真っ最中に家の鍵を閉めたか気になった男の話
ある晩のこと。
彼氏のAとベッドの中で濃密な時間を過ごしていた俺は、いよいよクライマックスに突入しようとしているところだった。
結合は鍵が錠にハマるようなものだ。
そんなことを考えていると、ふと、ある不安が胸をよぎる。
あれ…
俺…
家の鍵閉めたかな…??
玄関の扉を閉めたところはよく覚えている。
けれども俺はその後、ポケットからキーケースを出しただろうか?
キーケースから自宅の鍵を取り出し、錠に挿して、手首を時計回りに90度回転させたのだろうか?
いくら反芻しても、自分が鍵を閉めた様子が思い出せない。
急激な不安に襲われた俺は、結合どころの騒ぎではなかった。
「どうしたの?」
彼氏のAが不安げに尋ねる。
どうしたのも、こうしたのも、俺の自宅は今、無法者の蹂躙の危機にさらされているかもしれない。
この不安を解消できる唯一の方法は、自宅に戻って鍵が閉まっているかどうかを確かめることだけ。
そう考えた俺は、のっぴきならない事情ができたと告げると、Aを置いて自宅へ急行した。
自宅に帰った俺は、ドアノブを握る手が震えていた。
もしこのドアが簡単に開いたら…。
そして、中を覗いた瞬間、ぐちゃぐちゃにかき乱された室内を目にすることになったら…。
けれども今は扉を開けてみるしかない。
勇気を振り絞ってドアノブのレバーを下げた俺は、ドアノブを手前に引くやいなや、頑強な抵抗にあった。
鍵は閉まっていた。
部屋の貞操は守られた。
ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、俺はまた新しい不安に襲われる。
寸止め状態で放置された彼氏のAはきっと怒っていることだろう。
彼氏が心の錠前を取り替えてしまうかもしれない。
そう恐れた俺は、あわてて彼氏の寝室へ舞い戻った。
Aの元に戻ると、Aは怒るどころか、信じられないほどぐしょぐしょに濡れていた。
目尻を染めたAは見たこともないほど妖艶な顔つきで俺を迎えると
「こういうプレイ…好きだよ。」
と吐息混じりに囁く。
こうして俺たちは
新しい愉悦の扉を開いた。
鍵って、どうして不安にさせるんでしょうね。
でも、閉めたかどうか分からず、戻って確かめたときに、鍵が開いていたことは一度もないです。




