えるのにも役立てられる。
その様な細かさに正確に応えるためにも、精度良く給仕できる機械化が求められた。ここまでくると、店員がやることは食材パックの交換や機器や店内の清掃が主になる。店内には、バックヤードにまで保安名目のカメラが死角なく配置されているが、これらは客を装った犯罪抑制対応ばかりでなく、不道徳な店員をも監視されている。実際に監督するのはチェーン店本部のAiで、異常が認識されれば、契約警備会社へ通報し警備員が急行して確認対処する仕組みで、閉店中も稼働している。監視監督が機械任せなのは、観ているのが動物や機械ならプライバシー等の心理抵抗が緩いのと、観ている方の精神負担や人件費の問題もある。
適切な食事と生活スタイルを続けることで健康を維持できると考えるこの世界では、食事プログラムと実際に摂取した食事の記録への関心が高い。また実際に適切な食事プログラムを維持することで、医療費負担に有利な制度もある。その所為か、摂取した品目や量を計測記録しやすい規格化されている工業調理品を家庭料理よりも好まれる傾向にある。家庭料理でも、個や本等と言った曖昧な単位ではなく、重量や体積など製菓のようにより厳密にレシピを記録し、残飯との差分から摂取した食事を記録されることが多い。そのために、レシピ提案記録用の機器もそれなりに発達している。食事のデータは医療記録と共にビッグデータとして分析され、有害食材の精査や健康維持増進の資料として役立てている。とは言え、プライバシーの観点から知られるのを忌諱したり、細かく記録し監督されること事態、嫌がる者もまた一定数存在はしている。
健康上必要な滋養の過不足無い上限下限の幅に実際の食事摂取が留まっているかグラフ化するアプリもあって、医食同源ヘの関心の深さを伺わさせられる。