美少女①彩~美少女裕子(=彩)
小柄でカワイコチャンタイプの裕子はクリスチャン系女学院で評判の女の子だった。
かわいさは街を歩けばたちまち男から声を掛けられるほどの美少女である。
美少女ではあるが控え目な性格であり決して人前に出て派手なことをするわけではなかった。
美少女裕子は知らず知らずのうちに周りがちやほやしてしまい芸能界への誘いもあるのである。
控えめな女の子がどうして「成人映画」に出演するのであろうか
都心に位置する私鉄沿線では電車が駅に到着するたびに通勤通学の乗降客は吐き出されていた。
駅からドッと流れ出る人の波。改札口のあたりを真剣な顔でジイッと見つめる男たちがいる。
可愛いい制服姿がちらほら見られる沿線。この私鉄はお嬢様方が通う女学院の宝庫とも呼ばれていた。
男たちの狙いは女の子である。女子高生でも女子大生でもとにかく可愛い女の子だった。
改札口を流れる人だかりに女子高生らしき女の子が現れた。
「可愛いなあっ!めちゃくちゃカワイコチャンだね。ねぇ君ぃ~。ちょっと話さない」
とりあえずは女子高生にターゲットを絞り制服狙い。
女子高生ならば誰でも声を掛けてみる。振り返ってくれたら…
しめた!脈ありと判断である。
彼らは世に言うスカウトマン。
明日のタレント発掘のために
雑誌グラビアを飾るモデルスカウト
男ら目の色を変えて群がる女の子捕獲の目的は様々である。
「えっ!」
流れる人の波に背後から聞こえた一声。女子高生は立ち止まる。
「君だよっ君だ」
ざわざわする駅のコンコース長い髪はシャンプーのコマーシャルのごとくさらさらと流れた。
えっ!
声の主は若い男だった。裕子はすぐに"関わりたくはない人種"とわかる。
不特定多数がいる駅などで見知らぬ男に声を掛けられ相手にならないに限る。
「あのぅ~私急ぎますから」
裕子に近くなり素顔を見たスカウトマンはハッとした。
女学院の制服が可愛いのか。
裕子自身が際立って目立つのか。
女子高生が豊富な私鉄沿線界隈でカワイコチャンというイメージだからか。
"こりゃあ美人だなあ"
「急ぎますかっ?私は急ぎませんからアッハハ。ねぇねぇちょっとぐらい時間あるでしょ。僕たち怪しいものじゃあないんだけど」
裕子はドングリマナコでスカウトを見つめ警戒をする。
一緒に通学をするクラスメイトも訝しげな顔をした。
警戒心にピンっと来たスカウトマンは名刺を見せる。
どこの誰だかわけのわからぬ男では話しが通じない。
裕子は素直に名刺を受け取る。その一連の仕草や動作は気品に溢れたお嬢様風情でもあった。
スカウトマンはホォ~と頷いた。
"名家の出みたいだぜ"
「こりゃあ(タレントで)売れる玉だぜ」
長年スカウト業界に身を置く経験は貴重なものである。
改札口からつきまとわれ足を止めてしまった。女学院の制服は一段と目立ち裕子ら女の子はコンコースでスター扱いとなる。
たちまち駅のあちこちに散らばるスカウトマンの環に取り囲まれた。
彼らには女学院の制服はなにものにも替えがたい好餌である。
前にも後ろにもぞろぞろ現れた。「ねぇねぇ裕子!聞いて聞いて。貴女は女学院で一番のカワイコチャンなのよ」
女子高生らはがっしりとした男連中に四方八方塞がれ身動きできず。
"ライオンに睨まれたウサギさん"になってしまう。
「もうっ止めてください。そこを退いてください。私急ぎますから」
通学のたびにこうした男から声を掛けられる浅倉裕子である。スカウトであろうとなかろうと馴れてはいた。
スカウトはあの手この手と裕子ら女子高生の気を惹きたいとする。
「ねぇ~芸能界に興味ないかな。モデルさんはどうかな」
男はごちゃごちゃと歓心を買う言葉を巧みに言い続ける。
芸能界
タレント
プロダクション
好きな男性タレント
歌手
俳優/女優
「私は芸能界に興味ありません!音痴だし頭が悪いからセリフも覚えません」
裕子はツンツンとしてスカウトを煙に巻くのである。
その断りの姿。これまた気品が漂い背筋を伸ばして雌の鶴がいるよう。
スカウトたちは誰ひとり裕子を諦めたくはないのである。
「渡した名刺に電話番号があるでしょ。芸能界に入りたくなったら連絡ちょうだい」
手にするスカウトたちのプロダクション名刺は部屋中かなりの枚数にのぼっていた。
沿線のお嬢様が集う女学院は格式があるクリスチャン。卒業生の評判はすこぶるよく世間体も素晴らしかった。
お嬢様がいっぱいな女学院は秀逸な美形でカワイコチャンばかりである。
それでも…
裕子は際立ち目立つ女の子であったのだ。
裕子に目敏いのは駅のスカウトマンだけではない。
「君は女学院の浅倉裕子だろう。可愛いからすぐわかったよ。俺っ隣街の高校なんだ。あのさあ~付き合ってくれないか」
バイクに股がるカッコつけた男子高生から可愛い女の子としてデートやお誘いナンパである。
高校生にはカワイコチャン裕子は有名である。女学院の校門で帰り道に待ち伏せもされたのである。
裕子という名前は私鉄沿線を通学し始めると徐々に有名になり独り歩きとなった。
有名は高1より高2になると高まる。それは女子高生・裕子の女としての成長過程と比例をする。
少女から女へ。
胸の膨らみ
からだ全体が女性らしく丸みを帯びていく
繭から孵化して綺麗な羽根を見せる揚羽蝶
女学院の下級生には裕子を女王蜂のごとく慕う者もいた。
最終学年3年で裕子の美貌は決定的なものとなる。
タレントオーディションに応募してみては?
「えっ~私がタレント?女優さんになるの?ちょっと待った!」
クラスメイトから芸能界に行きなさいと裕子は言われた。
「私が芸能人になるなんて。冗談も休み休みにしていただけないかしら」
裕子を取り囲むクラスメイトらはゆっくりと順次顔をあげて裕子に見せつける。
「…じゃあないわ。そんなテレビに出るなんて考えてみたこともない」
控えめにして物静かなことが好きな女の子が浅倉裕子である。
人前に出て歌ったこともなければ目立つようなことをしたこともない。
裕子の音痴は定かではないがマイクを持って歌うことは恥ずかしいと思ってはいた。
学校を終えてガタンガタン揺れる私鉄電車に仲良し同士乗る。
「ああっみんなが変なこと言うから。私は二倍も三倍も疲れます」
仲良しグループは常に笑い声があった。
「ヤダァ~裕子は綺麗なんだから芸能人になるべきだわ」
ワイワイ
高3なので来春には進学を控えた女の子である。
大学はどうしようか。
彼氏が欲しいなあ
キャア
女子大学は暗いからやめたいなあ。
ワイワイ
勉強嫌いだから附属の女子大学かなあ
キャア
裕子ら女学院はワイワイガヤガヤと車内でやっている。
だが…
いつも同じ電車に乗る客たちは裕子たちの女子高生話しを聞き逃さない。
有名なカワイコチャン浅倉裕子が乗車しているだけでパッと華が咲いた車内である。
通勤する乗客は遠目に目立つ裕子を見る。
「あんなに可憐な女の子がいるなんて信じられない」
チラッと裕子の制服姿を眺める。
なるほど女学院の生徒さんか。
「あの娘さんは素晴らしい気力だよ。冗談であろうとなかろうと芸能界に入ってくれたらなあ。僕はフアンになってあげる」
20台の若者は裕子の横顔にうっとりしてしまう。妖艶さはそろそろ磨きがかかるところである。
「女優さんになる。タレントさんでも構わない。あの天性の明るさは芸能界で充分に光り輝くではないか」
年輩の乗客は新聞をかざしてチラッチラッ。視線を裕子と合わせないように盗み見を楽しんだ。
「ところで裕子。あなたは卒業後どうするの?附属の女子大にいくの」
裕子は成績いいから受験をしても希望の大学に受かりそうである。
「うーん大学かあ。私ねぇ何を勉強したいのかがないの。ごめんなさいね。期待を裏切っちゃって。あまり具体的な目的がないの」
仲良しグループに進路は未定なのっと答える。
夏休みにゆっくり考えてみようかしらっ。
車内の裕子フアンの方々は早く答えが知りたいとため息をついた。
女学院は長い夏休みに入る。
女子大の附属高校なので大半は内部進学を果たす。夏休み前にそれ相当な成績があれば大丈夫だった。
「あらっまだ悩んでいるの。裕子のお父さんは女子大でも言いっておっしゃらないの」
裕子のいる仲良しグループは揃って附属に内部進学しましょうと話しが纏まる。
「皆さんどうかしら。大学が決まったら夏休みは羽根を伸ばしてみなくて」
大学進学は自らへのご褒美が欲しいことよ。
「海外旅行に行かなくて?私の父はね数年前からアメリカでリゾート開発を手掛けているの」
アメリカへのフライト年中で社内規程料金が使える。父親に頼めば格安になる。
「へぇ~それはすごいすごい。リゾート開発ってあのテレビニュースでやっている西海岸のかしら!」
女学院の大半はアメリカ滞在を含む海外旅行経験がある。未踏の地なら格安で女子高生だけで我慢していこうかである。
「裕子はどうなさるかしら。女子大学もまだ未定でしたわね」
さあって…
ラストの夏休みを裕子はいかに過ごすか。仲良しの女の子らに近く返事をするわっと濁してしまう。
リーンリーン
自宅にいた裕子の携帯が鳴る。
「あっ!」
発信者は仲良しグループのリーダー格さんである。
電話に出るとさっそくアメリカ旅行の話しである。
「裕子行きましょうよ。女学院高等部の想い出のために」
裕子がいたから仲良しさんで楽しく学生生活が送れたわ。
「うーんありがとう。でもまだ両親に話してないの」
格安とは言うものの海外旅行は海外旅行である。それ相当の費用が捻出されなければならない。
中流階級のサラリーマンが父親で母親は近くのスーパーにパートに出ていた。
「とてもついていけないなあ。海外旅行だ女子大だなんて。私の口からは言い出せない」
裕子は頬杖をついてため息である。
女学院の仲良しは素敵な女の子ばかりで好きである。
しかしこと金銭的な話しとなると裕子は"貧富の差"を痛感である。
「女子大学に行きたいなんてお父さんに言えない。あんな高い学費を出してとは言えないなあ。うちの女学院高等部だって高い授業料なんだもの」
裕子は高卒で就職をすることを考える。職種はファッションに興味があるからアパレルである。
ただ…
プライドの高い女学院の教師たちに"進学しません。働きます"と言えるかどうか。
女学院高等部で就職希望者はまずいない。
親しく付き合うお嬢様の同級生に就職希望を言えるかどうか。
「想い出づくりに海外旅行かあっ~。みんな女学院で仲良しだったからね。行きたいことは行きたいなあ」
アメリカ西海岸リゾート開発の父親。裕子もNHKニュースでたびたびその顔を拝見してはいた。
「普通のサラリーマンが私のお父さん。格段の違いがあるわ」
世間一般では裕子の父親が普通なのである。お嬢様の女学院が特殊な場所であり異次元なのである。
リーンリーン
再び携帯が鳴る。
「あらっ!」
噂をすれば陰!リゾート開発の女の子からである。
「もしかして悩んでいないかって。私ねっ裕子を心配しているの」
仲良しグループには気楽に海外旅行を披露したが。
「ごめんなさい。私っ裕子に謝りたいの。裕子のこと気がつかなかった」
グループのお嬢様は医者や会社社長ばかりである。
"裕子は格下のランキング"
「皆さまには内緒にしてちょうだいね」
裕子のフライトや西海岸のホテル代金は請求しないわ
「お父さんの会社の必要経費で事務的に処理出来るんですって」
無料だから…
「裕子は特別なお友達だもの。ねっお願い!女学院の想い出のために行きましょう」
他のクラスメイトたちは2つ返事で快諾をする。
裕福な師弟の女学院。面目躍如となる。
「裕子も一緒よ。主役のあなたがいなくちゃあ始まらないわ。旅行がつまんないもの。詳しい日程が決まり次第連絡するから。約束しましょう」
強引な話しを持ち掛けられいささか迷惑であった。
それ以後。裕子の携帯に電話やメールがクラスメイトから入る。
知らず知らずのうちにアメリカ旅行に参加をする羽目になっている。
「裕子と一緒なら楽しめるわ。西海岸ってロスアンゼルスやカリフォルニアね。話しだとパックツアーでハリウッドもいくらしいわ」
やれやれ
フライトの日が決まり裕子は落ち着かない。
一般サラリーマンの師弟の女子高生が夏休みに豪華絢爛な海外旅行をする。
「あらっ裕子大丈夫よっ。本当に大丈夫ですから。私たちの旅行経費はパパの会社経費でどんどん落ちてしまうの」
父親にうまく女学院のクラスメイトを話しをしたのである。
「クラスの裕子って女の子はね。モデルさんになるの。可愛い女の子だからハリウッドの映画に連れていってあげたいなあ」
父親のリゾート開発のスポンサーに裕子を紹介(タレント予備軍)して欲しい。
チラッと裕子の写メをアメリカ在住の父親に送った。
話しはトントン拍子に進んでしまう。
女学院の若い女の子ばかりがぞろぞろでは父親も不安である。
付き添いに有能な若い社員をつけた。通訳兼務のツアーガイドである。
「さあ女学院の皆さん。リラックスしてアメリカ西海岸を楽しんでください」
女子高生はハッと息を呑む。
「自己紹介が遅れました。私は社長から頼まれましてお嬢様の案内役をいたします」
若い社員は背が高いハンサムであった。英語に堪能な好青年で社長としては実の娘の婿にしても文句のないところであった。
「さあ西海岸楽しみましょう。わからないことがありましたら遠慮なく申し出てください。社長のご令嬢さまのお友達さま」
国際線空港コンコースで予期せぬ幸せに女学院のお嬢様方は微笑んだのである。
「あのぅ。女学院の皆様でございましょうか。裕子さまは?失礼ですがこちらのお嬢様でございましょうか」
空港の広報関係者が裕子に声を掛けてきた。
「本当に可愛らしいお嬢様でございますわ。お顔を拝見いたしまして驚きでございますわ」
広報担当者が言うには上司からの命令でフライトの最中を写真に収めて欲しいとのこと。
「可愛らしい女子高生の旅立ちをテーマに我が航空会社は宣伝に使わせていただきます」
モデルや女優を常に見ている広報ら。チラッと裕子の姿をみて歓心をする。
可愛らしい女子高生の範疇をはるかに越えた存在感が漂う。モデルさんに身長(162センチ)は小柄で残念である。
カメラマンは喜んで女子高生らの一向をバチバチ撮影をした。
「可愛らしいピカ一の女の子が"裕子"だね」
コマーシャルスチール(写真)はお手のものである。
なにかと注文がうるさい売れっ子モデルのことを思えば楽々である。
カメラマンは意気揚々と裕子の素顔に迫る。
裕子の美貌にほだされてプロ意識が芽生えてしまう。
「で社長の令嬢は?」
会社として大切なクライアントの社長令嬢ではある。
「…どれ?」
なるべく華やかに華麗に描写をして"それなりな姿"をカメラに収めようか。
プロとしてそれなりの努力をした。