14◇X08夜闇の女神4 おしまい
☆☆☆
つまり冥王様は特別な訳さ。
何が特別かは知らないけど………創世の神様方しかご存知ないお話が有るのは、仕方ない事だからね。
俺たちとしては。
冥王様最強最高素敵い♪って云う。
これだけ判れば良い話なのさ。
ああ、もう。
冥王様素敵ですう♪♪♪
え?何の話かって?
聴いて無かったのかよ!!
あのな。
冥王様はな?何と創世の神々に並ぶ、特別な力をお持ちだって話なんだよ。
もう。
ちゃんと聞いとけよな?
ん?シーリンはどうした?
何だかんだでシーリンの話を余りしてない?
そっかあ?
仕方ないな。
じゃあ今夜は、いっちょ気合い入れて語らして貰おうかな。
☆☆☆
最初は同情したって話はしたよな?
俺は何だかんだで、シーリンが赤ん坊の頃から見守ってたんだけどさ。
姿を消してても、シーリンは気付くらしくて、いつも俺に向かって、ちょっと困ったみたいに微笑んでた。
いつまでも姿を消してもいられない。
お遣いの日はやって来るしな。
「よう♪」
「……はい。」
初対面。
やっぱり、シーリンは困った眼差しで微笑んだ。
俺は下級神の振りをした。だってそうだろ?俺の立場で『お遣い』なんて云ったら、そりゃもうセルスト神しか無いだろ?や、冥王様もあるけどさ。冥王様って何気にマイナーマニア受けって云うか。
大概は人界に膾炙する神話も、何でか独立してるしな。
「そう……ですか。」
神位を尋ねられて、答えたら……やっぱり困った風の笑顔だった。
大概。
ヤツは俺を見て、一瞬表情を消す。次の瞬間には、少し困った風情に見える笑みを、小さく浮かべるんだ。
何だかなあ。
もっと全開に笑わねえのかな?
困った顔はデフォなのか?もうちょいこう……あっかるく行けねえのか?
赤ちゃんの時は、割と全開笑顔だったのにな。残念に思いつつ、テンション低空飛行なシーリンも、可愛くない訳でも無い。
ずっと見守って来ただけに、俺はすっかりシーリン贔屓になってたんだな。
下級神を装ったのも、だから……とも云える。シーリンは、出来るだけ周囲の注目を浴びたくないみたいだったから、本来の俺が行くより良いかと思ったんだよね。
うん。
まあ………何でかバレバレだったらしいけどさ。冥王様にもお小言食らったさ。
まあ。
小さなシーリンとか、大人びたシーリンとか、……俺のミスとかは、この際脇に措いといて。
何だかんだで。
シーリンは王に成った。
何処までも怠け者で、野心の欠片もないままだった。そういうとこが、変わったりしたら嫌だと思う。
同じ事を、リア・リルーラの神司が人間達に告げて、シーリンが変わらない様に補助する事を命じてた。
流石リルーラ様。シーリンの良さを理解なさってるなあ。
シーリンはずっと怠け者のままだった。
相変わらず、俺を見て、ちょっと困ったみたいに笑って、久しぶり?と……いつも、何でか疑問符ツキで云う。
眠り媛に手を出さないシーリンに、厳重注意をする様、冥王様に命じらたり。
最初の子供が生まれたら、またシーリンが眠り媛を見つめるだけになったけど、この時は。
「あの、また注意、必要……でしょうか?」
「不要。」
一言だけ、返されたりした。
ええと。
それは、つまり。
あの子供が………トウゼ王に、なる、子供なのかな。
そう云う、事だよなあ。
眠り媛の息子シャラン王子は、神司砂久弥の係累でもある俚羽埜稀花……ノキハナの第一子として育てられた。
「両方正室……ですか。」
無茶苦茶な命令も、何故か聞き入れられて、シーリンは二人の正室を持つ事になっていたんだ。
オッカシイな?割とセリカって、素直に云う事聞かない国なんだけどな。
そう、思ったもんだけど………まあ、俺の正体バレバレだったと知れば、不思議でも何でも無い。創世神の命令に従わない人間なんか、存在する訳が無いからだ。
シャラン王子が生まれたら、お遣いの数は減った。眠り媛は相変わらずずっと眠ってた。
もしかして、このまま眠り続けるかと思い初めてたが、ある日眠り媛は目覚めた。
シャラン王子が成人する、少し前だった。
………何と云うか。
起きたら、ちょっと印象が違う媛だったな。
俺はこっそりシーリンに治癒術を施した。治したソバから傷を負い、繰り返し術をかける必要があった。
乱暴な媛は、でもシーリンに惚れた。
まあな。
シーリンは怠け者だが良いヤツだからな。
中々見る目有るな?ヨシヨシ、倖せになれよ。
乱暴媛とシーリンの想いが通じあい、俺はちょっと満足したね。
それから、シーリンと乱暴媛は地球に移住した。
少ししてから、シャラン王子がトウゼ王になって。
俺は久しぶりに「お遣い」に行く事になる筈だった。
何故かセルスト様が御自らいらして、流石のシーリンも大概ビビっていた。
セルスト様はシーリンを気に入ったみたいだった。
つうか。
その時まで、セルスト様はシーリンを何だと思ってたんだ?
まさかの種馬?トウゼ王生む原料って意識以外、お有りにならなかったのかも知れない。
ともあれ。名実共に、シーリンはセルスト様のお気に入りになった訳だ。
「久しぶり?」
「なあ。本当に何で疑問形なの?」
「ん〜、例えば初お目見えする上位神相手って事も、あるかもなあ………と。」
ほんの少し困った眼差しで、シーリンは云う。
「あの方も、既にいらっしゃる様になったのに………………まだ……下級神のまま、対するべきなのかなあ……と。」
色々。
昔から。
貴女への対応には、悩むんだよ。
と。
そんな風に、云われた。
困った顔は、俺の所為でしたよ。
まあ。
それも。
措いといて…………。
セルスト様は、たまに、シーリンをご覧になりに、お通い遊ばず様になられた。
俺は、セルスト様の邪魔にならない様に、相変わらずシーリンの担当者である。
シーリンは、今はまだ人間で、乱暴媛と仲良く楽しそうに暮らしてる。
でも。
じきに。
神位にあがるらしいから、まあ……俺より下位でも、月神系なら部下でも無いしさ。
今まで通り。
気安く行こうぜ?
って事になった。
つまり。
シーリンは俺の友達になったのさ。
どっとはらい。
☆☆☆
終わるな?何で?
え?
冥王さま?
いや……それはさあ。
まあ、俺にも愚痴零す相手いるしさ。
うん。
いつものアイツ。
あいつは良いヤツだよ。
冥王様の代行者とかって、超ナマイキな立場だけどさ。
でも…………やっぱり良いヤツだよ。
冥界では冥王様と同じ、妖狐だからかなあ。
雰囲気もちょっと似てるし。
あ?
アハハハハ!!
ナイナイナイ!
外見いくら似ててもさあ、格が違うっての!
代行者っても、所詮は冥界の役割分担だけで、まさか、夜闇No.2としての冥王様の代わりになんかなれもしないよ?
まあ。なれても、惚れたりはしないけどさ。
そんなのと、気持ちって…………やっぱり何の関係も無いよ。
うん?
気の毒?
何で?
大丈夫だって。
俺もいつもいつも絡んだりしないからさ。
ヤツが、彼女とか……彼氏でも良いけど、つくったら……ちゃんと邪魔しない様にするしさ。
つうか。
俺も。
いつまでも冥王様に夢中ってヤバいよなあ。
ああ?
そりゃ思うさ。
思ってるさ。
でも。
忘れらんないんだもん。
ヤツはどう云ってるか?何で?
そだなあ、ゆっくり……焦らず、自然が一番て……云われたかな。
絡まれるのは自分なのに、良いヤツだよなあ。
な?そう思うだろう?
良いヤツなんだ。
俺は、冥王様みたいな方に夢中で、もう終わっちゃってるけどさ。
アイツは。
倖せな恋が出来ると良いな。
本当。そう思うよ。
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