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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
打倒ヴァルグラン編

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60話 ユリウスの夢

2章のクライマックスです!いつも読んで頂いてありがとうございます!

 アルマンは革命の数日後に亡くなった。彼はノエルを守るために使用した魔力で、脳を大幅に損傷していたのだった。


 王宮の主要な建物は殆どが崩れてしまっている。今は瓦礫の処理が終わったところで、これから新しく本殿を建て直していくところだった。そしてエレーヌたちは本殿から少し離れた建物で暮らしていた。そこにはユリウスも一緒に住んでいた。


 王宮の庭にはアルマンを祀る碑が建てられた。ユリウス、エレーヌ、テオの三人が先程に建てられたばかりの碑を眺めている。


 建物の白い壁際――戦火の煤がまだ薄く残る石肌に寄り添うように、まっすぐに。新しい石は陽に当たって淡く光り、刻まれた文字はまだ角が鋭い。けれど、その鋭さが妙に頼もしく見えた。


 エレーヌ、テオ、ユリウスの三人は、その前に並んだ。


 誰も泣いていない。


 泣けないほど疲れているわけでもない。泣くより先に、ここから先を生きる覚悟が先に立っていた。


 風が吹いた。


 王宮の旗が揺れ、碑の表面に影が流れる。影は一瞬で消えるのに、刻まれた名前だけは揺れない。揺れないことが、まるで「大丈夫だ」と言ってくれているみたいだった。


 テオが、息を吐く。


「……ここにあると、分かりやすいね」


 声はまだ幼い。でも、その響きはもう子どものそれじゃなかった。失ったからこそ、守るものを知った声だった。


 エレーヌは頷き、碑の足元に目を落とす。土は新しい。だからこそ、ここに“これから”を植えられる気がした。


「アルマンはね、王族じゃなくて、兵士でもなくて――ただ私たちの家族そのものだった。」


 エレーヌはそう言って、少しだけ笑った。


 ユリウスは一歩前へ出る。碑の文字を見つめ、指先で柔らかくなぞった。そして彼は真っ直ぐ言った。


「俺は必ずこの国を守ります。そしてこれから生まれてくる子どもたちが幸せに生きていける国を作る。」


 ユリウスはそう言った後にエレーヌを見て微笑んだ。


 「アルマンさん。ありがとうございます。私はあなたの恩を一生忘れません。


 ユリウスが空を見た。空は青く澄んでいる。良い天気だった。そしてこれまでに見たこともないような綺麗な小鳥が碑に止まった。

 小鳥は綺麗な声で鳴く。ユリウスらは喜んでそれを眺めた。そして彼は小鳥に手を伸ばした。すると小鳥はユリウスの手に飛び移った。


「不思議な小鳥だね。」


テオは目を丸くしてユリウスの手に止まった小鳥を見る。エレーヌはどこかホッとした目で小鳥を見つめた。小鳥はユリウスの手で鳴き続けた。


 薄い雲の向こう、青が少しだけ覗いている。レンデルの街はまだあの日のままだ。しかし風の匂いは確かに変わっている。


 ユリウスの手に止まっていた小鳥は空に向かって飛び立っていった。三人はその小鳥を見送った。


 ユリウスがエレーヌのお腹を撫でた。


「幸せになろう。」


 エレーヌが頷く。テオが無邪気な笑顔を見せる。


 三人はしばらくして王宮に戻った。


 ユリウスは少し疲れて部屋の机でうたた寝をする。すると不思議な光景が目の前に広がった。


 革命の日にユリウスが作ったガラクタの巨壁が目の前に広がっている。そして巨兵の上にはユリウスの知る者たちがいた。


「おいユリウス!お前もここまで登ってこいよ!」


レオンがユリウスに手を振る。ユリウスは驚いた。そしてガラクタに魔法をかけた。ユリウスはガラクタに乗って巨壁まで飛んだ。


 「レオン、俺は生き残ってしまった‥‥‥」


「辛気臭い顔をするな!それで良いんだよ!そうじゃなきゃ命を賭けてお前を守ったミレイユが報われないじゃないだろうが。」


「余計なことを言わないでいいのよ。」


ミレイユが二人に歩み寄ってきた。


「やっぱりミレイユが俺のことを守ってくれたのか。本当にありがとう‥‥‥」


「リーダーのことを守るのは当然よ。そんな悲しそうな顔しないでちょうだい。でも会えて本当に嬉しいわ。」


「愛する人を守るのは当然のことだって言い直さないとね。」


「こら!リュカ!」とミレイユが叫んだ。


「ごめんごめん。」とリュカが笑った。


「でもユリウスが生き残ってくれて嬉しいよ。ユリウスはこれからこの国をまた一から作っていくんだ。僕たちはユリウスの健闘をずっとこれからも見守り続けるんだ。もちろん暁の皆んなでね。」


リュカは周りを見渡した。すると暁の皆んながユリウスの周囲にいた。


「やっぱり酒はどこで飲んでも上手いなぁ!もう死んだからたっぷり飲む!」


マルクがジョッキを片手に巨壁の上をヨタヨタと歩く。


「マルク落ちるぞ。」とジャンが心配そうに見る。


「マルクはどこに行ってもこの様さ。」とリュカが笑った。


ユリウスがミレイユに改めて礼を言う。


「本当に守ってくれてありがとう。」


「うん。」とミレイユが呟く。


「私が命を賭けて助けたんだから長生きしなさいよね。」


「当たり前だ。この命大切にするよ。」


「もちろんよ。あと幸せになりなさい。ユリウスはいっつも無理するからちょっとは体を休める日も作るのよ。」


「ああ。ありがとう。」


ミレイユはユリウスに手を差し伸べた。


「愛とお別れの握手よ。」


ユリウスはミレイユの手を強く握った。すると彼の瞼からは涙が流れてくる。


ユリウスは暁の全員と握手をした。


「皆んなありがとう。暁は俺にとって誇りだ。」


レオンがユリウスに手を差し伸べた。


「ユリウス。暁は永遠不滅だ。何故なら暁はこの国と共にあるからな!この国を守ってくれユリウス。俺たちはずっとここから見守っているからな!」


「ああ。必ずこの国を守るよ。暁の名にかけて。」


全員が城壁の上で「暁万歳!」と叫ぶ。ユリウスも皆んなと夢中でそれを叫んだ。


 エレーヌはユリウスの部屋にノックする。返事がないのでゆっくりと開けた。するとユリウスが机で眠っていた。エレーヌは横になればと声をかけようとしたが、ユリウスの目元が濡れているのを見てそっとすることにした。


 ユリウスは皆んなのもとを離れた。レンデルを去るユリウスにミレイユが駆け寄る。


「最後に一回だけ抱きしめて。」


ユリウスは優しくミレイユを抱き締めて、彼女の頭を優しく撫でた。


「ありがとう。」と言ってミレイユは彼の体を自分から離した。


「幸せになってね。」


「ああ。」


「いつでも応援してるから。」


「ありがとう。必ずこの国を強くするよ。」


ユリウスはレンデルを出て、王宮の方向を見ながら、国の未来へ向かってゆっくりと歩き出したのだった。

次からは3章に入っていきます!


ちょっと3章の1話を書くまでに時間を頂きます!

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