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4. 叶った夢

この章を楽しんでもらえたら嬉しいです。それと、僕の小説をブックマークしてくれたら嬉しいっす、ヨウ

俺はナイフを喉に当てていた。


手を一度動かすだけで、この悪夢をもう見ることはない。

ただ一度動かせば、静かに眠って、そのまま目を覚まさない。永遠の深い眠りに溶けていく。


それって、幸せじゃないか?


でも、なぜか手が震えた。

なぜだ?

こんな悪夢、早く終わらせたいんじゃなかったのか?


唾を飲み込んだ。

そのとき、ナイフの刃先が喉に刺さった。

ものすごく不快な感覚だった。


ナイフを柄まで喉に突き刺したら、どれほど痛いんだろう?


そもそも……死ぬってどんな感じなんだ?

その一動作で、俺の意識はどうなるんだ?

怖い。

あまりにも怖くて、ナイフを落とした。

でも拾おうとは思わなかった。


俺は死ぬのが怖い。


ただの臆病者だ。

無意味な人生を続けると決めたとき、家の中を歩いてみようと思った。

この場所ともお別れだ。


でもその前に、傷を手当てしなければ。

床にあった包帯を見つけて、タオルを口に押し込んだ。

破片を一つずつ手に取り、太ももから引き抜いた。タオルを取っておい 正解だった。

あまりの痛さに、敵にも味わってほしくない。思いきり叫んだ。

三つの破片を取り終えてから、傷口を包帯で巻き、結び目を作った。


さあ、家とお別れしよう。


まずは自分の部屋に入った。

勉強していた机は壊れていた。ベッドも同じだった。

でもポスターはほとんど無傷だった。少し埃が積もっていて、一部は破れていたが。


『ベルセルク』のガッツは、以前と同じように無傷で壁にかかっていた。

『俺を好きなのはお前だけかよ』のポスターは、細かい木片で覆われていた。見た目ほどではないが、取り除くのは無理だ。

そして『四月は君の嘘』の有馬公生のポスターが一番ひどかった。大きな木片がいくつか突き刺さっていた。

でもよく見れば、それらは簡単に取り除けそうで、頑張ればポスターも修復できるかもしれない。


物が床に散乱していた。

どこに足を踏み入れても、足元にはマンガやエロディスクがいつも絡みついていた。


視線はポスターの少し下に向かった。

部屋の奥、机とベッドのがれきのそばに、傾いたピアノが置かれていた。

瓦礫の中に埋まり、埃をかぶっていて、まるで百年も使われていないかのようだった。


少し演奏してみようと、そっと近づいた。

指が鍵盤に触れようとした瞬間、ガッツのポスターを払い落とし、床に落とした。そしてようやく鍵盤を押してみた。

しかし、ほとんどの鍵盤はもう動かなかった。

動くものも音程が狂っていた。正常に動く鍵盤もあったが、数はあまりに少なく、音楽を弾くのはとうてい無理だった。


俺は部屋を出た。


部屋のすぐ右にはリビングルームがあった。


七歳くらいのとき、父さんとここで子供向けのアニメを見ていたのを覚えている。

父さんと一緒に見るのがとても好きだったが、彼にとってはそれほど面白くなかっただろう。

なぜか、ひとりでアニメを見るのはいつも退屈だった。

必ず父さんがそばにいないとだめだった。

俺は座って絵の世界を見ていて、父さんは必死に眠らないように耐えていた。でもほとんどいつも寝てしまった。

父さんが寝てしまうと、俺はひどく泣き出し、ほとんど止まらなかった。

そんな時はいつも、母さんが助けに来た。どうやっていつも上手くなだめたのか覚えてないけど、彼女は必ず俺を落ち着かせてくれた。時間はたくさんかかったが。


でも今、私たちがアニメを見ていたテレビは壊れて床に倒れていた。ソファも同様に壊れていた。


リビングから出て右に曲がると、両親の寝室が見えた。

ナイトテーブルの上にあったものはすべて壊れて床に散らばっていた。

ベッド自体は壊れていなかった。ただ少し移動していた。


そのベッドには、両親の壊れた写真が横たわっていた。

ヴェネツィアでの新婚旅行の写真だった。

あの街がとても気に入っていて、また行きたいと言っていた。

でももう二人は行けなくなった。


俺は寝室を出て裏庭へ向かった。

そこも変わっていた。

以前あった二本の木はもうなく、切られた幹だけが残されていた。

でもブランコは残っていた。おそらくしっかりとコンクリートで固定されていたのだろう。


俺はブランコに立って乗った。もう背が伸びて、座ることができなかった。

ほんの少し揺れるブランコからは、起きた混乱が一望できた。

壊れたドアや窓、生気を失った家々や路地。

その光景が胸を引き裂いた。


これは誰のせいだ?

誰のせいで、大人は絶望し、子供は涙を流す日々を過ごさなければならないんだ?



それは僕のせいじゃないのか?



そうだ。すべてのこの恐怖は僕のせいだ。


僕はいつも何かアニメの主人公になりたかった。

宇宙人の襲来や世界の終わりのような非凡な出来事が起こったとき、いつもかっこよくて壮大なことをして人類を救う主人公。誰も彼の力を知らないけど、後で見せてみんなが感動する。


さて、世界の終わりが来た。

神様が僕に主人公になることを許して、人類を世界の終わりから救わせてくれた。みんなに未来への希望を与えた。


夢は叶ったのでは?


違う。


僕はそんな人間じゃない。

かっこよくも勇敢でも強くも責任感もない。

ただのダメなやつだ。


今は僕のわがままで、地球のすべての人が苦しんでいる。

全部僕のせいだ。


家に入って最後に自分の庭を見た。

その時、頭を殴られたような気がした。

親友とここで遊んだことを思い出した。名前は何だったっけ?

確か光。そうだ、吉田光だ。

彼は大丈夫かな?

作曲家になりたかったよね。何か成し遂げたのかな?

夢は二人で一つだった。彼は作曲家になって、僕は彼の曲を弾くはずだった。

いいやつだ。会って全部聞いて謝らないと。彼が経験したことに対して。


決めた。

彼に会いに行く。まだ生きているといいけど。秋葉原に住んでいるから、多分無理だろうけど。

でも確かめる必要がある。

もう家にはいたくない。悲しい気持ちになるから。

でもまずは両親を埋めなければ。


裏庭に彼らの体を運んだ。ここが好きだったから、ここにずっといたいだろう。

シャベルを取って墓を掘った。思ったよりずっと大変だった。


穴を掘った後、最も難しいことが残っていた。

両親を穴に入れて土をかけること。

やっている間、涙が止まらなかった。

なんで親を埋めなきゃいけないんだ?

なんでスポーツをちゃんとやらなかったんだ?

弱いから両親を穴に入れることさえできなかった。力が足りず、手から落ちて墓に落ちてしまった。もっと辛くなった。


土が両親にかかるたびに涙が増えた。


一番大変なことが終わった後、私は両親に何か別れの贈り物を残して、墓標のようなものを作ることに決めた。

キッチンに入って、まな板を二枚見つけて、ナイフでそれぞれに「ママ」と「パパ」と彫った。


その後、自分の部屋に行き、両親への別れのプレゼントを探していると、ぬいぐるみのピカチュウを踏んでしまった。


私が六歳の時、隣の男の子が持っているのを見て、同じものが欲しいと親に泣き叫んだ。

でもどれだけ探しても、全く同じものは見つからなかった。

だから親は隣の子からかなりの高額でそれを買い取らなければならなかった。

それはその子の大好きなおもちゃだったからだ。


たぶん、それも両親のそばに置いて、私のことを思い出してもらうべきだろう。


私は手作りの墓標を埋めて、ピカチュウをその前に置き、少し座った。

数分後、別れの準備ができたことに気づき、立ち上がって出口に向かった。


「じゃあね、ママ、パパ。また会いに来るよ。」

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