13話 ノクトの正体
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ノクトは縛られていた。彼が意識を取り戻す頃には、もう既に彼らはヴェルノア学園を離れていた。
ゼルマンの隠れ家の奥。木の壁に囲まれた薄暗い部屋の中央で、ノクトは椅子に座らされている。
そしてその両腕と胸には、聖なる光を帯びた縄が幾重にも巻き付いていた。
縄はまるで生きているかのように微かに脈動していた。
ノクトが少しでも動こうとすれば、白金の光が強く光り、体の奥から魔力を吸い上げていく。
エリシアの魔法であることをノクトはすぐに悟った。
ノクトの頬には、まだ紫の痣が残っていた。額から流れ落ちた汗が顎を伝い、床に落ちるたびに小さな音を立てる。
「俺はまだ生きているのか?」
かすれた声が漏れた。だがその言葉に誰も返さない。
部屋の入り口にはエリシアが立っていた。彼女の瞳は冷たく、油断というものを一切許さない。
少し離れた場所では、ライナとミレオが身を寄せ合い、複雑な表情でノクトを見ていた。
ライナは唇を噛みしめ、何度も何かを言いかけては言葉を飲み込んでいた。
「あんたは俺を殺さなかったのか?」
「殺そうとしたわよ。でも殺せなかった。」
「どうして?」
「仲間思いの彼らに感謝しなさい。何度あなたを殺そうとしたことか‥‥‥
でも今殺してないだけで、いずれは始末するわ。だから私はあなたをルミナシア帝国に連れていく。そこで裁きを受けなさい。」
ルミナシア帝国は、世界で一番に発達した国だ。エリシアはその国の王女だった。唯一、魔王軍に対抗できる国とも言われていた。
ノクトがしばらく無言でいると、ミレオが口を開いた。
「ノクト‥‥‥この人の言っていることは全部嘘だよね⁉︎ノクトが魔王の子どもなわけないよね?だってノクトは良い人だから。」
ノクトは無言だった。するとミレオが叫ぶ。
「ノクト!何とか言ってよ!まさか本当に魔王の子どもだっていうの⁉︎」
「うん。そうだ。俺は魔王の子どもだ。そして今は魔王殺しの罪で魔王軍から追われている。」
全員が驚愕した。
「魔王が死んだって噂は本当だったのね。だから今はあなたの兄であるゼルクが魔王軍を指揮しているってわけね。
でもどうしてあなたが父を殺す必要があったの?」
「俺は優しい世界を作りたかった‥‥‥」
「ふざけるな!人殺し!」
ミレオが叫んだ。少年は縛られたノクトに近づく。
「お前たちのせいでパパやママが死んだ!お前たちはどうして、何も悪くない人をたくさん殺すんだ!
お前たちはまだ生まれたばかりの小さな弟さえ‥‥‥」
ミレオは涙を流しながらノクトの頬をぶった。
「どうしてお前たちはあんな小さな子さえ殺せるんだ!どうしてお前たちは人の幸せを何もかも奪ってしまえるんだ!」
ノクトは無表情だった。その瞳はまるで絶望の淵を見ているようだった。
目の奥の光が完全に失われていて、まるでその瞳は人の亡骸と変わらなかった。
ミレオは何度も何度もノクトをぶつ。そしてミレオは火の魔法を発動しようとした。
それはノクトに教えて貰ったものだった。するとライナがミレオの手を握って魔法の発動を止めた。
「ミレオ駄目だよ!」
「どうして?どうして僕を止めるの?」
「ノクトが死んじゃうよ‥‥」
「こいつは大勢の人を殺してきたんだ!死んで当然の人間じゃないか!」
「ミレオの気持ちは凄く分かるよ。でもアタシはまだノクトが悪い人って思えないの。」
「ノクトは魔王の子どもなんだ!悪い奴に決まっている!」
「ノクトはアタシたちにはずっと優しかった。命懸けでザイモンと戦ってたノクトを見たよね?
ノクトはミレオやアタシを守るために、ずっと戦ってくれた。あの姿を思い出すと、ノクトが本当に悪い人って思えないの!」
「でもノクトが魔王の子どもであることに違いはないんだ!」
「でもノクトは魔王ではないよ!」
「でも人殺しの子どもであることに変わりはない!ライナに僕の怒りが分かるわけないんだ!」
「ミレオの気持ちは分かるよ。」
「ライナには分からない!僕は家族全員を殺されているんだ!」
一瞬、沈黙の間が生じた。
「ミレオの気持ちは分かる。誰だって大切な人を失うのは傷つくから。
アタシも3年前に家族や友人、近所の人たち。同じ村に住んでいた人たちを皆なくした。
村に住んでいた人がアタシ以外みんな死んだの。村を奪ったのは魔王軍。」
ミレオ以外の者はこの話を聞いてハッとした。
強力な火属性のマナを体内に宿す猫人族で、ネフェルナ族という種があった。
ネフェルナ人はフェルナ村という集落で、みんなが力を合わせて暮らしていた。
しかし魔王軍の反感を買ってしまったことで、皆殺しにされて滅びてしまった最強種族。そのネフェルナ族の話しは余りにも有名だった。
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