4.昨日の出来事②
確かに、ホールケーキを一人で食べるって、誰もが一度は夢見ますけど!(※あくまで個人の感想です)
そういえばこの前、ケーキをホールで食べたいって先生つぶやいてましたけど!
だからって無理して完食しますか普通!?
あ! あれですか! 願いが叶うという星夜祭だからですか! 夢を叶えにいっちゃったんですか! 無茶しやがって…………が過ぎますよ!
……えーとですね、何のことかと説明しますと。
下町ではクリスマス&婚活イベントみたいなことになっている星夜祭ですが、本来はこの世界の神話を起源とした儀礼祭なのです。
その神話というのは、病気の家族の回復を毎日、毎日、神様に祈っていた人間の願いを、その神様が聞き届け、願いを叶えたのが十二月二十五日の星の綺麗な夜だった、というものです。
それで、その日は神様に祈りを捧げ、天に届いた願いは叶う、という言い伝えとして残り、後世に語り継がれるようになったそうです。
それ以降その日は、神様に感謝し祈りを捧げる儀式の日、その前後は感謝祭としてみんなで楽しむ日、となりました。
……それがなぜ伝言ゲームのごとく、こんなクリスマスナイズされたイベントに変化したのかは謎ですが。
“十二月二十五日に、星夜祭で願ったことは叶う”
――という、人間に都合のいい部分はしっかりと残り、毎年毎年、無茶をやらかす輩が発生するのが現状となっております。…………目の前でうーうー唸っている、この残念美少女さんのように……(遠い目)。
……は~、もうほんとうに、この食いしん坊先生さんは……。
とはいえ、現代知識はあるものの医療に関してはわたしは素人です。もしかしたら重大な疾患の可能性もありますし、念のため連絡はしておきますかね……。
看病するための道具を取りに行くついでに、連絡用の魔導具を使って緊急の知らせを送ります。
これでよし、と。……それにしても。
一人で全部食べたということはそれだけおいしかったということでしょうが、それで体調を崩されてはとてもじゃないですが喜べません……。
《時間停止》の魔法陣を使えば、ケーキも紅茶もベストの状態を保てます。
今は星夜祭の真っ最中ですので先生のご友人が訪ねてくる可能性もありましたし、予め切っておくよりも皆様で取り分けた方が楽しいかな? と思い、ホールのままで保管したのですが…………。
あくまで料理はおいしいものです。
嬉しいものです。
幸せなものです。
それがわたしが目指す料理です。料理人としての目標です。
ですが今回はわたしの配慮が足りませんでした。反省です……。
しかも今は先生の弟子でありメイドでもあります。
師であり主人であるセシリア様のお世話も、わたしの役目なのです。
〜昨日。先生のお屋敷の厨房にて②~
「リーシャ、いる?」
「あれ、お師匠……?」
ケーキ作りの後片付けをしていると、十代半ばくらいの、メイド服姿の女の子がやってきました。
彼女はアベリアさん。セシリア先生のお友だちです。つまりたぶん貴族です(名推理)。
この国ではありふれた茶髪のロングヘアー、身長も平均くらい、というこれといった特徴のない外見で、パッと見は印象に残りにくいのですが、よく見ると美少女、という不思議な方です。
時折ふわり、とやって来て先生のお世話やお屋敷の管理をしては静かに去っていく、仕事のできる女性です。この厨房の食材の仕入れもされています。
そして魔法以外ぽんこつな先生の代わりにいろいろと教えてくれる、わたしのメイドとしてのお師匠さまでもあります。
「ちょっと今忙しくてね、しばらくここには来れなさそうなの。だから、セシリアのお世話よろしくね」
「はい、わかりました。……まあ、年末ですもんね」
現代であろうと異世界であろうと、年末年始は何かと忙しいのは共通なのです。
「……察しがよくて助かるわ。ま、あなたなら、何があってもあの子も飢えさせることはないでしょうし」
「飢え……ええ? いくらなんでもそんなこと……」
「……あの子のぽんこつぶりは何度も見たでしょう?」
「ソウデスネ……」
ほんと、天才肌といえば聞こえはいいですけど、魔法最優先でそれ以外のことってかなりおざなりなんですよね、先生。すごい魔法使いではあるんですけど……。
「もし何かあったらいつものように連絡して」
「はい、かしこまりました。お師匠もがんばってください」
「ありがとうリーシャ。じゃ、行ってくるわね」
〜以上。回想②終わり〜
とまあそういうわけで、お師匠から頼まれていたんですよね。主に食事面で。……まさか昨日の今日で、さっそく問題が発生するとは思いませんでしたが。




