37話 カルディオスとの激闘
カルディオスはまるで本能のままに攻撃を続けた。殆どの攻撃をノエルが氷の盾で防ぐ。だがカルディオスの攻撃は余りにも強烈で、ノエルの防御魔法も魔物の攻撃を防ぎきれなかった。
カルディオスが体の外殻を幾ら投げつけようと、魔物の体は殆ど無事そうだった。
ノエルは防御魔法だけでなく補助魔法も発動した。
「雪精同調」
ノエルが両手をかざすと、淡い雪の精が周囲に現れ、側にいる仲間たちの背後に寄り添う。
精霊は武器や体に溶け込むように重なり、魔力の流れを整え、攻撃の威力と精度を静かに底上げする。
冷気は痛みを伴わず、むしろ心を澄ませるような感覚だけを残した。
「何だか体がポカポカしてきたよ!魔法のレベルが上がりそうだね!」
ライナは炎の獅子を召喚する。獅子の纏う炎はいつもよりも威力が上がっていた。獅子はカルディオスに向かって突進する。魔物は後ろに倒れた。だがすぐに起き上がる。
カルディオスは理性を捨て、一直線の突進を始めた。防御も回避も考えない。ただ前にあるものを壊すという意思だけがあった。
魔物は全ての力を突進に込める。暁の兵士がまた一人と押し潰されてしまった。ノエルが回復魔法を使うまでもなく瀕死の状態だった。
カルディオスは攻撃を続ける。一心不乱に暴れ続けた。そしてまた一人暁の者が殴り潰された。
ユリウスは怒りの雄叫びを上げる。そしてこの戦いを終わらすための魔法を発動した。
『廃骸巨神・魂縫い(たまぬい)』
ユリウスが掌を掲げると、周囲のガラクタが一斉に浮き上がり、轟音とともに組み上がって巨大な人型になる。
胸の中心に赤黒い光——魂核が灯った瞬間、巨人は“作り物”の目ではなく、確かな意思の瞳でこちらを見た。
「……起きろ」
ひとこと落ちると、瓦礫の巨体がきしみながら一歩を踏み出す。
その巨人の迫力に別に戦っていたノクト達も目を見張った。エルも戦いを一度中断して巨人を見ていた。
ユリウスの生成した巨人がカルディオスに攻撃をする。圧倒的なパワーを持つカルディオスも巨人の力には苦戦した。そしてライナも巨人と一緒にカルディオスと戦った。
地上が揺れる。地響きが凄い。巨人がカルディオスを殴る。蹴る。その巨大にも似合わず動きは俊敏だった。カルディオスも負けずに反抗する。
巨人を動かし続けるにはかなりの魔力を消耗する。ユリウスもそろそろ体力の限界だった。体力の続く限り巨人を手繰る。そしてカルディオスは隙を見せた。ライナはその隙を見逃さない。
ライナは深く息を吸い、拳を胸元へ引き寄せた。
指先の炎がほどけ、獅子の輪郭へと変わる。赤橙の霊火が吠え、拳の中へ――“宿る”。
「紅蓮獅霊宿……ッ!」
掌の奥で獅子が鼓動した瞬間、ライナの拳は炎そのものになる。熱が空気を裂き、足元の砂がガラスみたいに溶けていく。
カルディオスが身構えるより早く、ライナは踏み込んだ。地面が砕け、影が置き去りになる。
「これで終わりだぁ!!」
拳を振り抜く――獅子の咆哮が爆音に変わった。
「烈焔轟拳!!」
一撃。
炎は“拳の形”のまま突き抜け、衝撃が遅れて炸裂する。紅蓮の獅子が拳から解き放たれたようにカルディオスの胴を喰らい、骨と鎧をまとめて噛み砕いた。
轟音の中で、カルディオスの巨体が宙に浮き、背から火柱を噴きながら吹き飛ぶ。
着地したライナは拳を下ろさない。まだ獅霊が吠えている。だが次の瞬間、その吠え声は静かな余熱へ変わり、赤黒い煙だけが風にほどけた。
カルディオスは膝を折り、最後に一度だけ爪を立てようとして――力尽きる。
ライナは燃える拳を握り直し、まっすぐ前を見た。
「……勝った。」
ユリウスは全身の力が抜けてその場で崩れ落ちた。するとノエルがユリウスを介抱する。ライナもユリウスのもとに駆け付けた。
「大丈夫⁉︎」
「ああ。大丈夫だ。それよりも仲間のところに行ってあげてくれ。どうやら苦戦しているみたいだから。俺は大丈夫だ。ここでちょっと休んでいるよ。
ライナとノエルは少し離れたところで戦うノクトたちのもとに向かったのだった。
すると驚くことに最年少の黒翼将はノクトとエリシアの二人を相手に互角に戦っていた。その強さはまるで六魔星にも引けを取らない。
黒翼将エル=シェイド。ライナは青年の放つ高速剣技を見て圧倒された。これまで戦ってきた相手とまるで違う。一歩も踏み入る隙がない。それでもライナとノエルは戦闘に加わったのだった。
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