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はじめての狩り

 な、なにしてるんだろう。

 もしかしたら優しい人かも……。


 私はそんな希望を持ちながら草の中に入って、恐る恐る覗いた。


「ウィンド! 超超最強ウィンド!! 伝説級ウィンドォ!!」


 見ると、小さな男の子がすごく楽しそうに、魔法を使って遊んでた。 

 なんて言ってるのかは、よくわからなかった。

 

「そこだ!」


 男の子がバッとこちらを見た。


 ずっと震えていた足に力は残っていなかった。


「猫とかかな?」


 男の子が近づく。

 

 だめ。

 今倒れたらーー。

 

*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*


 窓から優しい光が差し込み、芽吹いたばかりの葉がゆらゆらと揺れた。


 少年は目を覚まし、起き上がるとすぐにどこかへ向かう。

 慣れた足取りででたくさんの罠ようなものを掻い潜り、何もないはずの壁をリズムよく叩く。

 すると壁がゴゴゴと開いた。


 そこには家があった。

 壁が四角くくり抜かれており、現実味の薄いファンタジー溢れる空間だった。

 池があり、木があり、動物の鳴き声が聞こえ広い。

 大きさを表すのなら、コンビニエイスストア5個分位の広さで高さも似たようなものだ。

 ただ家だけ不自然なほど小さく、出来はへたくそだ。


 少年はその小さな家のドアを開けた。


「ほらミリア、起きてよ〜」


 そこには10歳くらいの、天使のように可愛い少女が眠っていた。

 少年が肩を揺さぶると少女は眠そうに目を擦った。


「んん」


「全くやめてくれよ。僕はダメ人間なはずなのに、これじゃできた人間みたいになるだろ?」


「師匠、おはよう」

 

 少女はバッと立ち上がると、家を飛び出して大きく伸びをした。


「今日は魔物狩りだよ」


「魔物……」


 不安が顔に浮かぶ。

 

「大丈夫だって、前はちょっとミスったけど、今回は大丈夫」


 以前、魔物狩りに行ったとき、ゴブリンを狩るはずが、運悪くゴブリンキングに遭遇した。

 そこで少年は、少女を見捨て、逃げ出したのだ。


「あれ、まだ許してないからね」


 少女はふんっと後ろを向いた。


「ま、まあいいじゃん。助かったんだし」


 少年は悪気はあるのか、目を逸らした。

 

「前とは違って僕はもう、上級魔術も使えるんだ。大丈夫大丈夫」


 少年は半ば強引に手を取ると、少女を森の外へ連れ出した。


*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*


 蔦を掻い潜りながら、まるでジャングルのような森を進む。


「今日は何を倒すの?」


「今日はゴブリンキングを殺すよ」


「え?」


「前の仕返しだよ。もう場所はわかってるし」


 場所は、今いる森。さっきとは別の森だ。

 僕の住んでいる森は、魔物はいなくはないが、比較的少なく種類も安全だ。


「師匠……」


 服の裾を掴まれた。

 ミリアの手は震えており、顔を隠すように下を向いていた。


「大丈夫だよ。

 あの時はまだ会って数日だったからさ、今はもう家族より家族だ」


「なんかそれ、変」


 ミリアはぷくっとほっぺを膨らませて不満そうだった。


「会って数日の人を命がけで助ける奴の方が、僕にとっては奇妙で難解で気持ち悪い存在だから」


「??」 


 ミリアは不思議そうな顔で僕を見つめた。


 どんなやつでも命懸けで助けちゃうような、クズやろうとは、関わり合いになりたくないね。


 大きな洞窟。

 警備というには違うかもしれないが、槍を持ったゴブリンが入口に何体か立っている。

 

「ここだよ。

 ここはゴブリンの巣なんだ、それも結構大規模のね」


 僕は小声で囁いた。

 

 小規模のゴブリンの巣に、ゴブリンキングが生まれる可能性は低い。

 だからここはおそらく大規模だ。


「ひ……」


 まあそりゃ怖いよね。

 僕はもう死の恐怖は全くないけど、普通は違うからね。

 なに? なんで、死ぬのが怖くないのだって?

 それはもちろん、死後どうなるかを知ったからだ。

 

 なぜ死ぬのは怖いか、なんていうのは色々あるが、僕が思うにそれは、未知への恐怖だと思っている。

 でも僕はもう知っている、死んだら転生するだけだ。

 それならばもはや、ここはゲームと変わらない。

 

「わかったよ。さすがにお前には早かったね。ここで待ってて」


「ひ、1人にしないでよ」


 ミリアは縋り付くように僕に抱きついた。

 うーん、胸の感触なし。


「なら後ろから見ててね」

  

 ちなみに僕も狩りをするのは初めてだよ。

 基本的に計画性とかはないんだ。


「ウォーターランス」


「うぎゃぁ!!」


 肉を貫く鈍い音が聞こえた。

 とりあえず、入口にいたゴブリンたちに無数の水の矢を放った。

 初めて虫以外の生物を殺したけど、特に何も感じないな。

 でも、死体を見るとちょっと吐き気がする。

 

「ひ、ひぃ!」


 ミリアは尻餅をついて後退りした。


「大丈夫ミリア? やっぱここで待ってて、すぐ帰るから」


「ちょ、ちょっーー」


「それじゃ」


 ミリアには悪いが少し楽しませてもらおう。

 洞窟に入ると、さらに多くのゴブリンが待ち伏せていた。


「おお、豪華なお出迎えだなぁ」


 ゴブリンたちは三つある穴の奥からどんどん出てきて、このままだと30体くらいになりそうな勢いだ。


「待機する脳みそがあるんだね」


 僕は歩き出しゴブリンたちに少しずつ接近する。

 すると、猫のように威嚇し始めた。


「スコタディヴァルトス」


 地面がだんだんと闇に包まれ、そこにゴブリンたちがゆっくり落ちてゆく。

 

「ウガァ!」


 まあこれは黒い沼みたいなやつだ。

 できれば生物は殺したくないから、ここはこのまま進もう。


「アイスロード」


 僕はゴブリンたちの頭上にツルツルの氷の道を作った。

 ふふふ、この強者感めっちゃいいね。


「いてっ!」


 かっこつけて歩いてたら、足を滑らせて顔面から思いっきり転んだ。


 やっぱ調子に乗ると良いことがないね……。


「適当に真ん中の穴に入ったけど、当たりだったか」


 そこには他のゴブリン達と比べ物にならないサイズのゴブリンが座っていた。


「妙に広いと思っていたら、お前のおかげか」


 さて、どの魔術で殺してやろうか。

 これは復讐だからね。

 ボッコボコのコッボコボにしてやるぜぇ!

 




 




 

 

 

 


 



 



 

 

 

 

 


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