表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

それぞれの才能と、見つめる視線

レッスンが始まって2週間が経った。

 

俺は、少しずつこの生活に慣れてきていた。

朝の畑仕事も、ダンスの練習も——

まだ下手だが、続けられるようになった。

 

そして、仲間たちのことも、少しずつ分かってきた。

 

 

めぐりんは、本当に明るい子だった。

いつも笑顔で、誰にでも優しい。

 

朝、畑で野菜を収穫しながら、彼女は楽しそうに歌う。

 

「うめちゃん!この大根、すごく大きく育ったよ!見て見て!」

 

彼女の笑顔は、太陽のように眩しかった。

 

だが——時々、一人で畑にいる時、寂しそうな顔をしていた。

 

ある日、俺はそんなめぐりんを見つけた。

 

「めぐりん、大丈夫?」

「え?うん、大丈夫だよ!」

 

すぐに笑顔に戻る。

だが、その笑顔の裏に——何かを隠している気がした。

 

(この子も、何か抱えてるんだな……)

 

 

さくらは、対人恐怖症だと土方から聞いた。

リアルでは、ほとんど人と話さない。

 

食事の時も、一人で部屋に籠もることが多い。

話しかけても、最小限の返事しか返ってこない。

 

だが、VTuberとしての配信では——別人のように饒舌だった。

 

ある日、俺は彼女の配信を覗き見た。

 

「この敵、ここで倒さないとか、無能すぎるでしょ!視聴者のみんな、分かってる?ここがポイントなのよ!」

 

毒舌トークが炸裂している。

だが、その声には——楽しさが滲み出ていた。

 

画面越しなら、彼女は自由だった。

 

 

ユキは、感情をほとんど表に出さない。

 

いつも無表情で、言葉数も少ない。

学校から帰ってくると、すぐにピアノの前に座る。

 

だが、ピアノを弾いている時だけ——

 

その音色は、悲しくて、美しくて、心に染みた。

 

ある日、俺はユキのピアノを聞いていた。

曲が終わると、ユキは小さく呟いた。

 

「……UMEKO、聞いてた?」

「うん。すごく、綺麗だった」

 

ユキは、わずかに微笑んだ。

 

「……ありがとう」

 

それが、初めて見たユキの笑顔だった。

 

 

ある日、土方が全員を集めた。

 

「みんな、合宿に行くわよ」

「合宿!?」

 

めぐりんが、目を輝かせた。

 

「そう。山の温泉旅館で、3泊4日。それぞれの撮影と、絆を深める時間よ」

 

さくらが、少し不安そうに呟いた。

 

「……合宿って、みんなで一緒に行動するの?」

 

「そうよ。でも、無理はさせないわ。アナタのペースでいい」

 

土方は、優しく微笑んだ。

 

ユキも、小さく頷いた。

 

「私も、行きたい」

 

そして、俺は——

 

(温泉……みんなで入るとか、言わないよな……?)

 

少し不安だった。

 

 

「準備は明日からね。楽しみにしてなさい」

 

土方は、満足そうに笑った。

 

その夜、俺は一人で窓の外を見つめていた。

満月が、静かに輝いていた。

 

(俺は、このままでいいのか?)

 

元の体に戻りたい。

その気持ちは、まだ消えていない。

 

だが——

 

(今の仲間たちとの時間も、大切だ)

 

俺は、自分の手を見つめた。

細くて、白い、女性の手。

 

でも、この手で——

仲間を支えることができるかもしれない。

 

(もう少しだけ……この生活を続けてみよう)

 

 

その頃、遠く離れた場所では——

 

薄暗い部屋で、男が双眼鏡を置いた。

彼は、モニターに映る土方の事務所の映像を見つめていた。

 

「……対象、順調に生活しています」

 

男は、スマホで報告した。

 

「はい。土方法子の事務所に滞在中。来週、合宿に行くようです」

 

電話の向こうから、冷たい声が返ってきた。

 

『良い。引き続き監視を続けろ。まだ回収の段階ではない。慎重に動け』

 

「了解しました」

 

男は、電話を切り、再びモニターを見つめた。

 

画面には、リビングで笑い合う少女たちの姿が映っていた。

その中心に、UMEKOがいた。

 

「楽しんでいられるのも、今のうちだ……」

 

男は、冷たく笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ