『眼鏡を外したら、かっこいいのに。』
休み時間の教室。窓際で、彼は読みかけの参考書を閉じた。向かいの席に座る彼女との会話の途中だった。
「眼鏡をはずしたらかっこいいのに。」
「なんだい?」 彼は眼鏡の奥から視線を向けた。 「あなたはもっと魅力的になれるって話よ。あなたが、さみしそうだからアドバイスをと思って。」 彼女は身を乗り出す。 「フッ、ありがたいねー」 「感謝してもいいのよ」 「ありがとうございます。それでは、、、、」 彼は立ち上がろうとした。しかし、彼女の声がそれを遮る。
「、、、眼鏡をはずしたらかっこいいのに?」
「やり直しかい?」 彼は席に座り直す。
「あなたがもっと魅力的になれるって話よ。あなたが、さみしそうだからアドバイスをと思って。感謝はいらないわ。」
「強くてニューゲームか。」 彼はため息をついた。
「それでどうなの?」 彼女は首を傾げる。
「、、、もう一度言うけど、それはどうなんだろうね?」
「?これが初めてよ?、、、ああ、あなたも2回目なのね(笑)。それよりどうって?」
彼は眼鏡をそっと押し上げた。
「だって眼鏡をはずしたらかっこいいって、結局『あなた、眼鏡のせいで陰キャっぽく見える』ってことでしょ?僕、好きじゃないんだよね、そういうの。そういうこと言うやつって、恋愛こそ正義、プラス思考こそ正解と信じて疑わないんだろうね。だから思考的にマイナスな考え方である陰キャを嫌っているんだ。別にそう思うことは勝手さ。でもそのプラス思考を押し付けられるのは気に食わないね。確かに風呂場での僕はとてもかっこいいけど、それとこれとは別。ということで僕は小さいながらもこの抵抗を身に着けているのさ。」
「長文ありがとうね。いい長文だったわ。」
「話を聞いてもらえていませんでした(´;ω;`)」 彼の言葉が机の上に落ち、しばらく音は戻ってこなかった。 彼女は返事を急がず、ただゆっくりと瞬きをした。
「聞いてたし、あなたは勘違いしているわ。」
「?」
彼女は頬杖をついたまま、彼の顔をじっと見つめた。 「眼鏡をはずしたらかっこいいと思うのはわたしよ?一般論の話をしていないわ。」
彼は、不意を突かれたような顔をした後、目を細めた。 「はー。君を見ていると胸がきゅっとなるね。」
「それが恋ってものよ。良かったわね。これではれて陽キャの仲間入りよ。」
彼は、顔をしかめて即答する。 「ぜんぜん、ちがうよ、恋じゃない。」




