第二章 元魔王は散財していた件について(仮)
時は晴天、晴れ渡る空と光り輝く大地、吹き渡る風に、今にも芽吹きそうな蕾たち。ああ、なんてステキな日なんだ。だが、こんなステキな日も今日で終わりだ。
「みんな。ごめん。俺、行って来るよ。そしてここに俺は誓う。必ずやあの元魔王の魔の手から逃れてここに戻ってくると!」
目の前に広がる愛しの畑に対して俺はそう叫ぶ。
俺は今日この日を持って彼らを手放し、憎き魔王と共に王都に向かうのだ。その目的はそう、例の聖騎士養成学校に入隊するためという腐った理由なわけで、野菜が腐るよりも気分が落ちる。
「何、叫んでるのよ。気持ち悪い」
後ろから、聞きたくもない声が聞こえてきた。
俺はものすごく嫌な顔をして振り返る。
「ヒカル、あなたそんなのだと、あっちで友達ができないわよ?」
「あっちって、王都のことか?」
「そうよ。私たちはそこで立派な聖騎士になるんだから」
「けっ!」
俺はシャルの近くにつばを吐き捨てた。
「きゃ! 何するのよ!」
「そんなことより」
俺はシャルに近寄る。
「ちゃんと頼んだんだろうな?」
「え? 何を?」
俺の顔とシャルの顔は、今にもくっつかん距離になる。
「俺の畑をちゃんと、お前の両親に維持するように頼んだのかって聞いてるんだよ?」
「ちゃ、ちゃんと頼んだわよ」
「もし、俺が帰ってきたときに、この畑が見るも無惨なふうになっていたら、わかってるよな?」
「えっと、後学のためにどうなるのか、教えてもらってもいいかしら?」
「俺がこの世界を滅ぼす」
「そ、それは勘弁願いたいわね」
俺は、シャルから顔を離した。
聖騎士とのいざこざが終わってから、早三ヶ月が経とうとしていた。シャルがどうやったかはわからないが、あの後の騒動はなんとか収めたらしい。
そして、シャルとの約束通り。俺は聖騎士養成学校に入学することになったのだ。
あれからというもの、俺はもちろん様々な抵抗をしたが、すべて無駄に終わってしまった。最終的には俺のこの畑を人質に取られて、俺は首を縦に振ったわけだ。
ああ、楽しい土いじりができないなんて、拷問に等しい。どうして神はこいつを俺と同じ世界に転生させたのか……。恨むぜ神様……。
「それじゃ、行きましょうか」
「へいへい」
俺は地面に置いてあった荷物を肩に掛けて、シャルの後ろについていく。
王都まではこの村の村長の馬車で向かうことになっている。
俺たち二人が聖騎士を目指すと聞いて、村は大盛り上がりであった。理由は簡単だ。村から立派な聖騎士が誕生すればその分村にお金が入ってくる仕組みになっているからだ。だから、みなは聖騎士のことが嫌いではあるが、村から聖騎士が出ることは歓迎という皮肉なのである。
そんな皮肉から、昨日までは宴会騒ぎであった。
そのときに酔っ払ったじじばばに、シャルのことを頼むと言われたが、そんなのは御免だ。と心の中で思いながら、へいへいと言っておいた。
「やっと、船出じゃのう」
俺たちが馬車に乗り込むと、村長が言って来た。ほんと、とんだ荒波だぜ。
「これから、二人で力を合わせて世界を救うんじゃぞ」
「村長大げさですよ」
俺は彼に微笑えむ。
「大げさなもんか、元勇者と、元魔王が居れば簡単じゃろう?」
「「え?!」」
俺とシャルは大声を上げてしまう。それは俺たちしか知らない事実なはずだ。そんなことを知っている人物、いや、存在は一つしかない。
「ほほほ、まあ、がんばるんじゃぞ」
「はい!」
笑顔で答えるシャルとは対照的に、俺は苦笑いを浮かべた。
―神様まで祝福してくるなんて、完全に詰みじゃねえか……。
馬車を引く馬はそんな俺の悲鳴を感じ取ったのか、代わりに奇声を発しながら発進した。
「わあ、流石王都、人が多いわね」
馬車で揺られること三時間ほど、俺たちは今度こそちゃんと王都にたどり着いた。
「騒ぐな。自分が田舎者だって主張してるようなもんだぞ」
「田舎者の何が悪いの?」
シャルが無垢な表情をして聞いてくる。お前、本当に元魔王かよ。
「色々と面倒なんだよ」
「ほんと、人間て面倒な考え方するわよね。家柄とか勲章とか出身地とかに拘るんだから、馬鹿みたい」
「わかりやすい物に縋りたがるんだよ。魔物だってあっただろう?」
「まあ、確かにあることはあったけど、どっちかっていうと実力重視だったかな。私が魔王のときは完全にそれで判断していたしね」
「ふーん」
そういう意味では魔物のほうが前の世界では進んでいたのかもしれないなと思った。
「魔物ではそうだったのかもしれないけど、今は人間なんだ。面倒ごとは起こすなよ。聖騎士になりたいなら尚更だ。養成学校にはお前の嫌いなそれを意識したやつらばっかりだろうからな」
「はあ、それは憂鬱だわ」
シャルは急に肩を下ろして歩き出した。
―お前が、聖騎士になろうって言ったんだろ! なんで俺よりやる気なくなってんだよ!?
という突っ込みを入れたくなったが、我慢した。あまり目立ちたくはない。
俺たちは、二人で聖騎士養成学校に向けて歩いている。学校は王都の中でも中心街にあり、歩いて小一時間ほど掛かるらしい。王都の中で走っている自然力を使った魔道車に乗ればすぐ着くらしいが、残念ながら田舎から出てきた俺たちにはそんな持ち合わせはなかった。
「ほら。早く行くわよ。入寮に遅れるわけにはいかないんだから」
「へいへい」
養成学校は時間厳守がモットーだ。もし入寮時間に遅れるようなことがあれば、それこそ入隊さえ危ぶまれる。
俺たちは、王都の人間ではないので寮生活となる。というか、ほとんどの生徒が寮生活だ。それを免除されるのは一部の貴族の中でも、さらに地位の高い貴族だけ。彼らは自宅からの通学を許可される。
だから、ほとんどの生徒は今日か昨日のうちに入寮を済ませ、明日の入隊式に備える。俺たちももちろん、その流れに従う。
入寮時間まで後、二時間だ。まあ余裕だろう。
俺は、颯爽と走っていくシャルの後ろをこれまた颯爽と着いていった。
「おらあ、なんだ。お前たちは!」
―はあ、余裕だと思った瞬間これだよ。
「いや、あのごめんなさい」
シャルが角を曲がるときにぶつかったことで、持っていた飲み物が服に付いてしまい一部分が真っ赤になった大柄な男に頭を下げる。
だが、その男の怒りは収まらない。
「謝って済む問題かよ。俺様が着ているこの服がどれくらいの値段するか理解できてんのか? ああん?」
「い、いやー……」
「お前らみたいな人間の生活を十回はできるくらいの値段だ」
「は、はあ」
おそらくだが、この男は貴族だろう。男の周りには三人ほどの取り巻きがいた。
彼らも貴族ではあるのだろう。しかし、家の位がこの男よりも低いため、この頭の弱い男に付き従っているわけだ。
「お前ら、これ弁償できんのかよ?」
お前らとはやめて欲しい。やったのはシャルであって俺は関係ない。
「おい」
男が、取り巻きにあごで合図をした。
すると、俺とシャルはその取り巻きに囲まれる。
「見たところ、お前らは田舎から出稼ぎにでも来た貧乏人だろうな。男のほうはまあ、炭鉱堀りに一年。そんでもって女のほうは……」
男が、シャルの身体を上から下まで嘗め回すようして見た。
まあ、男が出す結論は目に見えている。シャルはあのオールバック達をもメロメロにしたわけだ。そりゃ、馬鹿な男なら出す結論は同じだろう。
「ほう、いい体してんじゃねえか。お前は、俺の家のメイドになれ。毎日かわいがってやる。そうだな。お前も一年くらいで解放してやるよ。ま、一年経てば俺から離れられなくなってるだろうがな。がっはっはははは」
男が汚い笑いをし、周りの取り巻きも笑う。
まったく、こんなやつらのどこに貴族としての品性があるんだか。
正直、俺は別に炭鉱送りになってもいい。
そうすれば簡単に抜け出せるだろうし、シャルとも離れることができるなら一石二鳥だ。がしかし、何分、俺はこういう品性のかけらもないくせに威張っているやつが嫌いだ。大人しく従う義理はない。
そんなことを思っていると、男がシャルの腕を取ろうとした。
俺は、その男の手を取ろうとする。そして、取った後は軽くその腕を折ってやって、周りの取り巻きのあごにでも一発ずつぶち込んでやり、終了だ。
相手は気が付けば意識を失っていて、何をされたのかもわからないってわけだ。それなら後腐れもないだろう。
だが、俺が男の手を取る前に、その手が逆方向に曲がった。
「ぐあっ!」
男がその激痛に悲鳴の声を上げると同時にその場に倒れこむ。
倒れこんだ男は泡を吹いていた。そして、同様に周りの取り巻きも一瞬で地面に倒れこむ。
「はは、お前も俺と同じこと考えてたんだな」
「こんなところでいらない時間使っていられないからね。謝ったし、別にいいでしょ。さ、急ぎましょう」
シャルは、何事も無かったようにまた走っていく。
俺の周りでは少しざわめきが起こっていた。まあ無理もない。男四人がいきなり倒れこんだのだから。
ああ、こいつらもかわいそうに、元魔王に手を出すからこうなるんだ。というか、怖い。あの子怖い。容赦ない。
地面に倒れこんでいる男たちは、実は全員数発もの攻撃を食らっていた。
一発でいいのに、よっぽどいらいらしたんだな。それとも、そういう性格なのか?
おそらく体中の骨が逝ってしまったであろう男たちに、俺は手を合わせてシャルの後を追った。
「おお、気持ちいい光だ」
目が覚めると、俺の口から自然とその言葉が漏れた。
さわやかな日差しが、ほほを掠める。ベッドのそばにある窓のカーテンが少し開いていたみたいだ。
俺は、ベッドから体を起こしてベッドを降り、カーテンに手を掛けて勢いよく開ける。
「うっ……」
今までわずかな隙間から申し訳なさげに漏れ出していた光が、体中に燦々と降り注ぐ。
いい部屋を取ることができた。やっぱり朝は太陽の光を浴びないと一日が始まった気がしないな。
俺は腕を上げて伸びをした。
そして、ベッドで眠るもう一人の人物を振り返ってみる。
「起きろ」
俺から出た言葉は、低く冷淡なものだった。
「まだ寝てたちゃい。むにゃぬやぬあ」
―こいつ……殺す。
俺の顔を肩眉がピリピリと動く。
現在俺、ヒカル・ドゥンケルハイトは、聖騎士養成学校である聖錬学園の寮にて目を覚ました。そして、今日がその入隊式である。
養成学校といっても将来は聖騎士として国のための駒として働く。そのために、学園への入学を入隊としてどの養成学校でも扱っているわけだ。
昨日、俺はシャルと共に入寮時間になんとか間に合うことができ、無事入寮ができた。
どうして、余裕があるはずだったのにぎりぎりだったのかというと。シャルのやつが計十回ほど貴族連中に絡まれたからだ。その内五回はナンパ目的のもので、そのせいで時間が取られてしまった。
まあ、シャルに絡んできたやつらは例外なくボコボコにされたわけだが、巷では昨日犯人不明の貴族狩りがあったということで大騒ぎになっているらしいと、寮に入ってから小耳に挟んだ。
そんなこんなで、俺は昨日は今日の支度を終えてすぐに眠ったわけだが。早くも問題が起こっていた。そう世界が始まって以来重大な問題が……。
「いい加減に起きろ!」
俺は風魔法でベッドですやすやと二度寝を始めたシャルをベッドから吹き飛ばした。
「ふぎゃ!」
シャルが壁に当たり地面に落ちていく。
そう。問題はこれだ。
なんと、俺とシャルの部屋が同室になるという悲劇が起こってしまっていた。
俺とシャルが居た村は小さな村でもちろんお金もない。しかも俺は身寄りのない独り身であるので、学園への入隊は村がお金を出してくれた。シャルも親がそこまでお金持ちではないので、半分ほどを村が出している。
―つまりだ。
村は流石に俺たち二人分の寮のお金を出すことはできなかったというわけだ。
だから、俺たちは同じ部屋に入寮する羽目になってしまった。しかも、もちろん。お金は一人分しか出していないので部屋の大きさは一人分だという悲劇。
まったくとんだ災難がまた降りかかってきたもんだ。このさき憂鬱になるってもんだぜ。
「もう、いきなり何するのよ」
シャルがゆっくりと起き上がる。
その格好は、上に俺のシャツを着て、その下は下着姿という格好だ。
―どこの萌え要素取り入れてんねん!
普通の男なら、シャルの容姿にこの格好なら、ほの字になるのかもしれない。
だが! 俺は違う。何せ相手はあの元魔王だ。そんな気持ち微塵も起きないのだ。ああ、悲しい話だ。本来ならとんだラブコメ展開なのに……。
「何するのよ、じゃないだろ! お前は向こうの部屋で寝袋で寝るって決めたよな? ベッドで寝るのと寝袋で寝るのを一週間交替にするって」
「いや、でも寒かったんだもん」
「知らん! とりあえず。これでお前は二週間寝袋行きだ」
「いや、なんでよ! 嫌よ寒いもの!」
「駄目だ。約束を破った罰だ。お前のせいで俺は昨夜あまり眠れなかった」
「え、それって、あれかしら? かわいい幼馴染がベッドに潜り込んできたから、欲情しちゃったわけ?」
シャルがにやにやして言って来た。
何この気持ち悪い生き物。
「いや、それは世界が滅んでもないな」
「またまたあ」
シャルはまだにやけている。
うわ。まじ何この生物。
「世界が俺とお前だけになっても俺はお前にそんな感情を持つことはないだろうな。神に命令されてもだ」
「何よそれ! ひどい! ちょっとは欲情しなさいよ!」
シャルが地団駄を踏む。
―情緒不安定かよ・・・。
「それよりだ。早く支度するぞ。今日の朝ごはんはお前の当番なんだ。早くしてくれ」
俺は散らかった布団を片付けながら言った。
「それが……、その……
「何だ?」
「私、実は……」
「何だ。はっきりと言えよ」
「食材を持ってくるの忘れちゃった。テヘペロ」
俺は無邪気に気持ち悪く微笑むシャルに笑顔で近づく。そして拳を振り上げた。
「いた!!」
容赦なくシャルに拳骨をくれてやる。
「ふざけんなよ! お前が食材持って来てなかったら、家に何もねえじゃねえか!!」
「だって、だって、重たかったんだもの。うら若き乙女の私にはとても……」
「確信犯かよ!! 元魔王が荷物重いとか言ってんじゃねえ! それにお前は魔王時代も含めればすでに300歳は超えている!」
「うるさい。うるさい! 私は今15歳だもん!」
シャルが俺に対して、ぽかぽかと身体を叩いてくる。まったく力のこもっていないやつだ。
え? 何この子。どういうキャラ目指してるの? そういう天然キャラ目指してるの?
「はあああああああああ」
俺は大きなため息を漏らす。心からのものだ。
シャルはまだぽかぽかと叩いてきている。いい加減怒るよ?
「もう、わかった。朝飯はその辺で食べるか、最悪抜きでもいいだろう。とりあえず準備だ。入学式。いや入隊式に間に合わなかったらまずいからな。いいな?」
「わ、わかったわ」
漸くシャルの攻撃が止まった。
―あああああ、もう嫌だああああ!
入隊式は午前十時から学園にある大ホールで行われることになっていた。
支度をした俺たちは、寮から学園までの道でどこか朝食が取れるレストランはないものかと探したが、ここは王都でありその中心部。つまり貴族の町である。どれも、朝食とは思えない値段のものばかりで、結局手が出せず。朝食抜きとなってしまった。
学園に入るとそこに聳え立つものは、王都の町並みとは少し違う。重厚感あふれる雰囲気で、まるでここだけ文明の進歩が数世代早いのではないかと思われるような造りであった。といっても、田舎と王都でもそのくらいの違いはある。
「わあ、やっぱり少し緊張するわね」
「ああ、これから友達作りもしないといけないわね」
「女の子はどのくらいいるのかしら?」
「ヒカルもしっかりと馴染む努力をしなさいよ」
「後、あまり本気を最初から出さないほうがいいのかしら? やっぱり序所に力が上がっていくほうがいいのかな?」
「適正検査ってどんなことするのかな? もしかしてそこで元魔王だってばれたりしないよね?」
「そういうのヒカルのほうが詳しいんじゃない? 勇者だったわけだし、周りに聖騎士ばかりだったでしょ?」
「っていうか、どうやってそもそも勇者になったの? 私それ聞いたことないな。今度教えてね」
大ホールまでの道のりでシャルは俺の隣でずっとしゃべっていた。
俺としてはこいつと一緒にこれから共に生活をしないといけないというのが苦痛でしかなかったので、シャルの言葉は全部無視した。
俺は周りに目を向ける。幸い学園では制服の着用が義務付けられている。青をベースとしたものでそのほかにも白のラインや黒い模様などが施されているものだ。肌触りだけでかなり高価なものだと理解できた。
そのため、格好だけでは平民と貴族の違いはわからない。だが、それは入隊者の周りの取り巻きでそれは一目瞭然だった。
俺たちのように個人でしか来ていないものはどちらか判断はできないが、家族が付いてきているところでは、その家族の身なりで判断ができる。
そしてそれにより、明らかにこの入隊式で住み分けが行われていた。
俺たちの歩く右手側、建物が建っている側には貴族らしき者たちが、そして左側、塀がある側に平民出の人間がという感じだ。
「おいおい。平民が聖騎士目指して入ってきたみたいだぞ」
「え? マジかよ。俺同じ空気吸いたくねえわ」
「一緒にいたら病気にでもなるんじゃねえか?」
そんな言葉を右側のやつらが大声で馬鹿みたいに言っていた。
だが、彼らも俺たちが通るときには黙ってしまう。それは俺が要因ではなく。俺の隣を歩くシャルが要因である。
「おい! あの子かわいくないか?」
「かわいいっていうより綺麗だ」
「どこに家の子かな?」
俺たちが歩くとそんな言葉が聞こえてきた。これは両サイドからである。
シャルは特にそれに関しては気にしていないみたいだが、この注目は俺にとってはよろしくなかった。
シャルが注目されれば隣にいる俺にもどうしてもいろいろな感情が向けられる。こいつと離れることができるなら関係ないのだが、離れてくれる気配がない。
―これから先何事もなければいいけどな。
「ついに来たわね」
「そうだな」
俺たちは大ホールに着いた。
大ホールの中は思っていたよりもさらに大きなところであった。入り口から舞台に向かって下がっていくスタイルのもので、舞台を中心に半円形となっていて大学などで使われる大教室を想像できる。ホール自体は一階席だけではなく二階席も準備されており、基本的に保護者は二階席に座ることになっているようだった。
まだ、適正検査が行われていないためクラス分けがなされていないので、基本的には座席は自由。
しかし、入学生が座ることになっている中央の三列の座席(後ろと左と右には上級学年が座ることになっている)の一番前の列だけは札が置かれていて座る人間が決まっているようだった。
「とりあえず。適当に座るか」
俺とシャルは二列目の中央付近に座った。そこにぽかりと二つ座席が空いていたからだ。
前には誰も座っていない。つまり俺の前の席に何か特別な人間が座ることになるわけだ。
―まあ、多分貴族の中でも高級貴族の連中なんだろうな。
「ねえ、ヒカル!」
「何だ?」
「わくわくするわね!」
俺は冷ややかな視線を右隣に座るシャルに向けた。
シャルはこの大ホールに入ってからも人目を引いていた。今では彼女の右に座る男子、さらにその右に座っている男子のさらにさらにさらに右に座っている女子にいたるまで、みながシャルのことを、一人は大胆に、一人は控えめにといった具合で気にしているようだった。
まあ、元魔王様はこういう庶民的、いや人間的なことが物珍しいこともあって興奮されているようだが、俺はもうほんと、何事もないことを祈るばかりであった。
それから、少しして、大ホールの座席はほとんど埋まり、空席がちらほらとしか見えなくなる。
この聖騎士を養成する学園、聖錬学園はもちろん王都の中でも一流のエリート学園だ。つまり、学園の入隊式の注目度が高い。そのため、大ホールには学園関係者以外の人間もかなりの人数が来ていた。
そして、その人たちの座席ももちろん用意されており、空いている席はその席と、俺の前にある一列目くらいとなっていた。
―高級貴族様は重役出勤ってことですかね。
隣にいるシャルは相変わらず。期待に目を輝かせている。
三列目まで入学生が入っているため、後ろの人間たちはシャルのことをどこの貴族だろう? などと退屈な時間を無意味な推理にふけって消費していた。
俺は眠気と戦いながら、入隊式の時間になるまでボーっとして、時間を潰していると、後5分ほどという合図の鐘が鳴る。
それにより、場の空気が少し変わった。
その理由は簡単である。一列目に座る高級貴族が入ってきたのだ。
俺は少し不思議に思った。
いくら高級貴族といえども、これが毎年恒例ならば上級生にもその連中はいるはず。
しかし、この場には今入ってきた連中に対して畏敬の念というか畏怖を感じている者ばかりだ。今年から高級貴族が入隊したわけではないだろうに。
俺は再度回りを見渡した。
学園の全員が入っていてもおかしくはない人数がこの場に収まっている。
いや……そうか。
そこで単純なことに気が付いた。田舎暮らしのせいで、いやおかげで貴族の考えがトレースできていなかったようだ。
そもそも、高級貴族が自分とは関係がない入隊式に出席するわけがないか。
つまり、この場で最も立場が上なのは、この一列目に座るやつら、単純に考えると一番学園で立場が低いはずの新入生というわけだ。上級生、さらに他の人間までもが彼らに対して粗相がないようにと気を使っている。奇妙な図式だ。
まあ、俺には関係がないか。と思ってふと自分の前に座ろうとしている人物を見る。
その人物は車椅子で来ていたため周りの執事なのか部下なのかが、その人物を支えて座席に座らせようとしているところであった。
俺はその人物を見ておもわず目を見開く。
痛々しいほどに体中に包帯を巻いている男。顔にだけは幸い傷がなかったのか、顔や頭には何も巻いていなかったので、誰なのかしっかり識別できた。
―あのときの?!
そう、昨日。王都に着いてから急いでいた俺たち、いや正確にはシャルがぶつかったことにより、絡んできて、不幸にも全身の大事な骨を折られてしまった人物が目の前にいた。
あれだけの攻撃を受けても一日でここまで回復できるとは、流石高級貴族、いい医者を持っているらしい。それとも、意外にも頑丈だったのかもしれない。
俺は思わず下を向いて顔を隠した。そして、横目でシャルを見た。こいつも何か気が付いたに違いないと思ったからだ。
「わあ、痛そう。何があったのかしら……」
―えええええええ! お前のせいやん!!
シャルの顔にはまったく相手に対しての気付きがなかった。むしろ、純粋に相手の怪我を心配しているようだ。
駄目だ。こいつ。こういうタイプが世界を悪くするんだ。こういう、自覚のないやつが一番厄介なんだ。ああ、そういえば元魔王だったっけか、納得。
俺はシャルが相手を見るのを止めたかったが、何分、俺は後ろの席で、シャルはその隣だ。
ここで俺がこそこそと動いても話しかけても目に映ってしまうだろう。
俺はただただ、心の中で気が付かれないようにと祈るばかりだった。
神様、お願い。もう俺に試練を与えないで!
「では、入隊式が終わる頃にまた来ます」
車椅子の男を座席に座らせた男の一人がそう言い、壇上の横にあるドアから去っていた。
ふう。なんとか凌いだな。相手はもうこちらを向く機会はない。
俺は安心して、腰を深くして椅子に座りなおした。
横ではシャルがまだ、その包帯だらけの男に「かわいそうに」とつぶやくように言っていた。
―うん。全部君がやったことだよ。
一列目の全員が座席に座ってから、辺りが暗くなり始めた。そして壇上にある演台がライトに照らされる。
「本日はみなさん。入隊おめでとう」
その声とともにその演台に一人の人間が立つ。
「みなさん。おはよう」
そこにたった人物は、無精ひげに長い髪を後ろで束ねている。少し色黒で若々しいイメージだ。
これがうわさの学長か。
壇上に立った人物は、この学園を束ねている人物で、この国で三人しかいない英雄の称号を持っている人物である。俺は、この学園に入隊することが決まってから、一応学園のことを少し調べていたので知っていた。
英雄の称号を持っているからといっても英雄ほどの力を持っているわけではない。
称号というのは、将来、そうなるかもしれない人間に授けられるもので、それを持っていることでの優遇処置はものすごいものがある。それはつまり、力ある者が邪魔をされないための印籠的意味があるわけだ。
ちなみに、俺は前の世界で初めから、賢者の称号を得ていたので、最終的に賢者になったわけだから、称号の意味は大きいのだろう。
確か学長の年齢は五十台だったはずだが、見た感じ三十台といっても大丈夫な感じであった。
学長であるシルバー・グレゴリは、大ホールをぐるりと一周見た。そして、微笑んだ。
「ここには今、将来聖騎士となるべく集まった人間がいるわけだが、みんなどうして聖騎士になりたい? そこの君答えてみてくれ」
シルバー学園長は、急に一人の生徒を指名した。
その人物は一列目にいる生徒で、シャルの目の前に座っている。
「はい。私は聖騎士となって、この国を魔物から守護したいと考えています」
流石に高級貴族といえども、学長には礼儀を守るらしい。当てられた生徒はきびきびとした発声で返答した。
「ふむ。それをしたことによって何になるんだね?」
「え?」
「君が魔物からこの国を守ったとして何になるんだ?」
「えっと……、この国の平穏が守られます」
「本当にかね?」
シルバー学長の急な攻めに、当てられた生徒は意味がわからないという困惑した表情となっていた。
「まあ、いい。では、その後ろの君は、どうして聖騎士となりたいのかね?」
そう言われてシャルが指名される。
「はい! 私はこの世界を救う勇者になりたくてこの学園に入った友人の付き添いで入隊しました!」
―ん?
あれー? なんか、シャルの言葉からものすごい危険信号をキャッチしたんだけど、俺の気のせいかなあ?
会場はシャルの言葉を聞いて、笑いに包まれた。
「ほう」
だが、その中でシルバー学長の返答の声が少し跳ね上がった気がした。
「その勇者を目指している友人というのは、誰なんだい?」
「はい! それは――」
―まずい!
俺は容赦なくそのとき、シャルの足先を誰にもわからないように、強く踏みつけた。
シャルの顔が一瞬ゆがむ。そして言葉が詰まった。
「それは?」
シルバー学園長が再度尋ねてくる。
―このままではまずいことになる!
俺は高速で頭を回転させる。
そして、いくつかのシミュレーションが行われた。
まず一つは、このままシャルに任せることだ。だが、そうなれば確実にまずいことになる。
次にこのまま足をつぶす勢いで、足先を踏みつけ続ける。そうすればシャルは痛みでまともに話すことはできないだろう。
それなら、学長も途中で聞くのをあきらめるかもしれない。
しかし、それではこの微妙な雰囲気が続くことになるし、シャルからなんらかの反撃があるかもしれない。それでは駄目だ。それに相手は元魔王といえども一応女の子、少しくらい慈悲の心がないわけではない。
じゃあ、いっそのこと、地面に魔力を流し込んで軽い地震でも起こすか? それなら、この話題自体が吹き飛ぶことになるだろう。
いや、それも駄目だな。
相手は英雄の称号を持っている人物、この世界の英雄称号持ちがどれほどの力なのかわからないが、万が一俺の行動がばれたときはまずい。となると、そのほかに照明を落とすなどのこともできるだけやらないほうがいいだろう。
―残された選択肢は一つだけか。
「学長!」
拙い策だが、仕方ない。
俺はその場で手をびしっと上げた。こうなれば一か八かだ。
「お、なんだね」
「まことに申し訳ないのですが。私の隣に座っている彼女ですが、実は妄想癖がございまして、私と同郷出身なのでですが、私の村でもそれはもう虚言がものすごくて、私たちはものすごく振り回されました。ですので学長、この娘の言葉に惑わされないようにお願いいたします。そして、私とこの私と同郷の者の無礼をここでお詫び申し上げます」
俺は、そこで立ち上がり頭を下げた。
ホールには静寂が流れる。
そしてもちろん。俺はその間もシャルの足先を踏むのをやめない。ここでシャルに弁解の余地でも許そうものなら、最悪の事態になりかねない。
シャルの顔は、痛みに耐えているのでものすごく鬼気迫ったものとなっていた。
それがまた俺の言葉をみなが信用する材料となるだろう。
「ふむ。妄想癖があるのか」
「はい」
俺は顔を上げずに答える。
「まあ、君の言うことはわかった。座りたまえ」
「ありがとうございます」
俺は静かに着席した。
「では、その者が言っていた勇者を目指している友人はここにはいないということかね?」
「はい。もちろんでございます。そんな身の程知らずはございません」
「そうか……」
なぜかシルバー学園長はそこで気を落としているように見えた。
「まあ、わかった。ではそういうことにしよう。それでは、その君はどうして聖騎士となりたいのかね?」
「はい。私の村は貧しい村です。西に位置するために、いつ魔物に攻め入られるかわかりません。ですので、自分の村を守るために聖騎士を目指しております」
「そうか」
俺はできるだけ大きくなく小さくない理由を言った。
シャルのせいで多少目立ってしまったので、できるだけ普通の人間であることをアピールすることでこれか浮いたりしないようにしなければ……。
それからシルバー学長は、また数名に同じ質問を投げかけた。
みなが俺や、一番最初に答えた高級貴族と似たりよったりなことを言う。
「つまらん!!」
バン!!
最後であろう一人の言葉を聞いた後、シルバー学長は演壇をものすごい勢いで叩いた。
それには会場中が一瞬心臓が飛び上がったことだろう。
「どうして君たちは、そんなつまらないことばかり言うんだ?」
シルバー学園長はまた大ホールをぐるりと見る。
「今、この世界は魔王という巨大な敵と、我ら聖騎士や、その他周辺諸国の兵士によって均衡が保たれている。だが、いつかは魔王を倒さなければ我々の平穏が崩れる可能性がある。確実に魔王軍は兵力を高めているんだぞ? なのに、君たちからは、自分が世界を救ってやるという気概が感じられない。そんなことでどうする! 聖騎士たるもの自分が勇者となるために命がけで努力して死闘を潜り抜けたいと思うはずだろう!!」
バン! と、シルバー学長がまた演壇を強く叩いた。
俺は、彼を見て思った。
―シャルと同じ匂いがする。
そして、そのシルバー学長の演説に一番最初に拍手を送ったのはシャルであった。
それがまた、俺の思いを確信へと変えた。
会場は一瞬戸惑いながら、シャルのあとに続いて拍手を送った。一応権力者の言葉には賛辞をというやつだ。シャル以外はおそらく彼の言葉を理解はできていないだろう。
それからは、シルバー学園長の熱い? 話が少し続いたが、途中で学園の先生であろう人間が止めに入り学長の話は終了となった。
「ええ、それではこれをもって入隊式は終了となります。新入隊生の方は適正検査がありますので、第一訓練場までお集まりください」
シルバー学長のあいさつの後はあっさりしたもので、数人が壇上に立ち軽い話をしただけであった。
適正検査か。まあ魔力とか運動能力なんかを測る簡単な試験なんだろうな。
聖錬学園の適正検査は毎年違うものが行われるらしく、どんなものをするのかはわからない。適性検査対策をさせないためなのだろう。
とりあえずどこに第一訓練場があるかわからないから、人の群れに付いて行くか。と思い立ち上がったら、袖をかなりの勢いで引っ張られた。
「えっと……」
振り返ると、無表情なシャルが俺を見ていた。
「どうしたんでしょうか? シャルさん……」
俺はとぼける。いや、彼女が無表情で遠まわしに怒りをぶつけてきている理由はわかっている。
「私の足、今どうなってると思う?」
シャルが、引っ張られてまた席に座ってしまった俺に、顔をこれでもかという近さで、それを問うてくる。
いや、うん。近いね。かなり近いね。そして怖いね。
「腫れていらっしゃるのではないでしょうか・・・」
「うん。そうね。腫れてる。いやそんなものじゃないわ」
「折れてる?」
「そう。もうぐちゃぐちゃよ」
俺は、そこでシャルの肩に手を置いた。
そして、シャルの顔を自分から遠ざけた。
うん。俺だってそこまでしようとは思わなかったよ。単純に力の加減をミスっただけだ。
「どうしてそんなことになったと思う?」
「ヒカルが踏んだからでしょ!」
「いいや。違う」
「は?」
「お前が変なことさえ言い出さなかったらこんなことにはならなかった。いいか。元魔王さん。ここは人間の世界だ。大切なのは協調性なんだよ。俺はな。これから人間界で暮らしていくために必要なことをお前に伝えるために、あえてやったことなんだ。俺だって心が痛かったよ。お前だって、一応女の子だ。うん。心が痛かった。だけど! 俺はここで慈悲をかけるのは違うと思ったんだ。だから、あえて、そうしたんだよ。つまりだ」
俺はシャルの両肩をつかんだ。ここで決めに行く。
「お前は俺の行動に対して何かあるんじゃないかと常に考えろ。そこにお前が勇者のパーティーAとなる手がかりがある。必ず」
最後は倒置法だ。
決まった……。
なわけはない。これは俺の口からでまかせで、とりあえず言葉を羅列することで、シャルの思考を余所にずらす。それで怒りを静めようとしているだけだ。
つまり、俺は口八丁となっただけ。
これまでの経験からシャルは、この手のやり口に弱いはずだ。
さて、シャルの反応は?
「つまりヒカルは、私の足を踏みたくないのに踏んだってことね?」
―あれー? 予想と違うなあ。
「まあ、端的に言うとそうなるのかな?」
「じゃあ、私も、今全然ヒカルの手なんて折りたくないんだけどね」
そう言うと、シャルは俺の腕を握った。
そして、その手にものすごい魔力を集中させる。
おっと、これは魔王様に戻ってらっしゃる?
俺は周りに気が付かれないように、言葉を選ぶ。
「シャル、とりあえず。落ち着こうか」
(元はといえば全部お前が悪いんだろうが!!)
「いやいや。私は落ち着いているわよ?」
(私、どんな死闘でも足先を潰されたことなんてないんだけど?!)
「本当に? 俺にはそんな風に見えないけど? 入隊式で少し興奮したんじゃないか?」
(俺だって足先を潰したことなんてねえわ!!)
「そんなことないわよ?」
(私の大切な爪が粉々なのよ?)
「そうかい?」
(そんなもの回復魔法ですぐに直せるだろ?)
「ええ」
(爪は回復しても、マニキュアは回復しないのよ!)
「マニキュア?!」
(マニキュア?!)
俺はつい、裏の会話の単語を言ってしまう。
そこでシャルとの言い合いが止まる。
二人の間に一瞬の沈黙が流れた。
マニキュア。それは王都では当たり前のように女性が行っているオシャレである。
それをしていることによって、ある意味で王都の女性としての品格を備えることになるのだ。
だが、田舎村の人間にそんなオシャレなものが手に入るはずもなく。俺はシャルがそんなものをしているところなんて見たことが無かった。
それに、人に見られる手の爪になら、やる意味があるとは思うが、見えない靴の中にある足の爪にする意味が俺にはわからなかったし、そんなん知らんやん!
「お前、そんなものいつ買ったんだよ?」
「そ、それはー……」
それまでの威勢はどこへやら、シャルはあさっての方向を見だした。
これは……、何かあるな?
マニキュア。それ自体の値段は高くはない。
だが、それは王都の物価を当てはめるとそうなるというだけで、田舎村の人間からすれば、ある程度値の張るものだ。
それに……。
「お前、朝から気になってたんだが、におうぞ?」
「そんなわけない! ちゃんと高級香水つけてるんだから!……あ!」
嵌った。
朝からシャルの匂いがいつもと違うことにはもちろん気が付いていた。
だが、それについて俺は特に気にも留めてはいなかった。王都で暮らすんだ。そういう身だしなみも一応シャルとはいえ、女性なら必要だろう。
問題は、それに掛けたお金がどれほどなのかということだ。
シャルは手の爪にはマニキュアをしないで、香水だって、匂いのきついものではなくナチュラルなものを選んでいる。
しかも、俺たちは村からの仕送りが少なくて同室となってしまった。
そこから導き出される結論はただ一つ。
「お前、さては仕送りのほかに金持ってるな? いや、正確には預かった分の金があるだろ?」
今度は俺がシャルの顔に迫る。
「なあ、答えてくれよ。シャルさんよお?!」
「ふ……しゅ…う……」
シャルは吹けもしない口笛を吹く。
―ふん。まあいいさ。俺も大人だ。こんなことくらい……。
俺は、口笛を吹くために尖らせている唇、いやくちばしをつかんでやる。上唇と下唇を人差し指と親指ではさむようにして。
もちろん、大人だから? 冷静に、冷静に言う。心の中で落ち着け俺といいながら言う。
「てめえ! ふざけてんじゃねえぞおおおおうおうおお!!!!」
俺の怒号がホール中に響き渡った。
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