15話 処刑者の救出
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王都中央広場。かつて祝祭と音楽で満ちていたこの場所は、今や沈黙の墓地のようだった。
中央にそびえる石造りの処刑台は、重く黒ずんでいた。
陽の光を拒むかのように鉄柱が並び、そこに吊るされた鎖が、風にかすかに鳴った。それは鐘の音ではなく、死を告げる予鈴。
周囲には民衆が押し寄せていた。だが、誰一人として声を出す者はいない。子どもを抱く母親は、泣き声を押し殺し、男たちは俯いたまま拳を握る。
広場を囲む建物の屋根には、魔王軍の兵が並び、弓を構えていた。
逃げる者がいれば、その瞬間に矢が放たれることを、誰もが理解していた。
壇上には三本の杭が立てられていた。そこには王の旧臣たちなど、かつてのバルザックの誇りが、縄で縛られ、うなだれている。
白髪混じりの老人が、震える唇で祈りを呟いた。
「どうか……陛下の御魂が……」
その声をかき消すように、重々しい足音が響く。
魔王軍の兵士が列をなして現れた。その先頭を歩くのは、漆黒のローブを纏った一人の男。
その男が一歩ごとに近づくたび、群衆が息を呑んだ。
「これより反逆者どもの処刑を執り行う。」
低く響く声が広場に伝わった。その声は冷たい鉄のように、感情の欠片もなかった。
鎖が軋む。太陽が雲に隠れる。
風が止まり、世界が一瞬、息を潜めた。
処刑台の下では、魔王軍の兵が火を灯した松明を掲げる。赤い炎が揺れ、囚人たちの顔を赤黒く照らす。その光に照らされた涙の粒は、血のように見えた。
「魔王様の赦しを乞う暇もない。お前たちの罪は、魔王様に逆らったこと。それだけでも充分だ。」
兵が縄を引く。囚人たちの身体が宙に浮く寸前――。
群衆の中の誰かが、かすれた声で叫んだ。
「やめろ……! 彼らは……王のために!国のために――!」
その瞬間、弓が放たれた。叫んだ男の胸に矢が突き刺さる。男は膝をつき、口から血を零して崩れ落ちた。
再び、沈黙。風が冷たく吹き抜け、処刑台の上で縄が静かに揺れた。
――世界から、祈りが消えていた。
そして処刑台の縄が引かれようとした、その瞬間。
――世界が、燃えた。
轟音。次の瞬間、広場の中央に紅蓮の爆炎が咲き誇った。
炎の花弁が風を裂き、熱が空気を焦がす。逃げ惑う群衆の中で、ただ一人、その中心から現れた影があった。
赤い髪が風を切り、拳に炎を宿す少女。
――ライナ。
彼女の瞳は、まっすぐに処刑台を見据えていた。
恐れも、迷いもない。あるのはただ――「助けたい」という意志だけ。
「紅蓮獅霊召喚――焔獅子乱舞!(えんじしらんぶ)」
地を叩く。轟く。
獅子の咆哮が空を震わせ、炎が生き物のように暴れ出す。
燃え上がる紅蓮の獅子が鎖を喰い千切り、杭を砕き、囚人たちを包む縄を焼き払った。
兵士たちが慌てて隊列を組む。だが遅い。ライナの姿はもう見えない。気づけばその背後に回り込み、拳を突き出していた。
「この場はアタシが必ず救ってみせる!」
炎の拳が兵士の胸に突き刺さり、鎧ごと爆ぜた。火花が雨のように散り、倒れた兵たちの影が燃え尽きていく。
逃げる者はいない。誰もが恐怖と驚愕の中で、彼女を見つめていた。そしてライナを何人かの若い魔法学生が援助する。その中にはアルトの姿もあった。
「みんなでバルザックを救うよ!ノクト、ここはアタシに任せて。信じてるからね!」
炎が舞う。紅蓮の獅子が再び咆哮し、処刑台を飲み込む。
木の柱が爆ぜ、鉄の杭が赤く染まり、黒煙が天を突き上げた。
兵たちの叫び声が広場に響く。だが、誰も止められなかった。その炎は、ただの魔法ではない。怒りと祈り、そして失われた者たちへの鎮魂の火だった。
炎の向こうで、ライナは拳を握り締めた。焦げた風が髪を撫で、夜空のような煙が空へと昇る。
――その日、絶望の広場に現れたのは、希望の火だった。
アルト達が公開処刑されようとしていた人たちを介抱する。その中にはヴェルノア学園の教授もいた。
彼らの中には再会の喜びに涙を流す者もいた。だがその暇もすぐになくなった。
魔王軍が次から次へと湧く。処刑代から解放された者もライナと共に力を合わせて戦った。
戦力はほぼ互角。激しい争いになった。するとアルトが一人の男に話しかけられた。
彼はバルザック王の側近であった者だった。彼の話によると、今日はバルザック王の子であるミレオの処刑も行われるということだった。
隠れ家の場所がバレていて、魔王軍がミレオが身を隠す隠れ家に向かっているということだった。それを聞いてアルトは何も考えずに、ただ直感的にミレオがいる場所へと急いで向かったのだった。
自分もライナさんみたいになりたい。命を懸けてでも、何かを守るために戦ってみたい。その気持ちだけがアルトの体を動かしていたのだった。
ライナたちが奮闘していた頃。ザルベック城・王室へ続く廊。
赤い絨毯は焦げ、壁に掛かった王家の旗は煤で黒く沈んでいた。空気は乾ききり、息を吸うたび喉が焼ける。
エリシアの足音だけが、冷えた石の床に規則正しく刻まれていく。
両扉の前で立ち止まる。金の髪が静かに揺れ、青い瞳に迷いはない。白の軽鎧の胸元で、小さな光が脈動する。
扉を押し開く。熱風が爆ぜ、焦げた空気が頬を叩く。玉座の間は炎の支配に屈していた。溶けて垂れ落ちた燭台、玻璃化した床、赤黒く染まった天蓋。中央の階段の頂、かつて王が座した場所に、男がいた。
ヴァルグラン。深紅の肩布に〈魔星紋〉が浮かび、赤銅の瞳が熾火のように光る。
五十路に差し掛かった無骨な顔。指先で弄ぶ小さな焔が、握り込むたびに強まり、周囲の空気から色を奪っていく。彼の周囲だけ、世界が静かに燃えていた。
エリシアは歩を進める。そして胸に手を当て、小さく囁く。
「聖輝招来――降り来たれ、黎明の御剣。」
胸元に淡い光輪が咲き、柄が内側からせり出す。
引き抜くと純白の刃が音もなく整う。
低い澄音とともに、場の翳りがふっと遠のいた。
彼女は更に歩を進める。一歩ごとに、光が揺らぎ、熱が後退する。
聖剣の刃は純白の輝きを纏い、床に落ちた煤を白く照らした。光と熱の境界が、玉座の間の中央に一本の線を描く。
ヴァルグランの焔が、ひときわ高く揺れる。
天蓋の旗がぱらりと崩れ、灰が雪のように落ちる。エリシアは柄を握り直し、足幅を半歩だけ狭めた。呼吸は浅く、静かに。目標はただ一つ
――玉座。
距離が詰まる。十歩。床の玻璃が靴底で鳴り、光が前へ押し出される。熱が迎撃の姿勢を取る。静かな圧と、白い鋭さが正面から噛み合った。
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