美少女⑥彩~恋に落ちたらⅢ
リーンリーン
「うん?」
裕子の携帯が受信をする。履歴に心当たりがない着信だった。
リーンリーン
じっと携帯を眺め裕子は考える。
誰だろうか?
「いいわ出るわ。イタズラや変な電話だったら切るだけだもん」
よいしょ!
カチャカチャ
鬼が出るか
蛇が出るか
ひょっとしたら宝くじ当選の知らせ!
「はいっ裕子です」
ハロ~ミス裕子!
通話の先に聞き覚えのある男の声があった。
「うん?ミス…裕子?」
日本でミスをつけることはまずない。
!?
聞き覚え…
「裕子っだね。久しぶりだなあ。僕だよ。思い出してくれ」
ハリウッドで知り合った留学生カメラマンだった。
いたって弾む声。いささかノー天気な面も手伝い裕子をグイッグイッ押していく。
「いやあ~探したよ。女学院の生徒だとわかっていたからすぐかっと思った」
気楽にケラケラと笑い声をあげた。
「あのね。秋の写真展が東京のホテルで開催なんだ。その手伝いのため一時帰国してるだよ」
秋の写真展?
一流のホテル名が裕子にピクッとなる。
大々的にホテルの鳳凰の間を借りきり写真展示のある会場。
裕子は母親から知るが写真展は日本を代表するそうそうたる重鎮が名を連ねている。
母親はテレビのワイドショーで写真展覧会をよく見ていた。
「僕の祖父が写真を展示しているんだ」
留学生は著名な写真家カメラマンの名。日本で屈指の芸術家で文化人名を告げた。
文化人に疎い裕子でも知る大御所で重鎮だった。
「えっ!おじいさん?じゃあっあなたは」
重鎮のお孫さん?
「まあっ世間ではそういうことになるけど」
携帯を持ち裕子はしばらく動けなくなった。
重鎮の孫だけど
いささか恥ずかしいかなっと留学生は照れた。
いきなりの電話は裕子を東京にお誘いしたいと言うデートの口実だった。
「アメリカンの雑誌は売り上げ好調だった。裕子のグラビアを撮影した僕は」
ハリウッドのスチール撮影で一躍腕利きのカメラマンにランクアップをしていた。
「嬉しいことにさ!」
アメリカンで重鎮の祖父の名前を使わずに実力でのしあがるキッカケを得たのである。
「それと言うのもミス裕子のグラビアが人気のおかげだ」
アメリカンドリームがこんなに簡単に転がり込むとは。
日本の大学(実際は芸術系専門学校)を飛び出して留学生になった価値もあった。
「確か裕子は一時金の安いギャラだけだよなあ」
完売雑誌から見たらギャラが少なめ。
「その後に僕は撮影の依頼がバンバン増えた」
腕利きのジャパニーズ・フォトグラファーという認識はハリウッドから独り歩き。
瞬く間にジャパニーズの名はロサンゼルスに知れわたりカリフォルニアあたりでも"絶大な評価"である。
「少なくとも…。僕から裕子に謝礼だね。なんらかを還元しなくちゃバチが当たるアッハハ」
今は著名な文化人の祖父に帰国を促され東京に戻った。
「おじいさんの仕事手伝いが済み次第ロサンゼルスへ戻ってしまうんだ」
(好きな)裕子に一度逢いたい!
留学生に逢いたいと言われて裕子にフラッシュバックが起こる!
あのラウンジの過去が甦る。
"強引にこの男にキスをされた"
なんて非礼なヤツ!
裕子は留学生との再会に二の足を踏む。
非礼な男は許せない!
"私っ気が進みません"と喉元まで拒否が出かかる。
そういう裕子の戸惑いを男は見越した。
「裕子っ!君は女学院だろ。あのお嬢さんが通う女の園の。ほらっ高台にある女子高なんだろ」
ドキッ
学校名をいきなり言われた。
裕子を驚かせるだけ驚かせ電話は女性に代わった。
祖父の私設秘書であると名乗った。
「裕子さまでございますね。お噂はかねがねお聞きしております。スケジュールはいかがなさいましょうか」
やれやれっ。
秘書は感情抜きでスラスラと事務的に話しを進めた。
こんなに著名な文化人からお誘いを受けてしまっては!
裕子が再会を拒否したら…
重鎮が女学院にドサドサ押し掛けて来そうである。
「はいっわかりました」
気がついたら承諾の返事をしてしまった。
これが孫の(男の)いつもの手であった。
翌日のポストに一流ホテル会場の写真展招待状が届く。
「裕子!裕子ちょっとこれって」
招待状の宛名に母親はびっくりする。
今まさにテレビのお昼ワイドショーで連日写真展と文化人の歴々を取り上げていたのである。
「裕子あなたって人は」
ごく普通の女子高生だと思ったのよ。
「そりゃあ…。美形のお母さんに似て可愛い女の子だとは思うけど」
気の早い母親は裕子が写真のモデルになるのだと勘違いした。
「写真展の招待状だなんて。テレビのほらっワイドショーでしょ。お母さんも裕子について行きたいものだわ。母娘で写真撮られたいわ」
裕子の母親も昔はかわいい女だった。(たぶん)
隣近所に娘を自慢し触れ回るのである。母親にも楽しみが増えた。
文化人の祖父に早朝秘書がスケジュールを伝える。
著名な招待客に閣僚が含まれる。
「ホホッ~文部科学省から写真展に来るんかね。役人にも文化がわかる時代なんだね」(皮肉)
秘書からサービスされたコーヒーは味がわからなくなった。
コーヒーカップを置くと秘書が身支度の手伝いを始める。テーブルに出されたカニのサラダは手つけずである。
「ただ今から雑誌の取材でございます」
若い秘書は写真展覧会の重鎮という老人にハードスケジュールを押しつけてしまう。
老境の域で健康や体調も気になる。
「先生っ今日を乗り切ればスケジュールは楽になりますわ」
多忙な文化人はやっとこさっと腰をあげた。
リーンリーン
ホテルのロビーにいた裕子。携帯に受信である。
「裕子さまでございますか。私は秘書でございます。ホテルにお着きでございますか。無事に来客をされて幸いでございます」
秘書は裕子を監視しているのか。絶妙のタイミングである。
「当方のお孫さまが裕子さまにお逢いしたいと申しておりますわ。そうですね」
ホテルのラウンジに時間指定で来るように"強制的なスケジュール"を押しつけられてしまう。
事務的な
高圧的な
不快感のある口調
"なんかなあっ。この秘書さんの押しつけは"
裕子は携帯を切ると時間を確かめラウンジを探して歩き出した。
「ワアッ~嬉しいなあ。裕子だよ!この女子高生が裕子ちゃんだ」
広いラウンジは様々なお客様で満員状態である。
一流ホテルは展覧会を含む催しが様々に開催中で人混みでごった返すのである。
そんな中で大声で裕子の名前を言われてハッとする。
見るからにお坊ちゃんというお孫さんではないか。
裕子を見て大きな声を張り上げる。
「この人は…」
根は悪い人にあらず。人の目も憚らずの傍若無人さはなにかと誤解を招く性質であるのかもしれない。
「さあさあ裕子。こちらにおいで。よく招待券を受けてくれたね。僕は嬉しかったよ」
ハシャギまくる!
横には端正な顔つきの若い重鎮の秘書がいた。
「あらっ!あなたですの。あなたが裕子さんですの」
秘書は女学院の裕子をじろじろと遠慮なく観察した。
はっは~ん
この手のカワイコチャンなら…
女の第六感がピンと来る。
"羊の皮を被っただけの…"
オオカミならぬ
"とんだキツネだわ"
ギャフ~ン!
「さあさあお座りなさいな。こちらが裕子。ハリウッドではお世話だった」
はしゃぐ20歳。自分だけの世界を全面に出す姿は恵まれた家庭環境が見て取れる。
「ねえっねえっ。可愛いい女の子だろう。(お嬢様の)女学院なんだぜ」
見るからにこの女の子が好き!好き!
裕子というカワイコチャンが好き!好き!
はしゃぐお坊ちゃん。
その横でウンザリを知るのが秘書である。
"この手の女の子は文化人の重鎮近くにうろちょろしてはいけない。ましてや週刊誌ダネになるお孫さんの傍らに恋人気分でいてはいけない類い"
人の値踏みをするは得意と自負する秘書だった。
大学でちょっとかじった心理学をモコモコと駆使する。
「さあさあ~これからじいさん主宰の立食パーティーだ。裕子を連れていくとみんな(文化人)はビックリするぞ」
やれやれ
あまり裕子を表に出したくはないなあ
女が女を味方と認める。それは問題が生じないのであり。
女が見知らぬ女を紹介されて"不快感を持ちます"。
予測不可能な事態が待ち"落とし穴"に陥る!
秘書は諭した。
我が儘なお坊ちゃんを軽くあしらい子供扱いをしていく。
裕子に化粧室へ行きなさいと言う。
「理由はでございますか。お待ちください。化粧直しはそれだけ美貌が強調をされて現れる証拠っすわ」
化粧?
「ちょっと待ってよ。じいさんに裕子を会わせたい。用があるならじいちゃんの次にしてよ」
秘書は一切聞き耳を持たず。
裕子を従えすたすたとパーティー会場を後にして出ていく。
孫が裕子を追いかけないよう警備員を両脇にエレベーターに乗り込む。
秘書が重鎮との面接を拒否している
秘書が裕子を疎ましき女と見くびってしまう
鳳凰の間は立身パーティーがまもなく始まるのである。
文化人の主宰する写真展は大盛況でテレビのワイドショーは連日中継していた。
化粧室の裕子。
なかなかメイクが終わらないっと痺れを切らす。
メイク係はチラッと時計を見る。
「30分がそろそろだわ」
秘書に現金を握らせてもらった手前。きっちり約束は守る。
「お待たせしました。長い時間ご苦労様でございます」
わざとらしくゆっくりと裕子に《メイクの終わり》を告げた。
秘書がチラッと顔を出し裕子の背中をグイッと押し出す。
「さあっパーティーは始まっていますわ」
若い女の子が好きそうな盛り合わせの置かれたテーブルに連れていく。
秘書が裕子とこっそり現れる。
待ってましたと孫が駆けてくる。
「どこに行ったかと思ったよ。裕子の姿がなくて淋しかった」
携帯は電源が切れていた。
さあっ~裕子
好きなお皿(料理)を取りたまえ
遠慮なく食べたまえ
チラッと化粧直しの裕子を見た。
オッ!
立食パーティーにはテレビクルーだけでなく雑誌記者もいた。
裕子にやたらハシャグ情けない男はたちどころに注目の的になる。
「聞けばなあっ」
立身出世の重鎮は大したもんだ。来年に文化勲章を授与される噂すらある。
「しかし重鎮の息子さんから変になっているんだ。情けない家系なんだぜ。それゆえにだろうぜ。あの体たらくな孫がいて当然らしいアッハハ」
小学校から通うエスカレーター学校の内部進学の大学推薦に失敗し"専門学校"らしい。
アメリカに留学だと威張っているが祖父の威光でごり押しの形で大学語学学校(無試験)。
大学映像科で学ぶは学籍を持たない研究員身分。
ひそひそと雑誌記者やテレビリポーターの噂の主になる。
「女の子は誰だい?小柄なっ娘だよ。ほらっ今さっ(孫が)皿によいしょっと唐揚げを盛っている女の子だ」
記者仲間は一斉に裕子に注目をした。
彼女か
このパーティーで知り合っただけの女の子か
うん?
若い感じ…だな…
ホステスにしてはシロウトぽいぜ。
ホステス?
第一だっ…
堅物で有名な文化人の重鎮のパーティーにホステスや芸者というイロモノがいるわけがない。
「あの娘は誰か。気になってきたぞ。写真展覧会のモデルもちょくちょく出入りしている」
どんな素性の女の子か
「ちょいと調べてみるか。あのお坊ちゃんと仲良くしているから面白いのが出るかもなアハハ」
雑誌記者は裕子の携帯画像をバシャッと隠し撮りを試みる。
裕子の正面写真と横顔。即座に会社社会部に流してみた。
テレビクルーはクルーで何気なく会場全体をカメラで映し裕子にピントを合わせた。
「化粧は…。アチャア~パッと見た感じ野暮ったいな。プロのモデルではない」
クルーは裕子は普通の女の子とファインダーから知る。
雑誌記者のひとりはジャーナリストの鉄則を踏まえて直接本人に聞いてしまえっと正義感を出す。
「いやっ待て待て。秘書がいたな。あのピシッとスーツで決めた秘書に聞けば女の子ぐらいわかる」
案外重鎮の親戚筋で孫娘かもしれない。
「孫は孫でも…日陰の係累の可能性も疑いますアッハハ」
文化人の写真展にある招待客。
重鎮の展覧会に相応しいかどうかは秘書の裁量で決まる。
「あらっ記者さん。なにか手違いかしら。会場担当に…知らせるわ。エッ!聞きたいこと?私に?どうかしましたか」
記者は立食でテーブル前に立つ裕子をこっそり指差した。
"誰ですか?"
「結構チャーミングな女の子ではありませんか」
お坊ちゃんと随分親しげなご様子ではありませんか
秘書はあらっと一呼吸を置いた。
指された先は…
「ヒィ~」
孫に促されてひとつのケーキを仲良く食べようかとしている。
秘書には"女の子がなんてはしたない!"
"非礼を知りなさい"
インテリ女子大卒から見たら叱責すべき悪態であろうか。
「僕ら記者仲間から見たら。カワイコチャンで謎の女の子になっていますよ」
謎の…女
男性から見るとどうにも気になる女の子。
それが裕子
美少女という特権なせる存在感である。
"さあっ~"
秘書もうら若き乙女である。かなり美少女裕子にやっかみを持つ!
知らぬ存ぜぬ。
すっとぼけて見せる。
「どなたでございましょう。私はいっこうに存じ上げませんわ。詳しく知る方を紹介願いたいでございます」
うん?
なんだ?
会場を取り仕切る秘書。展覧会を主宰するべき重鎮の懐刀が知らない?
「訝しげな話しでございますなあ。すべてを取り仕切る有能な秘書さんが知らぬとは」
あなたが知らないということ自体が不可思議なことですよ
「あらっそう?困ってしまいますね」
私だって完全に一から十まで物識りフクロウ博士というわけにまいりません。
「見知らぬ女の子ですわ。招待客のリストにいない…はずでしょ…」
ついに言葉を濁してしまう。
知らないなら身分を確かめるのが筋ではないか。主宰の立場に秘書はあるのだから。
"このキツネめ!女の子をちゃんと知っていやがるな。知らぬ存ぜぬを押し通す腹だな"
長年雑誌記者をやりゴシップの臭いフンプンと勘ぐることになる。
「お坊ちゃんも横にいることでございます。じかに女の子に聞きましょうよ」
業を煮やした記者たちである。秘書を伴い裕子のテーブルへつかつかっと歩み寄りたい。
「えっ女の子に…(聞く?)」
女の子の正体はなんなんだ。
秘書は足が重たく進まない。明らかな拒否反応を示してしまう。
"こりゃあ意外と掘り出し物ゴシップにありついたな!"
「あのぅ~初めまして」
記者は裕子の背後から挨拶をする。
「はいっ?」
クルリッ
可愛い美少女裕子は振り返った。
仲良く料理の皿を分け合う孫も"なんだろう"
クルリッ
そこに見知らぬ記者たち数人が立つ。
少し下がって顔をひきつらせた"裕子の天敵"がいた。
この世のものとは思えぬ複雑怪奇な般若顔で立っていた。
記者は社会部であったり芸能部であったり。
可愛い裕子にあれこれと尋ねてみる。
文化人の集まりが写真展覧会。
社交の場としての重鎮の立食パーティーになぜ女子高生が招待されたのか。
普通の女子高生裕子がどうして
記者に詰め寄られ裕子は絶句してしまう。
「おっ!凄いなあ。裕子にインタビューか。こいちは凄いや」
社会部記者は祖父に尻尾を盛んに振り記事に厚みを持たせたい。
インタビューは孫にも来るかと待ち構えるも…
とんと無用な長物扱いか記者さんたちには存在感すらなかった。
「あなたの名前は裕子さんと言うのですね」
なぜ年齢層の高い文化人の立食パーティーに?
どう考えても場違いな女子高生。
お嬢様学校のミッションスクールが写真展覧会にいるとしても
「アハハっそんなことかっ。確かに会場を見渡したら裕子だけギャルだもんなあ」
むむ…
孫が口を挟んできた!ノー天気な輩が出ると話しがややこしくなってくるのである。
賢い大人たちの記者は鼻白むのである。
「エッヘン!みんな聞いてくれたまえ」
まわりの様子もわかってなく。我田引水なる孫。
「このカワイコチャンはね…エッヘン!聞いて驚くなあ~」
"恋人"
"彼女"
声を高めてこの場で裕子との関係を宣言してやりたい。
裕子を見て血の気が退いてヒキツケを起こし真っ青だった秘書。
時間とともに冷静さを取り戻しつつある。
「あっ!いけない」
ノー天気さもそこまでいけば我慢の限界というものがある
「それ以上ごちゃごちゃ言われては…」
秘書が監視して
自由放埒にされて
沽券にかかわる。
「マズイわ!このまま好きにされてわ。私が黙っていたら先生の築き上げた栄光が脆くも崩れ去る」
瞬間的に危機を察知してしまう。
手短かなところに記者のひとりがボサッとしている。
背後から察するに。
頭の形から芸能リポーター(記者兼務)
チョンチョン
「うん?」
肩口を秘書は触ってみた。
クルリッ
"なっなんだろう"
秘書は口に手を添えモゾモゾとする。
「(内緒の話しがあるわ)…あのね」
芸能リポーターはピクンッと耳たぶを動かした。
「(内緒よっ)…あの裕子って…」
こそこそ
モゾモゾ頭の形から芸能リポーター(記者兼務)
チョンチョン
「うん?」
肩口を秘書は触ってみた。
クルリッ
"なっなんだろう"
秘書は口に手を添えた。
「(内緒の話しがあるわ)…あのね」
秘書にリポーターが真偽のほどを尋ねてみる。
他の記者がごそごそやっている秘書に気がつき始める。
"なにか言っているぜ。有能な秘書さん"
秘書が?
「そりゃあ話しを聞かなくちゃ」
彼女は重要な情報発信源であるから。
「うん?みんなどうかしたの?僕っ…僕さぁ~裕子と仲良くてさあ」
ノー天気な男が
口に食べ物を入れたまま
何事かごちゃごちゃ言うのである
『裕子は僕の彼女なんだ』
という告白だったのか
『僕はカメラマン。僕のモデルさんが裕子なんだ』
ハリウッドの雑誌モデルを自慢したのかしれない
「ちょっと。ちょっと待ってくださいよ。あなた方は記者さんでしょ」
僕の重要な話し。秘密の告白を聞かなくてはいけないでしょう。
記事として損ではないでしょうか。
テーブルに出された子羊の肉を左手の皿に持ち替えるとパクっと一口食いちぎったのである。
「チクショウ~どいつもこいつも。僕の話しを聞いてくれない」
ムシャムシャ
ゴックン!