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その2


それから暇な時にみらいと話すようになった。

始めは原因を探すのに躍起になっていたみらいも、しだいにその事を口にしなくなる。

何処を調べても、何の原因すら見つからなかったから。

そして、自分のこと、趣味や自分の好きな事について話すようになった。

音楽やスポーツ。

学校の事。

でも、彼女の話しはいつも過去形だった。

前にね。

そんなふうにしか始まらない話し。

誰にも見えない。

誰とも(僕以外と)話しをしない。

それだけでみらいの時間は止まってしまったかのようだ。

今ではそのみらい、という名前も皮肉に思えてくる。

彼女は世界に対して何も出来ない存在なのだ。




でも、僕は感謝していた。

口には出さないけれど、そう思っていた。

僕は昔から人と話すのが苦手だった。

うまく伝える事が出来ない自分が苛立たしいのだ。

でも、みらいは僕の言葉をいつまでも待っている。

誰かとお話しできるのが嬉しい、と言う。

僕は拙い言葉で彼女に話す。

上手くいえない事の方が多かったけれど、彼女が笑ってくれた時すごく嬉しかった。

そう。

すごく、嬉しかったんだ。












今日はみらいと一緒に初めて出かけた。

大きな池のある公園を歩いた。

始めは楽しそうにしていたみらいも、池に架かる橋の上にきた時、少し寂しそうな顔をした。

「私って、何なんだろうね?」

彼女は空に向かってそう言った。

僕は何も言わずに水面を眺める。

噴水を避けるように水鳥が泳いでいく。

「何で君にしか見えないんだろう…?」

今度は僕の目を見る。

「何でだろうね…。」

暖かい日差しが彼女を包むけれど、その光は心までは照らしてはくれない。

みらいの悲しそうな顔が、僕には寂しかった。

「案外、僕も同じ様なものだったりして…。」

そう言うとみらいは首を振る。

「違う。君はちゃんと今を生きてる。私とは違って…。」

自分の中で未消化な言葉を飲み込む。

「そう。私は多分、この世界に拒絶されているから。私とは違うよ…。」

「でもみらいと話ができる事に何か意味があるんだと思う。」

僕は彼女の言葉を否定する。

「僕は、みらいと話が出来て、その、…良かったと思ってる。」

みらいは手すりにもたれ水面を眺める。

しばらくそうしてから、ありがとうと笑って言った。

穏やかな午後の公園を風が抜けていく。

楽しそうな親子連れやカップルが通り過ぎていく。

何も言わず、池の水面を眺めた。

暖かな日差しの中で。

何も言わないで。




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