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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
打倒ヴァルグラン編

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59話 この国の未来を誓って

いつも読んで頂きありがとうございます!


PV数が増えた日は凄く嬉しいです。まだまだ未熟すぎますが、ぜひ最後まで読んでみて下さい!

 アルマンらしき人物がぼんやりと墓標を見つめていた。すると人混みを割って、テオが駆け出した。足元の土で滑りそうになりながら、墓標の列を飛び越える勢いで近づく。息が切れて、声が裏返る。


「叔父さんなの!? アルマンなの!? 生きてたの!?」


 エレーヌが一歩、前へ出る。声が出ない。喉が詰まる。だが、唇だけが動く。


「……アル、マン……?」


 男は顔を上げた。


 ――そこにあるのは、確かにアルマンの顔だった。けれど、違った。頬は削げ落ち、肌は乾いた土みたいにひび割れている。髪は黒だったはずが、灰色を通り越して白に近い。

 目の下には深い影。瞳は、昔の優しさを残しながらも、焦点が合っていない。


 再びテオがアルマンの名を呼んだ。すると男はその名に反応したようで、ほんの少し首を傾げた。でもすぐに視線が宙に泳ぐ。彼は自分がどこにいるのかさえ、確かめ直しているようだった。


 アルマンはぎこちなく立ち上がりテオとエレーヌをどこか苦しそうに見つめた。


「……すまない」


 それだけが、唇から落ちた。


 謝罪の相手は分からない。誰に謝っているのかも、彼自身が分かっていない。


 エレーヌが震える声を絞り出す。


「アルマン……どこに、行ってたの……? テオが……私が……」


 男は、エレーヌを見た。その瞬間、ほんの一秒だけ瞳の奥に懐かしさが灯った。だが次の瞬間にはそれも薄れる。


「……知らない。……すまない。俺は……」


 言葉が途切れる。まるで、脳の中の道が崩れているみたいに、記憶へ辿り着けない。


 国民の誰かがすすり泣いた。墓地の静けさが、いっそう重くなる。


エリシアが一歩、前へ出る。いつもの鋭さが、少しだけ鈍っている。


「その身体。ただの怪我ではないわ。いったい何をしたの。」


アルマンの目はどこか空虚で、何かを見ているようで、その瞳は何も見ることができなかった。エリシアにはその目が僅か濡れたように感じられた。泣いているのか、乾いているだけなのか分からない。


「記憶がないんだ。自分が誰かも分からない。」


ノエルがアルマンの頭に手を添えて回復魔法をかける。

「駄目だ。マナの使いすぎで脳の一部が損傷している。ここまでくればもう治せない。」


ふと一人の中年女性が歩み出た。そしてユリウスとアルマンを見て、興奮しながら話し出す。


「急に出てきてごめんね。でも私はこの人の顔を覚えているんだ。


気を失っているあなたを助けたのは私なんだ。私はそのときのことを今でも覚えている。あなたはとっても大きな木の幹に埋まっていたのよ。その木はとっても大きな木だったわ。まるで誰もあなたに危害を与えないように、大きな木はあなたを守っていた。


でも私が木の幹に挟まるあなたを掴むと、その木はふとあなたを幹から出してくれたわ。まるで誰かの救助を待っていたかのようにね。」


 ノクトが女性の話を聞いて口を開いた。


「それはもしかするとアルマンさんの魔法なんじゃないかな?おそらくその木は地属性魔法によるものだと思う。アルマンさんはユリウスを守るために、命を賭けて魔力を使い続けたんじゃないかな。」


 ユリウスはノクトの話を聞いて涙を流した。そしてアルマンを抱き締める。


「僕を助けてくれて本当にありがとうございます。」


エレーヌもテオもアルマンを抱き締めた。アルマンは何がなんやら分からない。ただどこか懐かしい感じがして静かに涙を流したのだった。


ノクトは目の前の光景を見て、再び自らに流れる血を恨んだ。どうして魔王軍はこれほどにも皆から大切なものを奪ってしまうのか。どうして人が死ななければいけないのか。誰も死ぬために生まれてきた者などいない。魔王軍は余りにも世界中に理不尽をつくりすぎた。


 ノクトが険しい目つきで考えごとをしていると、それに気づいたライナがそっと彼の手を握った。


「ノクトは何も悪くないよ。」


ノクトは一瞬だけ驚いたが、すぐさま優しい気持ちに戻れた。


「ライナ。ありがとうな。」


「アタシたちはもう仲間なんだからね。苦しいときはもちろん、楽しいときもいつも一緒。それが仲間でしょ?」


「ああ。そうだな。」


 弔いの式典は終わりを迎えた。ユリウスの目には力強さが籠っていた。もはや式典の前とは別人のようだった。


自分は生きなければならない。おじさんが自分の命を賭けて俺のことを助けてくれたんだ。俺は暁の仲間たちと一緒に死ねなかった。でももうそれを受け止めるしかないんだ。


 生きよう。どんな未来が待っていても生きよう。多くの人に助けてもらったこの命を無駄にするわけにはいかないんだ。


 ユリウスはレオンやミレイユの名がある札の前で深く頭を下げた。


「ミレイユ。ありがとう。きっとお前は最後まで俺のことを守ってくれたんだよな。生かしてあげられなくてごめんな。


レオン。一緒に戦ってくれてありがとう。俺だけ生き残ってしまったよ。だからこそ俺は命尽きるまでこの国を守り続ける。それがお前との約束だよな。」


 ユリウスは一つ一つの墓標を巡ったのだった。そして暁で最年少のメンバーであったリュカの墓標。その前にはライナがいた。


 「リュカ。アタシを最後まで助けようとしてくれてありがとう。」


 ライナはリュカとの訓練の日々を思い出した。リュカの無邪気な笑顔を思い出すとライナの目元からは大粒の涙が溢れてきた。


 「ごめん。あたしのせいで‥‥‥ごめんねリュカ‥‥‥」


 近くで見守るノクトはライナに何を言ってあげたらいいの分からなかった。エリシアも黙っていた。ライナが今感じている悲しみは二人とも何度も経験してきた。だからこそ彼女にかける言葉が見つからなかった。


 ユリウスはライナの肩に手をかける。


「リュカはどんなときだってふざけているような悪戯小僧だったよ。だからきっと今だってどこかで笑っているさ。でもそれって暗い雰囲気が大嫌いなリュカが必死に考えて見つけた生き方なんだ。だから泣かないでやってくれ。


 リュカは涙ってやつが大嫌いなんだよ。暁の最年少で親もいない孤児のあいつだけど、生き方は誰よりも立派だった。誰よりも人の笑顔が好きだったんだ。だからリュカだって常に笑ってる。あいつは君に会えたことを誰よりも喜んでいるよ。きっと今だって君の前でとんでもない笑顔を見せているはずだ。なんだってリュカは誰よりも陽気だからな。」


ライナはユリウスの言葉を聞いてできるだけ笑顔になろうと努めた。


「俺もさっきまでは絶望していた。多くの仲間が亡くなりすぎた。でも俺は生き残ったからには、みんなの意思を継いで必ずこの国を守ろうと思う。だからもっと強くなるよ。魔法も心も。」


 空には夕焼けが差している。その空の色はまるで夢を見ているかと思われるほどに美しかった。その夕焼けを見てユリウスは手を振りたい気持ちになった。この国の未来を誓って。

本日も読了ありがとうございました!

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